吹雪ですよ、司令官   作:月日星夜(木端妖精)

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第二話 自己紹介

「まずは無難に自己紹介といこうか。俺は佐分(さわき)テツ。二十三歳。今は……その、提督業に専念してる、かな」

 

 背筋を伸ばし、意識して真面目な表情を作って声を発したは良いものの、二年前に会社を辞めてから、貯金と親の遺産で生きている、などと馬鹿正直には言えなかった。

 無職です、なんて言って蔑まれたくない。が、こればっかりはしょうがない。働く気力がないのだ。幸い、二年前までの三年間は気力が充実しまくっていたのか、はたまた働く事が楽しかったのか、寝る間も惜しんで働きづくめて、金を使う暇もなかった。一千万も貯めて、俺は何を買うつもりだったのだろうか。

 ……資材?

 あれはマズイ。社会人生活三年目の初めの頃、友人の勧めで艦これを始めた俺は、あまり時間もとれず、ろくに資材も貯められないままイベントに突入した。時間がないなら金の力でカバーしようと資材に課金した……の、だが……。

 あれはやばかった。万札と引き換えに手に入れた資材は瞬く間に溶けて……なんの成果も上がらなかった。

 このゲームが好きになり始めていたのもあって、それ以来俺は真面目に資材を貯蓄するようになった。

 

「『謎のライダー』提督、じゃなかったんですね、司令官」

「そ、そりゃ、まあ……ね」

 

 まだ働いていた頃に始めたブラウザゲーム、艦隊これくしょん。その提督名は、今吹雪が口にした通りのものだった。

 彼女達の世界で、俺ってどういう扱いだったんだろう。呼び名も含めて凄い気になるんだが……それは、また後で聞くとしよう。今は彼女が知りたがっている俺の話だ。

 

「他に何が知りたいんだ?」

「え? ええっと……じゃあ、司令官って、ここに住んで長いんですか?」

 

 何を話せば良いのかわからず問いかければ、彼女も深く考えている訳ではなかったのか、微妙な質問が飛んできた。そこは、その、趣味とか聞くもんじゃないの? いや、さっきまでの俺も思いついてなかったけど。

 

「ああ、生まれた時から住んでるよ。俺と母さんと父さんの三人暮らしだった」

「三人暮らし……だった」

 

 俺の言葉を復唱する吹雪は、どうしてか悲しそうで、寂しそうだった。……言い回しを間違えたか?

 ……ああ。

 思っていたより、彼女は頭が回るらしい。『だった』という過去系から、今はそうでないとわかってしまったのだろう。

 

「……父さんと母さんは、もういないんだ。だから一人暮らしを満喫している訳さ」

「そう、だったんですね」

 

 できるだけ明るく言ったつもりだったが、彼女には深いところまで伝わってしまったみたいだった。両親がいないとは、離れて一人暮らしをしている、という意味ではない事。

 俺自身、まだ両親の死を引き摺っているところがあるのだろうか、声はそこまで高くなく、それが伝播したみたいに、吹雪も暗い雰囲気を纏ってしまった。

 

 彼女は目を閉じて手を合わせると、黙祷した。

 ……真面目だな。そこまでするとは。

 真面目というより……感受性が高い……は、違うか?

 他人の心に共感しやすい性質(タチ)、なのだろうか。

 親戚と会った時なんかは、両親の話で黙祷、と言わないまでもそういった祈りを捧げるような動きをされる事はあった。その人達に悪気はなかったんだろうが、俺は、なぜかそれが気に食わなかった……のだが。

 吹雪がするそれには、嫌悪感も何も抱かなかった。

 彼女が心から両親の死を(いた)んでくれたのがわかったからだと思う。親戚の方々だってそういう人はいただろうが、そこは俺の捉え方次第だろう。要するに俺は、吹雪だからこそそう信じられたって訳だ。

 会った事もない人のために心から祈る事ができるんなんて、普段なら疑うところだが、彼女は別だ。

 ――現実の人間より、虚構の少女を信頼するなんて、おかしな奴だ、と自分で思った。

 いや、今は彼女も現実だ。俺がおかしくなったのでなければ、だけど。

 

