BLEACHの世界でkou・kin・dou・ziィィンと叫びたい 作:白白明け
ただし、仕事。お前はダメだ。
連載再開にともない多くのご感想をありがとうございます
全てに目は通しており、できる限り返信したいと思いますができないこともあります
すみません(__)
尸魂界。瀞霊廷。護廷十三隊一番隊隊舎。総隊長執務室。瀞霊廷を見下ろすことの出来るその場所で護廷十三隊の中でも特殊な数字を持たない遠征専門部隊である『
「総隊長。それは、本気なのですか?」
天貝繡助は山本元柳斎重国から先ほど下された命令に対して驚きを隠せない。
「然り。先刻、蒲原喜助より提案された事案。黒崎一護を救う為に護廷十三隊は蒲原喜助に力を貸す」
現在、現世にて起きている騒動のことを特派遠征部隊の隊長である天貝繡助は当然知っていた。今回、自分が呼び出されたのも、その騒動の中で確認された元死神代行であり現在は罪人として瀞霊廷に追われている銀城空吾を捕える為の部隊を編成するように命じる為だと思っていた。しかし、山本元柳斎重国の口から発せられたのは嘗ての山本元柳斎重国という死神を知るものであるなら耳を疑うような言葉だった。
現世におり銀城空吾の企みの全てを見通していた蒲原喜助。銀城空吾を捕える為に神算鬼謀の男が護廷十三隊に提案してきたのは黒崎一護に死神の力を取り戻させ、銀城空吾を捕えるのを黒崎一護に任せてはどうかということだった。
何を面倒なことをと天貝繡助は思った。そんなことをせずとも自分が現世に向かえば銀城空吾の身柄を確保できるだけの自信が天貝繡助にはあった。何よりも現世での遠征任務。そういうことを熟す為の組織こそが特派遠征部隊。
「総隊長は我らでは力不足だとお考えなのですか?」
天貝繡助の問いかけに山本元柳斎重国は否と首を振る。
「あの阿呆…風守亡き後にお主が特派遠征部隊隊長として上げてきた功績を軽んじる儂ではない。確かにお主が現世に向かえば全ての事態は終息するだろう」
「ならばなぜ?それに人間への死神の力の譲渡は重罪。たとえそれが元死神代行であったとしてもそれは変わらない筈では?総隊長。他ならない貴方が尸魂界の掟を軽んじようというのですか」
天貝繡助は言葉に苛立ちを込めて、山本元柳斎重国を睨みつける。
天貝繡助は山本元柳斎重国を尊敬している。それはかつて山本元柳斎重国という死神を信じ自らが信じた世界すら捨てた死神がいたことを知っているからだ。
「…風守隊長が信じた貴方は剣の鬼。そんな貴方の背にこそ風守隊長は夢をみた。自らを育んだ故郷を焼き払われて尚も貴方を信じた。だというのに、
それは断じて許せないと天貝繡助の身体から霊圧と火の粉が漏れる。
天貝繡助にとって山本元柳斎重国は尊敬している総隊長だ。その力が最強であることを疑う積りは微塵もない。天貝繡助が信奉する風守風穴がそう決めたのだから、天貝繡助の中ではそれが全てだ。だからこそ、天貝繡助は山本元柳斎重国が
自身と同じ炎熱系斬魄刀を扱う若き死神の霊圧を感じながら、山本元柳斎重国は手に持っていた杖の先で床を叩く。瞬間、天貝繡助から漏れていた霊圧の全てが霧散する。パチパチと音を立てていた火の粉は強大な熱量に塗りつぶされる。山本元柳斎重国を睨みつけていた眼球が乾いていく。肌から噴き出す汗。身体が上げる悲鳴を聞きながらも天貝繡助は山本元柳斎重国から目を反らせなかった。
其処には悪辣な笑みを浮かべる最強の死神の姿がった。
「天貝よ。産まれたばかりの小童であるお主が儂が老いたと抜かすか?」
「………ならば、なぜ、
死を感じた。身体が蒸発していくという痛みの中でそれでも自分に反論する天貝繡助の姿に山本元柳斎重国は苛烈なまでの忠誠心をみた。それを向けられている旧友を思いながら、山本元柳斎重国は霊圧を霧散させる。灼熱から解放された天貝繡助が荒い呼吸をしているのを見下ろしながら、山本元柳斎重国は言葉を吐く。
「形はどうあれ我等は黒崎一護に救われた。彼の者が居なければ現世は桃源郷へと落ち、儂は再び炎熱地獄を築かなければならなかっただろう。たとえ仕来りに背こうとここで恩義を
「…もう、一つの理由とは?」
山本元柳斎重国のいう理屈は天貝繡助も理解できる。しかし、それでは足りないと思うからこその反論。そこに伝えられたもう一つの黒崎一護を助ける理由を聞いた時、天貝繡助は山本元柳斎重国に鬼をみた。
