BLEACHの世界でkou・kin・dou・ziィィンと叫びたい   作:白白明け

51 / 55

以前、どこかで千年血戦編まで書きたいと書いたな…あれは本当だ( ゚Д゚)
ただし途中で筆が折れるかもしれないし、また完結まで二年かかるかも知れないがな!!
( `ー´)ノ

という訳で細々と再開します。皆様の暇つぶしになれば幸いです (__)


※50話までで主人公が死んだ為、その娘が主人公になっています。ご注意ください。




卯ノ花風鈴編
元死神代行との出会い


 

 

満月の夜。空座町の住宅街にあるマンションの屋上に一人の死神が立っていた。長い白髪を頭の左右で結う所謂ツンテールなんていうハイカラな髪形をした死神の少女は満月の下で一人歌っていた。その歌は哀しいような優しいような子守歌の様な歌だった。観客はいない。今は世界の全てが自分のステージだ。そんなことを考えながら、彼女は楽し気に歌う。そして、歌い終えた後に満足げに笑った。

 

「うん。流石は母上譲りの美声だ。これは私が本気を出せば現世の“あいどる”という偶像にも直ぐに成れてしまうに違いない。ふふふ、可愛らしい顔にメリハリのある身体。そして美しい声。霊王(かみ)は私に二物も三物も与えたな」

 

自信満々にそういう彼女。しかし、それが独り言だから言うことのできる張りぼての自負ではないことを彼女のことを少しでも知っている者は理解している。自分はすごい。自分は美しい。自分は強い。そんな言葉を彼女は何処でだって誰の前だって恥ずかしげもなく吐きながら成長してきた。そして、質の悪いことにその言葉がすべて的外れではなかった。史上最速最年少で死神を育成する真央霊術院を卒業し、鳴り物入りで護廷十三隊三番隊に入隊。入隊後は新人でありながら「席次?何それ美味しいの?」の速度で功績を上げ続け、先日には護廷十三隊とは冷戦状態にある藍染惣右介の収める虚圏に偵察任務に赴き無事に帰還している。天才などという言葉では足りない。親譲りの怪物と呼ばれた彼女に足りないものがあるとするならそれは女性らしい恥じらいだろうと誰もが言った。彼女の兄の様な立場にある二人の死神は兄がわりとはいえ自分たちの前で風呂上がりの裸体を惜しげもなく晒す彼女の行動には慎みを持てと再三促してきたし、先日初めて会った彼女の実の兄は自分に幾度となく抱き着いてくる彼女のことを痴女だと思っていた。しかし、そんな声は馬耳東風。彼女の耳には届かない。私の様な美少女の裸を見て抱きつかれて実は嬉しい癖にと調子にのり、調子に乗りすぎですよと母親に折檻されるまでがテンプレだった。

 

そして、そんな自由を体現するような彼女が現世の空座町に赴き歌っている理由もまた彼女が彼女足りえる為に必要な自由な考えの為だった。

満月の下で歌っている間に彼女の待ち人はきた。

 

「悪い。待たせたか」

 

「ううん。私も今来たところだよ」

 

そんな恋人の様なやり取りをする二人だが、顔を合わせるのはこれが初めてのこと。だから彼女は初めましてと挨拶をした。

 

「はじめまして。私の声に答えてくれてうれしいよ。元死神代行‐銀城空吾さん」

 

「おう。初めましてだ。最悪の娘」

 

“死神代行”。それは尸魂界に認められた虚を討つ死神の力を持つ人間の名。護廷十三隊より『死神代行戦闘許可証』を与えられた現世での死神代の行動を許可された者の称号。

死神代行は史上二人しか存在していない。現死神代行‐黒崎一護。そして、初代死神代行にしてその資格を剥奪されたものこそが銀城空吾という男だった。

 

銀所空吾はその身長差から少女を見下ろすように笑う。

 

「俺の代行証に数十年ぶりに通信が掛ってきたのには驚いたぜ。俺は代行証を封印して通信機能どころか霊圧の制御も発信もできない様にしていたつもりだったんだがな」

 

銀城空吾に見下ろされながらも彼女は負けじと勝ち気に笑う。

 

「うむ。銀城さんに通信を送るのにはそれはそれは苦労したぞ。思いのほか時間が掛ってしまった。本当なら私があなたを見つけるのが手っ取り早くはあったのだが、前に親父殿が任務での全国行脚の中で片手間とはいえ探して見つけられなかったあなただ。私とは言え簡単に見つけられぬだろうと思って通信させてもらった」

 

「へぇ…。どうやって俺の代行証を解析しやがった?」

 