「ありがとな」

「いえ、当たり前の事をしただけです」

「あんまりそういうの、素直にできる人って少ないんだよ。礼を言わせてくれ」

 

 目を開けた彼女にお礼を言えば、謙遜(けんそん)された。いやいや、当事者だってそうかっちりやれたもんじゃなかったし、自然にできる君は偉いよ。とっても良い子だ。

 ゲームやアニメだけでも十分それは伝わってきていたけど、実際に会って、もっとよく理解できた。

 それだけで、会えて良かったと思えた。たとえこれがまどろみの中で見た夢で、起きた時には全部忘れてしまうのだとしても、それでも。

 

「それじゃ、今度は君の話を聞かせてもらえるかな。『どうして』と『どうやって』はわかった。次に聞きたいのは、君の経歴、それと、これからどうしたいのか」

 

 あとは、そうだな。こっちに来てしまった彼女は、自分の世界に戻れるのか? という事だ。

 体を揺らすようにして足の位置をずらし、座り直した吹雪は、机に目を落とすと、確認するように一つ一つ語り始めた。

 

「私は、吹雪です。知っていると思いますが……」

「ああ。でも自己紹介は大事だよな。よろしくな、吹雪」

「はい!」

 

 にっこり笑顔で返事をする彼女に、俺も笑みを浮かべて、頷いた。ただ名前を交わし、挨拶をしただけなのに、それがとても特別な事に思えて、嬉しかった。

 それから、彼女は端的に自身の事を話した。

 佐伯湾(さいきわん)泊地、一番最初に、俺と共に着任したのが、吹雪。特型駆逐艦を名乗った彼女は、顔を上げて、そっと呟いた。

 

「ずっとあなたと過ごしてきました。これからも、そうしたいです。……だから」

 

 一緒にいさせてください。

 頭を下げる彼女に慌てたのは、俺だ。

 

「そ、そんな畏まらなくても、いいよいいよ。(うち)はすっかすかだからさ、吹雪を泊めるくらい訳ないんだ。だから、頭なんか下げなくたって……」

「大事な事なんです!」

 

 顔を上げず、俺の言葉を遮る吹雪。

 ……それ程なのか。

 そんなにも、俺に会いたいと思って、俺の(もと)に来てくれたのか。

 想いの大きさにたじろぐ。だが悪い気はしない。ただ、その想いを俺が受け止めきれるか不安になっただけだ。

 彼女は提督としての俺しか知らないのだろう。私生活を見せたら、幻滅されてしまうかもしれない。

 だが、吹雪の想いが本物なら……俺も、しっかりと応えなければならない。

 さっきはケッコン宣言までしたんだ、それくらいできるはずだ。いや、できる。そう考えよう。

 

「わかった。……むしろ、俺からお願いしたいくいだ。これから、俺と過ごしてくれるかい」

「はい、喜んで……! 本日から、よろしくお願いしますね!」

 

 ようやく顔を上げたと思ったら、彼女は嬉しそうに笑って、再度頭を下げた。肩まで伸びた髪が揺れる。

 そこで、俺はようやくそこに頭がいった。

 

「野暮な事を聞くかもしれないが、なんで髪を下ろしてるんだ? それに、服も……なんか違くないか?」

 

 吹雪の笑みがみるみる(しぼ)んでいく。やばい、聞いちゃいけない事だったか、と身構えていれば、彼女は困ったような笑みを代わりに浮かべて、首を振った。

 

「それが、わからないんです」

「……え?」

 

 わからない、とは……その服装や、髪を下ろしているのがなぜかわからない、って事か?

 自分の事なのに?