「彼の者にはまだ利用価値があろう」
「―――」
「“護廷”の為、利用できるものは何であろうと利用する。人間であろうと虚であろうと関係はない。反逆者であろうと大罪人であろうと狂人であろうとも関係はない。天貝繡助よ。秩序の為に
此処で黒崎一護に恩義を返し、黒崎一護に恩を売る。救われた黒崎一護にとって護廷十三隊は護らなければならないものに成るだろう。そうすれば訪れるかもしれない瀞霊廷の危機の際に黒崎一護が刀を握ることは確定的だ。利用できる駒は多い方がいい。言ってしまえば単純なことだけれど、どこまでも悪辣な山本元柳斎重国の真意の前に天貝繡助は感銘しながら
「私の
「謝らんでもよい。誠意は行動で示せ。天貝繡助。再度、命じる。六番隊隊長‐
「
護廷十三隊。一番隊隊舎の前にわたしは立っていた。聳え立つ見上げるほど大きな建物の中に感じる霊圧に顔が綻んだ。事態はわたしの予測の範疇を越えず爺様の考えが手に取るようにわかることに湧き上がる感情を慢心だと理解しながら、わたしはそれを心地よいと感じていた。
最強の死神‐山本元柳斎重国。爺様が銀城空吾の復讐の最大の障害であることは言うまでもなかった。爺様が出てきてしまえば全ては終わる。強大すぎる熱量の前にあらゆる企ては蒸発して失せるのみだろう。無論、護廷十三隊の総隊長である爺様がそう易々と動く筈はない。だから、銀城空吾を捕える為に現世に爺様が信頼する隊長格の死神を送るだろうことはわかっていた。
ならば、それは誰か?
爺様の右腕である長次郎か?否、爺様が易々と動けない様に一番隊と各隊を結ぶ役割を担っている長次郎もまた早計には動けない。
ならば母上?否、医療部門の長を動かすことこそ有り得ない。
ならば砕蜂母様ならどうだろう?有り得る。隠密機動総司令官である砕蜂母様が動けば銀城空吾の首は一夜のうちに落ちるだろう。
しかし、それよりも爺様が現世に派遣する可能性の高い死神の存在をわたしは知っている。
その死神は
「天貝兄!」
わたしは一番隊隊舎から出てきた天貝兄に手を振りながら声を掛ける。わたしの存在に気が付いた天貝兄は多少驚きながらも微笑んでわたしの方へと歩いてくる。
「なんだ、風鈴。こんな所でどうしたんだ。いや、お前のことだ。偶然ではないか。また何か俺に頼み事でもあるのか?」
「うむ!その通りだ」
わたしの返事に天貝兄は少しだけ眉を下げて困り顔をする
「そういい返事をされても困るんだがな。いくらお前が風守隊長の娘だとしても、俺は隊長としてあまり一隊士を特別扱いする訳にはいかないんだぞ。…それで今回はどんな厄介ごとを持ってきたんだ?」
「ふふふ、天貝兄のそう言うところがわたしは大好きだ」
そういってわたしが抱き着こうとするのを天貝兄に片手で防がれる。むぅと膨れっ面になったわたしを呆れた目で見ながら、天貝兄はとりあえず場所を移そうと歩き出す。私はその背を追って歩く。
天貝兄の後ろ姿は大きい。親父殿の副官をしていた頃はわたしよりも背丈の小さな少年だったと聞いている。けれど、百余年の月日が天貝兄を成長させた。そして、今の天貝兄は自身が未だに“隊長”と呼ぶ親父殿と同じ地位にいる。ぼさぼさに伸びた髪と無精ひげは遠征専門部隊の隊長という不規則な生活故だろうか。それとも天貝兄が少しでも親父殿に近づこうとしているのだろうか。そんなことを考えていると天貝兄は振り返り、わたしに声を掛けた。
「流魂街に風守隊長によく連れて行ってもらった甘味処がある。どうせ瀞霊廷内で話すのはまずい内容の頼みごとなのだろ。そこに行こうか。ほうじ茶とみたらし団子が絶品だぞ」
天貝兄の言葉にわたしは目を輝かせた。
「うむ!」
母上の話によれば親父殿は桜よりも梅を
そんな雑談を甘味処でした後にわたしは天貝兄に本題を切り出した。
「天貝兄は爺様に現世に向かうように言われたのだろう?」
「耳が早いな。そうだ。俺はこれからある任務の為に現世に向かう。…なるほど、お前のお願いはその任務への同行か?確かにいい経験にはなるな。うん。いいぞ。それくらいなら俺の裁量でどうとでもなる。一応、決定は市丸に確認をとってからになるがお前の頼みを彼奴が断ることもないだろう」
「ありがとう。けど、わたしのお願いはもう一つあるんだ。もう一つ、今回の任務に浮竹隊長も連れていって欲しいんだ」
