序章
此処は水上学園都市「六花」。通称アスタリスク。
そんなアスタリスクにある6つの学園のうちの1つ、「星導館学園」。その生徒会室では朝早くにもかかわらずとある男女が話をしていた。
「特待転入生?こんな時期にか。」
声を上げたのは、金の瞳と群青の髪が印象に残る美麗な青年だった。
「えぇ。そうです。名前は天霧綾斗くん。私がスカウトしました。」
その声に返したのはしっとりとした落ち着いた雰囲気と豊満な体を持ち、目が眩むような金髪の美少女。
「へぇ、お前がねぇ。どれどれ、えぇっと名前は天霧綾斗。天霧辰明流と呼ばれる古流剣術の使い手。ふーん古流剣術か。成績はと、あれ何もないのか。これじゃあ苦労したろスカウトするの。しっかしまたなんで。」
「こんなやつをということですか?それは私の願いのために彼が必要だからですよ、零夜。」
お互いに見つめあう2人。それで何か伝わったのか、少年は
「なるほどね。で、クローディア。わざわざ単にこいつを紹介をするためにこんな朝早くから呼び出したわけじゃあないだろう。要件は何だ?」
「えぇ勿論です。実は彼がまだこちらに来ていなくて、迎えに行って欲しいのですよ。」
「了解。うんじゃ行ってくるわ。」
「ええ、お願い致します。」
そう言って零夜と呼ばれた少年は出ていく。特待転入生、天霧綾斗との出会いをきっかけに様々な事件に彼もまた巻き込まれていくことを知らずに……
生徒会室でそんな話題がされる少し前の話。話題の人物天霧綾斗は空から落ちてきたハンカチを持ち苦笑していた。
「仕方ない、後で事務室にでも届けておこう。」
そんな事を言いつつ彼は辺りを見渡す。人工の島とは思えないほどの、自然豊かな光景である。その静かで落ち着く光景にあまり相応しくない慌てた声が聞こえてくるのに綾斗は気が付いた。鈴のように透き通り、可憐だが鮮烈な強い意志を感じさせる声。
「…ええい!よりにもよって、どうしてこんな時に………!」
まあ言っている内容は可憐とは言い難い悪態だったが。声の主を探せばこれから通うことになる学園の中でも目立つ清楚でクラシックな建物だ。
「とにかく、遠くまで飛ばされないうちに追いかけねば……!」
明らかに焦りがにじむ声で綾斗は何となく状況が掴めた。四階か…と呟きながら鉄柵を超え木の枝に手を掛け足を掛けながら登ってゆく。目的の部屋へ上り声を掛けながら前を見て彼は固まった。まあ仕方ない。なんせここは女子寮でありしかもその部屋の主が着替えの真っ最中だったのだから。
「え…………?」
「あれ………?」
少女と綾斗はポカンと口を開けて見つめあう。その少女は鮮やかな薔薇色の髪と新雪のような白い肌、若葉のように淡い碧色の瞳を持ち並外れて整った容姿をしていた。しかも半裸である。そうして2人して仲良く固まった後、一足先に我に返ったのは綾斗であった。
「ご、ごめん!いや、あの、俺は別にそんなつもりじゃ全然なくて!」
弁解しようにも焦りすぎて言葉がうまく出てこない。そんな姿を見て状況を把握したのか少女は顔を真っ赤に染め上げた。羞恥心からか、怒りからか、はたまたその両方か。どれにしても、怒声か悲鳴が飛んでくるだろうと覚悟していたが、
「後ろを向いていろ」
の一言。そうして後ろを向いて待つこと数分。
「も、もういいぞ」
の声で前を向けば気品と優雅さに満ちた少女が1人。先程の格好が嘘のようだ。綾斗がつい見惚れていると、少女が単刀直入に切り出した。
「で、ハンカチとは?」
「……はい?」
「さっきお前が言っていたのだろう?ハンカチがどうのこうのと」
「ああ、そうそう!えっとこれなんだけど、もしかして君の?」
「良かった……すまない。これはとても………とても大切なものなんだ。」
「いや、別に俺は偶然拾っただけで」
「それでも助かった。本当に感謝する。」
照れながら頭をかく綾斗に、少女は礼儀正しく深々と頭を下げた。
---が
「…………さて、これで筋は通したな?」
その声は今までと違って今にも爆発しそうな感情に満ちていた。ゆっくりと顔を上げた少女の顔には満面の笑み。但しその目は一切笑っていない。
「では くたばれ」
次の瞬間部屋の空気が一変した。少女の
「__咲き誇れ、
その途端、少女の前に巨大な火球が出現し、綾斗めがけて襲い掛かってきた。
「
とっさに窓から飛び降り、空中で体制を整えて着地する。それとほぼ同時に爆音が鳴り響く。見上げれば空中では巨大な炎の花がその蕾を開いている。空気がびりびりと震え、熱を帯びた突風が走り抜けてゆく。それこそ爆弾が炸裂した様なとんでもない威力だった。火の粉が降り注ぐ中、綾斗が呆気に取られていると少女が四階の高さを苦にする事なく優雅に舞い降りる。少女が
「ほう………今のを躱すとは中々やるではないか。」
こうしてこれから起こる事件の中心になる特待転入生天霧綾斗とその少女ユリス=アレクシア・フォン・リースフェルト」は出会った。