BLEACHの世界でkou・kin・dou・ziィィンと叫びたい   作:白白明け

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BLEACHのラスボスさんが負けてしまった敗因は色々あるだろうけど、一番まずかったのはせっかく藍染様を拘束していた椅子を壊しちゃったことですね‼
ほっときゃいいのに何で壊すかな!うっかりさんめ(; ・`д・´)





太陽との出会い方②

 

 

 

瀞霊廷外園。殛刑最終執行者『双極(そうきょく)』が鎮座する崖の近くに四楓院夜一と浦原喜助がかつて作った隠れ家があった。朽木ルキアを懴罪宮にて奪還後、黒崎一護達は四楓院夜一の案内の元でその隠れ家へとやって来ていた。

殛刑に処される予定の朽木ルキアがまさか『双極』の傍で身を潜めているとは、捜索に当たっている護廷十三隊の隊士たちは思いもしないだろう。

盲点をついた四楓院夜一の策の元で一先ずの安全を確保した黒崎一護達。

 

そこで彼らは対峙していた。

 

「待て一護。どこへ行く気じゃ」

 

「決まってるだろ。風守さんを助けに行くんだよ」

 

外に出ようとする黒崎一護を止める為に四楓院夜一は立ちふさがる。

 

「ならぬ。おぬし一人で懴罪宮に戻った所で何になると言うのじゃ。あの場に近づいていた巨大な霊圧をおぬしも感じたじゃろう。あの霊圧は護廷十三隊総隊長山本元柳斎重國のもの。万に一つも勝ち目はない」

 

「だとしても!風守さんは戦っているんだろう!今、助けに行けるのは俺だけだ!」

 

「うぬぼれるな。おぬし程度が助けに言った所で、あの男の助けにはならん」

 

「なら!夜一さんも一緒に戦ってくれればいいだろう!」

 

悲鳴の様な訴えだった。とても人にものを頼む態度じゃなかった。しかし、黒崎一護の口は動いていた。必死だった。だが、続く助けに生きたいという声は徐々に小さくなって消えていた。

黒崎一護もわかっていた。懴罪宮の大橋の上で近づく山本元柳斎重國の霊圧を感じただけで足が震えた。風守風穴の斬魄刀の能力が無ければ身体を動かすことも出来なかった。それほどまでの力の差。隔絶された力の前で震えるだけだった身体だ。

足手纏いになることをわかっていた。

けれど、

 

「…助けに行くって、言ったんだ」

 

「…一護」

 

「…傍目で見えたんだよ。震えていたのは俺だけじゃねぇ。風守さんの手も震えていたんだよ。護廷十三隊の総隊長が、どんな奴かは知らねぇ。けど、俺は戻んなきゃなんねぇんだ。出来る出来ないの問題じゃねぇだろ!」

 

「………駄目じゃ」

 

「夜一さん!」

 

なら俺一人でも行くと啖呵を切りかけた黒崎一護だったが、それを制する様に四楓院夜一は微笑した。

 

「”今は”のう」

 

「”今は”?」

 

疑問を表情に浮かべる黒崎一護に説明するように四楓院夜一は黒崎一護に近づき、黒崎一護が背負う斬魄刀『斬月』に触れる。

 

「今のお主が助けに戻った所で足手纏いでしかない。じゃが、三日あればお主にも可能性が見えてくる。あるいはあの男と山本元柳斎重國の戦いの援護位は出来るかもしれん」

 

「…修行ってことか?けど、時間がねぇだろ。三日なんて待ってられるかよ。風守さんは今この時も戦ってるんだ。三日後なんて、戦いはもう---

 

「終わらんじゃろう」

 

---え?」

 

全てが終わった後では意味がないという黒崎一護の言葉を四楓院夜一は否定するように首を振る。そして『斬月』から手を放し黒崎一護から視線を外すと困った様に佇んでいた朽木ルキアへと視線を映した。

 

「朽木ルキア。あの男と親交のあったおぬしなら、わかるじゃろう」

 

