BLEACHの世界でkou・kin・dou・ziィィンと叫びたい 作:白白明け
二番目は矢胴丸さん。猿柿さんは三番手だけど、仮面形態では一番カッコイイと思う。
ちなみに男性一位は平子隊長です。( 一一)
月が綺麗な夜だった。
月明かりの危うさに心奪わる。しかし、そう思いながらも、墨を零したような夜空に点々と浮かぶ星は邪魔だと思う俺の感性はやっぱりどこか壊れているのだろうか。
そんなどうでも良いことを思いながら、漏れ出した阿片の煙が夜空に消えていくのを眼で追う。
空に溶けていく阿片の煙は、勿論、阿片に酔えぬ俺の為ではなく隣に座る天貝繡助の為のもの。
九番隊との合同任務の最中にそろそろ阿片の毒を身体が忘れてしまいますと、機を見て俺にそう伝えてきた天貝繡助の言葉に俺はもうそんなに長く瀞霊廷にとどまり続けているのかと驚いた。
五百年前から遠征専門部隊を率いて遠征を行い。遠征を終えれば次の遠征に出ていた俺が、部下の身体が阿片の毒への抵抗を忘れてしまいそうになるほど長い間、瀞霊廷にとどまり続けているのは何十年ぶりだろうか。少なくとも直ぐに思い出せないほどには昔の話で、つまりは珍しすぎることだった。
「…うう、相変わらずきっついです。もう少し薄めてください」
俺が渡したモノを吸う天貝繡助の声色に何時もの様な溌剌とした元気はない。
それもそうだろう。必要だからやっているというだけであって、天貝繡助は元来阿片の味と匂いを苦手としている。その上、天貝繡助が今吸っているのは
それでも天貝繡助には吸ってもらわなければならない。
「無理だ。それが阿片の毒への抵抗が身体に付く最低ライン。それ以上薄めたら意味がない。…味と匂いが気に入らないなら、本物を用立てようか?甘露より美味いぞ」
「いりません。風守部隊長は僕をまた四番隊送りにする気ですか?」
「なら、文句を言わずに吸え。なに、俺の故郷の物とは違い一山幾らの安物だ。気楽に吸えよ」
苦手なものを嫌々食べる子供のような表情で俺の用立てた紛い物の阿片を吸う天貝繡助。
嫌だろうと仕方がない。これもまた特派遠征部隊の隊士として飲み込まねばならない苦渋の一つ。常に俺の隣に立つ副官なら、尚更に避けては通れないこと。
俺の斬魄刀『
しかし、始解をした『鴻鈞道人』の刀身から完全に阿片の煙を消すことは出来ず、『鴻鈞道人』は必ず一定の量の煙を生産し続ける。それは阿片の毒への耐性を持つ俺からすれば別段なんでもないことなのだが、常人は別。
一切を平等に桃園の夢へと誘う『鴻鈞道人』を俺が振るって戦う以上、俺の隣に立つ者たちにはある程度阿片の毒に慣れて貰っていなければ話にならない。
勿論、それは付け焼刃の対処療法で幾ら普段から阿片の毒を身体に摂取させていたとしても『鴻鈞道人』がそれを上回る濃度の阿片を出せば慣らしていた所で意味はない。
しかし、その訓練をやっているのといないのとでは大分違うと語ったのは、誰でもない千年前から俺の隣で戦い続けた卯ノ花烈だ。
俺が知る中で最強の剣士であり回道を極め今の四番隊の隊長を務める卯ノ花烈がそういう以上、俺は俺の率いる部下たちにそれを義務付けた。
一定期間ごとの阿片の毒の摂取。それは遠征中であるなら戦闘に伴い漏れる『鴻鈞道人』からの阿片の上澄みを吸うだけでいいのだが、瀞霊廷に居る間は何の用事もなく『鴻鈞道人』を始解する訳にも行かないので、こうして別の手段で摂取させていた。
天貝繡助の口から洩れる薄桃色の煙が夜空に溶ける。故郷の阿片窟《とうげんきょう》を思い出される光景を俺は再び眼で追いながら、俺は今日一日の事を考え始めた。
頂点に輝いていた太陽は既に落ち辺りを闇が覆い頭上に輝くのは月と星。
原因不明の魂魄消失事件の調査に九番隊と共に乗り出してから、既に半日が過ぎていた。
九番隊による周辺住民への聞き込みでも、天貝繡助や九番隊の席次持ち達の現場周囲の調査でも新たな情報や発見は無し。何の手がかりもないという状況に、夕方には俺や六車拳西たち現場待機組も周辺の哨戒に出たりもしたのだが、見つけたのは子供を襲っている巨大虚。無論、斬った。
