BLEACHの世界でkou・kin・dou・ziィィンと叫びたい   作:白白明け

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原作主人公とやっと関われるぞ!
と、息を巻いていましたが主人公がちょっと強すぎて扱いに困ること数か月。
グランドフィッシャーとか、主人公介入したらもう死体蹴りなんてレベルじゃないよね?
どうしよう?と、考えていたら夏が終わっていました。
更新が遅くなり申し訳ございません。<(_ _)>



いやホントですよ。別にダクソ熱が再燃してダクソ3ばかりやってた訳じゃありません。
DLCが楽しみとか、無いですよ?すごい楽しみですけど。




出会う時

 

 

 

生計を立てねばならぬ。ありていに言えば金が要る。

四畳半の畳の上で茶を啜り、安寧を享受し時計の針が進む様をぼんやりと見ながら過ごす日々に幸せを感じる中で何故俺がそんな結論に至ったのか。

それは四楓院夜一の言葉が原因だった。

 

「稼ぎの無い男など屑じゃ。可愛げがないなら尚更にの」

 

砕蜂に誘われるまま甘味処に(おもむ)善哉(ぜんざい)(甘味)を啜り終えた後のこと。

日々を働きもせず寝て起きて茶を啜り過ごす俺には当然持ち合わせが無いのでいつもの様に砕蜂に支払いを任せた。

そして、その際に同席していた四楓院夜一の言葉がこれである。

 

塵でも見るかの様な視線と共に送られた言葉に俺は至極当然、そのとおりだと同意した。

 

霞を食って生活するならともなく、俺は善哉(甘味)とほうじ茶を啜り生活をしている。

ならば、せめてその分の代金を稼がなきゃならないのは道理だった。

今までは砕蜂がどこからともなく金を持ってきて分けてくれていたので、四楓院夜一に指摘されなければ気づくことのない問題だった。

そして、気が付いてしまえば捨て置くことの出来ない問題でもあった。

生計を立てねばならぬ。ありていに言えば金がいる。

 

しかし、困ったと俺は唸る。

 

現世で金を稼ぐに果たしてどうすればいいのか。

千年前に尸魂界の端で生を受け、千年以上の時を瀞霊廷で過ごして生きた俺には人生経験というものが豊富にある。世人が生涯を掛けて行えるだろうことについてはある程度網羅したという自負もある。

しかし、働くと言う一点に関してのみ言えば経験不足は否めない。

故郷は汚泥(さけ)が湧き死肉(にく)が実る阿片窟(とうげんきょう)。そこに居る間は働かずとも衣食住には困らなかった。

そんな阿片窟(とうげんきょう)を出た後、俺は護廷十三隊に入り隊長職を歴任したりもしたが、護廷十三隊の仕事は瀞霊廷の秩序を守ることと虚退治が主なもの。

瀞霊廷を追われた俺は今はもう瀞霊廷の秩序を守ることは出来ない。そして、虚退治にしても護廷十三隊に居た頃とは違い現世では給金はでない。

 

そう考えると働くということに対する経験と知識が俺には乏しいのだなと考え、ならばその道の先達である浦原喜助らのやり方に倣うべきだと商いを起こすことにした。

 

路地に簡易的な机と椅子を置き商品を並べる。

流魂街でよく見た物売りの姿を見よう見まねでなんとか格好だけは付けながらぼんやりと始めた商い。

売り物が出す心地良い音色を聞きながら、ぼんやりと見上げる空は今日も澄んでいた。

 

『風鈴あり(ます)

 

俺が始めた商いは最近ようやく軌道に乗った。始めはさっぱり売れなかったが、最近は日に二三個は風鈴に買い手が付く様になった。

しかし、やはりそれでも日々の暮らしを砕蜂に頼らず過ごすには金が足りなかったので今は風鈴売りの傍ら細々としたものを色々と売っている。一見するとガラクタにしか見えないそれは俺が浦原喜助らの居場所を探す為に現世を流離っていた頃に興味を惹かれ全国各地で手に入れていた一品。それらは現世のモノ好きの長次郎への土産にでもと考えていたものだったが、まあ良いだろうと売り払うことにして商品として風鈴と一緒に並べていた。

これが思いの外に売れた。風鈴よりも金になった

 

