BLEACHの世界でkou・kin・dou・ziィィンと叫びたい   作:白白明け

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ブリーチの最終巻が販売されたらしい。
買いに行かねば(; ・`д・´)

最寄り駅に本屋がないと辛いですね…(´・ω・`)





蜂と花の出会い①

護廷十三隊。一番隊隊舎。そこに山本元柳斎重國を始めとした護廷十三隊隊長たちの姿があった。

召集された護廷十三隊の各隊長格に浮かぶ表情は困惑だ。なかでも一番、山本元柳斎重國から発せられる言葉を予想できないでいるのは、一番最後に召集され先ほどやってきたばかりの三番隊隊長、市丸ギンだった。

急きょ呼び出された隊首会。この場にやってくるまでの間に呼び出された原因を察することの出来ないほど市丸ギンは愚鈍な人物ではない。

召集の理由を十中八九、昨日自らが起こした命令無しの単独行動だろうと予想していた。そしてその予想は的中していた。筈だった。

 

「なんですの?イキナリ呼び出されたか思うたら、こない大袈裟な…尸魂界(ソウルソサイティ)を取り仕切る隊長さん方がボクなんかの為にそろいもそろってまァ…---とか、冗談言っている空気じゃないみたいですねェ」

 

いつもの様に薄ら笑いを浮かべながら飄々としていた市丸ギンは言葉を止め、山本元柳斎重國を見た。

 

「ボクが呼び出された理由。此処に隊長さん方が勢ぞろいしてるのは、僕が昨日した凡ミス。旅禍を取り逃がした件じゃないんですか?総隊長さん。この空気、僕のやらかしたことより大事(だいじ)がおきたんですか?」

 

市丸ギンが言う凡ミスとは昨日、白道門(はくとうもん)にて兕丹防(じだんぼう)を破り瀞霊廷への侵入を試みた旅禍達、黒崎一護達を取り逃がした件について。

てっきりそれについて責められると思いやってきた市丸ギンだったが、どうやら空気が違うらしいことに気が付き、これ幸いと話を逸らそうと山本元柳斎重國に笑いかけた。

 

「…凡ミスとは、随分と大きく出たのう。市丸や」

 

対し山本元柳斎重國の表情は厳しい。当然だろう。旅禍の侵入という大事に対しての命令無しの単独行動に加え、標的を取り逃がすという隊長としてあるまじき失態。平時であれば本人から弁明をさせて、隊首会にて尋問を行うべき事案だ。

事実、先ほどまでそのつもりで山本元柳斎重國は各隊長を召集していた。

 

しかし、市丸ギンがやってくるまでの間に事情が変わったと溜息をもらす。

 

「じゃが、此度の件は一時不問とする。市丸の処置については追って通達する。そして、皆に伝えねばならんことがある。既に知っている者も何人かおるだろうが…黒陵門が落ちた」

 

山本元柳斎重國から出た言葉にその場に居る者達が息をのむ。

果たしてどんな蛇が出るかと笑みを浮かべていた市丸ギンの顔からすら、表情が消える。

静寂の後に言葉を発したのは八番隊隊長、京楽春水。笠から覗く余裕を残した風体を崩さずに山本元柳斎重國に問いかける。

 

「やれやれ、七緒ちゃんから報告を受けた時は悪い冗談だと思っていたんだけどねぇ。それが本当なら、こんなのんびりと隊首会をしている場合じゃないんじゃないの。山じい。敵さんは黒陵門は落としたんだ。一気に攻めてくるかもしれないよ。直ぐにでも隊長格を向かわせるべきだ。…とか、僕は思うけど、山じいが動いてないってことはそれが出来ない理由があるんだよねぇ」

 

「然り。現在、黒陵門に近づくことは出来ん。近づくには儂か卯ノ花の何方かが現場に出向かねばならぬ」

 

「山じいか卯ノ花隊長が、ねぇ。そりゃ無理だ。総隊長と医療分野の長。早計に動ける訳が無い。だからまずは情報共有って訳だ。うん。理解したよ。で、黒陵門で何があったのかな」

 

問い掛けながら京楽春水の中では答えが出ていた。正答を導き出すだけのヒントは既に散りばめられている。元より山本元柳斎重國と卯ノ花烈の名前に並ぶべき名は、雀部長次郎を除けば一人しかいないのだ。

