世の中には色々な師弟関係がある。この東方八風凛の主人公八雲 夏凜も半神半妖でありながら魔法使いである霧雨 魔理沙の弟子だ。
しかし、別世界には一風変わった師弟関係がある。どういうわけか邪仙の弟子として生きている青年。彼の名は
これはそんな彼がこちらの世界に迷い込んだ話である。
俺……じゃなかった、私の名前は詩堂 善
ただ今、仙人目指して修行中です。
師匠の修行は厳しいけど、きっとそれも私の事を思っての事。
うん……そう、たぶん。おそらく、きっと……あれ?どうして涙が出るんだろ?
と、兎に角今日もがんばります……はぁ……
そんなフレーズを頭に浮かべながら森の中で倒れている青年。頭の中で何かを考えられているなら立ち上がれると思うだろう。今、彼には立ち上がれる程の余力が無いのだ。
時は数十分前に遡る。
幻想郷のどこかにある邪仙の家。そこで三人の男女がとある物を見ながら話し合っていた。
そのとある物とは所謂……春画である。何故春画が幻想郷にあるのかは置いておくとして、問題はその話の内容だった。
見ている限りでは青髪の女性と赤いチャイナ服みたいな物を着た黒髪の女性が春画をゴミ箱に入れようとしているのを青年が頑張って阻止しているようだった。だが話の内容はというと。
「善? いい加減その手を離しなさい? 前にも言ったけどこれは人を惑わす悪魔の書よ? 」
「そーだぞー、私はそれが何かは知らないけどなー」
「それだったら私は師匠に前、本を雑に扱ってはいけないって言いましたよね!? 」
善と呼ばれた青年が師匠と呼ばれた女性の腕を掴みながら止めようとしているが止まるどころか善の体が引きずられていく。
そろそろ掴んでくる善が鬱陶しくなってきたのか師匠と呼ばれた女性がゴミ箱に向けて善ごと春画を投げた。悲鳴を上げながらゴミ箱へと一直線に飛んでいく善。
そのままゴミ箱の穴へと入っていくと対して底が深くないゴミ箱の筈なのに善の体がゴミ箱の中へと消えていった。
それを見て顔を見合わせる女性二人。黒髪の女性の方が師匠と呼ばれた女性の方を向き、話しかけた。
「どうするんだー? 青蛾」
「まあ、前にもこんなことがあったし大丈夫でしょ。さ、戻るわよ芳香」
そう言い、どこかへと歩いていく青蛾と芳香。人が一人消えてもこの反応の為、こういう事には慣れているのだろう。
そして時は戻り現在。
さっきゴミ箱の中に消えた青年である善が倒れている森の中を一人で歩く少女がいた。夏凜だ。星型の缶バッチ付きの黒いキャスケット帽を被っており、美しいロングの緑髪が見えているがそんなのをこんな森の中で誰が見るんだというわけで。
そのまま歩いていると道の真ん中で倒れている青年を見つけた。急いで駆け寄り、生きているかどうかの確認をする為脈を測る。……死んではないけど少し弱い……かな?
危険な状態である事を理解した為持ち上げようとした時、肘に何かが当たった。何か気になったのでその方を向いた瞬間、夏凜の顔が真っ赤になった。
「え……? なんでここに春画が……? 」
そうは思いたくないが多分倒れている青年の物だろう。正直こんな汚らわしい物は焼き払ってしまいたいが生憎火を出せるような物など持っていないし、今は倒れている青年の方が大切だ。
脈は確認したがもしかしたら起きているかもしれないという希望に賭け、顔の方を見る。青年の整った顔立ちに思わず見とれてしまう。見とれている場合ではないと頬を叩き、青年の顔を見ようとした瞬間――突然青年が起き上がり頭突きを食らってしまう。いや、頭突きだけならどんなに良かったことか。
頭突きの拍子に青年と夏凜の唇が重なり合う。両方突然の出来事に驚いてしまい、互いに動かず唇を重ね合ったままの状態の時間が続く。ようやく我に返った夏凜が青年を突き放し、唇を拭いながら青年に赤面しながら話しかける。
「な……何のつもりですか!? いきなり起きるなり人にキスして!? 」
「い、いや誤解だよ! 俺だってそんなつもりなかったんだ! 」
「あったらあったで最低ですよ! 」
恥ずかしさから青年の頬に本気でビンタをしてしまう。半分妖怪である夏凜は人間からすれば当然力が強いわけで青年は横に吹き飛んでしまった。
再び我に返り青年の方へと走る。どうやらさっきのビンタでのびてしまったらしく青年は白目を剥きながら気絶していた。……自分がやった事だし責任取らないとなあ……。
青年を担ぎ上げ、森の中を駆ける。途中に多く障害物があるが、そこは刀華直伝のフリーランニングで避けていく。右肩に青年を担いでいる為受け身が取れず足への負担も大きくタイムロスになるが、青年にさらに怪我を負わせるわけにはいかないのでこらえる。
~少女移動中~