 

「たぶん、この世界へ来た時に、時代や容姿に見合った姿になったんだと思います」

 

 だから、その制服は彼女にとっても知らないもので……だが、俺は知っている。

 そうだ、思い出した。その制服は、近所の中学校のものじゃないか。

 

「桜ヶ丘中学の制服だよ、それ」

「ちゅうがく……ですか?」

「学び()だ。知らない?」

 

 彼女の生きた時代がいつかはわからないが、昔にも中学や高校、大学はあったんじゃなかったっけ。

 しかし吹雪は不思議そうに首を傾げるばかりだ。ひょっとしたら、ちゃんと中学なんかは存在するけど、戦いばかりの彼女が知らないだけというのもあり得る。学び舎は一応(いちおう)わかったみたいだが。

 自分の体を見渡していた吹雪は、右の手首にヘアゴムが巻いてあるのを見つけると、それで手早く後ろ髪を結んだ。おお、それだけで随分印象が違う。さっきの吹雪は、なんというか、自室での寛ぎモード的な感じで、こっちの吹雪は普段のお仕事モードだ。いや、外行きモード? とにかく、俺の知っている吹雪にぐっと近付いた。あとはあの白い制服を身に纏えば……。

 立ち上がり、机から一歩離れた吹雪が一回転する。ふわりとスカートが広がり、大輪の花のようになった。

 

「どうですか? 司令官」

 

 そう言ってはにかんだ吹雪は、まるで天使のようだった。

 ……服など、関係ないか。吹雪は吹雪だ。むしろ、普段見られない違った服装を見る事ができる僥倖(ぎょうこう)に感謝しようじゃないか。

 

「ああ、かわ……」

 

 反射的に感想を述べようとして、しかし『かわいいよ』とは、さすがに、簡単に口に出来なかった。

 これが画面越しなら呟いていたかもしれない……ああ、画面越しでも賛辞は脳内にのみ留めてそうだな。

 

「……?」

 

 途中で言葉を止めたからか、吹雪が動きを止めて俺を見下ろす。

 が、俺が立ち上がると、頭を動かして、見上げる形になった。そのまま彼女の傍まで行く。俺の動きを目で追う吹雪に、何か微笑ましいものを感じた。

 

「ああ、やっぱり」

 

 立った状態で隣に並ぶと、やっぱり彼女の頭は俺の鳩尾辺りにあって、当然、目線はそれよりもっと低い。んー、背丈は……どれくらいだ?

 

「なっ! 何をしてるんですか、司令官!」

 

 手をかざしてだいたいの身長を計っていると、気付いた吹雪が弾かれたように距離をとった。

 さっきの「かわいい」を誤魔化すための行動だったけど、どうやら効果はてきめんらしい。なんの効果かは知らないが。

 両手で頭を押さえて睨みつけてくる吹雪は、身長に少なからずコンプレックスを抱いているみたいだった。

 

「ちんちくりんだな」

「ち、ちんちくりんじゃないもん!」

 

 試しに言葉を投げかけてみれば、口調を崩してまで必死に否定する。だが、背を曲げて自身の身長の低さを隠そうとする姿は、余計に小さく見えて、笑いを誘った。

 

「あっ……んんっ! わ、笑うなんて酷いです!」

 

 『提督』を相手に気安い言葉で話してしまったのに気付いたのだろう、吹雪は、かわいらしい咳払いをすると、俺を睨み上げた。そこまで目つきは鋭くなかったが、これ以上笑うのは彼女に悪い。なんとか笑みを抑える。

 

「悪かった。もうこの話はしないよ」

「……それなら、良いんですけど」

 

 おや? 真面目に謝ったつもりだったんだけど、彼女はまだ不満そうだ。うーん、人のコンプレックスをつつくのは、軽い気持ちでやって良い事ではなかったか。これが、気心の知れた相手ならば悪ふざけで済むかもしれないが、吹雪と俺の間には信頼関係と言えるものは築かれていないはずだ。

 いつか、こういう冗談を言い合えるような関係になれれば良いが……今はひとまず、そのための努力をする事にしよう。

 

「ここに住んでくれるなら、まずは案内しよう。君の寝床も決めないといけないしな」

「……すみません、ご迷惑をおかけします」

「いいさ、これくらい」

 

