Who is the liar.   作:Gasshow

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*この話は単体でも何の問題もありませんが『いないいないばぁ。』を読んだ後の方がより楽しめると思いますので、よければ先にそちらをお読みください。と言うか、東方キャラが死んでしまったりする展開に付いてこられない可能性があります。

はい!と言うことで『いないいないばぁ。』の番外編です。いわばエクストラストーリ的なあれですね。今回は謎解きでなく、普通に一つの話として読めるようにしました。ですが別に推理もできるし、御自身で答えを導き出せるようにもなっていますので、そうしてもらっても構いませんが、難易度は今までの話のどれよりも難しいので(私は)無理だと思っています。

これは皆様が気になっていたであろう、『後ろの正面だぁれ?』の裏背景の話です。今日はエイプリルフールと言うことなので、このタイトルにしました。 『訳:嘘つきは誰か?』と言うことで、それが分かればこの物語の真実にたどり着けるようになってはいます。ではどうぞ。


Who

それは私が暇だからと、アリスの家へ遊びに行こうとした事から全てが始まった。今思えばおかしな話だったのだ。一歩引いて見てみれば分かっていたはずの事。しかし気づいた時には遅かった。悔やんでも悔やみきれない。その思いだけが私を駆け巡っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この『魔法の森』には二人の魔法使いが住んでいる。一人は人形を愛し、人形と共に生きる『七色の人形使い』。そしてもう一人はただの人間にして魔法を使う『普通の魔法使い』。幻想郷と言う狭い世界において、同業者と言っていい彼女たちは、よく互いの家に行き来する。それは自身の研究成果を見せ合って参考にしたり、ただの暇潰しとしてお茶を飲みに行ったり。そして今日この日、そんな二人の内の『普通の魔法使い』こと霧雨魔理沙は、その後者の理由だった。

 

 

 

 

 

「さて、今日はどんなお菓子が出てくるかな~」

 

私は暗く、じめじめとした森の中を歩きながらそう呟いた。木々の隙間から見える空は青々としているのにも関わらず、この森を歩けば曇り同然の明るさとなる。いつものことなので、この森のせいと言うわけではないが、今日は特にやることもなく、妙に気持ちも沈み、何もやる気が出なかった。そんな日はゆっくりとした休日を過ごそうと、アリスの家へ御茶をたかりに行く途中だった。しかし私はふとその道中で足を止めた。

 

「…………アリス?」

 

唐突に私の目に現れたのは、道路でしゃがみ、何かを見つめている特徴的な服を着た女性。その女性は私が今から向かおうとしていた家の家主だった。

 

「おい、アリス。こんなところでどうしたんだ?」

 

「……あら魔理沙。こんにちは」

 

私の存在に気づいたアリスは立ち上がって、私に向かい手を挙げた。しかしアリスはこんな所で何をやっていたのか?

 

「実は今からアリスの家に行こうとしてたんだけど……どうしたんだ?」

 

「えぇ。実はね」

 

アリスは視線を落として、真横にある木の根本を見た。

 

「…………なんだこれ?」

 

そこには真っ赤なドレスを着た西洋人形が木にもたれ掛かるようにして座っていた。髪は金髪のショートカットで、頭にはドレスと同じ赤い帽子が被せられていた。肌の質感からして、これは木製か?

 

「なんだこれ?お前の作った人形じゃないのか?」

 

「違うわ。私もたまに陶器製の人形、言わばビスク・ドールは造るけど、これは私の作った人形とは製法も特徴も何もかもが違う」

 

アリス曰く、どうやらこれは木製でなく陶器で作られた人形らしい。しかしそうなると、幻想郷でこんな人形を作る人物がいると言うことか?いや、一概にもそうとは言い切れまい。外の世界から流れ着いた可能性の方が充分ありうる。よく見ると、服の間から僅かに見える手足や顔の表面に小さな細かい傷がたくさん付いている。となるとこれは随分と前に作られた人形なのかもしれない。ふと、私がそんなことを考えている間にアリスは再び視線を下げて、その人形を凝視していることに気がついた。

 

「そんなに気になるなら、手に取って見てみればいいだろ?」

 

「…………そうしたいのは山々なんだけどね。ほら、人形の右足首を見てみなさい」

 

アリスに言われ、私は人形が着ているロングスカートと靴下の隙間に、何やら文字が書かれた紙切れが張り付けてあることに気がついた。

 

「…………これは……御札か?」

 

「たぶんね。人形からは何の力も感じられないんだけれど、それでも少し用心してね」

 

なるほど。だからアリスはうかつに人形に触れなかったのか。もしかすると何かの述が施されているのかもしれない。しかしアリスの言った通りで、人形からは霊力や魔力と言った類いの力は何も感じられない。

 

「…………私は大丈夫だと思うんだが。何かあれば私が対処してみるし」

 