なんとか青年を守矢神社に運ぶ事が出来たらしく、青年は夏凜の部屋で布団に寝かせられていた。ちなみに春画はというと置いてきた。私、そんなの持っていけないもん☆
今、家には誰もいないため青年の看病は夏凜一人でやっているが元からそのつもりだったので特に問題は無い。とりあえず一通り終わったらしく部屋に戻ると本棚から本を取り出し、椅子に座りながら読む。読んでいる本の名前は不思議の国のアリス。中々チョイスが可愛らしいがまだまだ十四歳の少女ということを忘れてはならない。
そのまま数十ページ読み進めると青年のうめき声が聞こえた。だが読書に集中しているらしい夏凜にその声は届いていなかった。
放置された青年は目を覚ますと辺りをキョロキョロと見回して何故か感動しているかのように涙を流した。さっきまで森の中で倒れていたとはいえ、流石にこれは大袈裟だろうと思うが青年の住んでいる環境に理由があるのだ。
青年は布団から起き上がると布団を手早く畳み、隅っこへ追いやる。そして夏凜の方へと向かい、頭を下げた。
「ありがとう、見ず知らずの俺を看病してくれて。おかげさまで元気になったよ」
「……あ、起きてたんですか。元気になったなら良かったです」
そう言いながら立ち上がると、本をしまい青年の方を向き自己紹介を始めた。
「そういえば自己紹介がまだでしたね。私は八雲 夏凜、守矢神社の巫女で八雲家の次期当主です」
「……え? 」
思わぬ言葉に固まる青年に首を傾げる夏凜。当然八雲家の次期当主などと言われたら固まってしまうのも不思議ではない。だがこの少女はそれを平然と言ってのけてしまう。
固まったままの青年が突然正座したかと思うと急に土下座し始めた。青年の不審な行動に思わず苦笑いしてしまう夏凜。だが青年はその体勢から一向に動こうとしない。ええ……どうしよう……。
困惑したままの夏凜に突然青年が顔を上げ話し始めた。
「どうやら俺は大変な人に事故とはいえ接吻を……」
「ああ……その事ですか。いいですよ、もう気にしてないので。それよりあなたの名前を教えてくれませんか? 」
「はい、詩堂 善と言います! 青蛾という仙人の元で修行をしています! 」
「え、青蛾さんってあの邪仙の? 」
思わず自らの耳を疑ったが真剣に頷く善を見て信じざるを得ない。正直あの青蛾の弟子でこんな真面目?な人がいるのだろうかと思うが善はどうやら青蛾の弟子でも真面目な方なのだろう。
……少しこう言っては失礼なのだがさっきから夏凜を見る目が怖い。どういう事なのか考えているとふとした拍子に自らの格好の異変に気づき、赤面する。どうやら善を運んでいた際にどこかで引っ掛けたのか巫女服の胸元がはだけていた。
「へ、へへへ変態ーっ! 」
「なんでまたっ!? 」
恥ずかしさから再び善の顔を思い切りビンタしてしまう。どうやら今回のビンタで善は気絶しなかったらしく涙目で頬をさすっていた。流石青蛾の弟子と言えるのだろうが原因が原因だ。
涙目で頬をさすっている善を横目に予備の巫女服に着替えようとするが洗濯中だったのを思い出し、仕方なく置いてあったピンクのパーカーを着るが胸でつっかかり余計露出度の高い格好になってしまう。だが何故かこの格好に関しては恥じらいがないのだ。
そんな格好の夏凜を見てさっきまで頬をさすっていた善が一言言った。
「あの~……君さっきまで胸元はだけてて恥ずかしがってたのにその結構肌見えてるパーカーは別にいいんだね……」
「え? だって胸だけが見えてるのと胸とその他が少しだけ見えてるのだったら後者のが良くありません? 」
「いや、俺男だから知らないけどさ……」
そう言いながらまたビンタをされたくない為、目線をそらす。ええ……何この子、なんというか考え方が普通のそれと全く違う! 普通胸の辺り見えてたら恥ずかしいんじゃないかな!? 男の俺としては……ご馳走様でした。
とぼけた顔の夏凜をよそにさとりが見たら顔を真っ赤にするような事を考えてしまっている善。そんな事を思ってしまうのが男の性というものなのだろうが女性の夏凜にそんな事は当然分からない。それどころか父親である雪羽にも分からない。
因みに変な目線で見られている夏凜の方はと言うと。
「……くぅ」
何故か座ったままの状態で寝てた。十四歳の少女が自らより大きい男性を担ぎ、かなりの距離を運んだ後ずっと善の手当てをしていたのだ。疲れ果てて寝てしまっても仕方ない。流石に客人の前で寝るのはおかしいと思うが。
寝てしまった夏凜を見て、思わず苦笑いをする善。だが次の瞬間自らの目を疑う様な現象が起きていた。夏凜の髪の色が金色になっているのだ。目を擦り、再度見直す。だが髪の色は緑色に戻っていた。
