BLEACHの世界でkou・kin・dou・ziィィンと叫びたい   作:白白明け

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時間は飛んで千年後。原作で言う過去編。
黒崎一護達が活躍する百一年前です。


千年後の出会い方

日が昇り切った正午。

瀞霊廷。”護廷十三隊”。総隊長、山本元柳斎重國より発せられた隊首会の招集によって一番隊隊舎には護廷十三隊の隊長12名及び副隊長12名が集められていた。

その場に居る多くのものが浮かべる表情は困惑だ。急遽集められた隊首会。総隊長である山本元柳斎重國が今から話すだろう内容を知るものは少ない。

加え、通常時の隊首会であるなら隣接する別室で待機を命じられる筈の副隊長も招集されているという異例ともいえる事態に困惑するなという方が無理だった。

集められた十二人の隊長と副隊長たち。彼らは個々にこの隊首会の意味を考察する。

考察の末に一番正答に近づいたのは五番隊副隊長、藍染惣右介だった。

彼は持ち前の類まれなる頭脳をいかんなく発揮して最も正解といえる答えを弾き出した。

 

「(…総隊長である山本元柳斎が招集する隊首会には隊長格の参加が義務付けられている。しかし、この場に居る隊長は十二人。十一番隊隊長がいない。それが意味することは、十一番隊の隊長は今、招集に応えることは出来ない状態であるということ。……怪我、いや、死んだか)」

 

護廷十三隊の中でも戦闘専門部隊の異名を取る十一番隊は特殊な部隊だ。十一番隊の隊長は代々”剣八”の名を持つもの。

”剣八”。

それは護廷十三隊設立当初は護廷十三隊の死神の中で『何度斬られても倒れない』という強靭な死神に与えられる称号であったが、現在ではその名を継ぐことが十一番隊の隊長になる証となっている。

そして、現在”剣八”の名を継ぐ唯一の方法は先代の”剣八”を破ること。

 

「(つまり、十一番隊の隊長を務めていた”剣八”が敗れ、新しい”剣八”が生まれたのか。この隊首会は新しい”剣八”の顔見せの為のもの。だから副隊長も出席を命じられた)」

 

通常護廷十三隊の隊長になるには複数の隊長格からの推薦を受けるか隊長格三人以上が見届ける中で行われる隊首試験に合格しなければならない。しかし、十一番隊だけは先に話した通り別枠が設けられている。

 

「(隊員二百名以上の立会いの下、現隊長を一対一の対決で殺すこと。それを果たした新しい”剣八”か。前任者の”剣八”も、まあ、弱い方ではなかったのだが、驚いた)」

 

藍染惣右介は前任者の”剣八”が敗れたことに驚いた、のでは勿論ない。藍染惣右介から言わせれば、前任者の”剣八”など取るに足らない男だった。だから、驚いたのは其処ではない。

藍染惣右介が驚いたのはその速さだった。

 

「(僕は今日の朝頃、先代”剣八”に瀞霊廷内ですれ違っている。つまり、新しい”剣八”は朝から今までの数時間の間に先代”剣八”を破り山本総隊長にその実力を認めさせたということになる)」

 

破ること自体はたやすい。しかし、短時間で破るとなると話は別だった。

 

「(面白い)」

 

藍染惣右介はその感情を完全に取り繕った仮面の下に隠しながら、他の副隊長たちが浮かべる困惑の表情を滲ませながら、山本元柳斎重國の言葉を待つ。

これから現れるだろう”剣八”がどんな男なのかを考えながら、あわよくば藍染惣右介がその胸の中で、奈落に渦巻く闇の如く温めている野望の糧にしようかと考え、心の中で微笑を浮かべる。

 

しかし、山本元柳斎重國の言葉は藍染惣右介が頭の中で考えていたことを大きく外れたものだった。

当たっていたのはただ一つ。この隊首会の目的が顔見せであったということだけ。

 

「元柳斎殿。そろそろ時間ですが…」

 

「………わかっておる。長次郎。はぁ、全くあの馬鹿者はまた来ぬか。いい加減、”挿げ替え”を考えねばのう」

 

一番隊副隊長、雀部(ささきべ)長次郎の言葉を受けて山本元柳斎重國は持っていた杖を床に打ち付ける。乾いた音が辺りに響いた。

 

「十一番隊隊長が不在だが、定例通り此れより隊首会を始める」

 

「(なに?十一番隊隊長は死んだんじゃないのか?)」

 

