「そういうわけでBPはなし。またの乗車をお待ちしているよ」
「待って」
ひらひらと手を振って頭から帽子を取った彼女は何の未練もなくあっさり背を向けてしまった。慌ててコートの袖を掴めば不思議そうに首を傾げる。
「何だい?もうバトルは終わっただろう」
「解説。してない」
「解説?…ああ、最後のアレかい」
彼女に近づいたぼくに対してエーフィは、るる…と低く唸って威嚇してきたけれど、彼女がひょいと抱き上げれば途端に嬉しそうな甘えた声をあげた。目を覚ましたピカチュウがぼくの腕の中、その様子を何とも言えない顔で見ている。…何を言っているんだろう。ちょっと気になる。
それはともかく、訊きたいのはさっきのバトルについてだ。
「フラッシュで目くらましをしてる隙に【みがわり】をして【あなをほる】で地面に隠れたのさ。ちなみに【まもる】は身代りのすぐ下で使ったんだ。フラッシュ以降、ちぃくんの鳴き声は聞こえなかっただろう?」
「じゃあ最初からフラッシュはそのつもりで…」
「当然だ。アイアンテールで【まもる】に罅を入れるようなピカチュウがタイプ一致の【ボルテッカー】で【まもる】をどうにかできないと盲信できるほど馬鹿な人間じゃあないつもりさ」
その答えになるほど、と頷いて、ふと問いかける。
「また、バトルできる?」
「……時の運次第といったところかな。ノボリとクダリがダブルでノックダウンだなんて珍事は10年に一度でも珍しいレベルだと思うのでね」
「じゃあサブウェイ以外で」
「…善処しよう」
それではそろそろこの子たちを回復させたいのでね。
モンスターボールを軽く掲げて言われてしまえば、引き留めるわけにはいかなかった。ぼくも頑張ってくれたみんなをポケモンセンターに連れていってあげなくてはいけない。
それにしても、とさっきのバトルを振り返る。
特性や技を巧みに使った戦術、目まぐるしく変わる戦局、一瞬の判断が全てを決める臨場感とそれに伴う高揚感。
きもちよかった、と余韻に浸ってうっとりする。
だって、お前だって愉しかっただろう?なあ、相棒。
ぴっか、と返された返事に口元を吊り上げて、ようやくホームへと足を動かす。
とりあえず、しばらくは頑張ってバトルサブウェイに通うことから始めよう。
世界はまだまだ、つまらないモノではないらしい。
*****
「本日はバトルサブウェイご乗車ありがとうございます。わたくし、サブウェイマスターのノボリと申します!
さて、次の目的地ですが、あなたさまの実力で決めたいと考えております。ポケモンのことをよく理解なさっているか、どんな相手にも自分を貫けるか・・・・・・・・勝利もしくは敗北どちらに向かうのか・・・・・・・・
では、出発進行ーッ!!」
最終車両で姿を現した黒いサブウェイマスターを見て、シロガネ山在住のカントーのチャンピオンは一言。
「チェンジで」
「どうしてでございますかっ!?」
そして以後彼がバトルサブウェイであらゆる電車に何度挑戦しても、最終車両にサブウェイマスター以外が現れることはなかったという。
※駅長さんは基本この世界においてニートです
「ぶっちゃけそとにでるのめんどくさいおー」