BLEACHの世界でkou・kin・dou・ziィィンと叫びたい 作:白白明け
確認後、随時訂正させていただいております(__)
ふふ、なんて言うと思ったか(´・ω・`)
何時から自分が誤字をしていると錯覚していた(; ・`д・´)
嘘です。
誤字報告してくださる方々、本当にありがとうごさいます<(_ _)>
護廷十三隊九番隊隊舎。白罌粟の花紋が描かれた建物の入り口に七人の死神達の姿があった。うち六人は男。後の一人は女。
六人の内、五人の男たちは普通の黒の死神装束の上から白の布地で背に「六車九隊」と書かれた羽織を羽織っており、それは九番隊において精鋭と呼ぶべき席次持ちの隊員の証であり、そんな彼らを仕切るのは勿論、九番隊隊長。
袖の切り取られた隊長羽織を羽織る九番隊隊長、
--九番隊隊長六車拳西及び九番隊各位に此処ひと月ほどの間に続発している流魂街での事件の調査を命ずる--
山本元柳斎重國からの説明によれば、ここ最近ひと月ほどの間に流魂街の住人が消える事件が多発しているらしい。原因は不明。
ある日突然、
死神の着る死神装束も含め尸魂界に生きる者たちの衣服は全て持ち主の霊子で出来ている。
故に、もし仮に死んで霊子化するのなら、着ていた衣服も同じように消えるというのにそうならず、被害者が消えたと思われる場所には被害者の衣服だけが散乱していたという。
ただの連続殺人事件ではない怪奇な事件は、四番隊隊長卯ノ花烈の現場検証の結果わかった、被害者は死んだ訳ではなく
まさしく原因不明。定義上、山本元柳斎重國はこの事件を事件と称しているが本当に事件であるのか、もしくは事故であるのかも不明。
何も解らない事件の調査を命じられた六車拳西は苦々し気に顔を歪めた。
六車拳西は護廷十三隊隊長にまでなった傑物。決して頭の悪い人種ではない。しかし、性格上、頭脳労働よりも肉体労働を好み得意とする彼は、もし仮にこの事件の究明を命じられたのが彼と九番隊だけであったなら、九番隊隊員の中から先遣隊を選抜し調査に向かわせ部下の報告を待っていただろう。
しかし、今、六車拳西は今回の怪奇事件の調査において初めから最前線に立っていた。
そうしなければならない理由があった。
山本元柳斎重國は怪奇事件の調査にあたり、六車拳西と九番隊以外の者にもその事件の調査を命じた。
「(それが、俺の部下たちが総隊長は自分たちの力を信じてくれてねぇのかって機嫌を損ねている理由で、俺がこうして前線に立たなきゃならねぇ理由)」
九番隊隊舎の前で腕を組み立つ六車拳西達の前にその男は現れた。
護廷特機。『
通称・特派遠征部隊。部隊長、風守風穴。
先日十年に及ぶ遠征から帰還した総白髪の男は副官一人を付き従えて六車拳西の前に立つ。
先日まで名前も顔も知らなかった相手。しかし、風守風穴という男が自分よりはるか前から護廷十三隊に在籍し、それこそ山本元柳斎重國や雀部長次郎、卯ノ花烈と並び護廷十三隊を作り上げた最古参と言っていい化け物だと知っている六車拳西は風守風穴とその副官に対して含みを持つ視線を送る部下たちを制して、風守風穴に手を差し出す。
「九番隊隊長、六車拳西だ。今回の協力を感謝する。風守部隊長」
「ん。よろしく。顔を合わせるのは初めてだよな。俺が風守風穴。こっちが副官の天貝繡助だ」
六車拳西から差し出された手に握手を返す風守風穴。
類稀な力を持つ隊長格の死神が握手によって相手から得られる情報は手の感触だけじゃない。骨格や筋肉の類から、目視では無く触覚によってより正確に図られる霊圧の質や総力、特性までもを知ろうと思えば知れるだろう。
六車拳西は風守風穴に触れた瞬間に戦慄する。
風守風穴の強靭な肉体に対して、ではない。膨大な霊圧の総量や上質さに、でもない。
ただ、直接身体に触れてなお、何も解らなかったことに戦慄した。