わたしの言葉にほうじ茶を啜っていた天貝兄の動きが止まる。そして、湯飲みを置くとわたしの方を見た。
「風鈴。お前は何を知り、何をしようとしている」
まるで確認だけをするような平坦な表情で私にそう問いかける天貝兄から怒気は感じられない。
「わたしは何でも知っている。天貝兄が黒崎一護に死神の力を取り戻させるために現世に向かうことも。そして、それが銀城空吾を倒す為であることも」
銀城空吾の名前は尸魂界において一種の
その存在を一隊士であるわたしが知っているといえばどんな誤解を受けても仕方がない。そして、それが誤解でないと知ったのならわたしには裏切り者として処罰が与えられるだろう。
それを理解していながらもわたしは天貝兄に隠し事はしない。
天貝兄はわたしの言葉を聞いて一度目を瞑り、眉間の皺を解すように指でも揉むと、大きなため息を吐いた。
天貝兄のその反応に笑みをこぼす。
「天貝兄。どうした?隊長としてわたしを叱らなくていいのか?」
「…本当にお前はいい性格をしているよ」
「ふふふ、わたしには家族に愛されているという自負があるからな」
わたしには二人の母と二人の義兄。そして一人の実兄がいる。その中でも二人の義兄がわたしを一等甘やかしてくれている。
わたしに甘々な義兄の一人である天貝兄は深いため息と共に言う
「風鈴。俺はお前が好きだ。
わたしは天貝兄の瞳の輝きが濁っていくのを見た。混濁した目をしながらもそこに笑みはない。それは天貝兄が強固な意志で本当の意味で
本当に狂ってしまえば大切なものを守ることはできない。
「だから、何故どうして等とは問う気はない。お前の望みを俺はできる限り叶えよう。しかし、今回の件は難しい。総隊長から俺の他に現世に向かう隊長は朽木隊長、日番谷隊長、更木隊長の三名だと伝えられた。総隊長の決めたことだ。真っ当な理由がなければそれが覆ることはない。だから、浮竹隊長に現世に来てもらうこと無理だ」
「なるほど…黒崎一護関連なら、ルキアさんは連れていく必要があるからこその朽木隊長。経験を積ませるための日番谷隊長。何が起きても対処するための戦闘力としての更木隊長と言ったところか。無駄がないな。―――うん。わかったぞ。天貝兄」
「なんだ、素直だな。今回ばかりは諦めたか?」
「いいや。わたしのやるべきことがわかった。現世に行く予定の隊長が辞退すればそれは真っ当な理由だろう」
「…何をするつもりだ?」
「乙女の秘密だ♪」
天貝繡助にとって卯ノ花風鈴は大切な存在だ。妹のように愛しているという言葉に偽りはない。しかし、それと同時に自分が卯ノ花風鈴に向けている愛情が歪んでいるという自覚もまた天貝繡助にはあった。
―――あの
最悪と呼ばれた死神‐風守風穴。そんな男の背に父親の姿を見た天貝繡助が、今は風守風穴の娘である卯ノ花風鈴の中に風守風穴の姿を見ている。笑えるほどに滑稽なあまりに歪んが価値観は、しかし、自分を騙しようもないほどの真実だった。
―――俺は風守隊長の為に強くなった。けれど、俺に風守隊長は救えなかった。
百余年前に風守風穴から掛けられた言葉は天貝繡助の中に未だ消えることなく残っている。
百余年前、虚化という藍染惣右介の策謀に無様に呑まれた天貝繡助は理性を失い背後から風守風穴を刺した。そして、刺された風守風穴は深すぎる傷を負いながらも天貝繡助にあまりにも優しすぎる声で言った。
“生きろ、繡助。生きて、必ず帰ってこい”
その言葉を天貝繡助は忘れない。虚化という狂気の中で掛けられた言葉に天貝繡助は未だかつてこれ程までに純粋に他人を愛した死神がいただろうかと思った。だから、天貝繡助はその言葉に答える為に強くなった。虚化という外法すらも自分の力としながら強くなり、百余年前をかけて護廷十三隊に戻ってきた。
しかし、そこにはもう風守風穴の姿はなかった。
代わりに居たのは卯ノ花烈の腕に抱かれて眠る赤子。
その白髪の赤子に触れた時に天貝繡助は決めた。
この娘を守ろうとそう決めた。
天貝繡助。彼はもう彼の愛を見失わない。それが狂気だと自覚しながらも立ち止まる愚か犯さない。その為に強くなった。その為に力を振るうことを天貝繡助は躊躇しない。
例えそれが愚かな行為と指を刺されることであろうとも、彼の中ではそれが全てだ。
故に―――
