「スタンダードから……、って事はそのデュエルディスクにも転送機能が?」
「てんそーきのう?何言ってるかさっぱりですけど、このカードが導いてくれたんです。
友人との絆。いえ、今ではもう形見になってしまいましたが……」
カードの力で次元を移動した?そんな馬鹿な事、あるハズが……。
「そのカード、見せてくれても良いかな?
カードの力で次元を移動する、ってのがイマイチ理解できないから」
「……不可能では無い。今まで幾つか大きな召喚反応を確認していた。
次元を超えるには十分、だと、思うけど」
召喚反応、ねぇ。言葉が途切れ途切れになっているからしっかりと証拠がある訳じゃないって事か。
だけど、そんな事が可能ならエクシーズ次元から逃げれた者がいるかもしれない。
せめて1人でも多く逃げて体勢を立て直したい所だけど。
「あ、あの、カード見せた方が?」
「あ、そうだね、ごめん」
イモータルペイン・リチュアル・ドラゴン?
こいつも儀式モンスター、そして次元を移動する能力を持っているカード。
ステータス的には特に変わった所は無い……?ちょっと便利ってくらいかな。
「友人の形見、って言うとその友人さんは何者かに狙われて?」
「……アクションデュエル中に事故で亡くなりました。
相手の妨害を受けて、必死に……。すいません」
「……いや、悪い事聞いちゃった。ごめん」
アクションデュエル。フィールドに広がるアクションカードを拾いながら戦う。
確か死傷者が出たって話はなかったと思ったけど。
「次元を超えた、それだけの力を持っている。
それが上手く理解できないんだけど、つまりどういう事?」
「んー……、膨大なエネルギーの衝撃波で歪みができて、
それに巻き込まれて流れ着いた……って奴?」
カードを使用しただけで次元が歪む程のエネルギーが発生するのか。
……デュエルは楽しむ為にあるんだよね。戦争の道具になったり、人が傷つくのは間違っているんじゃないか……?
ハートランドでは、もっと皆笑顔で……。
「ちょっと、聞いてる?」
「あ、うん。で、何の話だっけ?」
「イモータルペインをこちらで預かるか、使用できない状態にさせるか。
召喚反応で居場所が特定されれば次こそアカデミアの奴が来る」
アカデミア、ここにまで来てしまったら後はどこへ逃げれば……?
いや、立ち向かう為に兵力を……?
違う、なんでデュエルで戦争を起こそうとしているんだ!
あんなことやめさせないと……。
「……言っておくけど、プロフェッサーに正面から挑んで勝てると思わないでね?
そうなったら力尽くで止めないといけないから」
「分かってるよ……」
分かってる、急いでももう間に合わない。
奴らは数が、戦術が、エクシーズ次元のそれより圧倒的に上回っていた、一部を除いてだけど。
黒崎、ユート。2人なら上手くやってくれるハズだ。だから信じて自分のやるべき事をやる。
「協力者。特にアカデミアの侵攻を阻止して、協定を結べる程の技量と権力のある者」
「随分高望みだね。まぁ協力者は多い方がいいし、どうやって集めようか……?」
うーん……、強い決闘者が揃い、多くの人が集まる……。
「……シロ。儀式次元で、なるべくすぐ開催される、大型の大会ってある?」
「え、えっと。3日後に限定カードが商品の、超大型大会が」
「それだ、それだよ、それに出て協力者を集めるんだ!」
大会に出れば強者と多く出会える。
それこそこの島を一周する程の気力と体力は持ち合わせていないから、
1発でここらへんの決闘者を探せる。
「確かに、大会なら決闘者が多く集まる。
ただ宛もなく探すよりは効率が良いかもしれないね」
「決まりだね。シロ、案内してもらって良いかな?」
「良いですよ。ちょうど私も受付に行く所だったんです」
次の予定が決まった。小さいけれど、アカデミアの侵攻を阻止する計画の大きな一歩だと思う。
「ざっと5、600人くらいかな?」
「この島1、2番大きい大会ですから!」
勝ち抜きトーナメント、2先取マッチ、アクションデュエルって奴じゃないのか。
主催者と商品不明って時点で既に違和感があるけど、虎穴とも言うしリスクは多少受け入れるしかない。
あ、デッキの調整終わってなかった……。フリースペース無し、諦めてぶっつけだな。
数えるのが面倒になる程使い続けたから、初手や落ち札が大体予想できる。
後は枚数そのまま、汎用を抜いてストレージのサポートを入れなきゃ。
「後は宿、近くになかったっけ?」
「お金は?」
「あっ……」
「無一文なんですね……」
持ってきたのデッキだけなんだよね。そろそろ体洗いたいんだけど、水浴びでもできるかな?