隊長格にまでなった自分の探知能力なら当然図れるはずだと思っていた情報の全てがまるで煙を掴むかの如くすり抜けていく感覚は、六車拳西が生まれて初めて感じる感覚だった。
六車拳西はこれまでの生涯で得体のしれない化物や底のしれない天才には何度も出会ってきた。
しかし--
「ああ、そうだ。一つ言っておく。六車」
「っ、なんだ」
思考を遮られた六車拳西の口から思わず驚きがこぼれる。何事かと緊張して風守を凝視する六車拳西に、風守風穴は視線をそらし空を見上げながら呟いた。
「俺は人見知りだから知らない奴と話す時、声が震えることがあるんだ」
「…はあ」
「…だから、もし俺がお前に対してなんか変なことを言っても別に気にしないでくれ。別にお前が嫌いな訳じゃない」
何を言うかと思えばそんなことをかと六車拳西は驚いた。
そして、しばしの順考の後にあることに気がついた。
触れただけで怪物と思った風守風穴という男は今、言葉から察するに---
「あんた、俺に嫌われることを」
「ん?」
「いや、何でもない。…まさかな」
「嫌だぞ。お前に嫌われるのは嫌だ。だって俺たち、同じ護廷の仲間だろう」
「---」
六車拳西は風守風穴のその言葉にしばらく絶句した後、笑った。
「(なるほど、風守風穴。此処までの怪物か)」
「これから流魂街に向かい事件の調査に入る。向かう先は一番最近、魂魄の消失が確認された場所だ。それでいいですかね、風守部隊長」
「ああ、俺は最近瀞霊廷に戻ったばかりだし、正直情報に疎い。六車に任せる」
九番隊隊長、六車拳西との顔合わせは人見知りで口下手で引っ込み思案な俺にしては上手くやった方だと、自分で自分を褒めてやりたい気分だった。天貝繡助を後ろに連れて、俺は六車拳西が率いる九番隊の後に続く。
流魂街での連続怪奇事件の調査にあたり、俺は山本元柳斎重國から六車拳西並び九番隊への助力を命じられた。
正直、遠征専門部隊の俺達が瀞霊廷に近接する流魂街で起きている事件の調査を命じられた時はお門違いもいい処だと山本元柳斎重國に文句を言い。何時も通り直ぐに次の遠征に行かせろと進言したのだが、山本元柳斎重國から『虚圏』への十年の遠征任務から帰還した俺達に休暇も与えず次の遠征を命じるのは周りの眼を考えて無理だと断られた。
功績には報酬を。大きな仕事の後には長期休暇を与えなければ組織が立ち行かなくなるらしい。
俺が四番隊の隊長を務めていた時は休む暇もなく膨大な数の戦場とそれに比例する傷病者を押し付けてきた山本元柳斎重國の言葉とは思えない言動に絶句する俺の肩を叩いたのは何時も通りに山本元柳斎重國の傍に控えていた雀部長次郎。
雀部長次郎は昔とは違い髭の増えた顔に昔と同じ生真面目な眼差しで俺を見ながら首を横に振り、昔とは時代が違うのだと言う。
確かに、言われてみればあれから千年もの時が過ぎている。人間の時代の数え方なら既に十世紀が立っている。時代の一つや二つ変わっていてもおかしくはない。
護廷十三隊には山本元柳斎重國という朽ちることも燃えることもないだろう屋台骨が存在しているから俺は長らく時代の流れというものを感じていなかったが、俺が知らない間にも時代は確実に流れているのだと、雀部長次郎は語る。
言われてみればその通り。俺が自覚のないうちに時代に取り残される所だった。
そして、そうと分かれば今回の命令で山本元柳斎重國が俺に課した本当の役割もまた透けて見える。
--新しい時代の死神を見極めること。
思えば俺の知る隊長格の死神は随分と減った。護廷十三隊の創成期からの死神は既に山本元柳斎重國や雀部長次郎に卯ノ花烈の三人だけ。他の隊長格に関しても山本元柳斎重國の教え子であるらしい八番隊の隊長の京楽春水と十三番隊の隊長の浮竹十四郎は山本元柳斎重國から名前と人柄を聞いているから知ってはいるが、他には瀞霊廷の四代名家の人間がそれぞれ二番隊と六番隊の隊長をやっているのを知っている位だ。