それはそれで幼い命が救われたのだからその現場に俺達が居合わせたタイミングには感謝はするが、霊圧の反応を発見した時の俺の期待を返してほしい。
以降は何の発見もなし。結局、原因不明は原因不明のまま夜になってしまった。
日没と共に瀞霊廷に帰還しても良かったのだが、六車拳西から人目のない夜に何か起きるかもしれないとの意見があった為、天幕を張り此処に一晩野営をすることとなった。
そんな状況で天貝繡助からの阿片への抵抗が薄れているとの報告。まさか天幕の中で弱い濃度とはいえ阿片を吸う訳にも行かず、天貝繡助と二人で天幕を出て荒野にあった大石の上に腰かけていた。
しばらくして必要量の阿片の毒を摂取した天貝繡助は、少し思考がぼやけているのだろう、ぼやっとした眼で空を見上げながら言う。
「静かですね。風守部隊長。今回の魂魄消失事件の原因も見つけられませんでしたけど、結局、普通の
「だな。まあ、外園の流魂街とはいえまだ此処は数字が若い地区だ。そうそう
「遠征で『
そんなことを呟く天貝繡助に俺は呆れながら息を吐いた。
「はぁ。痴れたか、繡助。この程度の濃度で情けない。平和などと、原因不明の事件が起こっている今の状況で言うべき言葉じゃないな」
「あぅ。…そうですよね。すいません」
「わかればいい。その言葉は俺が
「はい。………って、風守部隊長?祝言って、なんです?」
「ん?言ってなかったか?俺、今度、卯ノ花と婚姻するんだ。時期はまあ、まだ決まってないな。山本重國にも相談して決めなきゃならない。それに俺も卯ノ花も暇じゃないから、取りあえず今回の事件が解決するまでは無理だろう」
「風守部隊長」
「なんだ?」
「そんなの、聞いてないです。驚きのあまり叫んでもいいですか?」
「やめろ。任務中だぞ」
「なら、任務中にそんな大切なこと伝えないでくださいよ」
驚き損ねましたとブツブツ呟きながら天貝繡助は天を仰ぐ。そしてそのまま体を反らし続け、腰を掛けていた大岩から落っこちてしまう。落ちた先を眼で追えば、天貝繡助は地面でうめき声を上げながらゴロゴロと横に転がっていた。
阿片に酔ったせいだろう。見た目通りの年齢に戻った振る舞いを見せる天才少年を見なかったことにして、俺は先日の酒の席での一件を思い出す。
思い出すだけで赤顔ものの失態だ。
まさか、阿片に酔えない俺が酒に酔うなんて思わなかったなんて言い訳は口が裂けても言えない。
料亭『千寿庵』で卯ノ花烈と食事をしている最中、俺の意識は突然消えた。
そして、気がつくと俺が着ていた死神装束は肌蹴ており、俺の身体の下に同じく半裸の卯ノ花烈がいた。卯ノ花烈が前で結っていた長い髪は解かれ、その髪で隠していた胸元の刀傷と俺が刻んだ首筋の歯型の傷が晒されていた。言い訳なんて出来るはずがない状況に戸惑う俺に卯ノ花烈は優しく言った。
--犬に噛まれたと思って忘れましょうか、と。
それに頷けるほど俺は男を捨ててはいなかった。
だから、俺は正気を取り戻した後にもう一度、卯ノ花烈を抱いた。
そこに至るまでの過程にどんな経緯があったにせよ、それが全てだ。
「だから、俺は卯ノ花烈と婚姻する。ああ、特派遠征部隊の隊長職は続けるから心配するな。今まで通り、長い遠征任務にも向かう。おそらく退役まで会えない時間の方が長くなるが、卯ノ花はそれでいいと言ってくれた」
「随分と良い
俺の言葉に阿片の酔いが覚めた天貝繡助は地面に大の字に倒れながらそう言って純粋な笑顔で笑う。
結婚式。結納の場か。人見知りで口下手で引っ込み思案な俺個人としてはそういったものを大仰にやるのは嫌なのだが、もし卯ノ花烈が多少は華やかにやりたいと言うのなら、それもいいだろうなとど、”平和”なことを考えている時だった。
悲鳴が聞こえた。
「っ!?天幕か!」
悲鳴が聞こえたのは九番隊が設営した天幕の方向。
俺と天貝繡助は
天幕は崩壊し、そこは赤色だった。