替えの服……持ってきてないから服洗うと詰み。
誰かに借りる訳にもいかないし、適当にタオルだけ買って3日ホテルで過ごすか。
生憎サバイバルは経験済み、道具さえあれば漁も火起こしもできる。勝ったな。
「テント借りて生活しているんですけど、良ければ一緒に泊まります?」
「ありがとう、助かる。丁度ゆっくりデッキ調整がしたかったところだ」
ユーヒも同じことを考えてたみたい。儀式次元に来たんだし、何にでも対応できるようにしとかなきゃ。
サバイバルとか危ない橋渡る必要ないよね。ここはシロのご厚意に甘えさせていただくとしよう。
正直なところ、色々相手して今日はもう疲れたし、さっさと魚獲って寝るとしよう。
「儀式次元、どうメタれば良いのかな?」
「儀式魔法を止めれば良いんじゃないでしょうか……?
露骨な対策は積んだ事無いので、あまりアドバイスはできないんですけど」
「むぅ、やっぱり上から殴り倒すスタイルの方が好感が持てるかな。
見てて面白いデュエルをしたいよね……」
ヒートエイジって無駄にソリティアして除去しながら殴り倒すデッキだからなぁ。
ちょっと芸が無い、ユーヒみたいに2つのテーマを混合してやってみるかな?
そうだ、前に勧められていたアレを使ってみるかな。
「どっちかデッキ調整手伝ってくれる?新しい物を組み合わせたから軽く回してみたいんだけど」
「あ、私もデッキ変えてみたんでいいですか?」
「おーけー、お手柔らかに」
「「デュエル!」」
YUKI
LP4000
VS
SHIRO
LP4000
――YUKI turn――
YUKI
LP4000
手札5
「手札抹殺発動、お互いは手札を全て捨て、捨てた枚数分ドローする。
強欲で貪欲な壺を発動、デッキの上から裏側で10枚除外する。
そして2枚ドロー!これで手札5枚、これで動き易くなった」
「でも手札抹殺のおかげで私も動き易くなりました!」
「なら回せるだけ回させて貰おっかな。
手札からマンジュ・ゴッドを召喚、効果でデッキから高等儀式術を手札に。
そして高等儀式術を発動!」
「儀式魔法、それも有名な汎用儀式魔法じゃないですか!
貴方はエクシーズの出身じゃ……」
「誰だって環境に適応できるモンだよ。
さぁ、高等儀式術発動!デッキから通常モンスターを墓地へ送る。
全てを無へ還せ、終焉の王デミス!」
終焉の王デミス
☆8 ATK2400
「デミス!?ですが先行ではあまり出しても意味が無いハズ」
「モンスターを墓地送りしたのが重要なんだよ。
三枚伏せてターンエンド」
YUKI
LP4000
手札0
マンジュ・ゴッド
☆4 ATK1400
終焉の王デミス
☆8 ATK2400
伏せ×3
――SHIRO turn――
SHIRO
LP4000
手札6
「私のターンです。
手札からアロマージ-ジャスミンを召喚、そしてアロマガーデン発動。
ガーデンの効果、ライフポイントを500回復する。
そしてジャスミンの効果で1枚ドローする。
ジャスミンの効果で自分のライフポイントが相手より多い場合、通常召喚に加え1回植物族モンスターを召喚できる。
来て、コピー・プラント。プラントは効果でジャスミンと同じレベルになる」
SHIRO LP4000→4500
コピー・プラント
☆1←2 ATK0
現れたコピー・プラントが姿を変え、ジャスミンが2体となった。
エクシーズか?いや、確かコピー・プラントは……。
「チューナー!?それは確か……」
「そう、シンクロ召喚です!久々に使うので大掛かりな物はできませんが……。
レベル2のジャスミンにレベル2のコピープラントをチューニング!
シンクロ召喚、虹光の宣告者。
そして儀式魔法、自傷の儀式を発動。儀式召喚するモンスターのレベル×500ポイントのライフを支払う。
無数の傷負いし蒼龍よ。我が身を糧に何度でも立ち上がれ!儀式召喚、レベル8、イモータルペイン・リチュアル・ドラゴン!」
イモータルペイン・リチュアル・ドラゴン
☆8 ATK2500→3000
SHIRO LP4500→500
現れた蒼い龍が低く唸るように咆哮を上げ立ち上がる。
ボロボロの包帯で全身を覆われているが、ところどころ露出し傷跡が目立つ。
「儀式、なら戻しておこう。
リバースオープン、プレスカード。
効果でマンジュ・ゴッドをデッキの一番下に戻し1枚ドローする」
「イモータルペインでデミスへ攻撃!
心傷のエンドレス・フィアーズ!」
「リバースオープン、スキル・サクセサー!
効果でデミスの攻撃力を400ポイントアップする!」
「なら虹光の宣告者の効果を発動する。
虹光の宣告者をリリースし、そのカードの発動と効果を無効にし破壊だ!」
「リバースオープン、ハーフ・シャット!
