『ポイントB、異常ないか?』
『ポイントBから本部、異常ありません』
『なら良い、そのまま監視を続けろ』
『了解』
皆さんこんばんは。先日ガサ入れから無事生還したキャロ・シエルです。
次の稼ぎはどうしようかと悩んでたんですけど、あれ以来、街中を歩いているとちょくちょく声をかけられて仕事を紹介してくれるようになりました。
どうやら闘技場での活躍が裏で広まっているようで、小さいくせにやたら強い魔導師として話題になっているそうです。
「子鬼」なんていう二つ名までついて……鬼って何ですか鬼って! そんな怖い戦い方やってないいのに!!
ってな訳で仕事は入ってはくるんですけど……。
金バッチつけた人の護衛とか、用心棒だとか、ブラックな仕事ばっかり来るんです。
その中でもギリギリ法に触れなさそうなグレーゾーンの依頼だけ受けるようにして、今日まで何とか生きてきました。
今日受けている依頼はちょっと違って、最新デバイスの横流し取引現場の護衛です。
……真っ黒です。
普段なら受けないんですけど、報酬としてブーストデバイス1コ分けてくれるって言うんで、渋々ながら受けました。
こういう取引ってまだ市場に流れていない最新型を扱っているので、品質はともかく性能は文句無しなんですよね。
いつまでも夢幻珠ばっかり使っていたらどこかでバレるかもしれないですし、ブースト魔法と射撃魔法くらいは普通のデバイスで使いたいです。
『ポイントCから本部へ定時報告。異常ナシ』
『おお。もうすぐ取引だ。手前ら気ぃ抜くんじゃねえぞ』
『へえ兄貴。でも管理局なんて来るんですかねえ? 取り越し苦労じゃねえっすか?』
おい下っ端A、フラグ立ててんじゃねえのです。
『気ぃ抜くんじゃねえって言っただろうが。来ないならそれに越した事はねえんだ。それにもし来たとしても子鬼のセンセーが何とかしてくれる。だから余計なことは考えず見張ってろ』
『へ、へえ』
兄貴の方もフラグ立ててんじゃねえのです。あと子鬼いうな。そんな事言ってると
「げえっ、管理局!? 全員、ポイントAに集合!!」
はあ、やっぱり来たですね管理局。
なるべくなら相手したくないし顔も見られたくないですけど、何もしないで逃げると信用に響くし……。
仕方ないです。報酬分の仕事くらいはしましょうか。
私が現場に駆けつけた時には、もう既に戦闘が始まっていました。
こちらは10人前後。向こうは大体……30人!?
管理局は人手不足とか絶対嘘でしょ!?
「しょうがないですね。みなさんは下がってください。」
「せ、センセー、お願いします!!」
別にあなたのためにやってるんじゃないですよ下っ端B。
「見てろよ管理局! 子鬼のセンセーが来たからには、手前らなんざ一捻りだぜ!ヒャッハー!!」
うるさいですよ下っ端C。何かコイツらから先に片付けたくなってきます。
「新手か……、撃てー!!」
おおう、局員が30人がかりで射撃魔法を撃ってきます。こっちは子供なのに容赦無いですねー。
さあ、仕事の時間です。
『藍、モード「博麗」サブは「龍」で』「夢符「封魔陣」!!」
即座に結界を出して、後ろの仲間を守る盾にします。射撃魔法を防げたのを確認してから、私は単独、局員の方へと突進していきます。
「全員、アイツを狙え!」
集中攻撃に切り替えられたみたいです。うん、単騎特攻したら嫌でもこうなるよねえ。
それじゃ、出来るだけ引っかき回してみますか。
後方の封魔陣を維持したまま、私は弾幕の雨に突っ込みます。
少し数は多いけど、この程度なら
「な!? どうして当たらないんだ!?」
「ひるむな、撃てー!」
グレイズグレイズグレイズグレイズ……。
迫りくる弾幕を、全て紙一重で避けて進みます。
ぶっちゃけ殆ど自機狙いなので、動き続ければ当たりません。
たまに狙いが狂った弾が飛んでくるのでそれに注意して接近し、一番近くにいた局員に拳を叩き込みました。
「ぐはっ!」
「一人目!」
即座に気絶した局員を別の局員に向けてブン投げて、それを盾にして接近。同じ要領で無力化していきます。
「龍」以外での接近戦はまだまだ修行中なんですけど……普通に通じてますね。
こんなにアッサリ行くと、管理局は何教えてるんだろうって疑問になります。人材不足って、質の話だったみたいです。
半ば恐慌状態に陥った局員を殴っては投げ投げては殴って、を繰り返しているうちに、向こうは半数にまで減りました。
これでコチラとほぼ同数。あとはもう数人無力化してから、結界解除して全員で畳み掛ければ―
「!?」
そんなことを考えていると、突然、上手くは言えないけど凄く嫌な予感を感知しました。
何でかは分からないけど、このままココに居るのは不味い。
本能に従って回避行動をとったその一瞬後、私のいた所を金色の閃光が通過していきました。
閃光はそのまま結界に直撃し、自分達は安全だと高をくくっていたチンピラさんを飲み込んでいきました。コレは……砲撃魔法!?
