BLEACHの世界でkou・kin・dou・ziィィンと叫びたい   作:白白明け

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感想欄でタイトル変えた方が良いのでは?というご指摘を頂きまして、考えてみればその通りと変えさせて頂きました。ご指摘いただきありがとうございます<(_ _)>





蜂と花の出会い②

 

 

 

ある日の満月の夜。四畳半一間という狭い空間で身を寄せ合い、窓を開けて満月を眺めながら茶を啜っていた際に交わされた会話を砕蜂は思いだす。

来たる日に共に瀞霊廷に攻め込むこととなる男は何時ものように混濁した眼で笑いながら、砕蜂の頭を撫でながら言った。

 

---卯ノ花とは争うな。

---この忠告は情ではない。愛でもない。ただの事実。

---砕蜂と卯ノ花が戦いとなれば、アイツには勝てない。

---だからもし、仮に、卯ノ花と戦うことになったのなら、俺を呼べ。

 

---救ってやろう。

---お前の無事を、俺は心の底から、願っているのだ。

 

殺傷圏内。回避不可の絶対領域。指先一つでも動かせば斬られる位置で背後を取られている。

戦う前から定められた敗北は音も無く砕蜂の元にやってきた。

風守風穴の忠告に従うのなら、最早これまで。砕蜂に出来ることは風守風穴に助けを求めることしかない。

縛道の七十七。『天挺空羅(てんていくうら)』。離れた相手に言葉を伝える鬼道で風守風穴に助けを求めるか。いや、あるいはあの風守風穴のことだ。砕蜂が大声で助けを叫べば、どこからともなく桃園の煙と共に現れるに違いない。

 

助けを、求めればいい。

 

勇者に助けられるのを待つ捕らわれの乙女の様に。英雄の帰還を待つ姫の様に。

女子供がする様に愛した男に助けてほしいと言えばいい。

 

救われるだろう。助けられるだろう。そうすれば待っているのが大団円であることは確実だ。

何しろ助けを求める相手は、風守風穴。千年を戦い抜いた勇者で諸人を救わんと志す英雄だ。

 

助けを、求めればいい。

 

そうすれば---

 

「………救われるだろう。他の数多(あまた)と同じ様に」

 

「砕蜂さん?なにか、言いましたか?」

 

卯ノ花烈は斬魄刀を抜いてはいない。両の手を柄に伸ばすこともせずにただ自然体のままで砕蜂の後ろに立っている。

それでも感じる恐怖と寒気が此処が死地であることを感じさせる。

 

ともすればあっさりと己の命が落ちるのを理解しながら、それでも砕蜂は吠えた。

 

「あの男は優しい。出会ったばかりの人間を救おうとするほどに。…私は、私は!あの男にとって!人間達と押し並べられる様な存在ではない‼」

 

砕蜂の手が斬魄刀へと伸びた。そして輝く白刃は明確な敵意。

 

「…砕蜂さん。勝てぬと知りながら、戦う愚を犯す気ですか?」

 

「ふん。もし仮にここで私が貴様と戦わずに、あまつさえ風守に助けを求めれば、私が風守にとって数多でしかないのだと私自身が認めることになる。そんな真似はせん。あの男が、風守が言ったのだ。私を特別(すき)だとな」

 

--俺はお前に恋をした。

 

その告白は、誰かを前にして風守風穴からの告白を話すことは砕蜂からしてみれば顔が赤くなるのを抑えられないほどの羞恥を孕んだもので、同時にどうしようもない爆弾であることは理解していた。

それでも卯ノ花烈に一瞬でも動揺を与えられればとそんな思いが込められていた。

 

しかし、

 

「なるほど確かにその在り方はあの人にとって好ましいものでしょう」

 

卯ノ花烈は欠片も動じることは無かった。涼し気な顔のまま砕蜂からの告白を真正面から受け止めて、愛した夫の小さな悪戯を咎めるように、仕方のない人ですねと微笑んだ。

 

「ふん。随分と余裕なのだな。私が風穴と過ごした。み、蜜月を、し、知らぬから、そんな余裕のある態度を取れるのだ」

 

動揺を誘わなければ万に一つも勝ち目はない。それを理解しているからこそ続く砕蜂のらしくもない挑発に対して、尚、卯ノ花烈は微笑んだ

 

「砕蜂さん。確かに貴方はあの人が恋をしてしまう程に素晴らしい(ひと)です。死地においての気概。屈さぬという覚悟。その輝きは、あの人の網膜を焼いたことでしょう。けれど、ねぇ。砕蜂さん。心得ていますか?貴方があの人の特別であるなら、私があの人にとっての唯一であることを」

 

「っ!?抜かせ、貴様と私の差など‼」

 

挑発をしていたのは砕蜂の方だった。しかし、挑発に乗ってしまったのは砕蜂。

それは単に性格の差で積み上げてきた経験の差だった。

 

「出会った早さの違いでしかないだろう‼」

 

「いいえ、違います。貴方はきっと、あの人に救われたのでしょう?守られ助けられ、あの人に恋をした。けれど、私は違うのです。私はあの人を、傷つけ害した」

 