四楓院夜一の問いかけに朽木ルキアは戸惑いながらも頷いた。

 

「た、確かに。風守殿であるのなら、総隊長殿を相手にしても直ぐにやられてしまうことは無いと思いますが」

 

「その通りじゃ。山本元柳斎重國は強いが、あの男とて強い。直ぐにはやられん。控えめに言ってあの男の生命力は異常じゃ。蜚蠊並にしぶとい」

 

「ご、ゴキブリって、夜一さん」

 

「その…流石に言い過ぎでは」

 

「言い過ぎではない。あの男と戦った儂が言うのじゃから間違いはない。それにあの男など蜚蠊で十分じゃ。害虫か益虫かで言えば完全に害虫の類じゃしのぅ。見つけたら基本的に叩き潰した方がよい類の狂人じゃ」

 

緊迫した場を和ませようと冗談交じりにニマニマと悪い笑顔を浮かべてそう言い切った四楓院夜一だったが、黒崎一護達から行き詰った空気が消えたのを確認すると真剣な表情に戻る。

 

「あの男はそうそう死なん。たとえ戦いに敗れたとしてもどうにかして命は繋ぐ筈じゃ。じゃから、一護。おぬしは三日で力を付けろ。次に山本元柳斎重國とぶつかる時にあの男の隣で戦えるようにのぅ。今は次の戦いに備える時じゃ」

 

「次の戦い…」

 

「ああ、そうじゃ。朽木ルキアは助け出せた。じゃが、戦いはまだ終わっとらんぞ」

 

 

---黒崎一護達(かれら)の戦いはこれからだ。

 

---しかし、風守風穴の戦いは此処で終わる。

 

 

 

 

 

 

敵わないから逃げろと叫ぶ身体を阿片に痴れさせ無理やりに戦わせる。頼むから頭を下げろと懇願する脳髄を阿片漬けにして狂わせることによって正気を保つ。

戦う為に阿片に頼るその様は常人から見ればまさしく異様だろうと理解しながら、それでも尚と笑ってみせる。

 

「敗北は千年前に知っている」

 

---万象一切灰燼と化せ『流刃若火《りゅうじんじゃっか》』---

 

「ならば、成すべきことはどう負けるかに他ならない」

 

黒崎一護達が安全な場所に避難するまでの時間を稼ぐ。それこそが俺の成すべきことだと理解している。だがしかし---

 

「それが無意味であることも、知っているさ」

 

天に輝く太陽にもし眼があるとするのなら、それは天眼に他ならない。逃げようとも逃げ切れる訳もなく、背後から振るわれた熱量で身体は一瞬のうちに蒸発して失せるだろう。

 

故に天へと掲げた『鴻鈞道人』を振り下ろす。

 

人皆(ひとみな)七竅(しちきょう)()りて、()って視聴食息(しちょうしょくしょう)す。()(ひと)()ること()し」

 

--広がれ万仙の陣。

 

斬魄刀『鴻鈞道人』から溢れ出す阿片の煙。濃度は最大。常人であれば一呼吸の内に永遠の桃園の夢へと誘う煙を吸えばいくら山本元柳斎重國であろうとも身体に機変を齎すだろう。

それをわかっているからこそ山本元柳斎重國は斬魄刀『流刃若火』から溢れ出す業火を以て桃色の煙の全てを焼き消した。

 

戦闘開始から此処までは、千年前の焼き増しだ。言葉にする必要がないほどに明確な『鴻鈞道人』と『流刃若火』の相性の悪さ。それによって生じる圧倒的な戦力差に強張る身体を無理やりに動かして、俺は千年前から進むための一歩を踏み出した。

瞬歩ではない。すり足からのただの半歩の前進。一歩踏み込めば斬られるとわかっていたからの半歩だけ前進は、しかし、次に繋がる万里への道だ。

俺の前進に対する山本元柳斎重國の行動を制限するために斬魄刀に添えていた右手を外し拳を握る。

握った拳を山本元柳斎重國に向けながら鬼道を詠唱する。

 

「…無駄なことを」

 

