BLEACHの世界でkou・kin・dou・ziィィンと叫びたい   作:白白明け

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夜一さんと和解後の可愛い砕蜂隊長も好きですが、個人的には登場初期のとげとげした砕蜂隊長の方が好きだったりしますね(; ・`д・´)


隠密機動との出会い方

 

『隠密機動』。瀞霊廷にありながら『護廷十三隊』とは一線を画すその組織は同胞の処刑から敵地へのスパイ活動、情報伝達までをこなす「裏」の部隊。

本来は『護廷十三隊』とは別組織であるが、『隠密機動』の最高位である『隠密機動第一分隊・刑軍』の統括軍団長が『護廷十三隊』の隊長職を兼任するとその隊との結びつきが非常に強くなる。

そして、約百年前、浦原喜助の謀反に四楓院夜一が続くまでの間、四楓院夜一が二番隊の隊長職と統括軍団長を兼任していた為、『隠密機動』は『護廷十三隊』二番隊の直属組織として扱われていた。

そしてそれは今も変わらず続いている風習である。

 

護廷十三隊二番隊隊舎の詰め所に向かいながら、俺は長次郎からもらった資料を読み返していた。資料に載っているのは瀞霊廷に在りながら護廷十三隊とは役割を別にする組織の一覧と詳細。

『隠密機動』『技術開発局』『鬼道衆』『真央霊術院』『王属特務』。

並ぶ文字の殆どに見覚えはある。資料に載る組織の殆どを俺は知っている。当然だろう。伊達に最古参を名乗ってはいない。だというのにこうも丁寧に纏められた資料を渡されては、俺がこの程度の知識もない馬鹿だと言われているような気分にすらなる。

いや、この資料を作ってくれた長次郎にはそんな気がないのはわかっている。長次郎は生真面目を絵に描いた様な男だ。今も昔もその顔に浮かぶ眉間の皺は変わらない。

長次郎のことだ。おそらく山本元柳斎重國に護廷十三隊(このユメ)以外の組織に対して興味の薄い俺にこうした資料を渡すように命じられて生真面目に分かり易いように纏めたのだろう。それ以外の感情など、この資料には宿っていない。雀部長次郎とはそういう男だ。

 

「まあ、分かり易いに越したことは無い。それに『隠密機動』やら『王属特務』やら千年前から有る組織はともかく『技術開発局』とかいう最近できたばかりの部署は正直、何をやってるか知らなかった」

 

義骸研究(ぎがいけんきゅう)魂魄研究(こんぱくけんきゅう)通信技術研究(つうしんぎじゅつけんきゅう)霊波計測研究(れいはけいそくけんきゅう)

並ぶ文字を眼で追いながら面白そうなことをしていると俺は笑う。

そんな俺の反応に興味を持ったのだろう。俺が手に持つ資料に爛々とした視線を向けてくる相手に俺は㊙と書かれた資料(それ)を手渡した。

 

「よろしいのですか?」

 

資料を受け取った朽木ルキアは極秘資料なのに本当に自分如きが見ていいのかと疑問形で聞きながら、眼は既に資料にくぎ付けだった。

 

「まあ、構わないだろう。長次郎が俺に渡したんだ。俺がどう扱おうが俺の勝手だろう。大体、本当に極秘の資料を長次郎が風に吹かれれば飛んで行ってしまうような紙に写す筈がない。表紙の㊙は堅物の長次郎なりの茶目っ気だろうよ」

 

「あの雀部副隊長に茶目っ気など有るのでしょうか?」

 

「あるさ。長次郎はああ見えて相当な数寄者(すきしゃ)だぞ。今度、あいつが行う茶会にでも連れていってやる。現世で知識を仕入れてきたらしい西洋の茶会を真似ているから、骨董品(アンティーク)とかいう茶器と、あと紅茶って言う色はほうじ茶によく似た不思議な香りの茶が出る。結構物珍しくて楽しいぞ」

 

「それはとても楽しそうですが、一介の隊士でしかない私がご一緒していいのでしょうか?」

 

「仕事じゃないんだ。肩書なんて要らんだろうよ。それに参加するのは俺と山本重國と卯ノ花と、あとその二人が偶に連れてくる京楽春水やら浮竹十四郎やら虎徹勇音くらいだ。全員、俺と卯ノ花の婚儀の際にあったことのある奴らだろう。気楽に来いよ」

