BLEACHの世界でkou・kin・dou・ziィィンと叫びたい 作:白白明け
前回、前書きで書きました疑問。
光速1/3と音速×500はどっちが速いのか?という疑問に対して感想欄にて多くの方々に返答を頂きました。ありがとうございます<(_ _)>。疑問が一つ晴れました。
つまり、最速の斬魄刀は『黄煌厳霊離宮』という訳ですね!流石、雀部副隊長!!
ブリーチ最終巻を遂に手に入れました。
読み終えて、ああ、一つの時代が終わったのかと…小学生の頃から、長かったなぁとしみじみ思いました。
あと眠八號ちゃんが可愛い。
卯ノ花烈の胸の中で気を失い倒れ伏した風守風穴を見て雀部長次郎は安堵した。
安堵の溜息と共に卍解を解き、掻いていた汗を拭う。
「右腕に右足、それと鎖骨から肋骨に掛けての骨の三分の一が炭化していますね。雀部副隊長。少しやり過ぎでは?」
気を失った風守風穴を地面に寝かせて診察した卯ノ花烈の言葉に雀部長次郎は首を横に振る。
目の前の相手が重傷を負った夫を心配する妻だと理解しながらも、やり過ぎてなどいないと首を振った。
「風穴は強い。ともすれば、あっさりと私は負けていただろう」
風守風穴は強い。お互いに本気の勝負であるなら、自分に勝ち目など無かったと雀部長次郎は思っていた。
卯ノ花烈に介抱される風守風穴を見下ろしながら、雀部長次郎が思い出すのは千年前の大戦。世界の
愛を歌い救いを叫び戦った男の背に雀部長次郎は最悪を見た。
「斬魄刀『鴻鈞道人』の能力は文字通り、最悪だ。一度、解放を許せば周囲は阿片に沈む。全て破壊しつくしてやっと無効化できる」
瓦礫と化した瀞霊挺の一角を見ながら雀部長次郎は言う。
「そして、風穴が恐ろしいは斬魄刀の能力だけではない。さらに脅威となるのが、『風守』としての身体の
「…『剣八』の名の意味は『幾度斬り殺されてもは絶対に倒れない』。確かに否定はできませんね。雀部副隊長、貴方の卍解の雷撃を八度受けて尚、この人は生きていたのですから」
「いや、生きていただけではない。この男は立ち上がったのだ。貴女が来た。それだけで、息を吹き返した」
愛した女の前で無様は晒せない。男として素晴らしい感性だと雀部長次郎は感心する。
そして、ならばと考える。
愛した女の前では無様は去らせない。ならば、部下の前ではどうなのだ?守るべき弱者の前では?風守風穴が出す答えは決まっている。倒れる筈がない。
守るべき者の前で、救うべき者の前で、倒れぬが故の番人。『風守』の名だ。
「私であったから、風穴は倒れたのだ。戦う前から言っていたよ。私に倒されるのなら、悔いはないとな。風穴らしくもないことだが、こいつは私に甘えたのだ」
同じく山本元柳斎重國という死神の背に至高を見た同志だから。千年間を友に戦い抜いた戦友だから。
風守風穴は雀部長次郎に負けることを良しとした。
「そうでなければ、この男が倒れることなどありえない」
そう言い切る雀部長次郎に対して卯ノ花烈は確かにそうですねと風守風穴の寝顔を見ながら微笑んだ。
「この
卯ノ花烈の微笑を見ながら、雀部長次郎は安心した。それは先ほど卯ノ花烈が風守風穴に向ける狂気と呼んでも良い愛情を垣間見ていたから、卯ノ花烈が私が愛した彼は誰より強いなんて普通の女が言いそうなことを言ったことに対して安堵したからだった。
卯ノ花烈に対して失礼にならない様、背を向けてふぅと息を吐く雀部長次郎。二度目の安堵の溜息。
だが、しかし、雀部長次郎は知らなかった。それは彼が実直な男でとても紳士的な男性であったから。今まで女性と関係を持ったことはあったけれど、卯ノ花烈の様な女性と関係を持ったことは無かったから。
雀部長次郎は知らなかった。
狂気を孕んだ女が向ける男への愛の深さを知らなかった。
「
「
「---っ!?」
雀部長次郎はあり得ぬ声に息を飲んだ。
振り返ればそこにはあり得ない光景。傷一つなく立つ風守風穴の姿。
「なあっ!?卯ノ花隊長!?」
風守風穴の治療をするのはわかる。いくら風守風穴と言えど、卍解によって負った重傷をそのまま放置すれば命に係わるだろう。だが、だからと言って拘束もしないままに完治などさせれば、それは風守風穴が再び牙を取り戻すということだ。