近接戦の最中に詠唱できる短い詠唱の鬼道であれば脅威などないと言う山本元柳斎重國の言葉を無視しながら、俺は詠唱する。

 

「破道の九十六---

 

「---な」

 

俺の口から紡がれた詠唱に山本元柳斎重國は絶句した。

それは仕方のないことだった。九十番台の鬼道の詠唱破棄。加えて詠唱したのは焼き焦がした自分の身体を触媒にしてのみ発動できる犠牲破道。

犠牲破道とはいえ、もしこれが戦いの終盤に機能を失った四肢を斬り捨て発動したものであったなら山本元柳斎重國も此処まで驚愕することはなかっただろう。

だが、あろうことか俺はソレを序盤でやらかした。流石の山本元柳斎重國もビビるだろう、斬魄刀『流刃若火』から放たれる熱量で多少の火傷を負ってはいるがまだ自由に動く己が腕を切り落とす行為。

 

 

一刀火葬(いっとうかそう)”。

 

 

火には水。否、炎には炎だ。山本元柳斎重國へと突き出した拳から刀の切っ先から物打までを模した爆炎が放たれた。

 

「ぐぅ…風守、(まこと)に死ぬ気か」

 

”一刀火葬”の熱量を正面から受けた山本元柳斎重國は即座に瞬歩で距離を取った

左腕が炭となって砕け散る。四肢の一本を犠牲に山本元柳斎重國から後退を勝ち取ったという事実に酔い痴れながら、俺は一本になった腕で斬魄刀『鴻鈞道人』を握り距離を詰める。

山本元柳斎重國の斬魄刀『流刃若火』の真髄が発揮されるのは圧倒的な熱量が逃げ場の無いものへと変わる接近戦。太陽の外園を回るのはそれこそ惑星級の強度がなければできはしない。

なら接近戦こそが死地。それでも尚と前へと歩む。

 

「…前へ。前へ。前へ!前ぇへぇええ‼」

 

零れる叫びは己への鼓舞でしかなく死地へと身体を前進させる。

この破れかぶれの特攻も千年前の焼き増しだった。

 

「愚かなり風守‼」

 

斬魄刀『流刃若火』の切っ先が向けられる。意思を以て向けられる熱量は俺の皮膚を容易く焼き肉を焦がし骨を溶かす。

 

「『鴻鈞道人』の煙を焼き消す時もないほど近づけば儂を討てると思うてか‼甘いのう。甘すぎて涙すら零れるわ‼『流刃若火』‼」

 

山本元柳斎重國の声に応じる様に『流刃若火』に刃先の通った軌道の空気に含まれる水分が即座に蒸発しパチパチと音すら立てる熱量が籠る。

それと共に山本元柳斎重國の眼から零れる涙を俺は見た。俺を本気で殺すと覚悟を決めた眼から流れた涙。しかし、頬を伝う前に蒸発して消えた(ソレ)は俺の見間違いに違いない。あの男が泣く筈などないのだから。

 

---人はもとより部下の命にすら灰ほどの重みも感じない男だった。

 

「そのお前が泣くか‼」

 

ふざけるなと漏れた本音(こえ)を掻き消すように俺は何時の間にか叫んでいた。

俺が生涯唯一痴れることの出来た阿片(ユメ)を振りまく男はそんな男ではない。

友が敵と成り戦うことに傷つく心など持ち合わせない冷血漢。そんな男が夢見に描いた燃えるように熱い護廷十三隊という妄想(ゆめ)だからこそ、俺は焦がれる程の夢を見た。

 

「老いたか山本元柳斎重國‼」

 

だとするのなら最早()れまで。俺は俺の意思を(もっ)てお前を越える妄想(ユメ)を見よう。

 

焼き焦げて死ぬという現実を妄想へ変える。意思を以て大火を越える。

千年前に踏み出すことの出来なかった一歩を、踏み出した。

 

「今のお前に俺は勝てるだろう。俺がそう思うのだから、俺の中ではそうなのだ」

 