出会いは死地であった。生涯忘れることのない死闘の果てで卯ノ花烈は愛を叫び、風守風穴を斬り殺そうとした。傷つけたし傷つけられた。

卯ノ花烈は生涯消えぬ傷を負い。風守風穴に癒えぬ恐怖を植え付けた。

 

受け入れるだけの白痴の狂人に「理解できぬ」という気持ちを理解(わか)らせた。

 

それを成し得た自分は風守風穴にとって唯一(さいあい)なのだと、卯ノ花烈は嗤う。

常人には理解しがたい形の思いは、嗚呼(ああ)、確かに愛と呼ばねばならないだろう。

愛という形でしか表してはならないその思いは、しかし、砕蜂にとって到底受け入れられるものでなく。

 

「傷つけることが愛だと?ふざけるな。ふざけるなよ貴様!そんなものは狂気の沙汰でしかない‼」

 

「それで良いのです。だってあの人もとても真面とは言えぬ(ひと)なのですから」

 

砕蜂の叫びを卯ノ花烈はどうでもいいことだと切り捨てる。卯ノ花烈にとってそれは当然のことだった。解り合う必要などない。卯ノ花烈と風守風穴の関係を誰かに理解してもらう必要などない。

いや、あるいは風守風穴にさえ自分の気持ちを理解してもらう必要がないとさえ卯ノ花烈は思っている。

愛している。心の底から風守風穴という男を卯ノ花烈という女は愛している。

誰が何と言おうともその事実は揺るがない。

 

---卯ノ花烈(じぶん)がそう思うのだから、卯ノ花烈の中ではそうなのだ。

 

 

故に最早、問答は要らぬと切り捨てた。

 

「砕蜂さん。私は本心から、話し合いで終えることを望んでいたのですよ」

 

「ふん。それだけ殺気を出しながら、尚、斬る気がないと言うか」

 

「はい。斬る気などありませんでした。だって貴方は、既に斬られているのですから」

 

「っ!?あまり私を舐めるな‼--尽敵螫殺(じんてきしゃくせつ)雀蜂(すずめばち)』」

 

「---遅い」

 

勝敗は戦う前から決していた。誰もが理解していることだった。誰もが理解していることだから、勿論、砕蜂も分かっていた。刃が届く範囲において卯ノ花烈に勝てる者はいない。

 

故に砕蜂の左腕は始解したと同時に斬り飛ばされる。

一撃で腕一本を斬り落とされる。その光景を傍から見れば大失態に見えるだろうが、そうではない。砕蜂は強い。護廷十三隊二番隊隊長、隠密機動総司令官を務めた実力は本物だ。

そんな砕蜂であったから、片腕だけで済んだのだ。

 

「流石に素早い。両の腕を斬り落とすつもりでしたのに」

 

「ふん。あまり舐めるなと言っただろう」

 

脂汗を滲ませながら、利き腕が切り落とされなかったのが行幸だと砕蜂は笑う。

そして、万に一つだが勝機はあるのだと安心する。

片腕が切り落とされたが致命傷には至らなかった。ならば届くと砕蜂は踏み込んだ。

 

「片腕を切り落とされながら、まだ私に挑みますか?本気で勝てると?」

 

「『雀蜂(すずめばち)』の能力は弐撃決殺(にげきけっさつ)。攻撃した場所に現れる花を(かたど)蜂紋花(ほうもんか)を弐つ重ねれば相手は死に至る。---つまり、四肢を切り落とされる前に貴様に弐撃打ち込めばいいだけだろう‼」

 

正面から向かってくる砕蜂に対して撃激するために卯ノ花烈は斬魄刀を振るう。

横凪の一撃は砕蜂を捕え切り裂いた。ただの横凪がすでに回避不可。目にも止まらぬ早業。

 

(これ)にて、お仕舞」

 

しかし、

 

「舐めるなと、言った!」

 

胴から両断されたはずの砕蜂が卯ノ花烈の背後に現れる。隠密歩法四楓の参『空蝉(うつせみ)』。残像が残るほどの速度で繰り出される瞬歩。砕蜂は卯ノ花烈の回避不能の早業を神速をもって回避する。

瞬神とまで謳われた四楓院夜一が瀞霊廷を去った後、護廷十三隊において最速は間違いなく砕蜂であり、卯ノ花烈をもってしても歩法において砕蜂を上回ることは出来ない。

 

追いつけない速度で動く砕蜂の一撃を卯ノ花烈は受けるしかなく、卯ノ花烈の身体に蜂紋花(ほうもんか)が刻まれる。---筈だった。

 

卯ノ花烈より砕蜂の方が速い。しかし、速度において届かぬはずの刀が砕蜂を捕え浅い傷を刻み付けた。

皮膚を割かれ飛び散る血に砕蜂は思わず卯ノ花烈から距離を取る。

 

「どうしたのですか?来ないのですか?」

 

「…っ」

 

届かない筈の刃が届いた。それはつまり()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という矛盾。

 