藍染惣右介が困惑する中、山本元柳斎重國の話は進む。

 

「先日、長きに渡る遠征任務を終えた部隊が無事帰還した。一人の犠牲者も無き帰還であり、同時にこれまで踏み込むことが出来なかった虚たちの住処、『虚圏(ウェコムンド)』と呼ばれる場所に踏み込み、新たな情報を持っての帰還である。この功績は大きい」

 

「(な!?)」

 

「なんでスって!?」

 

山本元柳斎重國の言葉に声を上げ驚いたのは先日、隊長職に着任したばかりの十二番隊隊長、浦原喜助。彼の声がなければ声を漏らしていただろう藍染惣右介は出かけた驚きの声を何とか飲み込み平静を装う。しかし、その心の内は荒れ狂っていた。

 

「なんじゃ、喜助。その遠征隊が持ち帰った『虚圏』とかいう場所の情報はおぬしがそこまで驚くようなものなのか?」

 

「驚くようなというより驚愕っスよ、夜一さん。『虚圏』はその存在自体は以前から確認されていたっスけど、実際に足を踏み入れたことのある死神なんていないっス。いえ、過去には居たかもしれませんが…”行って帰ってきた”のは、たぶん史上初めてのことなんじゃないですかね」

 

その通りだと藍染惣右介は心の中で同意した。『虚圏』。大虚(メノス)以上の位を持つ虚達が住まうとされるその場所は藍染惣右介が己が野望の為に目を付けている場所でもある。

故にそこに征くこと自体は今の藍染惣右介でも可能だ。しかし、その為に強いられる膨大な労力ゆえに、まだ機ではないと藍染惣右介は足を踏み入れたことはない。

 

「(その『虚圏』に私より先に足を踏み入れ、帰ってきただと)」

 

常に冷静であることを心掛ける藍染惣右介の眼に小さいとはいえ、彼らしくない怒りと苛立ちの感情が宿る。

 

「えっと、総隊長サン。その遠征隊の隊長を務めてたのって、どんな人なんスか?」

 

「僕も知りたいな山じい。そんな功績を上げるような傑物。僕も長らく隊長をやってるけど、心当たりがないんだよね。それだけ大きな功績を上げたんだ。新参者って訳じゃあ、ないんだろう」

 

浦原喜助の好奇心に乗るように声を出したのは八番隊隊長、京楽春水。隊長職を百年という長い間担ってきた古参といっていい京楽春水も知らない人物という話に、その場の全員が少し騒めいた。

 

「浦原クンが言うには護廷十三隊史上初めての快挙を成し遂げた人物。会う前に少しでもどんな人間なのか知りたいってのは、当然のことでしょう」

 

「うむ。確かに一理ある。だが、彼奴がどんな人間かは会えば自ずとわかること。故、彼奴が誰かなのかだけを伝えておこう。彼奴の名は風守(かぜもり)風穴(ふうけつ)

 

「風守風穴?聞いたことないなぁ」

 

「京楽春水。お主が知らぬのも無理はない。風守は嘗て隊長を務めたこともある男だが、それは遥か昔千年以上前の話だからのう」

 

「千年以上前?えっと、山じい。それってつまり、護廷十三隊発足当時の話ってことなのかな」

 

「然り。風守風穴は護廷十三隊初代四番隊隊長を務めた男じゃ」

 

静まり返る会場にただ事実のみが染み渡る。歴代最強と呼ばれる初代護廷十三隊。その隊長を務めた男の帰還。これからこの場に現れる男がまぎれもない傑物であることを理解して、その場の全員が目付きを変えた。

 

「うむ。話はもうよかろう。では、第九十八次特派遠征部隊部隊長、風守風穴!なかへ!」

 

山本元柳斎重國の言葉と共に見上げるほどに巨大な一番隊隊舎の扉が開いた。

 

「(これは、なんとまあ)」

 

「(彼が、初代四番隊隊長サン)」

 

「(ほう、驚いた)」

 

「(うむ…)」

 

「(風守、風穴)」

 

入ってきた男を見て、その場に居る者たちが抱いた感情は様々だったが、しかし、その大半は驚きを含んでいた。

入ってきた男の容貌は少なくとも千年以上前から生きて居るとは思えないほど若々しかった。黒々とした髪は量も多く髪質が固いからか所々外側にはねている。背丈は人の歳で言うなら十代後半のもので、顔つきもまだ幼さを残していた。

視線は緊張からか所なさげに彷徨い、唾を飲み込む喉の音が男の緊張の度合いを示した。

 

