BLEACHの世界でkou・kin・dou・ziィィンと叫びたい   作:白白明け

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出来れば千年血戦まで書き上げたいのですが、未だに原作6巻ほどまでしか話が進んでいない…あと原作は70巻位あるぞ。

…心が折れそうだ。(; ・`д・´)



ダクソ3のDLCも来るし(´・ω・`)


彼女が出会いを嫌う理由

 

 

 

 

『空座第一高等学校』の屋上で空を見上げる。空に浮かぶ雲。その流れる様を眺めるのが俺は好きだ。白く巨大で雄々しくも優雅な雲が風に流れ消えていく様は、立ち上る桃園の煙が炎に焼かれ消えていく様にとても良く似ている。

普通に考えればソレは忌むべき記憶だ。懐かしく愛おしい阿片窟(とうげんきょう)

俺の故郷を焼いた炎熱地獄の光景を雲を見る度に思い出す。

懐古と呼ぶべき感情と共に浮かぶべきは憎しみで有り後悔である筈だ。

 

しかし、俺にはかつて故郷を焼いた男である山本元柳斎重國に対する憎しみが微塵もない。

 

あるものは常敬の念であり。そして、憧れでしかない。

 

曰く最強の死神。曰く正義の死神。剣の鬼と呼ぶべき男の刀は余りに熱く。その背はあまりに大きかった。

故に()がれた。故に(あこが)れた。

 

---その背に遍く夢を見た。

 

「護廷十三隊。俺が山本重國の背に見た夢。阿片に痴れることの出来ない俺が、唯一痴れた阿片(ユメ)を守ることが俺の願いであり祈り。その為ならば、俺は万難辛苦を飲み干し笑い。民衆万人の善悪を無条件で認め。三千世界の全てを受け入れよう。…これで、いいんだな?」

 

空に向けていた視線を下げる。そこには白と緑の縦縞模様という洒落た帽子を被り杖を付く男。神算鬼謀の浦原喜助がいた。

井上織姫と虚との戦いは井上織姫の能力。『盾舜六花(しゅんしゅんりっか)』の覚醒と共に終わりを告げた。

浦原喜助が現れたのはその戦いの後始末をする為。能力の覚醒によって虚を倒した井上織姫だったが、初めての能力の行使により身体は疲れ直ぐに倒れた。

倒れた井上織姫の回収と治療が浦原喜助の目的だと悟った俺は邪魔にならない様に井上織姫の元を離れ『空座第一高等学校』の屋上へとやってきた。

 

俺と黒崎一護の接触は浦原喜助の計画に悪影響を及ぼす恐れがある。

だから、静観していてほしいと頼んできた浦原喜助の言葉を俺は忘れてはいない。

故に黒崎一護の仲間なのだろう井上織姫から距離を取ろうとした。

接触をしてしまった以上、もう遅いかもしれないがやらないよりはマシだろうという俺の心使いは、しかし、意味のないものだったのかもしれない。

その証拠に浦原喜助は立ち去った俺を追い屋上までやってきた。

 

関わる気はなかった。浦原喜助が何も言わずに立ち去るのなら今まで通りに静観をするつもりだった。

しかし、浦原喜助は俺を追いやってきた。ならばと俺は常々感じていた疑問を浦原喜助に投げかける。

 

-これで、良いのだな?

 

浦原喜助は俺の問いかけに一度目を瞑ると重々しく口を開いた。

 

「はいっス。ありがとうございます。風守サン。アタシの言葉を信じてくれて、ありがとうございます」

 

「浦原。俺はお前の頭脳を信じている。お前がそういうのなら、ああ、きっとそれは正しいのだろう。そう言える程度には、俺はお前を信じているんだ」

 

「…アタシが隠し事をしていることに気づいていてもっスか」

 

「………」

 

隠し事。浦原喜助の口から語られた言葉に覚えがない訳じゃない。

最近、空座町で起き始めた霊圧異常。黒崎一護という人間が死神になったという事実。

その渦中に感じていた懐かしい霊圧。

 

「朽木ルキア。やはりあいつが、黒崎一護にチカラを渡した死神か」

 

「はいっス。…どうか、彼女を責めないであげてください。朽木サンが黒崎サンに死神のチカラを渡した状況は相当に切迫してました。朽木サンの判断が遅れていればお二人の命はおろかもっと大勢の犠牲が出た筈です。そして、朽木サンは黒崎サンにチカラを渡した後も、自分の身体が万全になり次第チカラを回収するつもりでした。それを邪魔したのはアタシらっス」

 

帽子を脱ぎ、脱いだ帽子を胸に当て跪く浦原喜助を見下ろしながら俺はそう畏まるなと頬を掻く。

 

