BLEACHの世界でkou・kin・dou・ziィィンと叫びたい   作:白白明け

15 / 55


7月4日にブリーチの最新刊が出たので、発売日に買って読みました(; ・`д・´)
秋が待ち遠しくなりました(´・ω・`)

破面と共闘する浦原さんの展開は熱いと思います。
冬獅郎くんが冬獅郎さんになったのは、流石にびっくり。
そして、白哉さんの冬獅郎さんへの態度が………ユウジョウ!
あと、更木剣八に何があったは…次巻に期待!

秋が待ち遠しい(´・ω・`)





百年ぶりの出会い方①

 

 

 

現世。空座町。浦原商店。

店先に雑多に並べられた商品と店の前を通りかかれば香る独特の香りは、一見すればどこの町にも一軒はある古い駄菓子屋そのもの。現にこの浦原商店は表向き駄菓子屋として営業をしているのだから、駄菓子屋という名前に偽りがある訳ではなく、ただ表があれば当然裏があるということを巧妙に隠しているだけに過ぎない。

 

浦原商店店長、浦原喜助はその日の夜、何時もの様に店の中の茶の間にある卓袱台の前で煙管(キセル)を吹かしていた。それ自体は特別に珍しい光景ではなく、浦原喜助にとって仕事終わりの一服は日常の習慣だった。

しかし、浦原商店の従業員達はその光景をみて浦原喜助から流れる気配が何時もと違うのを感じていた。

 

浦原商店の従業員。花刈(はなかり)ジン太は浦原喜助がいつも浮かべている陽気な笑みが無いことに違和感を覚え、そして、それを言うならば他の者たちもそうだと横目で浦原喜助以外の大人の様子を伺っていた。

 

普段から店の仕事をサボる自分のお目付け役として堂々としている握菱鉄裁は2mにもなる体躯に鬼気迫る気配を纏いながら汗を掻いていた。

普段とは違う雰囲気の二人。

そして、その傍らにはどこから迷い込んできたのか一匹の黒猫が鎮座していた。

普段なら店の営業の邪魔になるだろうと追い出す所だが、浦原喜助も握菱鉄裁もそんな素振りを見せることは無く、ならば自分がと動こうにも花刈ジン太の身体は完全に重苦しい空気に飲まれてしまっていて動かない。

それは歳が近い同じ店員である紬屋(つむぎや)(ウルル)も同じようで完全に花刈ジン太の横で固まってしまっていた。

 

長い沈黙を破ったのはやはり浦原商店店主である浦原喜助だった。

彼は目深く被った帽子に隠れた視線を合わせることなく握菱鉄裁に言った。

 

「鉄裁サン。今から、この子たちを連れて街のホテルにでも行って来てください。此処にはアタシらが残ります」

 

「しかし、我々が隠れたからといって追って来ないという保証はありませんぞ」

 

「追ってはきませんよ。何せ相手は昼間に店にやってきて店の前で霊圧を解放してから帰る様な人っス。正面からの明確な宣戦布告。周りを巻き込みたくないってのはアタシらと同じって事でしょう。鉄斎さんやジン太君達が此処を離れても、アタシらが此処に居れば深追いはしてこない筈です」

 

「………わかりました。ジン太達には此処を離れてもらいましょう。しかし、私は残った方がいいのでは?昼間に感じた霊圧。敵はおそらく…」

 

「だからッスよ。だから、鉄裁サンにはジン太君達と一緒に居て欲しいんス」

 

昼間に感じた霊圧から握菱鉄裁が思い描いた敵。それは正解だろうと浦原喜助は確信している。

浦原喜助とて尸魂界を離れ現世に逃れてからの百年近くの間、自分たちを捕える為にやって来るだろう追手の存在を考えない訳じゃなかった。むしろ、誰が来るかを深く考え対策を練ってきた。誰が来ようと隠れ切り逃げ切れるだけの算段を立ててきたつもりだ。

そう、ただ一人。最も厄介で最も自分達を追ってくる可能性の高い者以外については、浦原喜助は数多の算段を立てていた。

 

「一番、やってくる可能性が高く、来てほしくない人が来た。まあ、当然と言えば当然の結果ッスね。瀞霊廷での遠征実績においてあの人の右に出る者はいませんから」

 

天才と称して良い頭脳を持ち、あらゆる事態に数多の手管を持って対処することのできる浦原喜助だが、あの男が追手としてやって来ることに関しては、まさしく浦原喜助らしくなく、神頼みをしていた。やって来て欲しくないと願っていた。

しかし、かの男はやってきた。

一切の容赦もなく瀞霊廷は、護廷十三隊は、あの男を浦原喜助らの拘束の追手として放ってきた。

 