かつて尸魂界に存在し瀞霊廷をへらへらと笑いながら混濁した眼で闊歩していた男の名以外に最早相応しき名はなく、そしてその名は京楽春水にして尚、自ら言うには(はばか)れるものだった。

 

再び静寂が訪れ山本元柳斎重國はそれを破るように重々しく息を吐いた。

 

「黒陵門一帯が阿片に沈んだ。門番である断蔵丸を含め守衛に就いていた死神百五十八名は黒陵門の開場と同時にどうやら阿片に飲まれた様じゃ」

 

それは最悪の帰還。

 

「間違いない。風守じゃ。現世にて姿を消していた元特派遠征部隊部隊長、風守風穴が同じく姿を消した元二番隊隊長、砕蜂を伴い瀞霊廷に侵入した」

 

 

 

 

 

 

 

 

瀞霊廷の空で輝きが四つに割れた。天を照らさんとするかのように眩く輝くそれは、人見知りで口下手で引っ込み思案な俺からすればあまりに眩しいもので思わず片手で顔を覆う。

 

「天から光か。まるで聖書の光景だな。砕蜂、聖書という書を知っているか?アレはなかなかに面白い読み物だぞ。あれを読むと千年前には何を言っているのかわからなかった滅却師(クインシー)達の言葉が表層だが理解できる」

 

「ふん。貴様に勧められた本など誰が読むか。それより風守、あの光は夜一様達だろうか?」

 

「おそらくな。あれが噂に聞く志波家の秘術、花鶴大砲(かかくたいほう)だろう。砲弾の中に入って空から侵入とは、随分と派手なやり方での侵入を選んだな。善哉善哉。嫌いじゃないぞ」

 

「夜一様のお考えだ。あの四つに割れた砲弾。おそらく陽動の意味もあるのだろう。流石は夜一様」

 

「なるほど、護廷十三隊を相手に戦力の分散など愚の骨頂だとも思ったが、陽動か。俺は不慮の事故で砲弾(たま)が四散したのかとも思ったが、黒崎一護達には四楓院が付いているのだ。そんな筈がなかったな」

 

「ふん、当然だ。夜一様が付いていながらそんな凡ミスはありえん」

 

薄い胸を張り自慢げに言い切る砕蜂にお前がそう思うのならお前の中ではそうなのだろうと呟いて、俺はさてどうしたものかと思案する。

 

取りあえず当初の予定通りに俺達と黒崎一護達が時間を合わせて別々の場所から瀞霊廷に侵入することには成功した。

問題はこの後に俺はどう動くべきか。

目的が朽木ルキアの救出である以上、朽木ルキアが捕らわれているだろう懴罪宮(せんざいきゅう)に向かうことが先決。瀞霊廷に侵入する前の話し合いで四楓院夜一とそう決めていた。

俺たちか黒崎一護たちのどちらかが懴罪宮に辿り着ければ、朽木ルキア救出の可能性が万に一つだが存在する。

故に迷うべくなどない俺の足取りは、しかし、懴罪宮に向かうには少し重かった。

 

空を見て思うは四方に割れた光の輝き。あれが砕蜂の言う様に四楓院夜一の考えの元に行われたものだったのなら、構わない。大丈夫だろう。

しかし、こと戦場において不測の事態というものはあまりにも身近に存在する。百戦錬磨の四楓院夜一ですらどうしようもない不慮の事故はある。

だとするなら、四方に割れた輝きはそのまま黒崎一護たちの危険性を意味しよう。

 

黒崎一護。

石田雨竜。

井上織姫。

茶渡泰虎。

 

出会ったばかりの人間達。黒崎一護以外、俺が目を掛けるにはあまりに弱く脆弱な人間。

彼らには確かにチカラがある。死神としての。滅却師としての。あるいはどちらにも属さない奇異なチカラがある。

しかし、それだけだ。

チカラがあるだけの人間が戦いを挑んで生き残れるほどに護廷十三隊は甘くない。

そして、その確固たる事実は彼らの明確な”死”を意味する。

 

隊長格の死神と出会えば彼らはあまりに容易く敗北するだろう。

 

それを是とするべきか。---否である。

 