 

「確かにあったことのある方々ばかりですが、気楽になどと無理に決まっています。それに雀部副隊長の淹れたお茶を山本総隊長の前で飲むなどと…絶対に味などわかりません」

 

茶くらい気楽に飲めばいいだろうに、うーんと唸る朽木ルキアは難儀な性格をしているらしい。俺はそう悩むなと朽木ルキアの軽く頭を叩いて着いたぞと声を掛ける。

朽木ルキアは促されて足を止めた。

 

会話をしている内に目的の場所にたどり着いた。

護廷十三隊二番隊隊舎の詰め所にやってきた俺達に出迎えはない。長次郎を通じて二番隊の隊長には俺達がこの時間に来ることを伝わっている筈だが、はてどうしたのだろうかと首を傾げていると直ぐにドタドタと喧しい足音ともに巨漢の男がやってきた。

 

「風守殿。迎えの者は--」

 

「セッーフ!ふー。あぶねぇあぶねぇ。危うく約束の時間に遅れる所だったぜ。なんでもお偉いさんが来るらしいからな。遅れたら砕蜂(ソイフォン)隊長になんて言われるか………」

 

「---迎えの者は、えっと、いましたね」

 

「…おう。俺様は、ちゃんと前からいたぜ?」

 

「はい。…風守殿?」

 

約束の時間丁度にやってきた出迎えに対してどうしましょうかと訪ねて来る朽木ルキア。確かに、出迎えであるなら前もって待っているのが常識だろう。しかしまあ、朽木ルキアの言葉を聞くに彼女としては時間はギリギリではあるが走ってやってきた巨漢の男の努力を無下にしたくはならしい。

朽木ルキアは優しいなと思いながら、別に気にしないと頷く。

 

「出迎えご苦労。じゃあ、案内してくれるか?」

 

「は、はい!こちらへどうぞ!」

 

許されたことにほっとしたらしい巨漢の男のドスドスと喧しい足取りに俺と朽木ルキアは続いて歩き二番隊隊舎へと入っていった。

 

 

 

 

 

前を歩く巨漢の男。大前田(おおまえだ)希千代(まれちよ)の案内の元、俺達がやってきたのは二番隊隊舎の中でも『隠密機動第三分隊・檻理隊(かんりたい)』の施設がある区画。

『隠密機動第三分隊・檻理隊(かんりたい)』の主な業務は瀞霊廷内で罪を犯したものを投獄・監督すること。所謂、看守や獄卒と呼ばれる種類の仕事が檻理隊の役割だ。

故にこうして俺達がやってきた場所には当然の様に牢屋に入れられ鎖でつながれた囚人の姿があった。

 

二番隊隊舎の地下に創られた簡素で小さいながらも堅固な牢屋。そこに繋がれた囚人。

眼の前の(これ)が俺が此処に呼ばれた理由。

そして、牢屋の前に立つ少女が俺を此処に呼んだ人物。

 

「遅かったな。風守」

 

護廷十三隊二番隊隊長 兼 隠密機動第一分隊刑軍統括軍団長。砕蜂(ソイフォン)

 

小柄な体躯で腕を組む様は微笑ましくも見えるが、それを言えば即座に殺しに来るだろうことを伺わせる殺気を含んだ目を持つ少女は忌々し気に口を歪めながら俺達を案内してくれた大前田(おおまえだ)希千代(まれちよ)を睨んだ。

 

「大方、貴様が油せんべいでも齧っていて待ち合わせの時刻に遅れたのだろう」

 

「な、なぜそれを……っていえいえ!違いますって砕蜂隊長!俺はセーフでした!セーフだったんです!なあ!朽木!」

 

「へ!?え、ええ、はい。セーフでした。ねえ、風守殿?」

 

「ん?ああ、そうだな。大前田はセーフだったぞ。待ち合わせに遅れてなんていない」

 

「貴様らは…ふん。まあ、いい。それより、風守。その連れ合いは誰だ?私が呼んだのは貴様だけの筈だが」

 

砕蜂の鋭い視線が朽木ルキアを射抜く。大の男でも怯えるだろう視線を受けた朽木ルキアは一瞬たじろぐが直ぐに姿勢を正し自己紹介を始めた。

 

