じゃあどうぞ
時は流れ、秋の大会の決勝戦。みさき対乾の試合だ。俺はみさきのセコンドをしている。俺の試合?もちろん負けましたとも。1回戦から真藤さんが相手なんて聞いてない。負けた俺は悪くない。
と、そんなことよりセコンドに集中しよう
審判 「ポイントみさき 3対1」
試合時間はあと3分。このままみさきが逃げ切れば勝てる!そう思っていると隣の乾とイリーナと会話が断片的に聞こえてくる。
イリーナ 「沙希 ・・・・・・を切りなさい」
乾 「・・・50パーセント・・・」
イリーナ 「いえ 100パーセント・・・よ」
乾 「はい ・・・・・・フェーズセカンド」
会話が終わると乾のグラシュから出ている羽が乾を包み込むように大きくなっていく。
八幡 「みさき たぶんやばいぞ」
みさき 「わかってる」
八幡 「昌也 これは?」
昌也に乾に起こった変化について聞いてみる。
昌也 「たぶんグラシュのバランサーを調整したんだと思う・・・。これは!調整じゃないバランサーが完全にカットしてある!」
八幡 「バランサーをカットするとどうなるんだ?」
昌也 「簡単に言えば飛ぶのが難しくなる代わりにコントロールできれば桁違いの性能になる」
八幡 「だとよ、みさき」
みさき 「わ~お何そのチート!ッ来るね!」
八幡 「集中しろよ」
みさき 「わかってる!ッ速い!」
みさきはあっという間に背後に回られ、2ポイントを取られ同点になった。それから乾はバランサーをカットして得た高機動を生かし、メンブレンを衝突させみさきを弾き飛ばし続ける。
八幡 「みさき!なんでもいいから振り切れ!」
みさきは何とか脱出を試みているが脱出できない。そのうちタイムアップの笛が鳴った。
実況 「タイムアップです。これから10分間の休憩をはさんだ後延長戦に入ります!」
みさきが空から降りてくる。相当疲れているのか地面に降りるとすぐに座り込む。しばらく休んでいるとみさきが口を開いた。
みさき 「ハチ君、昌也 お願いがあるんだけど」
八幡 「なんだ?」
みさき 「私も乾さんみたいにバランサーを切りたい」
昌也 「無茶だ!動きを見る限り乾さんはバランサーを切って試合するのに慣れてる。たぶんそうとう練習してるぞ」
八幡 「それにお前のグラシュは乾のグラシュと違って飛んでいるときに操作はできない。つまり、この試合の間はずっとバランサーを切って試合することになるんだぞ。それでもやるのか?」
みさき 「やる!」
八幡 「わかった。」
昌也 「おいハチ!いいのかよ」
八幡 「昌也お前みさきと知り合ってから長いんだろ。だったらこうなったらこいつがもう何を言っても聞かないことは分かってんだろ」
昌也 「そうだけど・・・」
八幡 「それに俺もただでバランサーをカットするわけじゃない。ひとつ条件がある」
みさき 「条件?」
八幡 「勝てよみさき」
みさき 「うん!」
それからみんながみさきに声をかけていく。そうしていると放送がかかった。
実況 「さあここからは今大会初の延長戦に入ります。延長戦は5分間。それでも決着がつかない場合はサドンデスとなります」
実況から延長戦のルールが説明される中、みさきは乾に話しかけていた。
みさき 「さっきは最後までバチバチできなくてごめんなさい。今度は最後までバチバチしましょう」
乾 「・・・・・・」
審判 「では位置についてセット」
試合開始の笛が鳴りみさきと乾がスタートする。みさきは制御がうまくできないのか海に突っ込んでいった。
八幡 「みさき!大丈夫か!?」
みさき 「大丈・・・夫!」
海から水柱が上がる。それが収まるとそこにはグラシュからいつもより大きな羽をはやしたみさきの姿があった。隣から驚愕の声が聞こえた。
イリーナ 「そんなまさかバランサーを・・・制御できるわけ・・・」
みさき 「いくよ」
明日香・ましろ・窓果 「「「いけーーー!!」」」
みさきはセカンドブイを取り、加速する。
八幡 「いけ!そのままサードブイだ!」
みさき 「うん!」
イリーナ 「まさか制御できるとは・・・沙希ショートカットです」
乾 「はいイリーナ」
乾がショートカットをして、みさきと並ぼうとする。しかしみさきは乾が近づいてくるのが分かるとソニックブーストを使い距離を離す。それを見た乾はさらにショートカットをする。みさきはサードブイをタッチした。
審判 「ポイント鳶沢 5-3」
実況 「すごい!すごすぎます!鳶沢選手、バランサーの制御をぶっつけ本番でやってのけ、乾選手から2点リード!」
みさきはサードブイをタッチしたときにバランスを崩したのかライン上で乾と正面から向き合う。
みさき 「乾さん、バチバチしましょう」
そう言ってみさきは乾にドッグファイトを仕掛ける。
審判 「ポイント乾 6-6」
あれから同点となった。残り時間はほとんど残ってない。