今回、怪奇事件を共に調査する九番隊隊長、六車拳西に関しては名前も知らなかった。
時代が変わっても護廷の在り方が変わることは許されない。故に護廷十三隊に在りながらほぼ遠征で瀞霊廷を離れている俺から、各隊長格を見極めろと言外に命じた山本元柳斎重國に対して俺は頭を垂れた。
そして、同時に山本元柳斎重國が心の内で抱いている疑惑も悟る。
今回の怪奇事件はどうもキナ臭い。もしかしたら、その犯人は護廷十三隊に居るのかもしれないと山本元柳斎重國は考えている。
それは、有ってはならないことだった。
前を行く六車拳西の背を見ながら俺は眼を細める。
千年前に俺が初めて見た夢。”
見極めなければならないと息を巻く俺はその内心を悟られない様に六車拳西の後に続く。
初代四番隊隊長の肩書は伊達じゃない。人見知りで口下手で引っ込み思案な俺だが、初代四番隊隊長であった時代は何かと中央四十六室とやり合う機会も多く本心を悟られない腹芸は身に着けている。無駄に敵愾心を煽らない術も心得ている。
「風守部隊長。着きました。此処が一番最近魂魄の消失が確認された場所です」
「此処か…何もないな。まあ、現場で見ただけで何かわかるなら検死を担当した卯ノ花が何か見つけているか。取りあえず、これからどうする?」
「取りあえず周辺住民への聞き込みはウチの部隊から選抜した十名を向かわせます。この辺の調査には、
「「「「はい‼‼」」」」
「ウチの席次持ち四人に任せましょう」
「わかった。そして、俺達は情報が集まるまで現場待機か。ああ、そうだ。なら、周辺の調査には繡助も向かわせよう」
「風守部隊長の副官ですか…」
六車拳西は俺の後ろに控える天貝繡助を見て眉を顰める。体格の良い六車拳西とまだ少年の域を出ない外見の天貝繡助を比べればそれこそ大人と子供。面識も少なく役に立つのかと六車拳西が疑問を持つのも無理はない。
しかし、それは天貝繡助を舐めている。
特派遠征部隊副隊長、天貝繡助。
炎熱系斬魄刀を操る彼が背負う肩書は伊達ではない。俺の遠征に三度も随伴し副官の地位に上り詰めた天貝繡助の実力は他ならない俺が知っている。
「繡助は霊圧探知の感覚に冴えている。なにか異変があれば直ぐにわかるだろう。それに、もし仮に戦闘になったとしても足を引っ張らないことだけは、俺が保証する」
「わかりました」
連続魂泊消失事件の調査に当たり、その編成が決定する。
周辺住民の聞き込みに九番隊の隊士十名。
周辺の調査に九番隊席次持ち四名と天貝繡助。
本営の設置に九番隊本隊。
各調査の報告をまとめる為の現場待機に俺と六車拳西。そして六車拳西の副官である
現状考えうる最善の布陣を持っての調査。護廷十三隊の一部隊という規模で行われる調査だ。幾ら原因不明の四文字が乱立する怪奇事件だとしても直ぐに原因の一端は明るみに出るだろう。
--
そんなことを考えて見上げた空は、苦々しい位に青く澄んで空いた。
太陽が頂点に達する時刻。地面に映った影が一番小さくなる時間帯の流魂街の荒野に五人の死神達の姿があった。うち四人は黒い死神装束の上から「六車九番隊」と書かれた白いを羽織を羽織った体格のいい男達。後の一人は『特派』と書かれた腕章を付けた少年。
傍から見れば大人の集団に子供が混じっている奇妙な光景。それは集まった死神達もわかっている。だから、「六車九番隊」の文字を背負う死神の一人が少年死神、天貝繡助を気に掛けるのは責められるべきことではなかった。
原因不明の連続魂魄消失事件の調査というどんな危険な任務に成るか分からない現状、少年と呼べる風貌の天貝繡助を一人で調査に向かわせるべきではないと考えた男の提案は優しさと呼んでいいもの。
しかし、天貝繡助はそれに否と首を振る。
「僕だけの為に