「大穴は無く一番人気ッス。………風守風穴が来きています」

 

「ならばやはり、私もここに残り戦力として--」

 

「--ーだからこそ、鉄裁サンにはジン太君達と一緒に居てもらわなきゃならない。最悪、この空座町が桃源郷の煙に沈む。その時に動ける人が必要でしょう」

 

「---………仮にも隊長格の死神が、現世の町で本気の戦闘を行うと?」

 

「わからない。いえね、冗談抜きでわからないんスよ。果たしてあの人がどこまで動くのか、まるで読めない。瀞霊廷に居た頃にあの人と僕の関わりは薄かった。あの事件があるまで、多分あの人は僕の名前も覚えて無かったと思いますよ。それに、たとえ付き合いがあったとしても千年以上の時を護廷十三隊で過ごしてきたあの人の考えを読もうなんて、それこそ、煙を掴むような話でしょう」

 

あの風守風穴なら、やるかもしれない。

あの風守風穴が、そんなことをする訳がない。

 

どちらであっても納得できてしまうのだと笑い終えると、浦原喜助は握菱鉄裁に頭を下げた。

 

「よろしくお願いします。鉄斎サン」

 

「わかりました。浦原殿も、どうかお気を付けて」

 

今宵やってくる敵に対しての浦原商店の対応が決まった。

その光景を花刈ジン太と紬屋雨はただ見ていることしか出来ずにいた。

外見こそまだ小学生低学年ほどの子供だが、二人の精神は大人たちの決定に口を出せないほど子供ではなかった。

しかし、昼間に感じた霊圧を前に戦うにはまだ二人とも未熟過ぎた。

 

 

 

 

浦原商店の地下に存在する広大な空洞。こういう時の為にと作り上げ、『勉強部屋』と名付けた地下空間に浦原喜助と四楓院夜一は佇んでいた。

隣に居ながら、互いに一瞥もないその様子は決して仲が悪いからではなく、こうして此処に陣を構える前に全てを語りつくしたからの自信であり、また隣に立つ者への信頼の表れだった。

 

刃は既に抜いている。

浦原喜助の手にあるのは諸刃の斬魄刀。四楓院夜一は斬魄刀こそは持っていないが四肢に練り上げた霊圧の鎧が無手こそが彼女の戦い方で有ることを如実に表している。

全霊だった。ともすれば破裂しそうな戦意を纏いながら立つ二人の姿は言うまでもなく平和な現世の町に馴染むものではなく、しかし、それが正解だった。

 

「百八年と三カ月」

 

そんな言葉と共に『勉強部屋』の天井が崩落する。『勉強部屋』は浦原商店の地下空間に作られた場所。天井が崩落したということは浦原商店の床が砕け『勉強部屋』への入り口が開かれたという事。

 

「此処に来るのに百八年と三カ月掛かった。苦痛じゃなかったぞ。ああ、あっと言う間の道程だった」

 

天井から落ちてきた白髪痩身の男を見ながら浦原喜助と四楓院夜一は息をのんだ。

 

「見つけたぞ。浦原喜助。四楓院夜一。さあ、出来ることなら手間は取らせるな。俺はお前達と戦いたくない。ああ、本当だとも。昔の仲間と流す血に、いったい誰が酔えるというのか…俺は『風守』。『八千流』じゃあ、ないんだ」

 

そこに風守風穴が居た。

 

 

 

 

「見つけたぞ。浦原喜助。四楓院夜一。さあ、出来ることなら手間は取らせるな。俺はお前達と戦いたくない。ああ、本当だとも。昔の仲間と流す血に、いったい誰が酔えるというのか…俺は『風守』。『八千流』じゃあ、ないんだ」

 

顔を合わせるのは百年ぶりとなる浦原喜助と四楓院夜一。ようやく見つけ出した二人は酷く緊張した面持ちで立っていた。

二人の視線で俺まで緊張してきてしまうと精一杯の冗談(ジョーク)を軽快に飛ばしてみたが、二人からの反応は無い。

人見知りで口下手で引っ込み思案な自分のコミュニケーション能力の低さに関しては自覚をしてはいたが、流石に此処まで空気が凍るとは思ってもみなかったので若干落ち込んだ。

しかし、何時までも黙っている訳にはいかないと俺は浦原喜助と四楓院夜一に対してどっちつかずになっていた視線を浦原喜助に絞り口を開いた。

 

「浦原喜助。百年ぶりだ。あの日から、百年以上の時が過ぎた。俺はお前に会いたかったぞ。会いたいと思い時だけが過ぎた。そしてようやく、こうして会えた。なあ、()()()()()()?」