「新手だと!? クソッ、残ってる奴らで何とかするぞ!!」
兄貴さんは無事だったらしいです。
でも今の一撃でこっちは私を含めて6人。今の砲撃を撃ってきた魔導師が合流してくると、どう考えても勝ち目はありません。
まあ既に15人ノシたし、少なくとも前金分の仕事はしましたよね。
成功報酬が貰えそうに無い以上、目を付けられる前にサッサと逃げましょう。
『藍、モード「鴉天狗」サブは「博麗」』
最速の形態を選択。羽団扇を装備し、黒翼を展開して一瞬でその場を離脱します。
後ろの方から「センセえええええええ!!」と悲痛な叫び声が聞こえてくるけど知ったこっちゃないです。
アーキコエナイキコエナイー。
そのまま逃げ切れると思ったんですけど
『こちらは時空管理局です。そこの子供、今すぐ停止して投降して下さい』
「はあ、何でよりにもよってフェイトさん……」
現在海上でデッドヒート中です。さっきから金髪の執務官様がこっちに念話を送ってきます。
よりにもよって管理局最速クラスのフェイトさんですか。逃げ切るの大変そうです。
『未成年の犯罪行為については情状酌量の余地がある。私も弁護してあげるから! だから止まって、お話聞かせて!』
フェイトさんは説得を諦める気配がありません。
その声から心底私のことを心配してくれてるのは分かるんですが……今や私の逮捕は私だけの問題じゃないんです。
『こっちにだって、止まれない理由があるんですよ。だから、絶対嫌です』
『……とにかく、停止しないというのなら、私は管理局執務官として貴方を止める』
『お断り、なのですよー』
そう言って、「風を操る程度の能力」を強化してさらに加速します。
今、私は能力を使って自分の周りの空気を操作して、音速以上の速度で飛行しています。
空気そのものが動いているので、私の周辺は無風状態で、少し離れてソニックブームが発生しています。飛行機の中で風を感じないのと同じ理屈です。
普通はコレで振り切れるはずなんですけど
後ろを見ると、さっきまでのバリアジャケットをパージし、局員としてそれはどうなんだ、というくらい際どい格好になったフェイトさんが、振り切られることなく付いて来ています。真・ソニックフォーム色んな意味でやばいです。
内心冷や汗を書いていると、後ろから魔力反応。一瞬後にフォトンランサーが1発、私をかすめて飛んでいきました。
『今のは警告。このまま逃げ続けるなら、次は当てる』
これは不味いです。
最高速度で振り切れない。
戦闘になったら経験と魔力量の差でこっちの負け。
逃げながら迎撃は、振り向かないと攻撃できない私に対し、追いながら撃ち続けられるフェイトさん。
ガン逃げした場合、私の魔力量はA~AA程度、霊力を足してもAA+~AAAの間。対する向こうは推定S~S+。先にガス欠になるのはこっちです。
アレ? ひょっとしてコレ、詰んだ?