「…………そうね。一度、触ってみましょうか」

 

私の提案に同意したアリスは、恐る恐ると言った様子で、その人形に手を近づけていった。アリスの指先が一瞬、人形の頬に触れると同時に、彼女はすぐさま手を引く。それで安全かどうか確認したのだろう。その証拠に、次に彼女が人形に手を伸ばした時は、まだ慎重さはあるものの、それでもあまり躊躇(ためら)いを感じさせなかった。

アリスは両手で人形を持ち上げると、人形が着ている服を捲ったり、目玉を覗くようにして調べ始めた。しかしそこでこの人形が異常な存在だということが発覚した。

 

「……………………なんだよこれ?」

 

人形の素肌には、紅白だけで縁取りされた御札がびっしりと張られていた。それはまるで空いている隙間を奪い合うようにして。しかしよく見てみると、その御札には黒文字で何やら小難しい文字が書かれており、それはどうやら古文のようにも見えた。

 

「…………少し気味が悪いわね」

 

アリスの言葉に全面的同意だ。私としてはそんな人形を長時間見たいとは思わないが、それでもそこで一つ無視できないあることに気がついた。

 

「なぁアリス。これって、霊夢が使っている札に似てないか?」

 

「えっ?」

 

アリスは驚いたように人形に張られている札を見た。

 

「…………本当だわ。霊夢の使う博麗の札に似てる」

 

札に画かれている細部の模様や、使われている文字は少しばかり違うものの、それでもその札は霊夢が普段から使用している御札(もの)に酷似していた。

 

「どうする?アリス」

 

「どうするって……確かめてみるしかないでしょ」

 

こうして急遽、私の予定が変更となった。お茶菓子が食べれないのは少し痛いが、しかしそれでもきっと面白そうな出来事がこれから始まりそうだと、私はわくわくとした気持ちで博麗神社へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

この後に起こるのは『悲劇』以外の何でもないと知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正直に言おう。その時、私はすっかりと忘れていた。事は二週間前。私は最後の残り一枚の煎餅(せんべい)を掛けて、霊夢と弾幕ごっこをしていた。霊夢に押し負けそうだったと私は、やけくそにマスタースパークを放ったのだが、それが神社の屋根の三分の一を大破させた。それにより私を殺しそうな勢いで激怒した霊夢が襲いかかってきたのだが、それに対し私は人生最速のだと言えるほどのスピードで逃げ続け、事なきを得た。そんな出来事がつい最近あったのだ。まぁ何が言いたいのかと言うと……。

 

「…………なぁアリス。ここからはお前一人だけで行ってきてくれないか?」

 

「何を言ってるのよ魔理沙。いい加減覚悟を決めなさい」

 

とまぁこんなやり取りを五分ほど、鳥居の下でやっているのだ。だって私が今、霊夢に会ったら私は確実に殺される。アリスが私の手を引っ張り、私も負けじと踏ん張ってその場に留まる。そんな攻防を繰り広げている時だった……。

 

「……………何してるのよ、あんたたちは」

 

後ろから今、一番出会いたくない人物の声が聞こえてきた。私は恐る恐る声の聞こえた方へと首を曲げる。そこには紅白の巫女服を着た私の友人が呆れ顔で立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

境内へと招かれた私たちは、霊夢に事情を話し、拾った西洋人形とその人形に張られていた御札を調べてもらうことにした。しかしそれは別として、不思議な事に、霊夢は私のしたことを全く怒っておらず、もう屋根は萃香に直してもらったから今さら怒っても仕方がないと、その事については不問としてくれた。何でも明日が私の誕生日だから、それがプレゼントの代わりだと。本音はそこかと、思わず苦笑いをしてしまったが、元々貧乏巫女の霊夢からヘタなプレゼントを貰うより、そちらの方が私としては嬉しかったので、別にいいかと自分で勝手に納得した。

 

さて、それとは別にして私たちは居間で霊夢が調べ終わるのをお茶を飲みながら待っていた。そしてそれが一時間ほど続いた後、霊夢は西洋人形を持って私たちの前に現れた。

 

「調べ終わったわ」

 

「で、どうだったんだ?」

 

「結論から言うと、何にも分からなかったわ。人形からも御札からも何も感じない。ただの人形にただの紙切れよ」

 

どうやら霊夢からしても、何の力も感じ取れないようだ。

 

「だけど……」

 

しかし霊夢は続けざま言葉を連ねる。

 

「その札は『博麗』に通ずる物かもしれないわ。まだよく調べないと分からないけど。ねぇアリス、この人形はいつ頃の物なの?」

 

「う~ん。まだ正確には言えないけれど百から二百年前ってところかしら」

 