「…今日はよく吼えるのぅ。引きこもりで人見知りで口下手な上に引っ込み思案な世間知らずの”阿片窟(とうげんきょう)の番人”よ」

 

振るわれる『流刃若火』に『鴻鈞道人』を打ち合わせる。一合、二合、三合。打ち合わせる度に焼き切れる身体を痴れさせながら痛みを消し去り距離を詰める。

互いの吐息が聞こえる程の近距離での戦闘は秒ごとに俺の身体を炭化させ、山本元柳斎重國の身体を阿片漬けにしていく。

技術という概念が介入する余地もない斬魄刀の能力と能力のぶつかり合い。

俺の身体が炭になるのが先か。山本元柳斎重國が阿片に屈するのが先か。

それとも二人とも倒れるか。

 

結末は三択。一番確率が高いのは最後の選択肢。

 

最早数えることの出来ない剣戟の末。その確率を変えんと俺達は動く。

 

俺の口から鬼道の詠唱が紡がれる。しかし、詠唱が終わる前に山本元柳斎重國の左手が斬魄刀から離れる。押し合いを不利にする行動の先は拳を俺の腹へと当てる必殺の構え。数瞬の隙間を縫うような鮮やかな手際の後、山本元柳斎重國は巖のような重い声でつぶやいた。

 

「”一骨”」

 

ドスンと岩盤が砕けるような音を俺は体内で聞いた。喉を通り上がってくる血の塊を無理やり飲み込み踏みとどまる。だが、僅かに崩れた体勢の隙を突き山本元柳斎重國は慈悲も容赦もない刃を翳した。

『流刃若火』の炎が切っ先を防ごうとする『鴻鈞道人』を包み込み押し止める。自由になった『流刃若火』の切っ先は上半身と下半身を両断する軌道を描こうとしていた。

 

「此れにて仕舞(しまい)だ」

 

そうして齎されるだろう灼熱を俺は言葉ではなく記憶でもなく身体で覚えている。

 

「さらばだ…”風守”。千年来の…盟友(とも)よ」

 

 

そして、風守(おれ)は死んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---千年前なら、死んでいた。

 

死を覚悟した瞬間、焼き切られた俺の上半身と下半身を繋ぐように粘つく赤黒いナニカが俺の腹から溢れ出す。血を煮詰めて濃縮したように赤黒いその液体の正体を俺は知らない。

俺が知らない以上、山本元柳斎重國とて此れが何かを知らないだろう。

斬魄刀『鴻鈞道人』の能力では勿論ない。俺は卍解以外の持ちうる全てを出して山本元柳斎重國と戦い敗れた。”万仙陣”も”落魂陣”も山本元柳斎重國には届かなかった。『鴻鈞道人』と『流刃若火』の絶望的なまでの相性の悪さを覆す第三の陣などない。

故に俺は死んだ。千年前、たった一人で阿片窟(とうげんきょう)への入り口を守っていた頃の風守(おれ)であったなら、死んでいた。

 

だが、しかし。

 

「今の俺には居るんだ。背中を預けられる仲間が、愛し愛した妻がいる‼」

 

「---卯ノ花、烈‼」

 

死地とかした懴罪宮の一角にある棟の上、山本元柳斎重國が睨みつける先に卯ノ花烈は居た。

俺は朽木ルキアを救う為に懴罪宮へと赴く前に卯ノ花烈に好きに動けと言っていた。

だから、信じていたぞと卯ノ花烈に笑いかける。

 

「やはり、俺の後をつけていたか」

 

「ええ、愛した夫が死地に赴く。なら、私はその後を追いましょう。例え待っていろと言われた所でその場にとどまり待つ程に、私は大人しい女ではありません」

 

「愛い愛い。お前はそんなに俺のことが好きなのだな」

 

そして嬉しいぞと笑う頃には両断された上半身と下半身は赤黒い粘つくナニカによって繋がれていた。

 