「責める気などない。どうあれ朽木ルキアが選んだことだろう。なら、良い良い。あいつがそう思ったのなら、それが正しいのだろう。それでいい。故に立てよ。お前が描いた計画に俺は微塵の文句もない。…だが、なあ、浦原。あいつを泣かせるなよ」

 

跪く浦原喜助と同じ目線になるように屈みながら浦原喜助の目を見て言う。

威圧の為に霊圧を解放するなんて無粋な真似はしなくていい。

こうして目と目で話せば誰とでも通じ合えると俺は信じている。元々が引きこもりで人見知りの上に口下手な俺が長い時間を掛けて編み出したコミュニケーション能力。

口元を歪め優しく微笑むことも忘れない。こうすれば大抵の相手は俺の話を聞いてくれる。

 

「朽木ルキアは愛い奴だ。俺の大切な阿片(モノ)を良いモノだと言ってくれた。それに俺はあいつに期待している。お前と同じく次代を担う死神としてな。故にあいつが泣けば俺は助けなきゃならない。ああ、いや。元より誰であろうが不幸なものを俺は救うがな。救われたいと願う声に耳を貸さないほど、俺は薄情じゃないんだ。…わかっているな?」

 

「………はい」

 

「善哉善哉」

 

何故だか顔から脂汗を流しながら俯く浦原喜助。何故、こうも汗を掻いているのだろうか。

確かに今日は暑い日だが、歴戦の兵である浦原喜助からすれば暑さなんて苦でもないだろうにと考えて、ああ今は駄菓子屋の店主として擬態しているのだったかと納得する。

暑い日に汗も掻かない駄菓子屋の店主なんていない。

そこまで手の込んだ擬態には俺にも学ぶことが多かった。

 

 

 

 

 

 

「朽木ルキアは愛い奴だ。俺の大切な阿片(モノ)を良いモノだと言ってくれた。それに俺はあいつに期待している。お前と同じく時代を担う死神としてな。故にあいつが泣けば俺は助けなきゃならない。ああ、いや。元より誰であろうが不幸なものを俺は救うがな。救われたいと願う声に耳を貸さないほど、俺は薄情じゃないんだ」

 

 

『良いか喜助。あの男は信用するな』

 

 

満月の夜。月見酒の席で四楓院夜一から言われた言葉を『空座第一高等学校』の屋上で浦原喜助は思い出していた。

風守風穴が空座町にやって来て久しく、何かと風守風穴の世話を焼く羽目(はめ)になっている浦原喜助からすれば四楓院夜一のそんな言葉は耳に痛く、昔馴染みの親友から見れば自分はそんなに風守風穴に肩入れしているように見えるのかと苦笑した。

 

「わかっているッスよ。夜一サン。けど、あの人は現世に不慣れじゃないですか。この間なんか、勝手に露店開いて警察にご厄介になる所だったんス。流石に手を貸さない訳にはいかないでしょう」

 

「儂はそういうことを言っているのではない」

 

「じゃあ、何なんスか?…もしかしてヤキモチ焼いてます?安心してください。アタシの胸は何時だって空いて--

 

「冗談は顔だけにしておけよ。のぅ、喜助」

 

「--も、勿論、冗談ですよ。だから、拳に溜めた霊力を治めてくださいよ」

 

「うむ、じゃが、折角溜めた儂の霊力じゃ。何か殴らずに霧散させるのは勿体ないのう」

 

「じょ、冗談スよね…?」

 

「さあ、のう‼」

 

浦原喜助の頭の中に夜空に劣らない星が散った。

 

「…まあ、冗談はこれくらいにして。良いか、喜助」

 

「冗談になって--

 

「良いか!喜助!」

 

「--…はいっス」

 

「あの男は信用するなよ」

 

酒を傾けそういう四楓院夜一の顔に浮かぶ表情をみて浦原喜助の顔もまた真剣なモノへと変わった。

 

「…夜一サンは随分と風守サンをお嫌いみたいですが、何か理由があるんですか?」

 

「…西流魂街80地区『口縄(くちなわ)』の話はおぬしも聞いたことがあるじゃろう」

 

西流魂街80地区『口縄(くちなわ)』。その場所を浦原喜助は知っていた。

否、少しでも世情に詳しい瀞霊廷で暮らす者なら知っているだろう。

元来、瀞霊廷の外園に存在する流魂街はその数字が大きくなるほどその地の治安は悪くなっていく。50地区を過ぎれば住民が着る衣服すら儘ならず襤褸切れや裸足の民が増えていく。

最下層80地区となればそこは地獄と称してもいい。生きるには余りに過酷すぎる環境。

だが、しかし、そんな中で西流魂街だけは違うという。

 

