そんなこんなで一色の料理を食べ終えて。
ややはしゃぎすぎた気がしないでもない時間を過ごしたせいで本来の目的をすっかり忘れていた。確か一色はネコをモフりに来たのではなかったろうか。
「なぁ一色よ。ネコ、モフんなくていいのか?」
料理に使った皿を洗いながら、ソファでぐでーっとしている一色に声をかける。一色は皿洗いまでやろうとしてくれたのだが、さすがにそれは俺のなけなしの社畜魂が許さなかった。普段から養ってほしいなどと吐かしてはいるものの施しを受けるつもりはない。
作って貰った時点で施されてる感が否めないが、皿洗いでなんとかチャラにしておいてもらおう。じゃないとあとでなんな凄いことを請求されそうだし。
ところで一色の回答だが、
「あー、そーゆーのもありましたねぇー」
である。しかもソファでのびのびしながら。
なんというかダラけすぎじゃありませんかねぇ、一色さん。
いやまぁ、俺がそうするように勧めたんだから当たり前といえば当たり前なんだけども。いくら俺が人畜無害の社畜予備軍だったとしても男ではある。そんなに無防備でいられると目のやり場に困るのだ。何が、とはいわないけども、強いていうならその張りのありそうなメロンさんとか。あとはその綺麗なお脚様とかですね。
いやいや比企谷八幡、邪念は払うのだ。そんな事を考えていてもしそれが後でバレでもしたら恐ろしい目に遭う可能性が高い。
とフルで邪念を払っていると一色がゴソゴソと音を立てながらゆっくりと振り向いた。どうやら俺が喋りかけておいていきなり黙ってしまったのを不信に思ったらしい。
けれども一色よ、その選択は俺にとって最悪かもしれない。
ダラダラいろはすはどうやら本気でダラダラするつもりだったらしい。ソファでゴロゴロしたせいで服が若干乱れている。おねむなのか目もトロンとしていて艶っぽいし、心なしか肌には赤みがさしているような気がする。一言で言うとエロい。もうエロはすに改名した方がいいんじゃなかろうか(錯乱)
「あのせんぱい? その、水もったいなくないですか?」
……蛇口から水がダダ漏れでした。節約しないとね。
キュッと音がしてから水は少しづつその勢いを緩めていく。いつの間にか皿洗いは終わっていたらしい。
というか俺、どんだけ一色眺めてたんだ。普通にキモいぞこれ。
…………よし。そろそろ話を変えていかないと脳内八幡に危険が及ぶ気がする。
ううむ、ここは先程の話題にも出てきたネコの路線に戻していくとしよう。
「……てか、ネコモフんねぇならいる意味なくないか?」
「え、ちょ、ちょっとまってくださいなんですかその変なルール全然全く納得出来ないんですけど!」
「いや、そんな反応せんでも……」
まさかの食いつきである。悪い方にだけど。
ガバッァ! みたいな効果音がつくくらいにいきなり近付いてきた。
ビックリしちゃうからやめようね。というか君、なんでそんないい匂いするんでしょうか。いい匂いすぎて逆に鼻が麻痺してきたまである。
ついさっきそれ系の事を考えないと決めたハズなのにもう考えちゃってますね。俺の決意って一体…………
そんな俺の決意などどこ吹く風、一色はずいぶん張り切って喋りだす。張り切るというか強引というかマイペースというか、つまりいつも通りの一色である。つまりキョドってるのは俺だけなんですね分かります。
「じゃあいますぐ、すぐさまモフりますよぉー!モフってモフってわたしなしじゃ生きてられないくらいにしてやりますから!」
「いや、それはさすがにカマクラが可哀想すぎんだろ…」
わたしなしじゃ生きられないとか、なんでだろう。なんだかアレだね、うん。なんというか凄くえっちい気がしちゃうよね。まあ俺の心が汚れてるからだろうけども。
そういえばカマクラはどこにいったのだろう。本来であればカマクラのエサタイムにモフる作戦だったのだが、ついさっきエサはやってしまった。つまりカマクラ殿をモフるには何とかして捕まえないといけないわけだけども。
嫌われてる俺が追いかけても威嚇されて噛まれたあとに全力で逃げられそうだしなぁ。
その旨を一色に伝えてみると、「じゃあわたしに任せてくれません?」と言われた。
なにか作戦でもあるのだろうか? まあ一色も常識は知ってるし何か変なものを使うような事はないだろう。
そう思っていた頃が俺にもありました。
一色が取り出してきたのは、いわゆるマタタビ。俺的知識網、略してヒキペディアによると猫がよろこぶヤツではなかったろうか。