「ただの見間違えかな……ハハハ。失礼だけど俺も寝ちゃおうかな」
そう言って横になる善。この状態で両親か二柱が戻ってきたら誤解を生んでしまうだろうがそんな事など気にせずに二人は幸せそうに寝ていた。
それから数時間後。辺りはすっかり日が暮れ、もう夜になろうとしていた。電気もついていない部屋で何かがもぞもぞと動き始める。
「う……うーん……。寝ちゃってたか、ってあれ? 」
目を擦りながら前を見ると、寝る前まではいなかったはずの青髪の女性と黒髪の帽子をかぶった少女が善を連れていこうとしていた。
急いでそれを止めようとする夏凜。善を連れていっている青髪の女性の肩を掴んだ瞬間、女性に言おうと思っていた言葉が別の物にすり替わってしまった。
「え……? 青蛾さん……? 」
「あら、私の事をご存知で? 」
「ええ、多分あなたは……『善さんの
「その通りですわ。私の弟子が迷惑をおかけしました」
そう言って頭を下げる青蛾。今日は頭を下げられてばかりだなあ、私そんな頭下げられるような事やったっけ?そう思いながら青蛾が頭を下げている前で首を傾げる。
少し寝ていたおかげでまだ頭が働かないが、急に思い出したかのように青蛾に耳打ちをして善を起こしてもらう。起きた際に驚いてしまい、足の方にいた芳香を蹴り飛ばしてしまったが、急いで夏凜が受け止めたおかげでなんとか大事には至らなかった。
他の人物がいたら思わず止めに入るような状況だが生憎ここにはこの四人しかいない。となると当然止めるのはこの中で一番常識人な者の仕事な訳で。ということは止めるのは善の仕事だ。
「ちょ、ちょっと待ってください! これどういう状況なんですか師匠! というかなんでここにいるんですか!? 」
「そういう事は気にしないでいいのよ善。そんなことよりそこの娘が何か言いたそうよ? 」
「え……。んぐ!? 」
善が何か言おうとした瞬間口を何かで塞がれる。塞がれた瞬間それが何かは分からなかったが少し時間が経ち、頭が正常に働く様になった善の視界には信じられない物が写っていた。待って、これどういう状況? ええと……俺の目の前に見えるのは目を閉じている夏凜ちゃん。それで、俺の口を塞いでいるのはまさか……!
善の予想通り、彼の口を塞いでいたのは紛れもなく夏凜の唇だった。再び混乱する善とは打って変わって落ち着いた様子の夏凜。彼女は目を開けると唇を善から離し、少し余韻に浸った後善に向けて話しかけた。
「これでさっきの件はチャラですよ? 本当ならもうちょっとディープな物でも良かったんですがそれは善さんの大切な人の為に取っておきました」
「ふふふ……若いのに良くやるわね」
「善、顔真っ赤だー」
「う、うるさい! 」
芳香に食ってかかる善を見ながら笑う二人。だがこんな楽しい時間にも当然終わりは来るわけで。
くだらない雑談をしている最中に何故か立ち上がった青蛾。そして芳香と善の方を向き、二人共立ち上がらせる。そして、全員で礼を言い外へと出ていった。
外へ出た三人は何故か守矢神社の敷地内にある魔法陣の方を見ながら話していた。
「やれやれ……まさか善の為にここまでやるなんてね……」
「すいません師匠……私のせいで」
「あら? いいわよ別に。後でちゃーんと罰は受けてもらうから」
「う、嘘だあ! うわあああ!! 」
悲鳴をあげる善を引きずりながら魔法陣の中へと入っていく二人。全員の姿が魔法陣の中へ消えた瞬間、魔法陣が音を立てて崩れ去った。
その音に気づかず、部屋の窓から月を見ている夏凜。……今日は色々あったなあ、まさか異世界から人が来ちゃうなんて。お婆ちゃんの仕業でもないし今回はイレギュラーなのかな? まあ、良いや。
少し微笑みながら目を閉じようとする。そして、眠りにつく前に一言だけ呟いた。
「止めてください!! 師匠!! ……ふふっ、な~んてね」
はい、というわけでコラボ編第4弾いかがでしたでしょうか?
まずは謝罪から。今回のコラボに参加していただいた皆様、本当に申し訳ございません! 他にもまだお2人いるのですが今回コラボさせていただいたホワイト・ラムさん含め3人を2ヵ月も待たせてしまいました事をここに謝罪させて頂きます。
さて、コラボ編のお話になりますがなんというかですね~私が善君を書くとラッキースケベみたいになっちゃうんですよね何故か(笑)キスも2回しちゃってますし。あ、春画ことすてふぁにぃは置き去られてしまいました(笑)善君頑張って飛び込んだ意味なし!
では、このあたりで後書きを終わらせていただきましょうかね。改めましてホワイト・ラムさん!今回コラボしていただきありがとうございました!2ヵ月も待たせてしまい本当に申し訳ございません!