「『口縄(くちなわ)』の桃源郷(とうげんきょう)。『口縄』には辛さの全てを忘れさせてくれる仙丹の洞窟がある。そこでは酒が湧き肉が生る。その噂は知ってます。しかし、その実態は」

 

「桃源郷とは名ばかりの阿片窟じゃ。自然発生する阿片の煙が充満する洞窟で暮らせば、そりゃ極楽浄土の妄想(ユメ)を見るじゃろう。正気を失う代わりにの」

 

『口縄』の阿片窟(とうげんきょう)。それは確かに憧れるような物ではなく忌み嫌うべきものであるだろう。

しかし、と浦原喜助は四楓院夜一の顔色を伺う。

 

「…確かに阿片窟は褒められるべきものじゃありません。けど、その程度の悪性は尸魂界には五万とあるでしょう。アタシは、そんなモノを桃源郷だという噂を生み出してしまう程に広がっている流魂街の地区間での格差こそ正されるべきものだと思いまスよ」

 

浦原喜助の零した言葉のあまりの正しさに四楓院夜一は溜息を零した。

 

「そうじゃのぅ。確かにおぬしの言う通りじゃ。『口縄』の阿片窟が自然発生的に生まれたものであるのなら、なおのことにそれは必要悪とすらいえるものじゃろう。あるいは『霊王』の思し召しかのぅ。しかし---それが人為的に生みだされたモノなら話は別じゃ」

 

四楓院夜一の続けた言葉のあまりの正しさに浦原喜助は息をのむ。

 

「人為的に生みだされた?いや、何を言ってるんスか。『口縄』の桃源郷は何時からあるかわからないほど遥か昔から存在するものでしょう。それこそ『尸魂界』の開闢からあるかもしれないなんて言われている場所っスよ?それを、人為的に作り出したなんて………いや、まさか」

 

「流石じゃの。喜助。気が付いたか?そうじゃ。おぬしの想像通りじゃよ。大体、おかしいじゃろう。千年前、儂らが生まれる遥か前に阿片窟(とうげんきょう)は一度、滅んでいるのじゃぞ。総隊長、山本元柳斎重國の手によってのぅ」

 

護廷十三隊一番隊総隊長。山本元柳斎重國。剣の鬼と呼ばれた最強の死神。

その男がかつて『口縄』に訪れたことを浦原喜助は当時の当事者であった死神。他でもない風守風穴から聞いている。

 

当時無双を謡われた剣士『八千琉』にさえ負けることは無く、無敗を誇った風穴の守人は、最強の死神の炎熱地獄の前に敗れたと。

 

「剣の鬼。そう言われた当時の総隊長が『口縄』の阿片窟(とうげんきょう)なんて危険因子をむざむざと放置する訳がない。…焼いたのじゃよ。風穴を中にいた住人諸共焼き討ちしたのじゃ。守人を失った桃源郷は炎熱地獄へと消えたのじゃ」

 

「でも、それを番人であった風守サンが見過ごしたと?」

 

「…戦いに敗れた。傷は深く止めることは出来なかった。そうだったのだと、儂も最初はそう思っていたのじゃが、しかしのう、それではあの男の総隊長への忠誠心が理解できん。時代が時代。過去の話とはいえ自らの故郷を焼いた男じゃぞ?そんな男に幾ら憧れたとはいえ忠誠なぞ誓えるか」

 

「別に理由があったと?」

 

吐き出す言葉は溜息の様に。しかし、気だるげではなく苦々し気に吐き出しながら四楓院夜一は心の底から風守風穴を侮蔑していた。

あるいは風守風穴が本当の意味で番人であり守人であったなら、四楓院夜一は阿片窟生まれの阿片狂いの狂人だとしても風守風穴を此処まで嫌うことは無かっただろう。

風守風穴の奔放とも言える性格は四楓院夜一にとって決して相容れない性質(タチ)ではなく、あるいは友好を結んでいても不思議ではなかった。

しかし、それは遠く千年の昔に出来ないものとなっていた。

 

「…あの男は、後に続く阿片窟(とうげんきょう)の存命の為に故郷を売ったのじゃ」

 

「故郷を、売った?」

 

「『西流魂街80地区『口縄』に存在する阿片の毒が自然発生する洞窟の焼却消毒は決定事項。しかし、後にその場所に現れる何に対しても護廷十三隊は干渉しない。以上を風守風穴の護廷十三隊加入をもって中央四十六室の元に定めるものとする』…儂が四楓院家の当主であった時に手に入れた千年前の情報じゃ」

 

山本元柳斎重國は風守風穴の力を護廷が為に欲していた。

風守風穴は山本元柳斎重國の背に生まれて初めて夢を見た。

二人の死神は惹かれ合い互い求めていた。しかし、両者の間に横たわる溝は深い。

風守風穴の故郷を焼かねばならない山本元柳斎重國と故郷を守り生きてきた風守風穴は本来何があろうと交わることの出来ない間柄。

 

