BLEACHの世界でkou・kin・dou・ziィィンと叫びたい   作:白白明け

33 / 55
短いですが生存報告ということで…

いやぁ、風呂敷を広げ過ぎた感がヤバいですな
全てはBLEACHに登場させたいキャラが多すぎるのが悪い

(゚∀。)y─┛~~







万仙陣との出会い②

 

俺は空を見上げた。

 

若々しくも雄々しい霊圧が一つ潰えるのを感じ取る。瀞霊廷各地で起こる戦闘により胎動し続ける空気を吸い込みながら、俺は嬉々として笑ってみせた。無論、この笑みはただの強がりだ。

俺は卯ノ花の様に修羅場で呼吸をする修羅でなく、俺には山本元柳斎重國の様に地獄を前に悪辣に笑ってみせるだけの胆力もない。

だから、黒幕と呼んだ藍染惣右介を追い詰めながら、ただの一手で全てを覆されたこの状況下で浮かべる笑みは強がりで、けれど、隣に立つ砕蜂に無様な姿を晒さない為に必要なことだった。

 

状況は悪い。護廷十三隊の並み居る古豪が藍染惣右介の策によって俺の前へと立ちふさがる。

各隊の席次持ちを斬ることは容易い。だが、彼らは敵に騙されただけの味方。斬り殺すことが出来ない以上、俺の『鴻鈞道人』を振るう手は縮こまる。

そして、縮こまった太刀筋では斬ることが難しい者達もいる。

 

「風守…風穴‼」

 

片膝をつき何とか地面に這いつくばることだけは耐えている朽木白哉。憎々し気に俺の名を吐きながら、その瞳の戦意は欠片も色褪せてはいなかった。

 

「朽木白哉。もう、良い。もう立つな。お前では、俺には勝てない」

 

(けい)、如きに…」

 

「その如きに、お前は勝てん。強さの問題だ。経験の差だ。そして何より、相性が悪い。『千本桜』。その斬魄刀の千に散った刃は敵を切り裂く無尽の刃に成れたとしても、煙は斬れない。お前が俺に向けて『千本桜』を振るう度、『鴻鈞道人』の阿片の毒が『千本桜』を犯していく。後はもう、一度目の戦いの焼き増しだ」

 

朽木白哉では風守風穴には勝てない。否、俺に勝てるのは今の護廷十三隊にはたった三人しか存在しない。山本元柳斎重國。卯ノ花烈。雀部長次郎。

始めから誰もがそう言っていた。わかりきっていたことだろうと、俺は朽木白哉を見下ろしながら素直な疑問を口にする。

 

「なぜ足掻く。なぜ諦めない。勝てぬと知りながら、なぜ剣を取る。朽木白哉。お前は卯ノ花の様な修羅ではないのだろう?なのに何故、自ら死地に赴こうとする」

 

痛いのは嫌だろう。苦しいのは嫌だろう。泥に塗れて倒れる様は屈辱の極みの筈だ。

 

「お前は何故、苦しみながら足掻こうとする?」

 

「………兄には、わからぬ」

 

「ああ、わからないから、聞いている」

 

「いくら言葉を並べようと…愚妹(ぐまい)を救うと吐きながら、私が兄に殺意を向ける理由すら、わからぬような狂人には、わかるまい」

 

朽木白哉の言葉を聞けば、その言い方はまるで俺が朽木ルキアに何か悪いことをしたような言いぐさだ。俺は朽木ルキアに何か悪いことをしてしまったのだろうか。その結果、朽木白哉は兄として怒っているのだろうか。

俺は、朽木ルキアに何かしたか。

 

「わからない。俺にはお前の言葉の意味が、わからない。朽木白哉。お前は何か、勘違いをしているのではないのか?俺は心の底から、朽木ルキアを救いたいと思っている。嘘はない。偽りはない。あの子は幸せになるべきだ」

 