 

小粋な冗談(ジョーク)が無駄ならば、もう俺は気持ちを抑える必要はないだろう。

問いかけは是か否。「はい」か「いいえ」の単純な二者択一で構わない。

 

指先一つで出来る選択に命を賭けられるかと問われた時に、出来ると答えることの出来る者しか、この場には居ないだろう。その筈だ。

元二番隊隊長。元三番隊隊長。元十二番隊隊長。

浦原喜助。四楓院夜一。そして、俺。

誰もがかつて護廷十三隊の隊長を務めた者たち。数多の死神を束ねその命を預かった者たち。

自分の命位くらい、賭ける場所は指先一つで決められて(しか)るべき。

 

そして、浦原喜助は俺の問いに切っ先を向けることで答えた。

---俺は斬魄刀を抜く。

 

「風守サン。言葉がいるかですって?そりゃ、要りますよ。ワタシら、貴方に伝えなきゃいけないことがあるんス。ねぇ、夜一サン」

 

「なんじゃ。儂に話を振るな。儂はこの男が好かんから、話し合いはお主に任せると言ったじゃろうが。喜助」

 

「あっはっはっ。つれないっスねぇ。まあ、けどそういう訳っス。…お互いに思う所があり過ぎてこのままじゃ言葉なんて伝わりません。だから---手始めにワタシら、風守サンをやっつけます。行きますよ。夜一サン」

 

(おう)

 

向かってくる浦原喜助と四楓院夜一を前に俺は小さく笑みを浮かべた、

それは分かり易い単純な帰結が俺にとっても都合がいいものだったから。

そしてなにより、俺は純粋に嬉しいと思っていた。得も言えぬ歓喜が全身を巡っていた。

 

「………いつ以来だ」

 

四楓院夜一が迫りくる。浦原喜助を後ろに従える形での突出した突撃は凡人が行えば、ただ数の有利を捨てるだけの愚考だろう。しかし、向かってくるのがかつて尸魂界中にその名を轟かせた歩法の天才であるならば、脅威に変わる。

身体の中心点。正中を捕える神速の正拳突きに対する俺の攻撃は斬魄刀を上段に挙げての袈裟切り。打撃の王道と斬撃の王道のぶつかり合いは、しかし、ぶつかり合う寸前に四楓院夜一の身体が俺の眼の前から消失したことにより、ぶつかることなく終わる。

次いで感じる四楓院夜一の気配は背後から。正拳突きの勢いを殺すことなく俺の背後に回り込んだ四楓院夜一の歩法はまさしく神の領域に一歩踏み込んでいると言っていい神技だった。

 

瞬神(しゅんしん)』夜一。

そして、その神技の結果、起こるのは俺への挟撃(きょうげき)

 

前には斬魄刀を携え向かってくる浦原喜助。後には拳を振りかぶる四楓院夜一。

数の有利を最も生かす形である挟み撃ちが四楓院夜一の歩法によってこれほど容易く完成する。

 

その事実に俺の心が震えた。

 

---いつ以来だ。これほどまでの技を見るのは。

 

前と後ろからの攻撃。斬撃と打撃に斬撃と打撃で応じ、歩法に歩法で応じれば、両方に対処するのは至難だろう。

ならば、俺が取れる最善手は一つ。斬拳走鬼の残りの一つで応じるのみ。

 

「破道の三十三”黄火せ--」

 

「遅い!縛道の九”(げき)”!」

 

俺の身体から周囲に放れようとした黄色の霊圧の奔流を浦原喜助は縛道によって俺の身体を縛ることにより押し止める。驚愕すべきはその機転と反応速度ではなく、一桁台の縛道によって俺の身体を一瞬とはいえ縛りつけた鬼道の威力。

 

思わず零れた感嘆は仕方がないものだった。

 

---いつ以来だ。これほどの力を見るのは。

 

挟撃に対する為の破道”黄火閃(おうかせん)”が不発に終わり、縛道”撃”により硬直するしかない俺の身体。

そこに叩き込まれる攻撃に微塵の躊躇など有る筈もなく、浦原喜助と四楓院夜一は互いに最高の一撃を文字通り叩き込んでくる。

 

---いつ以来だ。恐怖を感じたのは。

 

「終わりじゃ---」

 

「終わりッス---」

 

---いつ以来だ。

 

「『瞬閧(しゅんこう)』!」

 

「起きろ『紅姫(べにひめ)』!」

 

 

「-------お前達の様な死神に会ったのは‼‼」

 

 

叫びと共に俺の身体は爆炎に包まれた。

 

 

 







▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。