「乙女の秘密だ。天に挑む程の天才にそれなりの代償を払ったとだけ言っておくぞ」

 

銀城空吾の追及をそんな軽口ではぐらかしながら、少女はそんなどうでもいいことは置いておいて本題に入ろうと話を急ぐ。

 

「なんだ。おしゃべりはもうおしまいか?おっちゃんには可愛い女の子とのトークが生きる楽しみだっていうのに」

 

「すまない。実は私には時間がないんだ。今も本当は哨戒の最中で、さぼっていたことが知られたら怒られてしまう。兄上たちに怒られる分にはまだいいんだが、母上と爺様には怒られたくない。細切れにされた後に燃やされてしまうからな」

 

だから、本題に入るぞと少女は言う。

 

「銀城さん。復讐なんて虚しいと思わないか?」

 

瞬間、少女の白い首筋を赤い血が伝った。

少女の言葉と同時に銀城空吾の左手には刀身の始まり部分が一部くり抜かれ柄が付いた徴的な大剣が握られていて、その大剣が少女の首の皮一枚を斬った所で止められている。少女の生殺与奪を握りながら、銀城空吾は静かで重い声を出す。

 

「嬢ちゃん。此処から先は言葉を選んで喋るんだ。俺の手が動かない様に気を使って、慎重にだ。いいな?」

 

「うん。わかったよ」

 

()()()()()()()()()()?嬢ちゃんは俺の何を知った上でそういってんだ?俺と嬢ちゃんは今日が会うのは初めてだろう。それとも嬢ちゃんは人に自分の考えを押し付けるような恥知らずなのか?」

 

「私は恥知らずじゃないよ。今日、私は銀城さんと初めて出会った。けれど、銀城空吾という死神代行の過去は知っている。あなたを知り涙を流しながら救いたいと願った人の手記を読んだんだ」

 

少女が読んだという手記には銀城空吾の名が涙の跡と共に記されていた。

 

「仲間だと思っていた者たちに裏切られたあなたの義憤。絶望。考えうる悲しみの感情全てが手記には記されていたよ。それを読んで私はあなたを知った。“まるで読者が登場人物の背景を知って気持ちを知った気になっている”と言われれば、それまでだけど。私が思い付きであなたに会ったのではないということは、理解して欲しい」

 

―――私はあなたの悲しみを拭いたい。

 

そう少女の言葉を聞いて銀城空吾は目の前の相手が真面ではないことを理解した。手記で銀城空吾の存在を知った。それだけで尸魂界の一種のタブーであり、護廷十三隊に罪人として命を狙われている自分に会いにきた。頭が足りないと言われても仕方がない行動を、しかし、少女は類まれなる能力と才能を存分に駆使して成し遂げてみせた。長い間、護廷十三隊が極秘裏に捜索しながらも見つけられなかった銀城空吾と接触する。それはそれだけで大きな功績だ。

その上で少女の言った言葉のなんと脈絡のないことか。

 

()()()()()()()()?嬢ちゃんは一体何を考えてんだ。俺に復讐を止めろと言い。俺の過去を知っていると言い。その上で助けたい?意味が不明だぞ。ブレブレじゃねぇか」

 

「いいや。私はしっかりと筋を通す女だぞ」

 

そんなどこか間違った言葉の使い方をしながら、少女は「まずは間違いを正そうか」と笑った。

 

「私は()()()()()()()()と言ったが、()()()()()()と言ったわけじゃない。そんなものは考えの押し付けだ。銀城さん。あなたが復讐を望むのなら、すればいい。それはあなたの中では正しいことだ。私が虚しいと言ったのは、あなたが復讐を果たせずに死ぬことだ」

 

「…俺が復讐を果たせずに死神に負けると?」

 

「ああ、そうだ。あなたは大きすぎるものを敵に回そうとしている。あなたが言う死神とは護廷十三隊の全てを指しているのだろう?その中には絶対に勝てない人々がいる。護廷十三隊の全てを敵にしてしまえば、あなたは絶対に勝てない敵を作ることになる」

 

護廷十三隊には炎熱地獄に君臨する最強の死神がいる。白兵戦なら最強を下すだろう最高の剣術家がいる。雷鳴を轟かせる伝説の烈士がいる。

 

「そして、私もまた護廷十三隊の死神だ。護廷十三隊は敵に回すには多すぎるとは思わないか?」

 

そう言ってほほ笑む少女を前に銀城空吾はため息をつきながら少女の首筋に当てていた大剣を引いた。そして、大剣を収めることはせずに肩に担ぎながら確かにその通りではあると頷いた。

 