そのことを知った砕蜂に店名は骨董品店『風鈴』にしろと言われどこからか看板まで用意してきた。俺としては風鈴がメインでガラクタ達はおまけだったのだが、まあいいかと今日も移動骨董品店『風鈴』の看板を置き商いをする。

 

商いを始めた当初は現世での法も解らず、現世の秩序を守っている警察とかいう組織に連行されかけたりもした。彼らが言うには現世では勝手に路上で商いをしてはいけないらしい。

それは知らずとは言え悪いことをしたと頭を下げる俺に彼らは解れば良いと納得してくれながらも、話を聞かせて欲しいと警察署という場所への同行を頼んできた。

なにやら面倒なことになりそうだと思っていた所に浦原喜助がやって来て彼らとの間を取り成してくれたのも今思えば良い思い出だろう。

その後は浦原喜助に色々と知恵を貸してもらいながら商いを行う許可と場所を手に入れて今に至る。

 

「おじさん!風鈴ください!」

 

昔を思い出しぼんやりとしていた所に客が来る。

小さな客は爛々とした目で吊るされていた風鈴を見ていた。

 

「ああ、どれが良い?どれも俺の手作りだ。品質は保証しよう」

 

「へー!これ全部おじさんが作ったの!すごいね!」

 

「愛い愛い。そう褒めるな。照れるだろう。昔、卯ノ花、いや、妻に「何かを生み出すことに興味はないか」と言われてな。遠征の道中、仕事の合間に色々なモノを片手間で作った時期があってな。一番、手に馴染んだのがこれだった」

 

「ふーん。おじさん奥さんと仲良いんだね!うちと同じだ!」

 

何故だか自慢げに胸を張る小さな客に俺は微笑みながら頷いた。

 

「そうか。それは良いことだ」

 

「えへへー。あ!ねえ!おじさん!風鈴ってどうやって作るの!私にも出来るかなあ!」

 

「風鈴の造り方か、まずはガラスを破道の熱で溶かしてだな。次に縛道で形を整える訳だが…」

 

「はどー?ばくどー?」

 

「いや、なんでもない。火を使うんだ。危ないから、止めた方がいい」

 

「ふーん。そっか。じゃあ、いいや!私の代わりにおじさんが綺麗な風鈴いっぱい作ってくれるもんね!」

 

「だから、そう褒めるなよ。照れるだろう。ああ、それで、どれにするか決めたか?」

 

「あ、そうだった。うーんとね、それじゃあ、この青いの!」

 

「まいどありがとう。それじゃ、元気で。さようなら」

 

「うん!おじさん!ありがとうね!」

 

そういって、青い風鈴を手に眼の前で微笑む小さな客の額に俺は斬魄刀の柄の底を当てる。

小さな客は最後まで微笑みながら、青い風鈴を大切そうに持ちながらその姿を消していった。

 

「………魂葬(こんそう)という。現世の言葉で言うなら、成仏か。青い風鈴には暑さや熱を軽減する霊力を込めておいた。多分あの子は、火難にあった家の子だろう。母や父が先に逝く中で残されていたんだろうよ」

 

「………アイツは両親の元に逝ったのか?」

 

「罪なき魂が逝く場所は皆同じだ。しかし、あの世は広い。あの子が両親に会うことは難しいだろう」

 

「そういうもんなのか?」

 

「そういうものだ。…他に聞きたいことはあるか。人間」

 

俺は小さな客の後ろにずっと立っていた青年に声をかける。

現世では珍しいオレンジ色の髪をした青年は俺の問いかけ一瞬考える素振りを見せるが、直ぐに首を横に振った。

 

「いや、()えよ。俺は最近、妙な噂がある露店が出来たってんで、アイツを連れて見に来ただけだ。アンタが何なのかも、聞くつもりはねぇ」

 

懸命な判断を下す青年に俺はそうかと答え、それで良いという思いを込めて視線を外す。

青年が幾ら霊なる者が見えるとはいえ、踏み込み過ぎは良くない。

だから、賢明な判断を下したなと青年を評価して、俺は青年のことを記憶に留めず忘れ去るつもりだった。

 

古今東西。霊なる者を見ることの出来る人間はそれなりに居た。

死神がそんな彼らに対する態度として正しい物は静観。彼らが何もせぬかぎり、死神から彼らに干渉することはない。

互いに触れず触らず。それが正しい対応。

護廷十三隊での地位を剥奪され尸魂界を追われ、すでに死神としての肩書を失っている俺だったが、その在り方を変える気は欠片も無かった。

 