「…その幸せを、兄がくれてやると吐くことが、私は許せぬ」

 

---たとえ、愚妹を救う男が居たとしても、貴様如きでは断じてない。

 

そう吐き捨てながら朽木白哉は三度立ち上がる。

砕蜂はその(さま)に苛立ちを覚えたようで、語尾を上げながら言う。

 

「ちっ、退け!朽木白哉!貴様などに構っている暇は私達には無いのだ!それでも尚、退かぬというのなら、私が貴様を---」

 

「良い。砕蜂」

 

「---風守、だが…」

 

「良い良い。朽木白哉の行動の意味を、俺は終ぞ知ることは出来ぬようだが、理解はしよう。ああ、朽木白哉。お前が俺の前に立つと、お前がそう決めたのなら好きにしろ。お前が俺を許せぬと思うのなら、きっとそれは正しいのだろう。お前がそう思うのなら、お前の中ではそうなのだろうよ」

 

---その信念を曲げずに向かって来ると言い。

 

「風守、遊びが過ぎるぞ。こうしている間にも、あの男は動いているのだぞ」

 

「なら、砕蜂は先に行っていてくれ。なに、俺もすぐに追いつく」

 

「…わかった」

 

仕方のない奴だとため息を吐きながら去っていった砕蜂の背中を見届けて、俺は朽木白哉に向き直る。

 

「…舐められたモノだな」

 

「舐めてなどいないさ。お前は強い。あと五百年もすれば、きっとお前は俺を越えているだろう。だが、今はまだ、俺の方が強い」

 

---だから、沈め。

 

呼吸は無く。瞬歩で朽木白哉への距離を詰める。片膝をついた低い姿勢で一息の内に振るわれる反撃の横凪を足を動かし踏みつける事で無効化する。

 

「散れ『千本---

 

「遅い」

 

再び始解しようとする挙動を許すことは勿論せずに『鴻鈞道人』の切っ先を朽木白哉の左肩へと突き刺す。

『鴻鈞道人』の切っ先に空いた四連の穴から漏れ出す阿片の毒が朽木白哉の身体を痴れさせる。

一秒と掛からぬ時間で、朽木白哉は戦闘不能(リタイア)だ。それを悟っているだろう、朽木白哉の眼だが、最後まで俺を睨みつけていた。

 

俺はその最後まで敵意を揺るがすことのなかった朽木白哉を見ながら、こんな男がいるのなら護廷十三隊の未来は明るいと笑った。

 

 

 

 

 

 

晴天を見上げながら、護廷十三隊三番隊副隊長、吉良イヅルは此処に至るまでの道程を思い返していた。

旅禍達の瀞霊廷への侵入。現世の者達による尸魂界への進行という前例のない事態に浮き足立っていた護廷十三隊だったが、吉良イズル自身は驚きはしても脅威だとは欠片も感じてはいなかった。当然だ。護廷十三隊とは揺るがぬ者達。現世と尸魂界の二つの世界を守る為に戦ってきた猛者達。幾ら侵入してきた旅禍達が霊力を持ち戦う術を持つ人間達だったとしても負ける道理などない。

そう信じていたし、今もそう思っている。そう侵入者が旅禍達だけだったのなら戦いなどとうの昔に終わっていた。

 

最強と呼ばれた死神がいた。

白兵戦なら最強を越える死神がいた。

最強と共に歩み続けた伝説の烈士がいた。

 

数千年という人間では理解できないほどに長い時間を生きて、千年という死神からしても長すぎる時間を護廷十三隊と言う組織の中で戦い続けた者たちがいた。

その内の一人でも本気で旅禍達と戦ったのなら、彼らは一夜も掛からず皆殺されていた筈だ。

吉良イヅルはそう思っているし、きっと誰もがそう思っていることだった。

そうならなかったのは偏に晴天に霞む桃色の煙を吐き出す最悪の死神が旅禍達と共にやってきたからに他ならなかった。

 