容姿も態度も幼さを感じさせる男。しかし、彼こそが初代四番隊隊長にして『虚圏』の情報を持ち帰るという史上初の功績を成し得た傑物なのだと、彼を侮るものはこの場には居ない。

その場の誰もが風守風穴という男を見定めようと山本元柳斎重國の言葉を待つ。

そして、久しぶりの戦友との再会に山本元柳斎重國は重々しく口を開いた。

 

 

 

「うむ。……………して、お主は誰だ?」

 

 

 

 

「「「「…え?」」」」

 

 

 

護廷十三隊。その内、千年前から風守風穴を知る山本元柳斎重國。雀部長次郎。現四番隊隊長、卯ノ花烈。それ以外の全員の声が揃った。腹に一物を抱え、この場の誰も仲間などとは思っていない藍染惣右介もまた例外でなく、彼らしくもない間抜けた声を出してしまっていた。

 

風守風穴、ではない少年は山本元柳斎重國の言葉にすぐさま跪き首を垂れて声を上げた。

 

「申し訳ありません!僕、いえ、自分の名は天貝(あまがい)繡助(しゅうすけ)と申します!第九十八次特派遠征部隊では風守部隊長の補佐を務めさせていただきました!」

 

「うむ。…おお、そうか。お主か天貝。すぐに名前が出てこず、すまん。こうして会うのは百年ぶりぐらいか。遠征ご苦労であった。天貝(あまがい)繡助(しゅうすけ)

 

「いえ!僕、いえ、自分なぞを覚えていただいていた上に勿体ないお言葉です!山本総隊長様!」

 

「して、天貝繡助。風守風穴はどこに行きおった」

 

「そ、それは、その、風守部隊長は先ほどまで一緒に居たのですが、え、えっと、急遽火急で至急の用事が、でして、その突然の事態に僕も、じゃなくて自分も混乱して、えっ、えっとつまり、風守部隊長は……」

 

「天貝繡助!」

 

「はひ!?」

 

「よい。風守風穴。何故、あの男がこの場を逃げ出したのか、あの男が語った通りに儂に聞かせよ」

 

「え、えっと、しかし、それはその…」

 

「よい。それでお主を罰することはせん。総隊長命令である。一語一句、違えることなく報告せよ」

 

「……はひ。では、すいません。風守部隊長はその…『引きこもりで人見知りで口下手な上に引っ込み思案な俺が知らない大勢に囲まれて自己紹介とか出来る訳ないじゃん。俺がなんで隊長職を降りて人気がない場所で働ける遠征部隊専門の隊長になったのか忘れたのか、あの爺は。そういう公の場所に出ない為だろ。という訳で繡助、後は任せた』とおっしゃって煙と共に何処かに消えてしまいました!申し訳ありません!」

 

ゴンと大きな音を立てて、床に打ち付ける勢いで頭を下げた天貝繡助。風守風穴が何処かへ消えた後、もう彼自身も限界だったのだろう。全てを吐き出したという風に汗だくだがどこか清々しさを感じさせる顔をしていた。

 

あるいは頭を下げ続ける天貝繡助は幸せだっただろう。

文字通り、烈火の如く怒る山本元柳斎重國の顔を見ずにすんだのだから。

 

「あの…馬鹿もんがあ!!!」

 

キレる山本元柳斎重國の顔に藍染惣右介は彼らしくもなく、少しだけビビった。

 

 




主人公一匹狼設定も恰好良くて好きですが、折角なので部下が欲しい。
けど、あまりオリキャラを出すと個性を書き分ける自信がないぞ・・・
という訳で折衷案。アニメオリジナルキャラクターに登場していただきました。

アニメオリジナルストーリー「新隊長天貝繡助編」より

天貝(あまがい)繡助(しゅうすけ)

市丸ギンが奔走後に三番隊隊長に任命される。アニメ内では始解もしてない攻撃で「理の外にあるもの」らしい断界の掃除屋、拘突を退けたりする凄い人。(※あれ?あれ倒せるのって藍染様くらいなんじゃ・・・って突っ込んじゃ駄目)
百十年前の過去編ということで外見は幼く過去編の市丸ギンや朽木白夜ほど。原作開始時位にはアニメと同じ位のナイスガイになっている予定。

あと、アニメの天貝繡助はある目的で暗躍したりするのですが、そこまで詳細に書く技量は自分にはないので、あくまで風守風穴の副官として頑張ってもらう予定です。



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