天下無数に在るあらゆる流派を極め、あらゆる刃の流れを我が手に修めた『八千琉』の剣はそんな矛盾をいとも簡単に成し遂げる。

 

護廷十三隊において最速の死神が砕蜂であるのなら、卯ノ花烈は白兵戦最強。

刃の届く範囲において卯ノ花烈に敵う者はいない。

 

「来ないのならば、此方から行きましょう」

 

振るわれる刃を砕蜂は薄皮一枚を犠牲にして躱しきる。砕蜂ならば、卯ノ花烈の剣戟を避けることは可能だ。致命傷には届かない。しかし、刻まれ続ける傷から流れる血を止める事は出来ない。

積み重ねた血の重みが何時か砕蜂の足を止めるだろう。

結末は解りきっていた。砕蜂は目の前の相手の力量さがわからないほど馬鹿じゃない。

勝機は万に一つ。目の前の相手がただ強いだけの強敵であったなら、あるいは砕蜂が万に一つの可能性を掴み勝っていたかもしれない。しかし、目の前の相手は護廷十三隊で千年間を戦い続けた百戦錬磨の猛者。無駄な攻撃も、優位に置いて()くことも無く砕蜂を攻め立てる。万に一つの勝機の芽さえも潰しながら刃を奔らせる卯ノ花烈に対して砕蜂が出来ることはもう一つしか無かった。

霊力の全てを脚へ集める。速く。速く。ただ迅く。

砕蜂はそれのみに集中する。

 

「逃げ続けるつもりですか?」

 

砕蜂の狙いを見透かしながら卯ノ花烈は刃を止めることなく問いかけた。

 

「私を相手に時間を稼ぎあの人を追わせないつもりですか?なるほど、確かに貴方に出来るのはもうそれ位しかないのでしょう」

 

砕蜂の狙いを悟る卯ノ花烈には決して砕蜂への侮りや落胆の気持ちは無かった。むしろ今この時も『八千琉(じぶん)』の剣を傷を負いながらも避け続ける砕蜂に対しては賞賛の思いしかなかった。

砕蜂でなければ卯ノ花烈に対して時間稼ぎなど出来なかっただろう。両断され既に沈んでいた筈だ。

故に---

 

「お見事」

 

しかし―――

 

「残念です」

 

風守風穴が朽木ルキアを救うまでの時間を稼ぐ。そんな勝利に縋る砕蜂の目が卯ノ花烈の一言に揺れた。

 

「確かにあの人を放っておけば朽木ルキアを救うでしょう。しかし、あの人を止める為にやってきたのは私一人ではないのですよ?」

 

「………貴様以外、ほかの隊長格が相手ならば、あの男が勝つ。貴様とてわかっている筈だ。風守を止められるのは貴様と総隊長殿位だとな。だが、早々に総隊長殿が動くことはありえん。つまり風守を止められる者は今はいない」

 

「………なるほど、そうですか。貴方はあの烈士(れっし)の存在を知らないのですね。いえ、知ってはいるのでしょうが記憶に残してはいないのですね」

 

「烈士だと?」

 

「ええ、千年前なら、かの男の名を知らない者など尸魂界には居なかったのですが」

 

「千年前………まさかっ!?」

 

そう風守風穴を止められるだけの力を持った死神は卯ノ花烈と山本元柳斎重國以外にも千年前から存在する。

苛烈なまでの忠義故に忘れ去られた伝説の勇士。隊長となるべき死神でありながら、山本元柳斎重國在る限り生涯(しょうがい)一副隊長(いちふくたいちょう)で在り続けると誓った男。

 

その男の名は雀部(ささきべ)長次郎(ちょうじろう)

護廷十三隊一番隊副隊長を千年間務めている男だった。

 

 

 

 

 

 

 

「おぉ。誰かと思えば、久しいな。長次郎」

 

「………風穴」

 

「なんだ?」

 

「何故どうしてなどと、問う気はない。今のお前は護廷十三隊の敵となった。元柳斎殿の敵となった。ならば最早、私に迷いなどない」

 

「善哉善哉。わかっているさ。長次郎。お前と俺の仲だろう?お前の気持ちを俺は深く理解している。俺を捕えろと山本重國に命じられているのだろう?ならば、良い。止めてみろよ。あるいはお前に負けるのならば、悔いなどないさ」

 

「………では」

 

「ああ…では」

 

 

「「尋常に勝負といこうか」」

 

 

---穿(うが)て『厳霊丸(ごんりょうまる)

 

---痴れた音色を聞かせてくれよ『鴻鈞道人(こうきんどうじん)

 

 

 

 

 






作中での戦闘の裏で原作主人公一行は原作通りの戦いを繰り広げております(´・ω・`)

次回、対雀部長次郎戦。
某学園都市第三位然り、某聖槍十三騎士団第五位然り、雷使いが弱い訳が無いだろう(; ・`д・´)
勝てるのか風守風穴!瀞霊廷の未来はお前にかかっているぞ( ゚Д゚)



ブリーチの最終巻がいくら探してもないのですがなぜでしょう?
誰か熱狂的なファンが買い占めているのですかね(; ・`д・´)

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