最強と並び立つ最悪は堅牢な瀞霊廷の門を開け進軍し、稲光を孕む雷雲を操る烈士を下し、白兵戦最強の死神を篭絡し、死闘の果てに最強すらも超えて見せた。

 

文字に並び立てれば否応なしに理解ができる瀞霊廷勢力の敗北の原因。元凶たる男。

 

「………はぁ、まったく面倒な」

 

元護廷十三隊三番隊隊長。元特派遠征部隊部隊長。風守風穴。

 

彼さえいなければきっと話はもっと簡単に進んでいたのにと吉良イヅルは灰に溜まった泥の様な感情を溜息と共に吐き出した。

 

その様子を見て吉良イヅルと対峙するように立つ男。護廷十三隊十一番隊第三席、班目(まだらめ)一角(いっかく)は興が削げるとでも言いたげな目で言う。

 

「おいおい。これからやり合おうって時に、なんだよ!その溜息はよぉ!」

 

「…君こそなんでそんなに元気なんだ。僕たちは同じ護廷十三隊の隊士だ。仲間に剣を向けるような行為なのに、なぜ君は」

 

「はっ!裏切り者が笑わせるぜ!総隊長命令に逆らってんのはテメェらだろうが!やり合いたくねぇなら話は簡単だ。其処をどけ!」

 

「それは出来ない。隊長命令だから…」

 

「なら、戦いたくねぇなんて吐いてんじゃねぇよボケが。戦う気があるなら、剣を握れ。溜息なんかつくんじゃねぇよ」

 

班目一角から苛立たし気に向けられる視線を受けながら、吉良イヅルは隈の濃い眼で自らが握る斬魄刀へと目を向ける。

 

戦う気があるなら剣を握れ。戦う気が無いなら立ちふさがるな。半端な気持ちで戦場に立つな。

班目一角の言い分はなるほど正論だ。戦士として持つべき矜持と戦う者が背負うべき責任を見せつける男の言葉に否定など投げかける者は戦場に立つべきじゃない。

そう思いながらも、吉良イヅルは頭を振った。

 

「僕はね…嫌いなんだ。戦うことが、争うことが、闘争の根源とも言うべきモノが、元来、性に合っていないんだと思う」

 

「はっ!おいおいテメェ。戦いたくもねぇのに、隊長命令だから戦うっていうのかよ。ギャクかよボケが。…テメェ、何しに来たんだ?」

 

「守りに来たのさ。僕は守る為に来た」

 

隈の濃い眼を吉良イヅルは班目一角へと向ける。

疲労。苦労。悲嘆。苦痛。あらゆる負の感情によって刻まれた昏い感情の眼に晒されて班目一角は理解する。

 

---ああ、コイツは心底戦うことが嫌いなのだと理解した。

   理解しながら自分には理解できぬと理解した。

 

班目一角は戦うことが好きだ。戦闘専門部隊と呼ばれる十一番隊においても、一番とは言えずともニ三を争う程には戦うことだ好きだと断言できる。

血潮が沸き立つ感覚に、神経が研ぎ澄まされていく瞬間に、傷つき傷つけられる修羅場に歓喜する感性を生まれながらに持っていた。

対して吉良イヅルは生まれながらに争い事が嫌いだった。

拳を握る者に対してどうして仲良く出来ないんだと問いかけたかった。

争うことへの疑問。暴力への否定。戦うことへの嫌悪を孕む吉良イヅルが何故護廷十三隊へ入り虚と戦うことを生業する死神になったのか。その理由は言葉にすればとても簡単で事実言葉に出していた。

 

---守る為。

 

「僕が市丸隊長の命令で君の前に立つのは守る為だ。僕が嫌々に戦うのは守る為だ。こんな僕に誇りがあるとするのなら、それは生まれてから一度だって守る為以外に戦ったことがないってことだよ」

 