「嬢ちゃんの言いたいことはわかった。けどな、だったら俺にどうしろと言うんだ?言っておくが復讐を止めにするなんて言う選択肢は初めからない。俺は長い時間をそのためだけに割いてきた。今も、死神共に対抗するための力をようやく見つけたところだ。復讐ってのは敵の強弱で止めにするもんじゃねぇ」

 

「わかっているさ。もし銀城さんが例え敵わないと知って尚も護廷十三隊全てに挑むというのなら、私は止めない。あなたの意思を尊重する。けど、まずははっきりさせた方がいい。銀城さんが一番復讐したい相手をね」

 

「…俺が一番、恨んでいる相手ねぇ」

 

銀城空吾は死神というだけで戦うことに嫌悪感を覚えないほどには死神嫌いではあるのだが、何もすべての死神が憎悪の対象であるわけではない。銀城空吾を裏切った後に死神になった関係のない者たちは勿論、銀城空吾の立場改善のために声を上げた死神が当時一人もいなかったわけではないからだ。それでも銀城空吾の中に深い復讐心が芽生えているのは、信じていた男に裏切られたという事実が消えずに残っているからだ。

 

「恨みに一番も二番も、順位を付ける気ねぇ。けど、俺が一番殺したい男の名は浮竹十四郎だ」

 

護廷十三隊十三番隊隊長‐浮竹十四郎。曲者揃いの隊長たちの中で一番の常識人であり性格は温厚。上司にしたい隊長ランキング殿堂入りをした浮竹十四郎のことを銀城空吾が恨んでいることに少女は素直に驚いた。

 

「浮竹隊長か。意外だ。てっきり私は更木隊長とか涅隊長の名前が出てくると思っていたんだが…どうして浮竹隊長なんだい?あの人はいい人だろう?」

 

「はっ、確かに浮竹十四郎は護廷十三隊で最も平和を愛する男だろう。けどな、“死神代行”の制度を考えたのは奴だ。奴の狙いは死神代行である俺を監視し制御し尸魂界の為の手駒として使い、反抗すれば抹殺することだった!俺は平和を愛するあの男に嵌められたんだよ‼」

 

銀城空吾の言葉に込められていた絶望に少女は眼を見開いた。大切な守りたかった仲間たち。人でありながら死神の力を持つ銀城空吾にとって現世はとても生きづらかったに違いない。そんな中で出会った死神達。そんな彼らに家族にも似た絆を感じてしまうのは仕方のないことだろう。しかし、どこまで行っても銀城空吾は人間であり、浮竹十四郎は死神だった。あるいは時代が違えばなんて言う言葉が零れてしまうほどにそれはやり場のない悲しみだ。

 

『高いところから落とされるほど絶望は深くなる』

 

これは少女の父親が残した手記に書かれていた言葉だ。銀城空吾を見ながら少女はその通りだと思った。思いながら、気が付けば少女は手記に記されていた父親の言葉を口にしていた。

 

「ああ、可哀そうに。絶望に沈み悲しむ者たち。私はあなたを救いたい。悲しいのなら、苦しいのなら、痴れてしまえよ。あなたの幸福を願わせてくれ」

 

気が付けば屋上に桃色の煙が漂っていた。少女の腰に差す斬魄刀から漏れ出す霊圧を感じながらも銀城空吾が肩に担ぐ大剣を振り下ろせなかったのは、桃色の煙に込められた優しさに触れてしまったからだ。

 

―――ああ、これはダメだと。

 

銀城空吾は理解する。目の前の少女がどういう類の化け物であるのかを理解する。

 

―――これは優しさの怪物だ。取り込まれたら最後、抜け出せなくなる泥沼だ。

 

そんな考えと共に銀城空吾は少女の父親を思い出す。在りし日の瀞霊廷ですれ違っただけの関係であった少女の父親は銀城空吾の反逆に際して嘆願の声を上げた一人だ。無いに等しい関係性しかない自分を助けようとした彼を銀城空吾は優しい死神だったのだろうと思っていた。そんな男の娘だというからこそ、危険を承知で会いに来た。

 

しかし、思い返してみればどうだ。あの時代によく知りもしない人間である銀城空吾に可哀そうだと涙を流す死神は常軌を逸してはいないだろうか。浅からぬ仲ならわかる。友情が結ばれているのなら理解できる。しかし、何の関係もない相手の幸せを願えるものは聖人か狂人のどちらかだ。そして、あの男は聖人ではない。寧ろ、そう、こう呼ばれていたではないか―――“最悪”と。

 