デミスの攻撃力を半分にする事でこのターン戦闘では破壊されない!」
終焉の王デミス
☆8 ATK2400→1200
「ご隠居の猛毒薬発動、自分のライフを1200アップする」
このタイミングでライフ回復……。何か来るか?
恐らくあのイモータルペイン、ソリッドビジョンには無い迫力がある。
「イモータルペインの効果により回復したライフ分のダメージを受ける。
そして受けたダメージ分、イモータルペインの攻撃力をアップする」
SHIRO LP500→1700→500
イモータルペイン・リチュアル・ドラゴン
☆8 ATK3000→4200
シロの頭上で薬瓶が割れ、中の液体が降りかかり傷が癒える。
だが次の瞬間、イモータルペインが主を包帯で縛り上げバチバチと気を奪っていった。
そして蒼色の気を纏った包帯の一撃が迫る。
YUKI LP4000→1000
「痛った!何これ、ダメージが、現実に!?
それにデミスのコストも払えなくなって用済み。
これ以上のダメージは危険だとすると……、どうやって仕留めようか」
「虹光の宣告者の効果でデッキから高等儀式術を手札に加える。
1枚伏せターンエンド」
SHIRO
LP500
手札1(高等儀式術×1)
イモータルペイン・リチュアル・ドラゴン
☆8 ATK4200→3000→2500
アロマガーデン
伏せ×1
――YUKI turn――
YUKI
LP1000
手札2
終焉の王デミス
☆8 ATK2400
「……だったらソイツを超える大火力で潰せばいい。
手札からトライワイトゾーン発動、墓地の赤き希望 ホットナイト3体を特殊召喚!」
赤き希望 ホットナイト
☆1 ATK500
赤き希望 ホットナイト
☆1 ATK500
赤き希望 ホットナイト
☆1 ATK500
「成程、高等儀式術で落としたモンスターを再び呼び出しエクシーズか」
「エクシーズばっかりで芸が無いけど、これが一番手っ取り早いのさ!
ホットナイト3体でオーバーレイネットワークを構築。
エクシーズ召喚、ランク1、ホットエッグ!」
ホットエッグ
★1 DEF2000
「護りを固めるつもりか?」
「いや、運試しと保険って奴だよ。
ホットエッグがX召喚に成功した時、自身を破壊し1枚ドローする強制効果がある」
「だが状況は変わってない」
「ホットエッグが破壊された場合、素材となっていたモンスターを自分の場に特殊召喚する。
そしてホットナイト3体でオーバーレイ、現われろ。コピーイラプト!」
現れたのは赤い球体。ボコボコと音を立てているが不思議と冷えて見える。
コピーイラプト
★1 ATK0
「コピーイラプトの効果発動。素材を3つ取り除き、エクストラデッキからランク2のヒートエイジをこのカードの上に重ねてX召喚する。
現われろ、ヒートエイジ イラプター!」
地表を割り、地中から溶岩を纏った翼竜が飛翔する。
融解した羽根をはためかせ、周囲に火の粉を振り撒いている。
ヒートエイジ イラプター
★2 ATK1400
「イラプターの特殊召喚に成功したため1枚ドロー。
イラプターの素材を取り除き効果を発動!
相手フィールドのカード1枚を破壊して、相手に500ポイントのダメージを与える!
セットカードを破壊だ、パイロフロウ!」
「墓地の自傷の儀式を除外する事で自分の受ける効果ダメージをこのターン0にする。
そしてリバースオープン、ギフトカード。その効果で相手ライフを3000回復させる。
そしてイモータルペインの効果で回復量分のダメージを与え、与えたダメージ分攻撃力をアップする。
リターン・オブ・ナイトメア!」
イモータルペインの包帯が腕に巻き付き、ライフポイントを吸収してゆく。
十分生気を吸い取ったイモータルペインは禍々しいオーラを纏っている。
イモータルペイン・リチュアル・ドラゴン
☆7 ATK2500→5500
「攻撃力、5500か」
「これが俺達の力だ」
「……さっきから思ってたけど。君、シロじゃないよね?
