ニート手前な駅長さん   作:いろは

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レッド④

「しかし、だ」

 

 言いながら長い髪をかきあげた彼女の仕草は妙に様になっていた。グリーンとかワタルがやったらナルシスト乙と言うところだ。あ、でもシンオウの方のチャンピオンの女の人だったら似あうかもしれない。たしか名前と服装の色がなんか違うひと、だった気がする。

 

「見かけによらずパワーが高いことは評価するけれど、ピカチュウの防御が紙なのも知ってるのでね。悪く思わないでくれたまえ。先手必勝だ、できれば一撃でいこうじゃないか!【だいもんじ】!」

「【でんこうせっか】でかわすんだ!」

 

 指示を受け素早くキュウコンから吐き出された炎は文字通り「大」のような形を描いているため、中央下には隙間がある。うまいことその穴をくぐりぬけたピカチュウは勢いをつけてキュウコンへと身体をぶつけた。

 せっかくの大技をかわされた少女から舌打ちが聞こえる。でも、舌打ちしたいのはこっちの方だ。

 

「くーちゃんッ踏ん張れ!」

「続けて【アイアンテール】!」

「【まもる】!」

 

 キュウコンの火力が思っていた以上にすごくて、ピカチュウも思わずスピードを緩めてしまったみたいだ。連続で技を決めようと思っていたのに、スピードが落ちたでんこうせっかじゃ威力が足りないのか怯むことなくすぐに立て直されてしまった。そのおかげで【まもる】が間に合ってしまい、勢いに乗って繰り出されたアイアンテールはあと一歩のところで防がれてしまった。

 だからといってピカチュウが悪いわけでもない。ただ近くで見ているだけのぼくでさえ炎の熱を感じたくらいだから、その下を潜り抜けたピカチュウが感じた熱さは半端じゃないはずだ。

 それに、と消える間際の【まもる】の壁に視線を向ける。

 壊れさえはしなかったものの、ぴしぴしと壁に入った罅は、それだけのピカチュウのパワーを示している。

 

「ナイスファイト」

「ぴっか!」

 

 半端じゃない勢いの炎を恐れずに指示に従ってくれた相棒にねぎらいの言葉をかければ、「当然だ」と言わんばかりの返事が返ってくる。それに心強さと、さらに掻き立てられるなにかを感じる。そしてそれは、ピカチュウも同じようだ。

 

「――この調子で押していくよ」

「ピカピ!」

「ふむふむ。なかなか、いや素晴らしいコンビネーションだ。指示から技までのタイムラグがほとんど無いに等しいとは。危なかったね――こちらも攻めようか、【かえんほうしゃ】」

「【ボルテッカー】!」

「はあっ!!?」

 

 ボルテッカーの体勢を取り、まっすぐに突撃してきたピカチュウに彼女は目を見開いて間抜けな声をあげた。

 

「正気かい!?」

「――ぼくはこいつを信じてる」

 

「ピカ!ピカ!ピカ!ピカ!ぴか、ぴかぴかぴかぴかぴかぴかぴかっちゃあああああああああああ!」

 

 ぼくの声に応えるように、声をあげながらさらに速さと纏う電流の勢いを増し、ピカチュウはまっすぐに、火炎放射の中に突入していく。

 キュウコンの炎とピカチュウの電気。初めは互角にぶつかっているように見えたそのふたつのエネルギーの衝突は、徐々にピカチュウが押し始め、とうとう炎を押し切ってその膨大なエネルギーを纏った身体をキュウコンへとぶつけた。

 

「ぎゃんっ!!?」

「くーちゃんっ!!しっかり、くーちゃん!?」

 

 ぎりぎりまで【かえんほうしゃ】を放っていた上に身体が大きいせいでかわすことができなかったキュウコンは、ボルテッカーをまともに受けたようだ。

 彼女が呼びかけても力なく、くてんとしたまま。なんとか一撃で戦闘不能にできたようだった。

 

 ばちり、と大きな音を立ててピカチュウの身体を電流が奔る。

 

「うわあ弱点でもないのにくーちゃんが一撃オチとか…しかも火炎放射のなかボルテッカーで突っ切れるものか普通……もしかしてというかもしかしなくても攻撃Vの極振りなんじゃないかいピカチュウ」

「……?何言ってるのかよくわからない」

「デスヨネー。まあ多分補正ってヤツなんだろうさ。でんきだま所持は予想してたけどまさか個体値Vが来るとは思わなかった…流石は原点にて頂点、そこに痺れる憧れるぅっ」

「……ありがとう?」

「………わからなかったら流してくれて構わないのだよ?ただちょっと世間の不条理さを嘆いているだけさ」

 

 ありがとう、よく頑張ってくれた。彼女はそう言いながら優しくキュウコンを撫でて、ボールへと戻した。そしてそのまま腰からもう一つ別のボールを手に取り、もう片方の手を腰に当てて微笑みを浮かべて言った。

 

「さて、長いようで短かったこのバトルも次でラストバトルだ。泣いても笑ってもこれで終わり。さあ、準備はいいかい?」

「いつでも」「ピィカ!」

「よろしい。それでは参るとしよう。私の最後のポケモンはこの子だ―――お願いするよ、ちぃくん」「ぴゃあ♪」

 

 人懐こくトレーナーに向けて可愛らしい声をあげてみせたエーフィは、こちらに視線を向けた途端にひどく冷めた、冷たい雰囲気へ変貌した。

 

―――強い。

 

 それが対峙するだけでびりびりと伝わってくる。間違いなく、今日出されたポケモンたちの中では最強のポケモンだ。

 

―――でも。

 

 ピカチュウを見ると、ピカチュウもぼくと同じことを考えていたのか、ぼくを見ていた。そして、どちらからというわけでもなく、こくりと頷く。

 わざわざ口にするまでもない。そう―――ぼくらは勝ちにいく!

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