「
天貝繡助が叫ぶ名前は天貝繡助が日中共に現場周囲を調査した九番隊の席次持ち達四人の名前。彼ら四人からの返事は無い。一様に沈黙して地面に倒れ誇りであっただろう「六車九番隊」と書かれた白い羽織を自身の血で赤く染めていた。
倒れる四人の傍に立つ二つの影に切っ先を向けることに迷いはない。
背を向けて立つその二人の霊圧には覚えがあった。そして、こんな最悪な事態への危惧もそれに対処する覚悟もすでに済ませている。
「…その隊長羽織の”白”は誇りだ。誇りであり誇るべきものだ。なあ、おい。お前達、誰の前で”
許さない。認めたくない。しかし、眼の前で起きたこれは現実。
なら、何があろうと迷うことは無い。刀を抜こう。守る為に。誇る為に。
同じ白を羽織る者として刀を抜こう。
--その
最初からこの事件の状況から考えて、護廷十三隊の中に裏切り者がいるかもしれないという予想は山本重國も俺もしていた。それが、この二人で有ったというだけ。迷いはない。迷いで揺らぐほど俺は優しくはなれない。
しかし、俺の声に反応し二人が振り返った瞬間、俺は揺らいだ。
振り返った六車拳西と久南白。
短い間とはいえ、見慣れたものになっていた筈の顔は、しかし、変わり果てていた。
「なん…だと…なんだ、それは」
「
虚の仮面を付けた六車拳西と久南白。
二人は俺と天貝繡助を視界にとらえると、絶叫と共に向かってきた。
正気とは思えない奇声を上げる二人の手に斬魄刀はない。俺と天貝繡助を前にして、斬魄刀なしで戦えると思いあがるほど二人が馬鹿ではないことは知っている。
ならば、それが意味することは眼の前の赤い光景がただの裏切り行為ではないという事。
俺は面倒なことになったと表情を苦くする。眼の前の赤い光景が、六車拳西と久南白のただの裏切りであったなら、俺は一切の躊躇なく二人を斬り捨てた。後悔も無く懺悔の言葉も吐かぬまま迷いなく斬れただろう。
しかし、正気を失っている二人を前にしてなお、その在り方を通すには俺は二人と接しすぎた。たった半日。しかし、その間に俺は六車拳西と久南白と言葉を交わし過ぎた。
それは、隣に立つ天貝繡助も同じ。
「風守部隊長。どうすれば?」
動揺した顔で切っ先に迷いを浮かべる天貝繡助に対して、俺は---。
「”斬れ”」
--対照的に迷いを捨てる。
「でも、お二人のあの様子は、正気じゃありません」
「”
「…はい」
そう言いながらもなお震える天貝繡助を俺は情けないとは思わない。死神でありながら人間らしく身体を震わせるその感情は遠い昔に俺が何処かで忘れていってしまったもの。羨みこそすれ隣にあることを邪魔だとは思わない。
もし、そう成ってしまえば、そう至ってしまえば、俺も遂に終わりだろう。
必要であれば仲間を斬ることに躊躇は無い。しかし、後悔すらしないのなら、それはただの痴れ者でしかない。
躊躇をせずに後悔を忘れずに
故に--
「安心しろ。繡助。俺はお前に殺す気で斬れとは言うが、殺せとは言わない。殺さずに止める方法なんて、幾らでもあるだろう。それに六車拳西と久南白のこの異変は既に別の場所で待機している九番隊の待機陣営から瀞霊廷に報告されている筈だ。最悪、足止めさえ出来れば応援がくる。そういう訳だ。肩の力を抜けよ。なに、何時も通り、気楽にやろう」
「はい」
「久南白は任せるぞ」
「はい!」
俺は六車拳西に切っ先を向け。天貝繡助は久南白に切っ先を向ける。
望まない戦に興じるほど嫌なことはない。しかし、興が乗らぬからと手加減する訳もない。
俺は六車拳西と久南白に案ずるなと微笑みかける。
「お前達は、今、俺に救われたいだろう。
やったね!卯ノ花さん完全勝利!そろそろヒロイン未定のタグを外さないとね!
代わりにヒロイン複数のタグを………おや、誰か来たようだ。(´・ω・`)
六車さん以外の過去編のキャラとの絡みがほぼなく戦いが始まる模様。
大丈夫だろうか?しかし、原作開始までサクサク進みたいので、致し方ない(; ・`д・´)