---卍解『皆尽(みなづき)』。

卯ノ花烈の持つ斬魄刀の卍解の能力を俺は知らない。夫である俺が知らぬのだから、きっと卯ノ花烈本人以外は誰もその斬魄刀の能力を知らないのだろう。

だが、わかっていることもある。それは『皆尽』という卍解が永遠に戦いを愉しむ為に傷を癒す術を身につけた埒外の修羅が修得した卍解であるという事。

そしてこの瞬間。千分の一秒という刹那だが、山本元柳斎重國という怪物に隙を生じさせる鬼札となるという事。

 

「終わりだ。山本重國‼」

 

そして知れ。百年前に卯ノ花烈から教えられた俺が知った驚愕の事実を知れ。

 

「お前は確かに最強だ!だが、最強など最愛に比べれば取るに足らぬものらしい‼皆、()れが大好きなのだろう?---愛のチカラというやつがなぁ‼」

 

千分の一秒の隙を突き『鴻鈞道人』の刃で山本元柳斎重國を切り裂いた。刃先の数センチのみが身体を裂いた浅い傷。しかし、それで勝敗は決する。

斬魄刀『鴻鈞道人』の刀身から直接投与される阿片の毒の濃度は煙として立ち上るソレの比ではない。

切っ先一つ沈めれば終わる。それは千年前から分かっていた事実で千年前にはたどり着けなかった万里の果ての勝利だった。

 

「俺の勝ちだ‼」

 

阿片に毒された山本元柳斎重國の身体はバランスを失い崩れ落ちる。思考回路も最早真面ではないだろう。数秒の後に意識を失うに違いない。

だがしかし、避けられない敗北を前に、それでも山本元柳斎重國の眼から燃えるような闘志が消えることはなかった。

 

「---笑止‼」

 

瞬間、山本元柳斎重國の身体が炎に包まれる。己が斬魄刀の能力で己の身体を焼き焦がす。

それはいくら山本元柳斎重國が斬魄刀『流刃若火』のチカラを完全にコントロールすることが出来ているとはいえ焼身自殺としか言えない有様だった。

だが、山本元柳斎重國は己が身体を焼き焦がした痛みによって正気を取り戻し、身体にしみ込んだ阿片の毒を焼き消した。

 

「なん…だと…?」

 

「何を驚く。己が斬魄刀で己を傷つけることなど、貴様が常日頃からやっていることであろう。貴様に出来て儂にやれぬ訳も無し‼」

 

山本元柳斎重國の身体が重度の火傷を代償に自由を取り戻す。

 

「万策を打ち隙を突き沈めようとも太陽は登る。烈火の如く在れ。それが儂が儂自身に課した枷じゃ‼太陽は燃え尽きはせぬ‼」

 

護廷十三隊総隊長。山本元柳斎重國。

 

卯ノ花烈と連携して尚、勝てない。俺が最強と(もく)した死神は紛れもない最強だった。

能力として己の身を炎で包むのならわかる。前もって霊圧を調整し己の身体を傷つけない様に気を付けて炎を纏うなら山本元柳斎重國が以前に戦いの中でやっているのを見たことがあった。

だが、何の準備もない中で、生死を分ける死闘の中で、火中の栗を拾いに行くなんて思いもしなかった。

 

「く…ぐぅ…」

 

「万策尽きたか。ならば、ほれ、逃げても良いぞ。………直ぐに捕えて殺すがな」

 

「…負けだ。俺と卯ノ花の、負けだ」

 

俺の敗北宣言に山本元柳斎重國は悪辣に笑う。

 

「儂らの戦いは懴罪宮を焦土に変えたぞ。負けを認めようと許しはせん。風守風穴。卯ノ花烈。千年来の我が盟友(とも)よ。安心せよ。同じ墓に入れてやる」

 

殺すという山本元柳斎重國の発言に動じることは無い。最初から分かっていた。負けを許される戦いではなかった。朽木ルキアを救う為に瀞霊廷に弓を引き、護廷十三隊を敵に回したのは俺や砕蜂が中央四十六室によって裏切者の烙印を押さた罪人であったからだ。たとえ何を言った所で山本元柳斎重國という男の心には響かず中央四十六室の判決も覆ることがないと知っていたからだ。