「銀城さん。私はね、親父殿の救えなった者を救いたいんだ。親父殿は心の底から、すべての人々の幸福を願っていた。けれど、抱えられるだけの優しさでは平和を願うには足りぬように親父殿の手から救いたい者たちは零れてしまった。救いたいのに救えない。その矛盾に苦しみながら、親父殿は弱者の味方であることを選んだ。銀城さん。あなたの様な強者を救うことを諦めた」

 

銀城空吾は気が付けば膝を折っていた。大剣は既に手から離れていた。膝立ちになる銀城空吾の頭を少女は優しく胸の中に抱きよせる。

 

「だから、私が救う。父が望んだ桃園の意思に従い私、卯ノ花風鈴があなたを救う。ねぇ、銀城さん。痴れた音色を聞かせてください。あなたの幸福を私は心の底から願っています」

 

卯ノ花風鈴の言葉に銀城空吾の意識が覚醒する。そして、得も言われぬ安心感に包まれながら歯噛みした。

 

「ああ、最悪だ。クソ。こんな所をリルカや雪緒に見られたら、何を言われるかわかったもんじゃねぇ。…わかった。嬢ちゃんの話には乗る。だから早く離してくれ。死神の外見に年齢は関係ねぇ。いくら嬢ちゃんが死神で俺より年上だって言っても、少女の胸に顔を押し付けてる大男なんて犯罪的すぎるだろうが」

 

「ありがとうございます。これで私と銀城さんは仲間ですね。一緒に頑張りましょう。…それと私は銀城さんより年下ですよ。私は最近生まれたばかりのピッチピチの生後一年ちょっとの幼女です」

 

「………はぁ!?」

 

「ふふふ、そんなに驚かないでください。死神の外見に年齢は関係ないって銀城さんも知ってたじゃないですか」

 

「………どうすれば生まれたばかりでこんなに性格が狂うんだ?父親の血か?」

 

「そんなのどうでもいいでしょう。それよりもどうですか銀城さん。幼女からあふれる母性。これが今現世で流行っているという“母性ろり”というやつですよね」

 

「どこでそんな知識を仕入れてくるんだこの偽装嬢ちゃんは!?いいから、いい加減に離せ…って、何だこの馬鹿力は!?」

 

「ふふふ、身体の精強さは親父殿譲りです!はーなーしーまーせーんーよー。銀城さんは可哀そうな人なんですから、もっと私を頼ってもいいのよ!」

 

「人を可哀そうな人扱いするな!?」

 

銀城空吾。初代死神代行にして元死神代行。死神に裏切られ死神に復讐を誓った男は本来であれば脅威とはなり得ない尸魂界の敵だった。並みの隊長格と同等の霊力を持つ彼だが、護廷十三隊にはそれを歯牙にもかけない猛者が存在する。故に届かったはずの復讐の刃は、しかし、一人の少女の手によって届き得る可能性を持ってしまった。

 

護廷十三隊三番隊第三席‐卯ノ花風鈴。最悪と呼ばれた死神‐風守風穴と護廷十三隊四番隊隊長‐卯ノ花烈の間に生まれ、その特異性故に年齢を考慮せず能力のみの評価で三席まで駆け抜けた少女は先日、虚圏での任務の際に父親の墓参りを同隊隊長である市丸ギンの手引きの元で秘密裏に行い封印されていた最悪の斬魄刀『鴻鈞道人(こうきんどうじん)』を手に入れている。

 

母親や兄達から父親の武勇伝を聞きながら育った少女はそこで直接、父親の意思に触れた。

結果、多感な時期である彼女は感化された。父のようになりたいと思った。

それが最悪の幕開けだと自覚のないままに純粋無垢に世界は優しさであふれていると信じる年ごろの少女はあまりに容易く斬魄刀『鴻鈞道人(こうきんどうじん)』を引き抜いてしまった。

 

―――お前の幸せを俺は心の底から願っている。

 

その言葉を抱いたまま卯ノ花風鈴は父の背に焼けただれるほどの夢をみた。

 

 

「けどよ、嬢ちゃん。本当にいいのか?嬢ちゃんは護廷十三隊を裏切ることになるんだぜ」

 

「よくは無いです。母上や爺様に怒られるのは本当に怖いんです。けど、風は自由だから、風なんですよ」

 

 

此処に最悪に憧れた少女の物語が始まった。

 

 

 





卯ノ花風鈴。

50話以降の主人公。

外見は相州戦真館學園-万仙陣-に登場する石上静乃というキャラクターそのままです。
気になる人は相州戦真館學園シリーズをプレイしよう!\(^o^)/

後、時系列の関係上、生後一年ちょっとの幼女が主人公になってしまったけれど死神の成長と外見に年齢は関係ないということで大目に見ていただけると助かります(__)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。