「乙女の秘密だ♪」
―――そう言って甘味処を後にする卯ノ花風鈴を天貝繡助が止めることはない。
しかし、その後ろ姿を見送りながら天貝繡助は誰にも聞こえないほどに小さな声で本音を漏らす。
「風鈴。俺は確かにお前の中に風守隊長の姿を見た。だからこそわかる。お前は、風守隊長にはなれない。あの人の愛した
瀞霊廷内の路地。人気の少ないその場所でわたしはその大きな背中に声を掛けた。
「更木隊長」
「ああ?」
見上げるほど大きな背丈に見合うだけの筋肉を纏った身体は、けれど愚鈍さの欠片も感じさせない。引き締まった躰は肉食獣の様で、眼光は獣の様だと思った。
護廷十三隊十一番隊隊長‐更木剣八。戦闘専門部隊の異名を取る隊の隊長は間違いなく強者だ。
そんな強者を前にわたしは斬魄刀を抜き微笑んだ。
「一身上の都合によりあなたを斬ろうと思います」
真似るのは通りがかりに親父殿に斬りかかったという母上の姿。それが更木剣八にとって何よりも魅力的な獲物であることを自覚しながら、わたしは斬魄刀の切っ先を更木剣八に向ける。
そして、更木剣八は獣ように哂った。
「なんだテメエ。何の真似だ」
斬魄刀の切っ先を眼前に向けられながらも欠片の恐怖も抱かずに哂うだけの更木剣八の姿にわたしは違和感を覚えた。なんかこう、思っていた反応と違う。そんなばつの悪さを感じながらわたしはどうしたものかと思案して、素直にわたしの企みを打ち明けることにした。
「むぅ。意外と反応が悪いな。わたしが更木隊長に刀を向ければ、あなたは嬉々としてわたしに斬りかかってくると思っていたのに」
「おいおい、瀞霊廷内で考えなしに抜くわ―――
「いつもの剣ちゃんならそうしたよ!」
―――やちる。余計なことを言うんじゃねぇ」
更木剣八の言葉を遮ったのは、更木剣八の背中にくっついていた護廷十三隊十一番隊副隊長‐草鹿やちる。草鹿やちるは小さな身体の小さな手をいっぱいに広げながら笑っている。その姿に微笑ましさを感じながら、わたしは草鹿やちるに問いかける。
「草鹿副隊長。それはどういうことですか?」
「剣ちゃんはね、
草鹿やちるの言葉にわたしはなるほどと納得する。わたしは更木剣八にとって極上の獲物だ。その自覚はある。戦闘をこよなく愛する彼にとって瀞霊廷内で戦いたい相手の五指には入っているという自負がある。そして、わたしは他の更木剣八にとって魅力的な相手とは違いただの一隊士。隊長の権限を使用すれば更木剣八はわたしと決闘をすることも用意だろう。無論、そんな面倒な手続きを踏まずに彼がわたしに襲い掛かってくる可能性もある。
「爺様は更木隊長に先んじて釘を刺していたという訳か。納得したぞ。一日だけとはいえ爺様はあなたの剣の師だったとも聞く。師の言葉を無下にしないあなたにを私は素直に尊敬するぞ」
「はっ、師だからなんだとかいう気はねぇよ。けど、あの爺を怒らせれば面倒だってのはわかってんだ。テメエもわかったら刀を下ろせ」
「嫌だ」
「…わかってねぇのか。俺は見逃してやるって言ってるんだぞ」
更木剣八の言葉にそれでも私は首を横に振る。
「わかっていないのはあなたの方だ。今、戦いを望んでいるのはあなたでは無く、わたしだ。そして、
口角を上げて嗤う。見本とするのは市丸兄の笑み。挑発的どころか侮辱的ですらあるわたしの笑顔に対して、更木剣八は信じられないものを見るような視線をわたしに向けた後で声を震わせながら獰猛に嗤った。
「………ハッ、ハハ、ハハハッ‼おい、やちる。俺からコイツに喧嘩を売るのは爺に禁じられてるが、売られた喧嘩を買うなとは言われてねぇよなあ‼」
「うん」
「なら、問題はねぇだろ。怪我するから背中から降りてろ」
「はーい。…風ちゃん。死なないようにね」
「うむ」
わたしが更木剣八に喧嘩を売り、更木剣八がそれを買った。そして、更木剣八の背から草鹿やちるが降りたことで舞台は整う。そこから先に言葉はない。わたしと更木剣八。二人ともが抜身の斬魄刀を握りながら、互いの姿を正面からとらえている。
対峙した両者の中間に草鹿やちるがトテトテと歩いて来て、クルリとターンを決めながら右腕をビシッと上げる。
「では、両者尋常に
小さな手刀が切って落とされ、そこに死地が築かれた。
感想の要望にありました二部開始時点での各登場人物の立ち位置を消失編が終了したら書こうと思います。