もう築25年となった人間の里の寺子屋。25年経っても手入れはきちんとしているお陰で今も新築とまではいかないが、それに匹敵するほどの清潔さを保っている。
そんな寺子屋で教科書を片手に20人程度の子供達に授業を行っている金髪紫目の青年。どういうわけか実験をしている訳でもないのに白衣を着ているが気にしてはいけないのだろう。
「はい、じゃあ鬼に金棒の意味わかる人いるか? 」
「鬼は金棒持ってないよ八雲先生! 」
「それ萃香と勇儀だけな。萃香の方しか分からないと思うけど」
さっき教えたんだけどなー……、と苦笑いしながら授業を進めようとする。
だが子供達は興味を持たず、だんだんと教室内が騒がしくなっていく。いい加減にしろよと思った青年が怒ろうとした瞬間だった。
「五月蝿いぞお前達! 雪羽!お前も注意したらどうだ! 」
戸が突然開かれるなり現れた白髪の女性から飛んできた怒号に思わず静かになる子供達。
雪羽と言われた青年は頭を掻きながら白髪の女性の方を向き、廊下の方を指差し移動した。
まだ少し怒っている女性とポケットに手を入れ、肩を竦める雪羽。どう見ても話をするような状態ではないがこの二人にとってはこれがいつもの事なのだろう。その証拠に白髪の女性が口を開いた。
「あのな、雪羽。お前が子供達に対してあまり怒らないのは知っているが怒る時に怒ってやらないと子供達のためにならないぞ? 」
「相変わらずの教育論で。確かに慧音さんの言う事はごもっともなんですけどねえ……」
そう言ってお手上げと言ったように手を広げる雪羽。彼はこう見えても20年間教師をやっているが未だに慧音と呼ばれた女性には頭が上がらないらしい。
慧音はふむ。と短く呟くと雪羽の頭に手を乗せた。そして子供にやるように髪の毛をぐしゃぐしゃにすると明るい笑顔を雪羽に向けた。
「まあ、無理に変えろとは言わんさ。それがお前のやり方なんだからな」
「……変わりましたよね慧音さん。昔よりも明るくなったというかなんというか」
「そうか? 私はそんな自覚ないんだがな。もしそうなら春香のお陰なんだろう」
春香。その言葉を聞き雪羽は昔の事を思い出す。
雪羽の妹でかつて慧音の家に居候していた少女。彼女は幻想入りして幻想郷に入った人間ながら少し変わった能力を持ち、14歳という若さで流行り病によってこの世を去った。
慧音も雪羽も知らず知らずのうちに彼女に助けられていたのだろう。慧音は今までの固い性格が少し柔らかくなり、人への接し方がさらに優しくなった。雪羽は特に何も変わっていないものの、彼女が存命の頃に何度も彼女に命を救われており今の彼が存在しているのは彼女のお陰と言っても過言ではない。
そのままずっと立ち尽くしていると突如慧音が口を開いた。
「妙に騒がしいと思ったらもう授業が終わっていたんだな。確か今日は予定があるんだろう?」
「もう終わってたんですか。そうですね、今日は霊夢達と会う予定が」
「なら、早く行け。また明日な」
「お疲れ様でした。また明日」
慧音に一礼し、寺子屋の外へと出ていく。
人間の里の真ん中にあるどこにでもあるような極々普通の茶屋。雪羽の式である秋風 刀華の行きつけの店でもあるのだがそれはまた別の話。
そんな普通の茶屋の中で座っている、白黒の衣装に身を包んだ魔法使いみたいな少女と紅白の衣装に身を包んだ少し大きいリボンが目を引く女性。
その二人のいる所に何の躊躇いもなく歩き、空いている席に座る雪羽。
二人は特に気にする素振りもなくそのまま雪羽に話しかけた。
「遅かったな。夏凜の修行をしていた私より遅かったぜ? 」
「あんた今日はさっさと切り上げていたじゃない。目の前に父親がいることだし怒られるわよ? 」
「いや、怒んねえよ。寧ろ魔理沙に娘の修行をつけてもらえて嬉しいくらいさ」
「あんたねえ……。もう良いわ、何言っても聞かなさそうだし」
呆れながらお茶を飲む紅白の女性。彼女は雪羽と長い付き合いなのか彼との会話で諦めるところが分かっているようだった。当の本人は気づいていないようだが。
そのまま数十分話していると話題は結婚に関しての話へと変わっていた。
「そういや思ったんだけど魔理沙、あんた結婚する気ないの?」
「ブッ!ゲホッゲホッ……! な、何を言ってるんだぜ霊夢? 」
「いや、だってあんた全くそういうのに興味ないようにしか見えないのよ」
驚いて吹き出してしまったお茶を拭きながら霊夢の方を向く魔理沙。顔が少し赤くなっているがどういう意味なのかは分からない。
雪羽は笑いながら魔理沙の手伝いをし、お茶を拭き取った雑巾を店員に渡す。その後、そのまま魔理沙に向けて話し始めた。
「まあ、確かにそんな気はするな。結婚は良いぞ。子供が産まれた時なんか特にな」
「それはあんたが産む側じゃないから言えるのよ。本当に辛いわよ?あれ」
「いや、まあそうだけどさあ。でも産まれた後は嬉しいもんだろ? 」
「まあね。旦那が仕事の間面倒見てられるのは神社の仕事で一番いい所だと最近思ったわ」
「それ聞くだけで私結婚出来るか分からなくなるからやめてくれ」
魔理沙が少し顔を青ざめさせながら二人の方を向く。正直二人の方を向いても何か起こるとは思っていないが、何も出来ず向いてしまう。
それを見て雪羽は少し笑うと慧音にされたように頭に手を置くと髪の毛をぐしゃぐしゃにした。女性にやったら少し怒られるとは思っているが魔理沙なので気にしないでおく。
やられた側の魔理沙はというと顔を赤らめ、持っていた帽子を強く掴んでいた。
「だけどさあ、魔理沙は可愛いんだしそのうち彼氏でもできるだろ」
「……あんたやっぱり無自覚のうちに凄い事言ってるわね。そんな事ばかりやってると早苗に怒られるわよ? 」
「いや、なんでだよ。今は魔理沙の話だろうが」
「そうだけど……」
「かっ、かわ、可愛い!? 」
「反応遅っ」
魔理沙はそのまま顔を真っ赤にして黙り込んでしまう。どこを向いている状態か分からないのに団子はしっかり食べれているのが不思議だ。
霊夢は少し呆れた顔を見せると横に置いてあるお茶を飲んだ。はあ……結局あいつ昔と変わらず天然ジゴロじゃない。
魔理沙が我に返ったのを確認した後、それぞれの家に帰る事とし全員帰宅した。その後雪羽が早苗と夏凜に物凄い怒られたのはまた、別の話。
はい、というわけで第7話どうでしたか?これで一応第1章は終了です。
「私の出番最後だけじゃない」
「出れただけマシですわ。私なんか最近出番なしよ」
ごめんごめん。久しぶりに雪羽主体にしてもいいじゃない。
「お父さんより私を出せっての! 」
「とりあえず私を出しなさい! そうしたら許してあげるわ! 」
こらこら。とりあえず終わらせるよ?
では、次回も良ければ見ていってくださいね。(見ていってね!)(見ていきなさい)