 緩く目を伏せて恐縮してしまう吹雪に軽い声音で告げる。机に近付いてパソコンのブラウザを閉じ、シャットダウンしてから、振り返って言葉を続けた。

 

「逆にお礼を言いたいくらいだ。この家に一人じゃ、さすがに寂しいからな。これから賑やかになりそうで楽しみだよ」

「それは……はい、そうですね」

 

 吹雪は、どこか儚いと思わせるような笑みを浮かべて、小さく頷いた。

 ……違和感。

 先程から、何か引っかかるものがあるのだが……その正体がわからない。

 わからないものを考えていても仕方ない。頭を振って思考を散らし、彼女を案内するために扉の方へ向かった。

 すると、吹雪は小走りに扉まで行くと、俺のためにか、開けてくれた。冷気の満ちる廊下に黒い制服姿の少女が出て行く。

 

「あわっ!?」

「吹雪?」

 

 と、ずるりと吹雪が足を滑らせ、扉の影へ隠れた。ドッドッと床を打つ音と、何かが引き千切れる音。それから、硬いものが壁を擦る音がして、それらが止んだ。

 急ぎ足で廊下に出る。吹雪は尻餅をついたように座り込んでいた。後ろ腰に回した手で背を擦って、「いたた……」と零している。

 

「だ、大丈夫か?」

「はい。すみません、司令官。……あれがないと、バランスが……」

「アレ?」

 

 手を伸ばせば、彼女は俺を見上げてそう弁解した。恥かしげな、誤魔化し笑い。

 アレとは……ああ、艤装(ぎそう)の事か?

 艦娘が艦娘と呼ばれる所以(ゆえん)。人の姿に、戦う船の力を宿した機械群。

 彼女達は、艤装と呼ばれる大きな機械を背負ったり、装着したり、(はべ)らせたりする事で、艦種や名前に対応する艦艇(かんてい)の力を引き出すという。

 言われてみれば、今の吹雪は艤装など背負っておらず、普通の女学生みたいになっている。なるほど、常日頃身に着けているはずの艤装がないと、こんな風になってしまうのか。……それは、彼女だけか?

 あれ、でもアニメでは、普通に艤装が無い状態で過ごしていたような……。いや、アニメの知識だけで語るのは危険か。彼女の過ごしていた世界がいったいどういった場所なのか、まだ聞いてないじゃないか。

 艤装の事もそうだ。そして、彼女の身体能力も……。

 落ち着いたつもりだったが、俺もかなり動揺しているな。聞いてない事が多すぎる。

 だがまずは、今やり始めた事を続けるのが先決だ。案内が終わったら、腰を落ち着けてそれを聞くとしようか。

 

 ――時間経過で彼女が消えてしまうのではないかという焦りが脳裏を過ぎったが、もしそうなら俺にはどうしようもない、と心を落ち着かせた。

 

 扉を閉め、直後に空調を切るのを忘れていた事に思い至り、扉を見る。『TETSU』の文字が書かれた札がカランと揺れた。

 またすぐ戻ってくるつもりだし、良いか。吹雪に目を戻し、今度こそ手を引いて助け起こす。ありがとうございます、とお礼を言われた。こっちこそありがとうございます、だ。女の子に触れたのって何年振りだろうな。あ、さっき振りか。

 こういった思考は自分でも気持ち悪いとわかるから、表には出さないよう努力しよう。吹雪にとっての俺が、どうかナイスガイな提督のままでありますように。

 ……ナイスガイって死語かな。

 

 ぱっぱと片手でスカートを払った彼女が俺を見上げてくるのに、それじゃあ案内するよ、と先導する。まだ腰が痛むのか、背を擦る仕草をする彼女が頷くのを確認してから移動を開始した。

 まずは隣の部屋だ。

 俺の部屋のすぐ隣。部屋から出て左側に一部屋、正面左は階段、正面右はトイレで、右の方にもう一部屋ある。どれも今は使っていない。右の部屋は両親が使っていたもので、中はほとんど生前のままにしてある。扉には両親の名前の代わりに『T♡H』の札がかかっている。『父母』の略らしい。部屋の中はある程度整理されてはいるが、ほとんど手付かずで、たまに掃除をするために出入りする以外には立ち入っていない。