霊夢はアリスの返答を聞くと、そのまま考え込むように唸ってうつ向いた。何か思い当たるふしがあるのか、それとも何かないかと頭から記憶を漁っているのか。考えているところ悪いが、私は一つ気になっていた。それは御札に書いてあった謎の文字の事だ。

 

「なぁ霊夢。その御札には何でも書いてあったんだ?」

 

霊夢ならあの札の文字が分かったのかもしれないと期待して、目の前で唸っている彼女に聞いてみた。

 

「あぁ、あれはね《我之怒忘れ成るな》まぁ《私の怒りを忘れるな》って感じかしらね」

 

どう言うことだ?私の怒りを忘れるな?何かの怨念を封じた際に使われたとか?いや御札に書いてあるから、その札の使用者が使ったと言うことになるのか?もう訳が分からん。

 

「それってどうなんだ?霊夢も札にそんなことを書いてるのか?一応、博麗の札に関係ありそうなんだろ?」

 

「私もまだ分からないんだけど、そもそも御札にはそんな文字は書かないわ。書くとしても退魔の言葉。こんな怨念みたいな事なんか書かないわよ」

 

そうなるともう八方手詰まりだ。何の力も感じない人形とそれにびっしりと張られた御札。もはやいたずらとか廃棄物の類いの可能性が高い気がする。霊夢はそれから何かを考えるような仕草をして、ふとしてから顔を上げ、私たちの方へと向き直った。

 

「私はこれをもう少し調べてみるから、貴方たちはもう帰りなさい」

 

「……えぇそうね。そうさせてもらうわ。魔理沙、私は外で待ってるわね」

 

アリスは霊夢の提案をのんで、立ち上がり、縁側から外へと出た。しかし私は大人しく帰ろうなどとは全く思っていない。

 

「待てよ霊夢。私も付き合うぜ」

 

巫女からの視点だけでは分からないこともあるはずだ。魔法使いの私も一緒に調べた方が、何かしら分かる可能性も高くなる。何よりこの人形の正体が分かるまで、私も気が気ではないのだ。しかしそんな私の考えに反して、霊夢の顔は渋く苦い顔をしていた。

 

「駄目よ魔理沙。今日のところは大人しく帰りなさい」

 

「なんでだよ?」

 

いつもの霊夢なら、勝手にしなさいと言い、何だかんだで付き合ってくれたりするのだが、なぜか今日違った。更には霊夢の様子も雰囲気も、いつもとは違うように感じた。

 

「………………少し……ね。嫌な予感がするの」

 

他の人物ならばなんだ、ただの勘かと一蹴(いっしゅう)するのだが、しかし霊夢の勘は馬鹿にできない。稀に未来予感ではないのかと疑ってしまうほど、こいつの勘はよく当たる。

 

「…………そうか。なら仕方がないな。今日はもう大人しく帰るとするぜ」

 

霊夢がそこまで言うならと私は彼女の言う通り、大人しく帰ることにした。

 

「えぇ、そうしなさい。また明日の朝に来ればいいわ」

 

私は霊夢に別れを告げて、そのままアリスの待っているであろう屋外に出た。まだ日も落ちきっておらず、やっと夕方になったかどうかと言うところ。後ろ髪を引かれだ思いで、私はアリスと共に魔法の森にある自宅へと帰ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

私は朝早く、ベッドから飛び起き、さっさと昼食を食べ、博麗神社へと向かっていた。霊夢が昨日の人形の正体について、何か分かったのかどうなのか気になったからだ。そのせいで、夜も充分に眠れなかったので、私としては早めにこの問題を解決したかったと言う理由もあった。

 

私は視界に捕らえた目的地に降り立ち、霊夢がいるであろう境内へと入る。あんなだらしないところがある霊夢だが、あれでも巫女としての仕事はしっかりしているのだ。そんな霊夢は毎日、相当早い時間に起きている。だから私が朝早く訪ねても、何ら問題はないはずだ。おそらく今の時間だと霊夢は敷地の掃除をしているはず。そう思って外を歩き回ったのだが、霊夢の姿は確認できなかった。

 

「……って事は、あいつまだ寝てんのか?」

 

もしかすると昨日は調べ事をしていて夜遅かったのかもしれない。仕方がない奴だと、私は靴を脱いで、霊夢が寝ているであろう寝室へと向かった。襖の前に到着し、両手でそれらを押し退けるようにして開けた。

 

「おい霊夢。もう朝だ……ぞ…………。」

 

そこには赤い服があった。霊夢が普段から着ている赤と白の巫女服が。しかし今彼女が着ている服は白い部分がないと言ってもいいほど、赤く染まっていた。血に染まっていた。生が散っていた。顔が潰れ、片足が切断された私の友人が壁にもたれ掛かり、首が項垂れて沈んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 




基本的に四話構成で、最後に《解》の部分となる一話を投稿します。なので合計五話になります。少し不定期になりますが、またよければ見てやって下さい。
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