「お初にお目にかかります、砕蜂隊長。私は十三番隊所属、朽木ルキアと申します」

 

「朽木…なるほど、お前があの朽木白哉の義妹か。…風守、なぜ貴様がこいつを連れている。三番隊なら兎も角、十三番隊など貴様には何の関わりもないだろう」

 

「この間、偶然会ってな。見所がありそうだから色々な経験をさせてやろうと連れて歩いてるんだ。安心しろ、こいつは今日は非番だし此処に連れてくることも長次郎に言ってある」

 

「…ならばいいが、貴様は朽木家(きぞく)を敵に回す気か?」

 

正一位(しょういちい)の位を持つ四大貴族の一つ。朽木家。それを敵に回すのかと問う砕蜂の言葉に俺は首を傾げる。

 

「別に朽木家を敵に回す気は俺には無い。俺は別に朽木ルキアに対して害になることは何一つしていないのだから、因縁を付けられる(いわ)れは無い。それに、例え敵にまわったとしても---」

 

なんだというのだと、そう続けようとした言葉を遮ったのは朽木ルキアだった。

 

「その件に関しては、私の方から兄様に伝えてあります。…最近、良くしてくださる方がいますと」

 

「ほう。で、あの朽木白哉(おとこ)はなんと言っていた?」

 

「………ただ「そうか」と」

 

「………ふん。相変わらずだな」

 

朽木ルキアの少しだけ俯いた顔を見て砕蜂はこの話はもう終わりだと顔を反らす。

 

「まあいい。私は風守を世間話をする為に呼んだ訳じゃない。朽木ルキア、貴様が此処に居るのは構わないが、此処で見ること聞くこと全ては他言無用だ。わかっているな」

 

「は、はい」

 

瀞霊廷の裏の仕事を一手に担う隠密機動。その中枢である二番隊隊舎の地下という場所で行われることが表に出せない類のもの出ることが理解できない朽木ルキアじゃない。

朽木ルキアは砕蜂の言葉に固唾を飲み込み緊張の面持ちを露にしていた。

 

そんな朽木ルキアの様子を見て俺はまだまだ青いなと笑みを零しながら朽木ルキアから視線を外す。

そして、牢の中で鎖に繋がれた囚人に目線を向けた。

 

「で、砕蜂。こいつは何をやったんだ?」

 

「同僚殺しだ。この男は護廷十三隊に属しながらつまらない(いさか)いで同僚を殺し、それを(どが)めた者すら殺した」

 

「それは、救いようのない屑だな。何故生かしているんだ?」

 

自分の口から出た言葉の冷たさを自覚する。熱の欠片も籠らない声色に俺の隣に立っていた朽木ルキアが思わず俺から半歩の距離を取った。

それは仕方がいないことだろう。今の俺はあまりにも冷えた殺気を放っていた。

 

---護廷十三隊(このユメ)を汚す者は許せない。

---たとえそれが、護廷十三隊隊士(ユメそのもの)であったとしても。

 

「『この男は優秀な死神だ。同僚を殺したのは何か深い理由があったのだ』。そう主張する馬鹿が現れてな。この男の肉親だが、厄介なことに四十六室に顔の利く人物だったらしい。故に仕方なく我ら隠密機動がこの男の背後関係の調査を命じられた。結果は、言うまでもないな」

 

屑は屑でしかなかったと吐き捨てながら、砕蜂は忌々しいと口元を歪めた。

 

「結果は黒。だというのに、馬鹿な主張は止まらずじまいだ。普段なら真相など、この男の身体に直接聞くのだが、馬鹿の所為でそれも出来ない。だから貴様を呼んだのだ。風守。貴様なら、この男の本音を聞きだせるだろう」

 

「なるほど、わかった。協力しよう。そうすることで護廷十三隊(このユメ)を汚した者を斬れるのなら、是非もない」

 

俺は斬魄刀を引き抜き、牢の中へと入っていく。

鎖に繋がれ目隠しをされた男の猿轡(さるぐつわ)を外せば聞こえてくるのは聞くに堪えない罵詈雑言。その雑音を無視しながら俺は斬魄刀の切っ先を男の鼻頭に向けた。

 