瀞霊廷を敵に回しても尚、朽木ルキアを救うと吼えた猛き牙を取り戻すということだ。
それはしてはならない事。そんなことは考えるまでもなく分かる事。だというのに何故---そう問いかける雀部長次郎に対して卯ノ花烈はクスリと少女の様に笑った。
「雀部副隊長。何時から、私が瀞霊廷側だと錯覚していたのですか?」
「っ‼…最初から、風穴の味方をするつもりだったというのか?」
「はい」
「ならば何故、私に風穴の居場所を教えた‼」
「貴方を倒す為です。雀部副隊長」
「私を倒す為だと?」
「貴方は強い。最初から、風守さんの敵となるのは貴方と山本総隊長位だと思っていました。そして、貴方は現に卍解で風守さんを圧倒した。そんな貴方を倒すのは不意を突くしかありません。不意を突き、私と風守さんという二対一の構図を作り。そして、霊力を消耗した状況を作り出す」
雀部長次郎の頬に冷や汗が流れる。
目の前に並び立つ風守風穴と卯ノ花烈。二対一という構図。そして、卍解を行い霊力を消耗した状況。
気が付けば卯ノ花烈の掌の上に居た。
「そうでもしなければ、卍解を使う貴方を倒すのは難しい」
こうするしかなかったと卯ノ花烈は言う。
卍解とは死神として頂点を極めた者のみに許された斬魄刀戦術の最終奥義。死神として他と隔絶した霊圧を持つ者だろうと卍解に至れる者は極一部。それを発現できた者は一つの例外もなく尸魂界の歴史に永遠に名を刻まれる。
始解状態と卍解状態での斬魄刀の戦闘能力の差は一般的に5倍から10倍。
「雀部副隊長と私、風守さんの戦闘能力はほぼ横並び。そんな中で戦闘向きでない卍解を持つ私と卍解を使う訳にはいかない風守さんが、卍解を十全に使い
騙してごめんなさいねと笑う卯ノ花烈とその横でお前はそんなことまで考えていたのかと感心したように卯ノ花烈を見る風守風穴を前に、雀部長次郎は苛立たし気に歯噛みした。
「卯ノ花隊長。風穴に続き、貴方までもが元柳斎殿を裏切ると言うのか」
「…山本総隊長を、ひいては瀞霊廷を裏切る気はありません。そしてそれは風守さんも同じ筈。千年を共にした護廷十三隊をどうして裏切ることができましょうか。…しかし、確かめねばならないことがあるのも事実。その為に立ちふさがる者がいるのなら、越えねばならぬでしょう」
---朽木ルキアは現世にて罪を犯した。しかし、それは殛刑(死刑)に処される程に重い罪であったのか。
---今朝方、
卯ノ花烈の言い分はわかる。雀部長次郎とて裏で何か起きている気配は感じている。気になっていないと言えば嘘になる。
だが、しかし---
「それでも尚、通さねばならない忠義がある。元柳斎殿とて疑念を抱き考えておられる。しかし、それでも四十六室の決定は絶対。その掟が崩れれば尸魂界の秩序が乱れると仰っているのだ。だというのに、秩序を乱し無暗矢鱈と混乱を招く行い。仁義八行ありはしない。”
「何と言われようとかまいません。私にはそれでも信ずる”愛”があるのです」
問答はいらない。愛した男が強大なナニカと戦おうとしている。それに手を貸すことに何故迷う必要があるのでしょうかと卯ノ花烈は雀部長次郎の言い分を斬って捨てた。
それは一組織の長としてはとてもじゃないが正しいと言える判断ではなかった。
あるいは組織崩壊の悪手となる女の情。だが、卯ノ花烈は信じているのだ。
「それに、雀部副隊長もわかっている筈ですよ。風守さんが護廷十三隊を裏切る筈がないということを。この
朽木ルキアは救うべきだ。その風守風穴の判断に間違いはなく、自分の行動が後に奇手として生かされると信じている。
「問答は此れにてお
「ん?ああ、起きたばかりで良く分からないが、というかお前たちに捕らわれるものだと思っていたのだが、卯ノ花が手を貸してくれるということだな。全くお前は本当に俺が好きなのだな。嬉しいぞ。では、行くが、長次郎。流石のお前も俺達二人に今の状態じゃ敵わないぞ。無理はするなよ。俺はお前を極力傷つけたくないのだ」
「………ほざけ。私の”
雀部長次郎は二対一という劣勢の中で戦い。
そして、敗れた。
雷鳴轟く長次郎との二連戦。それを終えた俺達は護廷十三隊四番隊隊舎。卯ノ花が用意した一室に身を隠し治療を受けていた。
