「何なんだ、これは…!?」
沖縄上空で戦闘機を操る米軍パイロットは驚愕していた。
謎の襲撃者、白銀の装甲と翼、そして黄金の槍を携えた少女。
たった一人の少女によって、今、米軍沖縄基地は危機に瀕していた。
その少女の反応は、沖縄米軍基地西方に突如として現れた。
始めに強力な何かが放たれ、基地の端部は大きくえぐられた。
その時点でスクランブルがかかり、航空部隊は少女の迎撃を開始した。
だが何らかの力で通信網とレーダーがほぼ無効化され、混乱を極めるうちに次々と戦闘機は撃墜されていく。
幸いなことに、敵はコクピットは狙わないらしく、死者は出ていないようだが…。
「舐めやがって!」
戦闘機のバルカンが火を噴く。さすがに人間の反応速度では対処できまい。
そう信じるが、バルカンは不思議な力に弾かれ、少女には当たらない。
次の瞬間、敵が槍から放つビームによって戦闘機の片翼が吹き飛ぶ。
さらに、わずかに機能していたレーダーが絶望的な情報を伝える。
「ミサイル…俺達を狙って?」
レーダーがほぼ機能しない現状で、基地からの援護射撃は考えにくい。
すなわち敵増援…そう考え、パイロットはゾッとする。
しかもミサイルは方角は東側から、つまり感知させられぬまま包囲されていたことになる。
だが希望の声が聞こえた。
「生きるのを諦めないで!」
セレナ1は中国の研究施設で他のクローン達の手を借り、エクスドライブモードへと変身した。
中国軍からセレナ1に下された命令は、米軍沖縄基地の襲撃。
中国は既に国連に、セレナ1達がテロリストであると通達している。
逆に言えば、テロリストが何をしても、例えば米軍と戦闘しても、中国は痛くも痒くもない。
セレナ達の性能実験の一つ、対兵器戦実験のデータが採取できる上に、仮想敵国の戦力を低減させる絶好の状況でしかない。
最もテロリスト認定に関してはセレナ1には伝えられず、中国の施設でもう一つの実験が行われていることを彼女は知り得ない。
(早く帰って妹達と会いたいな…)
セレナ1はそんな思いを胸に、アガートラームの力を行使する。
ベクトル操作の力を最大限に生かし、通信網とレーダーを攪乱する。
敵の数が多すぎるため、全てを無効化することは叶わないが、敵を分断するには十分である。
同時に自身の周囲に特殊なベクトル空間を広域に形成し、敵からの攻撃をすべて捻じ曲げる。
そしてその手にはガングニールの槍がある。
今回の作戦に当たり、中国軍より支給された武器、驚くべきことにそれは既に起動状態であった。
完全聖遺物、なのだろうか?しかしそれは、ありえないはずだが?
「響ちゃん・クリスちゃんを乗せたミサイル、戦闘区域に到着しました!」
S.O.N.G.潜水艦の司令室にて、藤尭朔也が叫ぶ。
「続けて翼さん・調ちゃん・切歌ちゃんを乗せたミサイル、発射します!」
マリアは発射されていくミサイルをただ見守ることしかできない。
「セレナ1がくれたギアの解析はまだなの!?」
横浜でセレナ1、偽りの妹から受け取ったシンフォギアの聖遺物は判明していない。
皆神山でのように、立花響のギアをシェアする方法もあるが、マリアはセレナ1を信じたいと思い、出撃を見送る。
「解析の進行度はまだ40%です!」
友里あおいが焦りの滲んだ声で答える。
「お願い、間に合って…」
「「S2CA・ツインブレイク typeアロー!」」
沖縄米軍基地への襲撃者、セレナ1のエクスドライブに対処するために、すでに伐剣と絶唱は済ませてある。即座にコンビネーション技へと移行する。
S2CA・ツインブレイク typeアローとは即ち遠距離攻撃に特化したコンビネーション技である。響が二人の莫大なエネルギーを束ねて虹色に輝く矢を作り、クリスと共に弓を引く。
そして放つ。エネルギーの塊がベクトルの領域を物ともせず進んでいく。
だがセレナ1が槍から放つビームは弓を迎え撃ち、そして消滅させた。
消滅させてなお有り余る槍の力はさらに、基地に二つ目の穴を穿つのであった。
「強い!?」
「でも引けない!!」
セレナ1が迎撃に集中した瞬間、米軍通信網・レーダーの機能が回復した。
戦闘機が、基地が、響達を迎撃支援してくれている。
響は再び矢の形成にかかる。
「皆が来るまで、凌ぎ切る!!」
「「「S2CA・トライバースト typeブレード!」」」
幾ばくかの交錯の後、遂に時は来た。
天羽々斬を纏う翼は胸のガングニール・繋ぐ力を利用し、調・切歌の斬属性を一つに束ねる。そして虹色の剣が振り下ろされる。
ベクトルの領域を切り裂く剣は槍によって阻止されるが、そこに虹色の矢が駆ける。セレナ1に直撃し、セレナ1は後方へと弾き飛ばされる。
「やったか?」
期待を込めて翼は飛ばされた先を見やるが、そこから強力なビームが放たれる。
「先輩!!」
クリスがリフレクターを展開し、ビームを弾こうとするが、その威力にリフレクターが爆散する。
今度は結果的に響達全員が米軍沖縄基地まで吹き飛ばされてしまった。
「あの槍の力、まるで完全聖遺物…」
地面に蹲りながら、響は口にする。威力比べでは歯が立たない。
追撃の如く、更なるビームが放たれる。
「そんな…」「やばいDeathよ!」
だがそのビームはいずこからか放たれた竜巻に軌道を逸らされる。
「間一髪、だな」
「あんた達、ぼさっとしてるんじゃないよ!!」
「奏…伴…、よかった生きていた…」
翼が見上げた空には、エクスドライブ・ガングニールを纏う、二人の少女が佇んでいた。