体はシロの物だけど、中身がまるで別人だよ」
「……」
「喋る気は無いってんなら、デュエルに勝って聞くまで。
手札からRUM-ヒートフォース-発動。現われろランク3、ヒートエイジ ブラスター!」
ヒートエイジ ブラスター
★3 ATK1800
「ブラスターの特殊召喚時1枚ドロー」
「ヒートエイジは大量の手札消費をエクシーズモンスターの効果で補いながら戦うビートバーン。
だがライフコストも払えず、手札は減っていないが増えてもいない。
運頼みでこのモンスターを突破できるか?」
「運頼み上等。何があるか分からないからデュエルは面白いんだよ。
そして絶対にボクが勝つ。デッキを信じて1枚ずつ引けば勝利は必ず掴み取れる。
デミスとブラスターをリリース、現われろ、ヒートエイジ マグナイト!」
ヒートエイジ マグナイト
☆8 ATK2200
溶岩を纏った騎士が剣を抜き、傷だらけの蒼竜を見据える。
だが実力差は圧倒的、数秒持てば御の字だろう。
「マグナイトの効果発動。自分の手札を全て捨てる事で、捨てた枚数1枚につき300ポイント攻撃力がアップする。
ボクが捨てるのは1枚、よって300ポイントアップする。ヒートチャージ!」
ヒートエイジ マグナイト
☆8 ATK2200→2500
騎士の剣に炎が宿り、刀身が赤く煌めいている。
だが圧倒的なまでの力量差は埋められないまま2体は相対する。
「更に墓地のスキル・サクセサーを除外し、マグナイトの攻撃力を800ポイントアップする」
ヒートエイジ マグナイト
☆8 ATK2500→3300
騎士の鎧の隙間からオレンジ色のオーラが溢れ出る。
「まだ上がると言うのか!?」
「マグナイトを除外して手札からヒートエイジ ガイアブレイダーを特殊召喚する!」
ヒートエイジ ガイアブレイダー
☆8 ATK?
溶岩の鎧がひび割れ、炎が騎士の全身を覆う。
「攻撃力?のモンスター。わざわざ攻撃力を上げたモンスターを除外して出したって事は……」
「ガイアブレイダーの元々の攻撃力は、除外したマグナイトの攻撃力の倍を数値となる。
よって攻撃力は3300の2倍、つまり……」
ヒートエイジ ガイアブレイダー
☆8 ATK?→6600
「攻撃力6600、だと!?」
「ガイアブレイダーはエンドフェイズ時に破壊される。だからその前に決着を着ける!
ガイアブレイダーで攻撃、全てを切り裂け、グラム!」
地表と溶岩を纏った巨人が大地ごと、竜を両断する。
衝撃波で砂が巻き上がる。
YUKI LP500→-600
「忘れるな、我はまた目覚める……」
シロがばたりと倒れ、周囲が元の砂浜に戻る。
気付いたらボクの腕の包帯に巻き付かれた所も紫色に腫れ上がっていた。
出血は無いにしても、最悪骨が折れてるかもしれない。後で医者に行かないと。
「シロはボロボロだけど異常無し。案外頑丈な子で良かった」
シロのモンスターを含めて、ボクのガイアブレードまで現実にダメージが発生していた。イモータルペインの影響、だろうな。
3000のダメージで腕1本持ってかれるって事は何も出来ずに5500の直接攻撃を受けていたら……。
いや、考えるのはよそう。生きて立っていられるだけ良しとしよう。
……あ、イモータルペインを召喚したって事はアカデミアも嗅ぎつけて来るか?
シロは無事、大会に参加して貰って代わりに協力者を集めて貰うとして、オベリスク・フォースはボクが。
「相変わらず1人で抱え込むのが好きなようだな。
勝手にデュエルして、そんなボロボロになるとは」
気付けば背後にユーヒが立っていた。
デュエルディスクを装着していない所を見るとデッキ構築の途中で来たのかな?
「で、私はどうすれば良い?」
「アカデミアが来る。多分大会開催中を狙われる。
だから一緒に、この次元を守ってくれるか?」
「……そんなに耐えられないけど、逃げる時間は稼げそうだな。
最初から助けてと言えば幾らでも協力したんだ。もっと頼れ」
「ありがと……」
アカデミアとの戦いが始まる。儀式次元の人も結構犠牲になるハズ。
だからオベリスク・フォースを可能な限り遠ざけ、大会開催中に協力者を集める。
その前に軽く手当しないと、ドローもできない体になってしまう。
覚悟は決めた、後は大会の開催を待つだけ。
今日の最強カード
イモータルペイン・リチュアル・ドラゴン
儀式・効果
☆7/闇属性/ドラゴン族/ATK2500/DEF2000
「自傷の儀式」により降臨。
①このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
お互いのプレイヤーがライフポイントを回復する度、その数値分のダメージを与える。
②自分または相手がこのカードの効果でダメージを受けた場合発動する。
受けたダメージの数値分、エンドフェイズ時までこのカードの攻撃力をアップする。
③このカードがフィールドから墓地へ送られる場合、代わりにこのカードを手札に加える。
その後、墓地の儀式魔法1枚を手札に加える。
シロが使用した儀式モンスター。儀式召喚にライフ4000必要なのでライフゲインとの併用しなければならない。
場を離れた後も墓地へ送られず手札に戻る効果を持ち、再利用する事ができる。
召喚後のライフに注意。