BLEACHの世界でkou・kin・dou・ziィィンと叫びたい 作:白白明け
やっと原作に辿り着くぞ!(; ・`д・´)
畳の上で茶を飲む。
言葉にすればこれほど想像しやすい情景はそう無いだろう。
ある日の正午、俺は四畳半の畳が敷かれた部屋の中心に卓袱台を引っ張り出し、ほうじ茶を淹れ、啜っていた。
たった四畳半の空間。驚くなかれ、これが今の俺が所有する居住スペースである。
かつては護廷十三隊の隊長格として広大な隊舎を所有し、揚々と瀞霊廷を
部屋は一間、四畳半のスペースしかない部屋を借りる金すら同居人と折半。所有する物は少なく部屋にあるのはテレビと箪笥と小さい本棚のみ。そして、この部屋唯一の家電であるテレビは俺ではなく同居人が買ってきたもの。
俺の私物と言えば小さい本棚に入っている二冊の本とアルバム一冊のみ。
あまりに質素な生活に俺はかつての栄華を思い出しながら、すぅと息を吐いて心の内を
「ああ、桃源郷は此処にあったのか」
俺は今、心底幸せだった
元々俺は人見知りで口下手で引っ込み思案な性格。人付き合いは嫌いな部類。気心の知れた相手と対する分には気安いが、何かと知らない相手と関わらなきゃならない瀞霊廷内での仕事と比べれば今の生活は特派遠征部隊の遠征中の生活と変わらないほどには過ごしやすい。
一日がただ茫然と過ぎていく。
雲の動きをほうじ茶を啜りながら見て過ごす日々のなんて安楽なことか。
「良い良い。外で飲むほうじ茶も美味いが、家で飲む分にはやはり気楽さが勝る」
俺は安寧と続く時間を噛みしめ、ほうじ茶を啜りながら、唐突に飛んでくる背後からの拳を首を横に動かして躱す。
「ちっ」
「砕蜂。帰ったのか?」
「ふんっ」
「なんだ、随分と気が立っているな。落ち着けよ。お前もほうじ茶を飲むか?美味いぞ。さあ座れ。俺が用立ててやろう」
「いらん」
そう言いながらも部屋の隅から座布団を引っ張り出し卓袱台の前に座った砕蜂に湯呑を用意し、ほうじ茶を注いでやる。ほうじ茶の独特の香りが立つ。そして立ち上る湯気を眺めながら、俺は苛々し気に顔を顰める砕蜂に問いかける。
「それで、どうした?」
「…」
「…ふむ」
俺の問いかけに反応せずに無言でほうじ茶を啜る砕蜂。
俺は思案顔で首を傾げ、砕蜂が気を害する理由第一位である男の名前を出した。
「また浦原にやり込められたか?」
「黙れ。殺すぞ」
予想は正解だった様で砕蜂は刺す様な視線を俺に向けてくる。
俺は気にせずに言葉を続けた。
「よせよ。前にも言っただろう。あれは神算鬼謀の化物だ。頭や口で勝てる相手じゃない」
「はっ。化物などと、どの口がほざく。貴様とて化物だろうが」
「お前が言う所の化物である俺が言うんだ。浦原の化物具合がより解るだろう。俺は浦原が未来を見通す眼を持っていると言われても信じるだろうよ。それぐらいに、浦原の先見性は異常だ」
「………だから貴様はこのままで居ろと?奴に言われるがまま、着せられた汚名を
砕蜂の握る湯呑に亀裂が入った。砕蜂の苛立ちも俺は理解出来る。
俺と砕蜂が現世で禁則事項及び禁忌事象行使を行ったという濡れ衣を着せられ尸魂界から追放されて、もう一年以上の時が過ぎていた。
---さようならや、風守隊長---
俺が浦原喜助達の居場所を突き止めた日。
そう言って去っていた市丸ギン。
その背を追えぬまま俺は傷を負って倒れた。
砕蜂もまた四楓院夜一との戦闘で疲弊し倒れたらしい。
そして、眼を覚ますと俺達は尸魂界から追放されていた。
身に覚えのない罪はおそらく百十年前に浦原喜助達に罪を被せ追放した黒幕が似たような手を使ってでっち上げたのだろう。そして、その裏工作の精度は百十年前に騙された側である俺がよく知っている。
おそらく中央四十六室も巻き込んでいるだろうその裏工作に対する術を俺は持たない。