「はじまるか。朽木、これで口元を覆え。風守の斬魄刀『鴻鈞道人』の効果は聞いているだろう」

 

「は、はい。目にするのは初めてですが、以前、お話だけは聞いております」

 

「なら話は早いな。『鴻鈞道人』の出す煙の濃度を少しだが下げる効果のある特殊繊維で編まれた布だ。風守も私たちには害の無い様に濃度の調整はするだろうが、万が一があるからな」

 

「あれ?砕蜂隊長。俺の分の口布はどこにあるんです?」

 

「大前田、お前の分は無い。お前は万が一で死んでも構わないからな。良い機会だ。むしろ死ね」

 

「そんなぁ!?」

 

背後の砕蜂達の準備も終わったようなので、俺は『鴻鈞道人』を解放した。

 

「痴れた音色を聞かせてくれ『鴻鈞道人(こうきんどうじん)』」

 

『鴻鈞道人』の解放と共に切っ先に空く四連の小さな穴。そこから漏れ出す桃色の煙が囚人の男の鼻腔から入り脳を痴れさせる。極楽の夢に淀みながらこぼれ出る男の痴れた音色(ほんね)

それは隠密機動の調査通り。弁護の余地など微塵もない屑としか言えないものだった。

 

 

 

 

 

 

二番隊隊舎の地下牢で男の処断を終えた後、俺は日が落ちてきたので朽木ルキアを家の近くまで送り、そのままその足で二番隊隊舎へと戻ってきた。

向かう先は地下牢ではなく隊長室。昼間と違い案内人はいない。別にこそこそとしている訳でもないのに隊長室に付くまでの間に誰ともすれ違わなかったのは砕蜂が人払いをしてくれているからだろう。

隊長室の扉を開けばそこには砕蜂が椅子に腰かけることもせず直立不動で腕を組み立っていた。

俺はそんな砕蜂にため息をつきながら声を掛ける。

 

「別に密会という訳でもないのに、毎度毎度の人払いは何なんだ?そんなに俺と会っているのを他人に知られたくないのか?」

 

「ふん。別に貴様との関係をどう思われようと私には微塵の興味もない。私が人払いをしているのは隊士たちを思ってのことだ。貴様は誰だろうと関係なく阿片を振りまくだろう。馬鹿な大前田辺りは直ぐにでも中毒になりかねん。厄介なことに奴の実家は金持ちだ。嵌れば貴様以外からも手に入れようとするだろう」

 

「…意外と部下思いなんだな。砕蜂()()

 

「そうではない。馴れ合う隊風を私は好かない。ただ使い物にならなくなるのは困ると言うだけの話だ。それより、本題だ。何時までも人払いをしていては本気で馬鹿な考えを勘ぐられかねない。----四楓院夜一と浦原喜助の足取りは掴めたか?」

 

百年前の裏切者。

砕蜂の口から出る浦原喜助と四楓院夜一の名前には呪詛が込められていた。

現二番隊隊長にして現隠密機動最高司令官である砕蜂と前二番隊隊長にして前隠密機動最高司令官の四楓院夜一の間には浅からぬ因縁があるらしい。

それは俺が三番隊隊長を辞める前、最近知ったことだ。

俺の記憶には無かったが、百年前には砕蜂は四楓院夜一の下で部下として働いていたらしい。

 

代々処刑や暗殺を生業としてきたという砕蜂の生家である下級貴族『蜂家』は一族皆が文字通り生涯を掛けて『刑軍』につかえてきた一族だそうだ。

『刑軍』とは全五分隊ある隠密機動の最高位。その統括軍団長こそが”天賜兵装番(てんしへいそうばん)”四大貴族が一つ。

四楓院家の二十二代目当主、四楓院夜一だった。

 

俺が三番隊の隊長として働いていた頃、二番隊隊長に就任した砕蜂は百年前の浦原喜助らの裏切りの場に居合わせた俺に声を掛けてきた。

 

---自分はかつて四楓院夜一に生涯を掛けて忠義を尽くすと誓った者だと。

---そして、その忠義の悉くを裏切られたのだと。

 

呪詛すら含んだ声色でかつての主の名を呼ぶ砕蜂の思いを山本元柳斎重國に対して苛烈なまでの忠義を向ける雀部長次郎という男を長年見ていた俺が解らない筈もなく、だからこそ、何の言葉も返せなかった。