俺はオレンジ髪の青年の存在を忘れる気でいた。

そんな俺の意識を変えたのは、青年が続けて言った言葉だった、

 

「…けど、一つだけいいか」

 

「なんだ?」

 

「こんなこと、たぶん無関係な俺が言うようなことじゃないんだけどよ。ありがとう」

 

「…」

 

「俺はアイツに、何もしてやれなかったからよ」

 

---だから、ありがとう。

そう言って去っていく青年の背を見ながら、俺は少なからずの衝撃を受けていた。

 

青年が俺に対して礼を言う理由など何もなかった。

彷徨う霊であった小さな少女に人間である青年が何も出来ないなんて言うことは当たり前のことだ。

そもそもソレは死神の仕事であり何なら青年は何時までも彷徨う霊を放置し続けていた死神達に対して文句の一つも言っていいと俺は考える。

だと言うのに、何故と尽きぬ疑問を前に俺は、なぜ俺はこんなにも青年の言動を否定しようと考えているのだろうかと考える。

 

お礼を言われた。なら、受け入れればいい。

愛い愛い。照れるだろうと。受け入れれば、良いだけだ。

何時もの様に「お前がそう言っているのなら、なるほど俺は良いことをしたのだろう」と受け入れればいい。

 

万難辛苦を飲み干し笑い。民衆万人の善悪を無条件で認め。三千世界の全てを受け入れ善哉善哉と言える俺を見て、人々が狂っていると評しているということは深く理解している。

 

かつての俺は間断なく怒り嘆き苦しむ人々を見て憐れみ悲しみ、桃園の夢の中でなら万人全て須らくが幸せな世界(ユメ)の中で生きられると信じていた。

故に愛する母と隣人たちが住まう阿片窟(とうげんきょう)を守り続けた。

その幸せな世界(ユメ)に俺自身は痴れられないと知りながら。

 

そして、その思いは山本元柳斎重國と出会い護廷十三隊という夢を見ている今であっても変わらない。

 

 

苦しいのなら、悲しいのなら、桃園に霞む仙丹を吸い幸せな自己の夢に閉じればいい。

外界で生きることを苦痛だと思うのなら、なに気楽に吸えよ。

お前の人生をお前がどういう形で閉じようとも、お前がお前の世界をどういう形で閉じようとも、それはお前が決めること。

お前がそう思うのなら、きっとお前の中ではそうなのだろう。

 

 

その考えは変わらない。故に俺は誰の意見でどんな意見であろうと受け入れよう。

勿論、それが善意であり悪意である以上、時にはぶつかり合うこともあるだろう。

俺も激情を抑えきれないことがあるだろう。

しかし、良い良い。きっとソレを生きると言うのだと俺は笑うと決めている

我も人。彼も人。故に対等であるのなら、それが当然の道筋であることを認めている。

 

それが俺が阿片窟(とうげんきょう)で生まれてから培ってきた思想で有る筈。

 

だというのに、俺は何故か青年の言葉を受け入れようとしなかった。

そのことに首を傾げていた俺。こんなことはそうそうあることじゃない。

思い出せるだけでこんなことがあったことは、たったの二度だけ。

 

一度目は卯ノ花烈との出会い。--只戦(ただそれ)を掲げた思想は到底理解できない危険なものだった---

二度目は山本元柳斎重國との出会い。--彼の語った護廷十三隊設立という夢は阿片窟の番人にして笑わずにいられない荒唐無稽なものだった--

 

そして、俺はその二度は何故受け入れられなかったのかという疑問に、相手が卯ノ花烈と山本元柳斎重國で有ったからだと納得をしていた。

あの二人は風守風穴という男にとってあまりに特別過ぎる存在だった。

だから、俺は受け入れられなかったのだと納得した。

 

そこまで考え、そうかと俺は納得する。

 

なぜ俺が青年の言葉を受け入れられなかったのか。

その理由は明白だった。

 

「なあ、待て。お前、名は何と言う?」

 

「黒崎。黒崎一護だ」

 

つまりはこの青年が風守風穴にとって特別となる存在なのだろうと、俺は一人納得した。

 

 

そう言えば、いつ以来だろうか。

現世で迷う魂魄を魂送した事に「ありがとう」などと言われたのは。

 

そんなことを思いながら。俺は黒崎一護の背を見送った。

 

 

 

 








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