もし仮に裏工作が行われている最中に瀞霊廷にいられたのなら、対処は出来ただろうが、俺達が目覚めた頃には全ての裏工作は終了し、俺と砕蜂の追放は中央四十六室によって決定事項となっていた。
今から俺達が瀞霊廷に出向いた所で中央四十六室の裁定が覆ることは無いだろう。
それが尸魂界の法だ。
「ふざけるな」
そう言う俺に砕蜂は声を荒げて反論する。握り絞めた湯呑は今にも割れてしまいそうだった。
「我らに罪を着せ追放したのは市丸達一派だ。奴らは護廷十三隊を裏切り、危機に陥れようとしているのだぞ!奴らが何をしようとしているかは知らん。だが、数多くの隊士が犠牲になるのは確かだ。我らには護廷十三隊隊長としてそれを知らせる義務がある!たとえ、追放された身であろうと瀞霊廷に向かわねばならない!あの男なら、その手段を持っている筈なのだ。だと言うのに、あの男は…」
憎々し気に砕蜂は浦原喜助の名を語る。
尸魂界を追放された俺達は現世に連れて来ていた地獄蝶を失い、同時に正攻法で尸魂界に向かう術を失った。
俺達には浦原喜助の助けを借りない限り尸魂界に向かう方法がない。
故に砕蜂は何度も浦原喜助に協力を打診した。
しかし、浦原喜助はたとえ脅されようとも首を縦には振らなかった。
「浦原の言う通り瀞霊廷において中央四十六室の裁定は絶対だ。向かった所で無駄だと言う浦原の言葉にも一理ある」
「確かに護廷十三隊に敵として捕らえられる可能性はある。しかし、総隊長殿に御目通りさえ叶えば全てを報告することが出来るではないか!総隊長殿の眼は節穴ではない。真実を見抜けぬ筈がない。第一に、貴様は総隊長殿と共に護廷十三隊を作り上げた盟友だろう!貴様の言葉ならば必ずや総隊長殿に届くのではないのか!」
他でもない俺ならば山本元柳斎重國を動かせると砕蜂は言う。確かに砕蜂の言う通り山本元柳斎重國の眼は節穴ではない。嘘を嘘と見抜けぬほど
そして、山本元柳斎重國が動けば中央四十六室の裁定も覆るかもしれない。
しかし、それでも俺は首を横に振った。
「百年前、俺は浦原達が裏切ったとの報告を卯ノ花から聞いて信じた。それは状況証拠。物的証拠。第三者の証人の証言。全てが揃っていたからだ。そして、おそらくそれは今回の件に関しても同じこと。なら、きっと山本重國は俺を斬るだろう。否、斬らねばならない」
「どういう意味だ?」
「”
迷いを斬り。情を斬り。友を斬って尚、組織の為に動ける男。
最近は少し丸くなってはいるが、かつては部下や仲間の命にすら灰の重さ程も感じない男だった。その本質を山本重國は失ってなどいない。
だから、きっと俺が何を言った所で全ての証拠が俺達を黒だと言っている現状では俺の言葉は山本元柳斎重國には届かないだろう。
故に今の状況で尸魂界に帰った所で無駄だと言う浦原喜助の言葉にも一理あると続けた俺に、砕蜂は湯呑に込めていた力を緩め俯いた。
「…ならば、このまま何もせずに居ろと言うのか」
「そうは言ってないだろう。俺もこのまま終わる気は毛頭ない。浦原は機を待てと言っていた。何か考えが有る筈だ。砕蜂、お前に浦原を信じろとなどは言わない。だが、浦原には四楓院が付いているのだろう?なら、お前は四楓院を信じてみろよ。俺も四楓院を信じてみよう」
「…信じるだと?貴様に、夜一様の何が解る」
「四楓院の事など解らない。俺は四楓院とは関わりが薄いからな」
「ならば!信じるなどと簡単に言うな!」
”四楓院を信じる”。
俺の言った言葉が砕蜂の逆鱗に触れたのだろう。
砕蜂は湯呑を投げつける。湯呑は俺の頬を掠めて床に当たり砕けてしまった。
「…俺は、四楓院の事など何も知らない。だがな、四楓院は昔、お前が信じた者なのだろう?ならば、俺にとって四楓院はお前と同じ位に信用できる者だということだ」
「………私と、同じ?」
「そうだ。砕蜂。俺は今回の件にお前を巻き込んで悪かったと思っている。だが同時に、お前でよかったとも思っている。お前の護廷十三隊への忠義は本物だ。そう理解しているからこそ、俺はお前を信じている。そんなお前が四楓院を信じているからこそ、俺は四楓院を信用する」