一番最近魂魄の消失が確認された現場近くの調査を命じられた九番隊の席次持ちと天貝繡助。調査を行うにあたり九番隊所属の死神、東仙要は情報収集の効率を高める為に各自での情報収集を提案した。それに対する反対の声は上がらない。何時、次の事件が起こり犠牲が出るかもわからない状況。事件の解決には迅速さが求められていた。
それを理解している天貝繡助もそのことに否はない。
けれど、
断固拒否すると息を巻き、天貝繡助は東仙要の前に立った。
「…だが、どんな危険があるか分からない任務だ」
「それは皆さんも同じです。何も僕一人だけが危険なわけじゃありません。それに今は迅速が尊ばれる状況だと言ったのは東仙さんです。僕にだけ無駄に人員を割いている暇はないです」
「…しかし、君はまだ経験が浅いだろう。何が起こるかわからないこういった任務では、私達の内の誰かが君と一緒に行動するべきだ」
「確かに僕は皆さんより若いです。けど、僕も皆さんと同じ調査任務を命じられた身。僕にだけ特別扱いは必要ありません。皆さんと同等に扱ってもらって結構です」
「…だが、しかし」
「それとも、九番隊でない部外者である僕が一人で動くのが嫌な理由でも東仙さんにはあるんですか?目障りでしょうか?」
「違う。私はただ、君のことを心配して--」
「もういいだろ。東仙」
「--藤堂」
東仙要と天貝繡助のやり取りを見かねた東仙要の同僚である九番隊の藤堂
「東仙。お前が天貝副隊長を心配する気持ちもわかる。お前は正義感に溢れた優しい奴だ。だから、なんというか、その、子供の様な風体の天貝副隊長が心配なんだろう。だが、この人は副隊長。席次で言えば俺達より上だ。本人がいいと言っている以上、退くべきはお前だ。わかるだろう」
「………ああ、藤堂。そうだな。すまない。天貝副隊長も、差し出がましいことを言ってしまい、申し訳ありませんでした」
そういって頭を下げる東仙要に天貝繡助は慌てたように手を動かして言った。
「いえ!頭を上げてください。僕の方こそ、失礼なことを言ってすいません。貴方は僕を心配してくれたのに…」
同僚に諭され素直に頭を下げる東仙要の姿を見れば、彼が純粋に自分を心配していたからこの案を提案したのだということが分からないほど天貝繡助は子供じゃない。真摯な東仙要の態度は彼が藤堂為左衛門の言う通り正義感のある優しい人物なのだということを天貝繡助に伝えると同時に、天貝繡助に罪悪感を抱かせる。
「でも、どうか僕を信じてください」
しかし、その罪悪感を抱えながらでも天貝繡助は大人たちと同じ立場に立っていなければならない。
心配してくれる優しい人も。子供だからと気に掛けてくれる大人も。
差し伸ばされる手を振り切って、腕につけた腕章をくれた上官の為に
「僕は天貝繡助。特派遠征部隊の副隊長です」
通称、特派遠征部隊の隊長である風守風穴を支える副隊長として天貝繡助は大人たちを前にしても前を向いていなければならない。
天貝繡助にとって風守風穴との初めての出会いは、神との対峙に近かった、なんて特別そうなことは口が裂けても言えない平凡な出会いだった。
その出会いは運命的なものではなく。それゆえにその出会いは必然だった。
天貝繡助は早くに父親を亡くした。他に身寄りは無く、子供の内に天涯孤独の身になった天貝繡助は生きる為に真央霊術院に入った。幸いにして天貝繡助の家系は代々死神を排出する家柄であり、天貝繡助の父親もまた護廷十三隊一番隊の隊士として前線で活躍する猛者で有った為、天貝繡助にも死神としての才能があった。
その才能を磨き上げるモノを死んだ父親が遺してくれたこともあり、天貝繡助は真央霊術院を二年という短さで卒業し護廷十三隊への入隊試験に合格した。
入隊したのは総隊長山本元柳斎重國が率いる一番隊。死んだ父親と同じ部隊に入隊した天貝繡助はその活躍を死んだ父親に見せつけるかの様に幼き身に怒涛の様に押しかかる任務をこなし続けた。