「そうかよ。どうやら俺とテメェじゃ、美味い酒は呑めねぇらしいなぁ!」

 

「そうだね。それに僕は酒癖が悪いから、止めた方がいい」

 

戦いたい者たちの戦いが苛烈を極めるのなら、戦いたくない者たち同士の戦いはきっと凄惨なモノになる。

そして、戦いたい者と戦いたくない者との戦いが始まった。

 

 

「しゃおらぁ!延びろ『鬼灯丸(ほおずきまる)』‼」

 

班目一角の斬魄刀の形が始解と共に変化する。柄と鞘が接合し穂先が短刀状の槍へと姿を変えた。

 

「はっ!なぁおい!剣道三倍段って言葉を知ってか!俺はテメェの三倍強ぇってことだ!」

 

「適当なことを…言葉は知っているけど、まったく意味が違うじゃないか。君の戦い方には剣道のけの字もないよ。それに…君のそれは槍だろう」

 

迫りくる穂先を吉良イヅルは横凪の斬撃へ弾く。続き出した縦の斬撃はしかし、弾いた穂先が戻ってきたことによって中断された。ならばと一度引いてから凪ぐ下段切りはしかし、班目一角には届かない。

 

「そうだったか。けどよ、剣道三倍段は元来、槍と刀の戦力差を表した言葉だぜ。つまり、言いたい意味は全く同じだ。俺はテメェの三倍強ぇ」

 

「…そうかい」

 

---剣道三倍段。

 それは剣道の初段に勝つ場合、空手や柔道なら三段程の実力必要になるということ。無手で武器を持つ者へ戦いを挑むことへの愚かさを語ることにも引用される言葉だがしかし、元来は班目一角の言うように槍と剣の戦力差を比較する為の言葉でもあった。

 

そう言えばそうだったかと、班目一角の言葉を聞いて思い出した吉良イヅルは目の前の相手への警戒を上げる。どうやら相手はただの戦闘バカという訳ではないらしい。

現に言葉で勢いを付けてはいるが、勢いのままに攻撃し槍の長い間合いという有利を捨てる事はしていない。

吉良イヅルの表情が歪む。

 

「…どうやら、僕も出し惜しみしている暇はないようだ」

 

始解した斬魄刀を相手にする以上、吉良イヅルもまた始解を果たさなければならない。

一拍の内に取った槍の攻撃が届かない間合いで吉良イヅルは斬魄刀を始解した。

 

「面を上げろ『侘助(わびすけ)』」

 

 

 

 

 

 

 

「なんや。イヅルの奴、やる気になったんか」

 

吉良イヅルに班目一角と戦うように命令を下した男。護廷十三隊三番隊隊長市丸ギンは班目一角と吉良イヅルが死闘を繰り広げる直ぐ傍にいるというのに、戦場には似つかわしくない軽い空気を纏いながら軽い口調で笑うように言った。

 

「ほぅ。あの優男、見かけによらずやるじゃねぇか。テメェも少しは見習ったらどうだ。市丸」

 

そんな市丸ギンに対するように立つ、いや座る男。護廷十三隊十一番隊隊長、更木(ざらき)剣八(けんぱち)は胡坐を掻いて座りながら、市丸ギンに問いかける。

 

「テメェ、一体何を考えてやがる?」

 

「何って、何が?」

 

「テメェはジジイの命令に逆らってまで、俺達の邪魔を何でするんだって聞いてんだ」

 

「なぜって、そりゃ、僕としても君の邪魔なんてしたくてしてる訳やないよ。君、恐いもんなぁ」

 

---思ってもねぇことをいけしゃあしゃあと吐きやがるぜ。

更木剣八は言い捨てて立ち上がると口元を釣り上げた。

 

「まあ、いい。テメェがどんな考え持っていようが関係ねぇ。テメェとは一度、やり合いたいと思ってたんだ。なあ、市丸。()ろうぜ」

 

「ほんまに、恐いなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。