何も難しいことは無い簡単な理屈だろうと続けて、俺は新しい湯呑を用意して砕蜂の前に置きほうじ茶を注いでやる。
「砕蜂。お前が信じた四楓院は裏切者の汚名を着せられたまま生きるような者なのか?再び、お前の尊敬と信頼を裏切るような者なのか?」
「違う。あの御方は、夜一様は私を裏切る様な事は絶対にしない。………百年前、私は夜一様を信じ切れなかった。だから、私はこれから先に何があろうと夜一様を信じ続けると決めたのだ」
「なら、何の心配もいらないな。なに、機が熟すまで長い休暇だと思って気楽に過ごそう」
そう言えば団子も用意していたんだと席を立つ俺の背に砕蜂の小さな声が掛けられた。
「風守。取り乱してすまなかった…それと、ありがとう」
「………砕蜂。顔が赤いぞ」
「っ!」
「愛い奴だ」
瞬間、俺に向かって再び湯呑が飛んできた。
---特派遠征部隊部隊長、風守風穴及び護廷十三隊二番隊隊長、砕蜂の両名を現世における禁則事項及び禁忌事象行使の罪により現世へ永久追放とする。---
中央四十六室より下されたその裁定を聞いた時、卯ノ花烈は溜息を付いた。
”またか”と、そう思わずにはいられなかった。風守風穴が卯ノ花烈の手の届かない所に、卯ノ花烈が知らないうちに行ってしまうのは何時ものことだった。
あるいはその奔走さこそが風守風穴の風守風穴たる由縁であり、追放という憂き目に遭いながらもきっと欠片の悲壮感も漂わせず、気楽に混濁した眼で薄ら笑いを浮かべているだろう風守風穴を思い描き卯ノ花烈はクスリと笑った。
婚儀を挙げ夫婦となった男が中央四十六室から現世への追放という裁定を下されたというのに軽すぎると言える反応を示す卯ノ花烈が見る世界とは果たしてどんな景色であるのか、そして、卯ノ花烈が風守風穴に向ける感情が果たして愛と呼べるものであるのか、それは卯ノ花烈のみぞ知ることだった。
ただ一つ言えることは卯ノ花烈が風守風穴に向ける執着は愛と呼ばなければ到底人目に触れさせていいものではないということだ。
卯ノ花烈は懐から白く小さな手鏡を取り出した。
否、それは一見すればただの手鏡のようであったけれど、手鏡ではなかった。
”霊圧探索機”。
手鏡で有れば鏡のある部分に埋め込まれているのは黒い画面。そして、その画面に映る点滅する光は”発信機”がある場所を示していた。
点滅する光を見ながら、卯ノ花烈は微笑む。
彼女が修羅場の果てで出会い、死闘の末に愛した男は、掴み所の無い煙の様な男だった。
そんな男を千年掛けて手に入れた卯ノ花烈からすれば、手に入れた後に何もしないなんて言う発想は本当に心から相手の男を愛している女の発想ではなかった。
故に---卯ノ花烈は”発信機”を風守風穴に埋め込んだ。
どこに行こうとも最愛の男がどこに居るか分かるように。
ある夜の日。紡ぎを終え疲れて眠る風守風穴に麻酔を嗅がせて腹を開き、”発信機”を埋め込んで傷が残らない様に治療した。
そのことを知るものは誰もいない。”霊圧探索機”と”発信機”を作らせた当時の『技術開発局』所長浦原喜助には別の用途で使うと説明していた。
手鏡の様な”霊圧探索機”を片手に、文字通り手中に収めた男を思い卯ノ花烈の顔は更に綻んだ。
「霊圧に異常はないようです。なら、私が心配することはないでしょう。
余談だが、この数年後。卯ノ花烈の言う通り風守風穴は瀞霊廷に戻ってくる。
侵入者としてやって来た風守風穴の居場所を探す為に卯ノ花烈は”霊圧探索機”を使用する。
その際に卯ノ花烈は”霊圧探索機”と”発信機”の存在を風守風穴に伝えた。
その時の風守風穴の反応が以下である。
「そうか。お前はそんなに俺が好きなのだな。愛い愛い。俺は嬉しいぞ」
愛した男に狂気を向ける女とそれを受け入れる男。
お互いに狂っていた。