そして、天貝繡助が一番隊に入り数年が立った時、山本元柳斎重國より一つの命令が下された。
それは『
左遷かと顔を青くした天貝繡助に山本元柳斎重國は否と首を振り薄い眼を開きながら言った。
--お主には期待していると。故の命であると。
『
護廷十三隊が隊士を出し通常編成する遠征部隊では行えない様な長期遠征を専門にする『隠密機動』や『鬼道衆』と同じ護廷十三隊の枠組みに捕らわれない特殊部隊。
本来なら護廷十三隊に入隊して数年の新人を転属させるような場所ではないと前置きをした後、言った。
--そこにお主の力を必要としている者がいると。
自分の力と言われて天貝繡助はそれが自分の持つ斬魄刀のことであると直ぐに気がついた。
天貝繡助の持つ斬魄刀は父親の形見。一番隊の隊士として文字通り烈火の如く剣を振るい戦った天貝繡助の父親が息子の為に身体を
死神としてまだ未熟な天貝繡助は未だに始解を体得してはいないが、その斬魄刀の名前は知っている。他ならぬ自分の父が振るった斬魄刀の名前だ。息子である天貝繡助が知らない筈がない。
炎熱系斬魄刀『
何時の日か父親と同じようにこの『雷火』に自分を認めさせる為の鍛錬を天貝繡助は積み続けている。
その『雷火』の力を必要としている男が『
それを聞いた天貝繡助は転属命令を受けることにした。
理由は、嬉しかったから。死んだ父親の力を必要としてくれる者がいてくれることが、天貝繡助にはただ純粋に嬉しかった。
だから、その出会いは必然だった。偶然でも運命的でもない。
ただ、風守風穴が天貝繡助を必要としてくれたから、天貝繡助は風守風穴と出会った。
その手に『雷火』を携えて自分の元にやってきた天貝繡助に風守風穴は笑った。
「お前が天貝繡助か。思ってたより若いな」
「はい!若輩者ですが僕は、いえ、自分は骨肉粉塵の意気で頑張りますのでよろしくお願いします!」
「お、おう。熱いな。まあ、頑張ってくれ。俺にはお前の持つ『雷火』の力が必要だ。勿論、お前自身の力にも期待している」
「はい!僕なんかに、いえ、自分なんかに声を掛けていただいた御恩には必ず報います!骨肉粉塵爆発の意気で頑張ります!」
「あ、ああ。いや、爆発まではしなくていい。まあ、肩の力を抜けよ。繡助」
「はい!」
「全然抜けないな…ああ、そうだ。そういう時に良いものがあるから用立ててやろう。ほら、受け取れ」
「はい!………風守部隊長。これはなんでしょうか?」
「とても良いものだ。それを使えば緊張も力も
「はい!」
直後、夢心地の中で仰向けに昇天した天貝繡助を風守風穴は幼い身体には度合が強すぎたかと焦りながら天貝繡助を背負い四番隊隊舎に急ぐ事となるのだが、それは風守風穴の言い訳できない自業自得だった。
風守風穴が天貝繡助を背負い四番隊隊舎へ走る中、背負われていた天貝繡助は道中で辛うじて意識を取り戻し、ぼんやりとした意識の中で自分を背負う風守風穴の熱を感じた。
その大きな背中が伝えてくる熱は遠い昔に父親に背負われた時に感じた熱とよく似ていて、天貝繡助は風守風穴の背中に父親を重ねながら
幸せそうなその寝顔は子供の様に穏やかだった。
後に天貝繡助は自分の上官になった人物が大分頭のおかしいぶっ飛んだ人物であることを悟り特派遠征部隊への転属命令を受けたことを若干後悔するのだが、もう遅い。
風守風穴の魔の手に天貝繡助は既に捕らわれている。
幼心に刻まれたその
だから、天貝繡助は、いつの日にかその背に並び歩けるように、今日も親の背を追う子供の様に懸命に風守風穴の後を追う。
天貝繡助の出自の若干の改変。それに伴い第四話の内容を少し変えました。
天貝繡助に山本総隊長の復讐をさせない為に、致し方なし・・・
獏爻刀?ああ、あのイソギンチャクならどこぞの阿片好きが黒幕の老人と一緒にとっくの昔に滅ぼしたよ。
瑠璃千代様は愁君と一緒に今日も元気に庭で蹴鞠をしてるよ。