 両親は良い人だったが、それゆえ思い出したくない事だってある。

 過去を振り払いたいなら、業者でも呼んで部屋を片付ければ良い話なのだが、仏壇も置いていない家の中で、唯一両親に手を合わせられるのはこの部屋だけな気がした。

 

 左の部屋は……最初から空き部屋だったな。

 

「こっちの部屋は……物置部屋代わりに使っていたかな……下の階の和室も一緒だ。下よりこっちの方が空いてると思うが……吹雪、和室と洋室、どっちが良い?」

「え? あ、えっと……」

 

 吹雪を見れば、彼女は俺の手に向けていた視線を上げて、数秒の間考える素振りをみせた。和室の方が良いかな、となんとなく辺りをつけていると、彼女は、この洋室を使いたいと言った。

 外れか。別にどっちを使おうが彼女のイメージから逸脱する訳でもないが、アニメでは和室っぽい場所で過ごしていたので、ちょっと意外に思ってしまった。

 

「そうか。じゃあまずは、中の物を下に移さないとな」

「あっ、あ、司令官、駄目です!」

 

 そうしなければ住む事などできないだろう、と鉄製のノブに手をかけようとすれば、吹雪が飛びかかるようにして俺の手を取った。……なぜ止めるんだ?

 彼女の意味不明な行動に困惑していれば、吹雪は必死な様子で、こう言った。

 

「こ、ここは私の部屋、になるんですよね!?」

「あ、ああ、そうだが」

「なら、片付けは私がやります! 大丈夫です、司令官の手は煩わせませんから!」

「え、いや、別にそんな手のかかる事でもないと思うんだが……」

「司令官、ここは私の部屋、ですよね!?」

「ああ……今から、そうなるな」

「なら駄目です!」

「ええー……」

 

 彼女の言葉を聞いても、なぜそうまでして止めるのかがわからない。あれか、繊細な乙女心ってやつなのか?

 この部屋を彼女の部屋と定めた瞬間、そこは未知なる領域に変わったのだ。乙女の花園。男の俺が踏み込んで良い場所じゃない……なんてな。

 実際どうかは知らないが、吹雪はしゃきーんと効果音が付きそうな勢いで、天井に向けて伸ばした腕の先に木札を持って見せると、制服の内側に手を突っ込んで取り出したサインペンでキュキュッと『FUBUKI』と記入すると、扉にべたっと貼りつけた。……札に手をついたままの体勢で止まる。

 ああ、まあ、その札、どこから出したのかは知らないが――妖精さん的な何かが手伝いでもしたのだろうか?――紐が通っている訳でもなければ、両面テープがある訳でもない。困った顔で俺を見る彼女に苦笑して、下に行った時に工作しよう、と提案した。

 

「そ、それじゃあ、この部屋は後で片付けるとして……次行きましょう、次!」

「手伝おうか? 片付け」

「い、いいですいいです!」

「そうか? なら、まあ、君の意思を尊重するよ」

 

 彼女の慌てっぷりを見るに、俺の考えは正しいのだろう。

 この部屋はもう彼女の物だ。そう考えると、途端に見慣れた扉が開いてはいけない神聖なものに思えてくるのだから不思議だ。

 艦娘としての彼女が建造またはドロップ――この言い方で正しいのだろうか?――してから何年経っているかはわからないけど、どうも見た目同様、年頃の少女の心を持っているらしいな。思春期。俺がとうの昔に通り過ぎた若者の象徴だ。

 提督と慕われていようと、こんな男を部屋に上がらせるのは彼女とて嫌なのだろう。

 ……彼女の方から部屋に誘ってくれるくらいに親密になれるよう努力しよう、と秘かに決意した。

 




TIPS
・身長のコンプレックス
軽度。
だからといって弄っていいものではない。
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