みさき 「乾さんもっと飛ぼうよ!一緒に!」
乾 「・・・うん!」
そう言って乾は笑い、みさきを追いかけて飛んでいく。いつしか二人が飛んだ軌跡は光の球体となって俺たちの頭上で光っていた。会場のあちこちから「綺麗」という声が聞こえてくる。
実況 「あまりの光景にしばし実況を忘れておりましたが、延長戦の5分はすでに経過!あとは新たに得点を入れた方が勝ちとなります!」
突然、みさきのグラシュから生えていた羽が消えた。
昌也 「グラシュの制御が!」
乾が好機とばかりにメンブレンを衝突させみさきの背後を取った。誰もがあきらめかけたその時、みさきが最後の力を振り絞り、グラシュを制御し、ブラスターロールで乾の背後を取り、背中にタッチした。試合終了のブザーが鳴る。
実況 「ポイント鳶沢選手。7-6鳶沢選手の勝利です!」
みさきが空から降りてくる。そこに俺と昌也と先生以外が駆け寄った。
明日香 「みさきちゃん優勝おめでとうございます!」
みさき 「優・・・勝」
ましろ 「そうですよ優勝ですよ!」
みさき 「なんか実感わかないな・・・」
各務 「お前たちは行かなくていいのか?」
八幡 「まあ俺が行っても空気壊すだけなんで」
各務 「お前は相変わらずだな・・・。昌也は?」
昌也 「先生俺はfcをやめてから心の底から楽しいと思えるときはなかったです。けど今日は楽しかったです!」
各務 「そうか」
3人で話していると乾とイリーナが来た。
イリーナ 「負けました。私あこがれのあなたにずっと認めてほしいと思っていました。そのために沙希と二人でたくさん練習してきました。しかしそれは間違っていたのでしょうか」
各務 「そんなことないさ。ずっと私は過ちを犯してきたと思っていた。だがそれもfcの可能性を広げる意味あったと分かってホッとしてるよ」
イリーナ 「私、サーカスの意味少しわかった気がします。フライングサーカスとは楽しいもの。心が躍るものなんですね」
昌也 「楽しかったですか?」
イリーナ 「ええとっても。悔しいですけどね」
八幡 「乾お前はどうだ?」
乾 「・・・わからない。楽しいって何?」
八幡 「お前みさきと試合してた時にかわいい笑顔で笑ってたろ。それが楽しいってことなんじゃねーの。知らんけど」
乾 「あれが楽しい・・・私楽しかった」
八幡 「そーかよ。よかったな」
変な視線を感じそちらを向くと昌也と先生が温かい目で見ていた。
八幡 「なんですかその変な目は」
各務 「変な目なのはお前だろう。それよりお前があんなこと言うなんてな。驚いたよ」
八幡 「あんなこと?昌也俺なんか言ったか?」
昌也 「お前無自覚で言ったのかよ・・・乾さんに「かわいい笑顔で笑ってた」って言ってたぞ」
八幡 「・・・先生まじですか?」
各務先生は無言でうなずいた。うわーーーーーーーーーーー!!まじかよ俺そんなこと言ったの?なにそれ、はずッ!
八幡 「変なこと言って悪かったな」
乾に向けってそう言ってその場から立ち去ろうとすると、
乾 「ちょっと待って」
乾に呼び止められた。
乾 「さっき言ってた私の笑顔がかわいいって本当?」
早く立ち去るために正直に答える。
八幡 「ああ本当だよ。少なくとも俺はそう思った」
乾 「・・・そう」
乾は俺の答えを聞くと顔を赤くして下を向いてしまった。あーはいこれは分かります。怒ったってやつですね。はい。まあそりゃあそうだな。こんな目が腐ったやつにかわいいなんて言われてもうれしくないだろうし怒るのも当然か。そう思い俺は今度こそ立ち去るためにみさきたちの方へ歩き出した。
みさきたちのところに着くと昌也も追いついてきた。
ましろ 「ハッチ先輩と昌也先輩さっき向こうで乾さんたちとなにしゃべってたんですか?」
昌也 「んーとだなハチが乾さんにフラグ立ててた」
八幡 「なに言ってんだよ。フラグ立てるどころか地雷踏み向いて最後怒ってたろ」
みさき 「なにがあったの?」
昌也 「乾さん試合中笑っていただろ。途中は省くけどハチはその笑顔がかわいいといったんだ。それなのにハチはこんなこと言ってるんだぞ」
みんなにため息をつかれた。
ましろ 「ハッチ先輩これからはフラグ建築士と呼んでもいいですか」
なんかうざかったのでヘッドロックをかけた。昌也に
昌也 「なんで俺にかけんだよ!」
そんな様子を見てみんなが笑った。昔の俺が見たらどう思うだろうか。俺が誰かと一緒に笑う。そんなことは想像もしてなかっただろう。人生何が起こるかわからない。ふとしたきっかけが人生を変えることもあるだろう。そんなきっかけがないかもしれない。それでも俺たちは生きている。俺たちの上には青空が広がっていた。
完
本編の最終回となります
一応後日譚みたいな感じでもう一話書こうと思っております。
GW中に投稿できるといいですね