そして、そんな俺の反応はおそらく砕蜂にとって正解だったのだろう。以来、砕蜂との付き合いは続いている。

人見知りで口下手で引っ込み思案な俺の数少ない友人の一人。ただ砕蜂は馴れあいを好まないらしく、その付き合いは酷くドライだ。しかし、俺としてはそのことに関して何の不満もない。

砕蜂がそれが良いというのなら、そうするのが正解だろう。故に俺も砕蜂とは仕事以外での会うことあまりなく偶に飲みに行くくらいで卯ノ花との婚儀にも招待はしなかった。

 

そして、だからこそ今回もするのは仕事の話。

百年前の裏切者。浦原喜助らのその後の動向の調査についての報告会。

 

「…悪いが、新しい情報は無い。浦原喜助達は現世に逃げた。浦原喜助の部下だった十番二隊の隊士や四楓院夜一と付き合いのあった流魂街の奴らなんかに聞き込みもしたが、逃亡先は一切不明。隠密機動の元最高司令官と『技術開発局』なんて言う部署を立ち上げた天才。それに鬼道に精通した大鬼道長の一行だ。一切の痕跡を消して身を隠されたら、幾ら俺や長次郎でも足取りを追うのは難しい。………情けないが、百年前と結果は変わってない」

 

「そうか。いや、わかってはいたことだ。私も隠密機動を使い現世での足取りを追ってはいるが、何の痕跡も発見できていない。くそっ。………総隊長殿は何か言っておられぬのか?このまま何もせぬのでは何の進展もない」

 

「それに関しては心配するな。山本重國はちゃんと考えている。…俺が三番隊の隊長の座をギンに譲ったのは、ようやく準備が整ったからだ」

 

「準備だと?」

 

「ああ、百年前に欠けた護廷十三隊の隊長、副隊長格の席がようやく埋まった。それで『特別派遣遠外圏討伐部隊』、特派遠征部隊の再建の目途が立った」

 

「特派遠征部隊。百年前に貴様が率いていた遠征専門の部隊か」

 

「そうだ。俺が隊長として再び特派遠征部隊を再建する。その後、山本重國の承認を得て浦原喜助らの足取りを追う為に現世に()つ」

 

捜査の進展は約束すると伝えれば、砕蜂は小さく頷き鋭い視線を向けてくる。

 

「わかった。ならば、風守。わかってるな?もし現世で四楓院夜一を見つけたのなら、必ず私に連絡しろ。必ずだ」

 

「わかっているから、そう睨むな。人見知りで口下手で引っ込み思案な俺はそんなに見られると緊張で固まってしまう。四楓院夜一を見つけたら必ずお前に報告する。約束するさ。疑うなよ。俺とお前の仲だろう?」

 

「ふん。風守はいまいち信用できない。総隊長殿の盟友だというのに、お前にはあの御方の様な威厳や風格が欠片もない。軽い口で信用しろなどと、笑わせるな」

 

厳しい言葉で俺の心を突き刺しながら、だが、まあ、いいだろうと続ける砕蜂を見ながら俺は何とも言えない暖かい気分になる。元々砕蜂は親子以上に年の離れた相手だ。必要以上に攻撃的な言動を繰り返す様子が背伸びをする子供の様で微笑ましいと思ってしまう。口にすれば比喩ではなく刺されるだろうから、決して口には出さないが。

 

「じゃあ、これで話は終わりだな。どうだ砕蜂。久しぶりに呑みに行かないか?」

 

「ふん。幾ら酒を飲んでも酔わない貴様との呑みなど欠片も楽しくない」

 

そう言いながらも準備をするから部屋から出ていけと言う砕蜂に促されるまま俺は隊長室から出ていった。

隊長室から出た廊下の窓から見える満月を見ながら、今日は美味い酒が飲めそうだと俺は笑った。

 

 





尽敵螫殺『雀蜂』‼(; ・`д・´)
「弐撃決殺」。この手の能力の常として後半になるにつれて対処法が出てくるのはわかっていたけれど、藍染隊長に問答無用で「効かぬ‼」をされた時は少し悲しかったです
(´・ω・`)



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