長次郎との初戦で負った傷に比べれば、再戦で受けた傷はごく軽いモノ。
卯ノ花と共闘する二対一の戦いだったのだから、それは当然の結果だった。むしろ、二対一という戦いの中でこれほど傷を負わせてきた長次郎は流石という他になく、倒れ伏した長次郎に俺は溢れん限りの賛辞を投げかけた。何故か長次郎は倒れ伏しながら俺を睨みつけ「煽っているのか」と激怒していたが、はて何故怒られたのか俺にはわからなかった。
「
「は、はい。大きな傷は塞がりましたので後は小さな裂傷の処置をすれば終了です」
俺を治療する卯ノ花烈の隣で砕蜂を治療していた護廷十三隊四番隊副隊長、
返事をしながらチラと俺を見る虎徹勇音。虎徹勇音は治療の最中もチラチラと俺を見ていた。「どうかしたか」と問いかければ、「どうかしたといいますか」と歯切れの悪い言葉を返しながら卯ノ花の様子を伺っていて、卯ノ花が自分の視線に何も返さないと悟れば、意を決したように俺の方を見て口を開いた。
「…あの、風守、風穴さんですよね?私は虎徹勇音と申します。卯ノ花隊長との婚儀の際に一度会っているんですが、覚えていますか?」
「ああ、覚えているとも。虎徹勇音、日頃から卯ノ花が世話になっているな」
「い、いえ。世話なんてそんな。私は卯ノ花隊長に助けられてばかりで…じゃ、じゃなくて、あの本人ですよね?」
「ああ」
「………えっと今の風守さんは現世で禁止事項行使を犯した所為で四十六室から捜索の命が出ている罪人で、旅禍と一緒に侵入してきた、その、侵入者ですよね?」
虎徹勇音の顔色が段々に悪くなっていく。
「ああ」
「………砕蜂元隊長も同じですよね?」
「ああ」
「………そんな人たちが隠れるように治療を受けている訳って」
虎徹勇音の顔色が土気色に変わってきた所で卯ノ花はようやく口を開いた。
「勇音。今は砕蜂さんの傷の手当てに集中を。詳しい話はあとで話します」
「は、はい」
卯ノ花の言葉に大柄な身体をびくりと震わせた後、再び砕蜂の傷の治療に集中し始めた。
その様子を横目で見て、取りあえずの俺への質問は終わったのかと判断して、治療を受けながら卯ノ花としていた話の続きを再開する。
「でだ、卯ノ花。惣右介が殺されたというのは本当なんだな?」
「はい。今朝、
「………確実に死んでいたのか?」
「はい。検死を行いましたから、間違いはないでしょう。何か気になる点でも?」
「いや、お前がそう言うのなら、そうなのだろうな。そうか、惣右介が死んだのか。…残念だ。惣右介は凄い奴だから、これからの護廷十三隊にとって中枢となってくれればと思っていたのだがな」
無常であるが、死んだというなら、それは無理だった。
藍染惣右介の死。湧き上がる疑念を悟られぬように気を付けながら、卯ノ花と会話を続ける。
卯ノ花が検死をしたのなら間違いなどは無い筈だ。十中八九、藍染惣右介は死んでいる。
だがもし、残りの一が起きているのなら、ことは俺一人では対処することの出来ない事態なのかもしれないと思いつつ、それでも俺は卯ノ花に疑念を打ち明けることはしなかった。
---惣右介が護廷十三隊に必要だと思う。その気持ちに嘘偽りなどないのだから。
「卯ノ花。俺は傷が治り次第、朽木ルキアを救う為に再び懴罪宮に向かう。お前はお前の思うように別行動で動いてくれ」
「…雀部副隊長が倒れた今なら懴罪宮に向かうこと自体は可能でしょう。しかし、殛囚(死刑囚)である朽木ルキアを奪還したとなれば山本総隊長とて重い腰を上げるでしょう。そうなれば、戦うこととなりますよ?」
「わかっているさ」
「風守さん。貴方は強い。他の誰よりも。しかし、山本総隊長だけには絶対に勝てません」
「わかっている。…他ならぬ俺が決めた。俺は生涯、山本元柳斎重國だけには勝てぬとな」
「わかっているのなら、私は止めません。けれど、死んでは駄目ですよ」
丁度、治療を終えた卯ノ花が俺を抱きしめる。甘い花の香りが俺を包んだ。
柔らかな腕が背中に回る。俺も卯ノ花の腰に手を回しながら抱きしめ返した。花の香が強くなった。
( `ー´)ノ勝った!第三部完‼
(^^)/もう一回遊べるドン‼
(´・ω・`)