千年前、一夜で終わった最強と最悪の戦いは元来一夜などと短い時間で終わる筈のない長い闘争の始まりに過ぎない筈だった。

しかし、それに目を付けたのが中央四十六室。千年前に知恵者達は風守風穴の力を手に入れる為に一つの契約を持ち出した。

それが四楓院夜一の口から話された約定。それを知った時、浦原喜助は顔を歪める。

 

「…瀞霊廷は阿片なんて毒を自然発生させ桃源郷なんて持て(はや)される阿片窟を疎んでいたんスね」

 

「そうじゃ。故に焼かねばならなかった。しかし、前に立ちはだかる男はあまりに強く斬り捨てるには惜しかった。故に総隊長を派遣し下した後に約定を持ち出したのじゃ。………最も、四十六室の思惑とは外れあの男は総隊長の語った護廷十三隊設立という話に夢中になった様じゃがの」

 

千年前になにがあったのか。事の顛末は四楓院夜一でも知る由もない。

兎も角として千年前に『口縄』の阿片窟は焼かれた。

天国の存在しない尸魂界に存在した桃源郷はそうして滅びた、筈だった。

 

「ですが、現在でも『口縄』の阿片窟(とうげんきょう)の噂が絶えることは無く、実際に存在もしている。その意味は、つまり」

 

「再建された阿片窟は人為的に生みだされたモノということじゃ。作り出したのは勿論、かつて守人であった風守風穴。あの男はあろうことか焼け落ちた代わりに浄化された阿片の毒が湧き出ていた洞窟に刃を突き立てた」

 

「阿片の毒を生成する斬魄刀『鴻鈞道人』の能力で故郷を、阿片窟を再生した」

 

風守風穴の行動を当時の中央四十六室の知恵者達は予想していたのだろう。

故に持ち出した約定の条文。

()()()()()()()()()()()という約束。

 

瀞霊廷。中央四十六室が疎ましく思っていたのは阿片の毒が自然発生する洞窟。

例え後に風守風穴が阿片窟を再建したとしてもそれは風守風穴が消えれば終わる紛い物。

幾ら強力な霊力を持った死神だとしてもいつかは死ぬ。それならば待てばいい。

死ぬその日まで自分たちの旗下に加えながら、待てばいい。

それが当時の中央四十六室が下した決定だった。

 

「あの男は今でも時折里帰りと称して『口縄』に赴き洞窟に阿片の煙を充満させておるのじゃ。一呼吸の内で高位の死神すら痴れさせる濃度の阿片じゃ。あの男が洞窟を去り毒が薄れたとしても流魂街の住人が痴れるには十分な毒を含む。その上、洞窟という環境で生成された阿片の煙は結露しやがて結晶化する。それを削り粉末にすれば、最上級品の完成という訳じゃ。あの男が常日頃から持ち歩いているモノじゃな」

 

「そうして出来た二代目の阿片窟(とうげんきょう)ですか。いやはや、なるほど随分スケールの大きい話っス。風守サン。あの人、一人で伝説一つ作っちゃってる訳ですか」

 

「戯け。感心しとる場合か。これでおぬしもあの男の異常性は少しはわかったじゃろう」

 

腕を組み豊満な胸を持ち上げながら何故か自慢げに言う四楓院夜一に浦原喜助は分かりましたと笑いながらも、頭の中で一つの光景を思い浮かべていた。

 

 

かつての故郷。生まれ育ち守った場所。

千年前に焼け落ち滅びた洞窟の底で男が一人地面に刃を立てる。

刃からあふれ出る阿片の煙

母親や隣人達の亡骸が眠る場所から漏れ出す桃色の煙は贖罪の様に揺らめいた。

万人を痴れさせる煙は亡者の痛みや苦しみすらも癒すだろう。

しかし、それでも男は阿片に酔うことも出来ずただ一人立ち尽くしている。

 

 

そんな光景を思いうかべた浦原喜助は被っていた帽子を深く被り直した。

 

 

 

 

そんなことがあった。その時の自分の感情を思い出しながら、しかし、浦原喜助はその時の感情が間違いでしかなかったと痛感した。

 

「…わかっているな?」

 

問いかける瞳の色はどこまでも澄んでいて、口元も優し気に微笑んでいる。

しかし、怪しく輝く赤の瞳に浮かべられた薄ら笑いはとても正気の人間のそれではなかった。

 

「………はい」

 

それを至近距離で見せられた浦原喜助は流石にビビっていた。

 

 

 

 

 







浦原さんのフラグが折れました(; ・`д・´)



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