うん、一色よ。一体ナニ持ってきてるんだろうか。どうやら一色がここに来るのが遅れたのはこれが理由らしい。大した量でないところを見るとパーティーグッズ的なものなのかもしれない。
「一色………」
さすがに俺も呆れが出てきたらしい。別に怒ってるわけではないのだがどうやらそれを怒りと受け取ったらしい。
「あ、あの…………えーっと…………ですね、 ……ごめんなさい。」
しどろもどろではあるものの素直にごめんなさいが言える人は凄いね☆
と、ふざけてみるけれど、いつも自信満々の彼女がここまでしおれているとなると少し虐めたくもなる。若干湧いてきたサディスティックな欲求をできる限り抑えながらも生まれた欲求はしっかり発散してやらないとなー、という誰にするでもない言い訳をして彼女に向き直る。
「いや、うちのカマクラにちょっかいを出そうとした罪は重いぞ。」
「うぅ、せんぱいがいじっていいって言ったんじゃないですか………」
いつものあざとい台詞もこうなると嗜虐心を煽るだけだ。むしろ普段よりも弱さが入っているせいで可愛らしく思える。
「確かにモフっていいとは言ったがいじっていいとは言ってないぞ。」
「え、えっと、じゃあ…………なにしたら許してくれます?」
これ何のエロゲ? 思わず本気でそう言いかけてしまいそうになるがなんとかそれを押しとどめる。そんな事を言ったらこの雰囲気がブチ壊されるついでにこの流れを逆に取られて酷い目に遭うのが目に見えているんだし。
「そうだな……………………。じゃあ、コレの真似、してみてくれ」
指し示したのは丁度雑誌の表紙を飾っていたある人物だ。正確には職業というべきだろうけど。
それよりも正直この茶番はこれくらいの事を言わないと終わらなさそうな気がしたから言ってみたにすぎない。べ、別に趣味だからとかじゃないんだからね!
まあ、その過程で引かれるのはすでにされてるから問題ないしドン引きも大した違いはない。つまり俺が一色からのドン引き攻撃に耐えられるがどうかという問題になるハズだったのだが。
「…………わ、わかりました……やったら許してくれるんです、よね?」
「……え? あぁ、おう、もちろんだ。」
どうやらネタのつもりが本気らしい。ちょっとどうしよう。さすがに真に受けるとは思っていなかったのでこの展開はヤバイ。そんで正直見てみたいってのが本音なので、何も言えないどうも腰抜け八幡です。
なんだかどんどん脱線していってる気がするけども、気にしたら負けなんだ。負けるな負けるな、頑張れ八幡!(cv戸塚)を再生して気を保とう。じゃないと精神が保たないわ。
「んんっ! じゃあ、や、やりますからね?」
どうやら戸塚たんボイスを聞いている間に一色の心も決まったらしい。なんだか可哀想ではあるけれど、正直ここまできたら眼に焼き付けておきたい。キャラ的にも割と似合ってる気がするしね。
「……ご、ご主人さま、ごめんなさいでしたっ!」
「…………くっ、くくくく」
なんだか物凄い小物臭のする笑い方になってしまった。
いやいや、けれどもコレは笑うしかないだろう。先程述べた通りキャラ的には合ってなくもないとは思っていたけれどまさかここまでどハマリするとは思わなかった。
ただ誤算だったのは一色のあざと成分でギャグ路線、もしくは逃げ道になるかなーと考えていたのだが、よく考えてみればこの展開に至ったのは一色が謝罪したのをいい事に調子に乗った俺がお調子者発言をした事が原因だ。その時点で結構余裕をなくしていた一色にそれを求めるのは酷というかただの鬼畜の所業ではなかろうか。
全く一体誰だよそんな鬼畜。まあここには俺しかいませんね、はい。
あんまり長く無言状態が続いたせいかメンタル絶賛低下中の一色は挙動不審になってきている。普段ならそこまで気にしなさそうなのにかなりキているのかもしれないなー、と呑気に考えていると、
「なんかいってくださいよぉ…………」
いかん。ちょっと破壊力高すぎじゃありません?
そんなプルプル震えながら言われたらむしろ嗜虐心を掻き立てるだけな気がする。
それぐらいのこと一色なら分かっていそうだけど、それすらも考える余裕がないという事の裏返しなのか。
それから15分間程だろうか。一色(メイド風)の言動によってダウンさせられていた。もちろん、その後に多大なるお返しを約束させられたのはいうまでもない。
というか俺たちどんだけ脱線すれば気がすむんだ…………