 

黒幕の存在を話す前にまずは勝たなければならなかった。話をするだけの時間を勝ち取らなければならなかった。罪人の話など聞かぬというだろう相手を倒し、倒れ伏す相手に真実を説明しなければならなかった。

そうでもしない限り、誰も裏切者の話など聞かないだろう。護廷十三隊とはそういう組織だ。頭が固いと思う。だが、全ては護廷が為の規律と秩序。

中央四十六室の決定は絶対。踏み込んではならない不文律がある。

 

それをわかっているから俺も浦原喜助や四楓院夜一も戦うことに決めた。

 

勝たなければならない戦いだった。負ければ殺されるとわかっていた。

だから、何重にも策を張った。神算鬼謀の頭脳を借りて。

 

---風守サン。ワタシは尸魂界には行けません。だから、策を授けるっス。

 

神算鬼謀の天才は穿界門(せんかいもん)を潜る前の俺に笑いながらそんなことを言った。

 

---もし仮に瀞霊廷についた時、卯ノ花隊長が敵でなかったなら、山本総隊長を倒す策がありまます。

 

そうして語られたのは策は状況を全て仮定し作ったモノ。もしその策がただの一つだけなら、妄言と笑って飛ばされるようなモノ。けれど、その過程の策が三十余りもあったとするなら。それはもう予言と言っても良いモノだった。

 

---向かう先は戦いです。敗けたら死ぬんス。死なない為に死ぬほど準備しました。だから、死んじゃ駄目っスよ。

 

 

「俺達二人なら、負けていたな。卯ノ花」

 

「ええ、よかったですね。あの(ひと)が居て」

 

「ああ、本当に良かった。持つべきものは下駄帽子の天才と、恋した少女だ」

 

 

「卍解‼」

 

 

卯ノ花列が立つ懴罪宮の塔とは反対の塔から声が聞こえた。

彼女もまた傷を癒した後で卯ノ花烈と共に俺を助けにやって来てくれていた。

その事実が俺に恋しいという熱を抱かせ、勝利を齎す。

 

「『雀蜂雷公鞭(じゃくほうらいこうべん)』‼」

 

山本元柳斎重國との戦いを終わらせる為、砕蜂の卍解が解放される。そして、放たれた金色の蜂の針を模した巨大な砲弾は俺と山本元柳斎重國を諸共に爆破することになる。

 

いくら山本元柳斎重國と言えど、ここからの挽回はあり得ない。互いに体は満身創痍。そこに破壊力だけに特化した砕蜂の卍解『雀蜂雷公鞭(じゃくほうらいこうべん)』が放たれた。

たとえどちらか一方が爆破範囲から逃れようとしようとも相手がそれを許さない状況。

それをわかっているからだろう。山本元柳斎重國は放っていた殺気を消し呆れた様にいった。

 

「…風守よ。この期に及んで貴様は、何という馬鹿な手段をとるんじゃ」

 

「俺じゃない。浦原喜助の策だ」

 

「それに乗る貴様も馬鹿だろうて。儂を打ち倒す為とはいえ、貴様も無事では済まんだろうが」

 

「なに、お互いに死にはしないさ。それに俺には看病してくれる妻がいる」

 

「…そうか。呆れてものが言えんが、まあ、よかろう。風守よ」

 

「なんだ?」

 

「貴様の勝ちだ」

 

---眼を覚ましたら話くらいは聞いてやろう。

 

そんな声を最後に聞いて俺達は爆発した。

 

 

 

 




最強は山本総隊長‼異論は認める‼
けど、やっぱり最強は山本元柳斎重國さんだ!

炎使いが最強と言う古典的展開は大好きです。
最近の炎使いは噛ませ犬か有能だが優秀でしかないエリートキャラのと言うイメージが悲しい(´・ω・`)

あと、卯ノ花さんの卍解『皆尽』の能力は何なんでしょう(´・ω・`)
取りあえず作中では回復させる能力として使用させていただきました。

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