救わねばならぬ。守らねばならぬ。

元よりこの身は死神である。死神とは魂魄を人間を守るもの。

そしてなにより、死神である前に俺は番人である。

阿片窟(とうげんきょう)への入り口を守る者の名こそが”風守”。

その意味は痴者(じゃくしゃ)を守らんとする意思である。

 

「砕蜂、悪いが俺は--」

 

「お前は行け」

 

俺の言葉を遮るように砕蜂は言った。

 

「四方に割れた場所へは私が向かう。…夜一様のお考えがあってのことだろうと思うが、貴様が心配だというのなら確認くらいはしてきてやる。だから、貴様は先に懴罪宮に向かえ」

 

「…砕蜂」

 

「ふん。安心しろ。人間達の無事を確認したら直ぐに追いかけてやる。瞬歩だけならば、貴様より私の方が上だ」

 

そう言って背を向ける砕蜂の小さな背に俺は改めて恋をする。

 

「砕蜂…お前は本当に、良い女だな」

 

「っ!?ば、馬鹿なことを言っていないでさっさと行け‼」

 

砕蜂の罵倒に背を押されて、俺は懴罪宮に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったくあの男は」

 

去りゆく男の背に悪態をつきながら砕蜂はクスリと笑った。

見送る男の背からは、すでに先ほどまで抱いていた不安や疑念という雑念は消えている。

朽木ルキア救出のために懴罪宮に向かわなければならないのは風守風穴だ。それは解り切ったことであると砕蜂は思っていた。

 

人間でありながら瀞霊廷にまで踏み入り朽木ルキアを救わんとする黒崎一護達の強い意思と覚悟。なるほど素晴らしい。

しかし、意思や覚悟で越えられるほど懴罪宮への道程は容易くない。

立ちはだかる護廷十三隊の隊長格たち。それらを敵に回して進める者がいるのするのなら、それは黒崎一護達ではないと砕蜂は考える。

 

「あの男でなければならない。並みいる隊長格を。そして、総隊長殿を前にして立てるのは風守だけだ」

 

思い描くかつての仲間たち。そして、最強の死神。それを敵に回した時、砕蜂でさえ身が震える。人間如きが勝てるはずがないと思ってしまう。

黒崎一護ではない。

万象焦がす炎熱地獄を前に悠々と笑うことが出来る男を砕蜂は一人しか知らない。

 

それが事実だ。だというのにウジウジとナメクジの様に歩を進めようとしなかった風守風穴を見て砕蜂は悪態をついた。

 

「貴様は、優しすぎる。出会ったばかりの人間など、それも自ら死地に飛び込んだ人間を救おうなどと、優しすぎる。それで歩を進められずに止まるなど、ふん、ふざけた話だ」

 

悪態をついた後で、仕方がない奴だと微笑むのだ。

 

「まったく。あの男は私がいないと何もできないのだな」

 

 

 

 

 

 

 

「かわいいでしょう。あの(ひと)は」

 

 

 

 

 

 

 

「つっ!?」

 

唐突に聞こえてきたのは優し気な声。そして、香るのは甘い花の匂い。

隠密機動の総司令官を務めた砕蜂ですら気づかないほど自然に眼の前に現れた者は自分に気が付くことなく去っていた男の背を見ながら、全く仕方がない人ですねと微笑んだ。

 

砕蜂の背筋が凍る。既に斬魄刀を抜けば届くほどに接近されているという事実が、戦う前から砕蜂の敗北を決定づけていた。

殺傷圏内。回避不可の絶対領域。指先一つでも動かせば斬られると思わせるだけの空気が漂う死地と化したその場所で砕蜂の頬に汗が伝った。

 

そんな砕蜂の緊張感を感じながらも卯ノ花烈は穏やかに(たお)やかに微笑んだ。

 

「ふふ、そう緊張しなくてもいいのですよ。砕蜂さん。私に貴方を斬る気はありません。ですから、そうですね。私と少しガールズトークでもしましょうか。とても楽しそうだと、思いませんか?」

 

 

 

 

 

 

 




次回、不倫戦争(さいしゅうけっせん)勃発。

とか、言ってみたけど、砕蜂隊長が卯ノ花サンに勝つイメージが欠片も湧かないぞ…



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