幻想幼女リリカルキャロPhantasm   作:もにょ

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第17話 真っ白に燃え尽きて

「キャロ・シエル。今日こそ捕まえてあげます!」

 

「何というか、すっかり某刑事が板についてきましたねフェイトさん。でも、所詮私はただの雇われの護衛なんだし、放っておいて頭を抑えた方がいいですよ」

 

「そっちには他の局員が向かってる。後はあなただけ」

 

「仕方ないですねえ……なら、手加減してあげるから本気でかかってきて下さい」

 

「っ! また馬鹿にして!!」

 

 いえいえ、馬鹿になんて出来ません。

 戦ったら間違いなく負ける上に罪状追加されちゃいますからね。

 頭に血が上っているうちにさっさとトンズラしましょう。

 

『藍、モード「博麗」サブは「境」で』「神技「八方鬼縛陣」!」

 

「結界!?で―」

 

 結界で外と遮断されたせいか、フェイトさんの声が不自然なところで途切れました。きっと今頃、結界破壊用の魔法を発動させているでしょう。

 砲撃喰らうのは嫌なので、誰も見ていないうちにスキマを開いて逃げます。

 最近は1つ開くのに3秒、知っている所限定ですけどスキマ移動も出来るようになりました。順調にタイムが縮まってきて何よりです。

 そして私は、スキマが閉じる前にいつもの書き置きを残して立ち去りました。

 

≪対象、ロストしました。また逃げられましたね、サー≫

 

「言わないで、バルディシュ……」

 

 あの事件以来、キャロに逃げられる度にお馴染みとなってしまったやりとりだ。

 

 バルディッシュが記録していたあの日の映像を見た私は、驚きで一杯になった。

 あの時は分からなかったけど、あの子は着弾する直前に反転、私の脇をすり抜けて反対方向に飛んでいった。

 私にはあんな芸当は出来ない。

 あれから何度か試してみたけど、あのレベルの速度になると、どうしても体にかかるGのせいで大回りになってしまった。無理すれば、きっと内臓が破裂してしまうだろう。

 あの後も何度か会うことがあったけど、その度にあのデタラメな機動で振り切られて逃がしてしまった。

 最近は結界を張られて、それを破壊する頃にはなぜか消えてしまっているという、不可思議極まりないことになっている。

 結界を張っている以上向こうも動けず、転移魔法を使った形跡も無いのに、どうなっているのか訳が分からない。そして今日もまんまと逃げられてしまった。

 

 毎度のお約束となっている書き置きを見つけたので、またからかわれるんだろうな、と思いながら手に取って読む。分かっているのだから読まないでおきたいのだけど、貴重な手がかりかもしれないのでスルーするわけにもいかない。

 今回の文面は

 

 

 

 

 私にばっかり構ってないで、“いい人”でも探したらどうですか?

 小さな子供ばっかり構っているせいで、「行き遅れ」とか「未婚の母」とか言われるようになっても知りませんよ?

 

「はうっ!」

 

≪サー!?≫

 

 心にクリティカルダメージを受けて、危うくバルディッシュを落としそうになる。

 キャロの置き手紙を見た時はいつもこんな感じだ。

 

「そりゃあ、付き合ってる人なんていないけど、でも執務官の仕事をしてるとソレどころじゃないし……。それに、なのはとはやてもいないから、私だけじゃないもん……」

 

≪よく分かりませんが、元気を出してください。サー≫

 

 すっかりいじけてしまった主人に対して、バルディッシュは懸命にフォローを試みる。

 バルディッシュも二次被害的な意味で、キャロの犠牲者なのかもしれない。

 

「キャロ・シエル、今度こそ、今度こそ捕まえてやるんだから!」

 

 

 

 

 こんにちは、キャロ・シエルです。

 あの倉庫街での一件以来、何故か2、3回に1回くらいの確率でフェイトのとっつぁんとエンカウントするようになりました。

 戦ったところでメリットが無いので、出てきたらいつもサッサと逃げています。

 最近は限定的だけどスキマ移動も出来るようになったので、より確実に逃走できるようになりました。

 

「とはいっても、そろそろ潮時かなあ?」

 

「これ以上裏社会で動くのも限界ですし、何かしらの方法で罪状をリセットしないといけないですね」

 

 藍の言う事はもっともです。でも、スカさんと最高評議会がねえ……。

 

「とりあえずは現状を整理してみては?何かいい案が浮かぶかもしれませんよ?」

 

 そうですね。どこかに保護されるにしろこのまま裏で生活するにしろ、何かしらの抜け道を探さないといけないです。

 

 今の私の状況は

 

 ①お金はそこそこある。全て食料に回すと約半年分くらいは保つだろう

 ②フェイトのとっつあんの包囲網がそろそろヤバい

 ③これ以上裏で有名になるのも問題

 ④賭け試合は違法だけど、私は戦ってファイトマネーをもらっただけなので、賭博に直接は関わっておらず、罪はそう重くない・・・筈

 ⑤他の仕事は護衛ばっかり受けてきた。いくらなんでもマフィアを護衛したら有罪、なんて事にはならないだろう

 ⑥明確に罪に問われそうなのは倉庫街の一件で局員を怪我させた事による障害と公務執行妨害。デバイスは元々自分の取り分だったと主張すればいいだろう

 ⑦竜召喚は使っておらずル・ルシエの名前も出していないので、召喚師だとバレる心配は薄い

 ⑧むしろ夢幻珠がヤバい。保護の際に没収されてしまったら、ロストロギア認定+幻想郷との戦争フラグに

 ⑨バカ

 

 こんな所ですか。え、⑨? ……キニスンナ。

 

「なるべくブラックな仕事を避けていたのは良かったですね。倉庫街の一件がネックですけど、情状酌量の余地は十分ありますよ」

 

「やっぱり保護ルートかなあ? でもそうなると夢幻珠が……」

 

「そこですね」

 

「まず没収されるだろうし、どうしよ?」

 

「やはり手放してしまった方が良いのでは―」

 

「あのね藍、冗談でもそんな事言っちゃ……」

 

 ん、待てよ?

 

「手放す、ですか……それ採用で」

 

「え、本気で?」

 

「ねえ藍、こういうのはどうだろう?」

 

 

 

 

 幼女相談中……

 

「今問題なのはコレだから、こうすれば……」

 

「成る程。ですが後で困りませんか?」

 

「そこは……すればどうでしょう?」

 

「ああ、そういう事で」

 

「なので、そっちは任せますよ」

 

「はい、分かりました」

 

 ふう、相談終了です。

 冷静に考えてみると何とかなりそうです。じゃあ、早速行動に移しますか。

 

「藍、モード「境」お願い」

 

 「境界を操る程度の能力」でスキマを開き、今まで行ったことのある場所に移動します。

 移動先はアルザス山中の洞窟。⑨異変で山狩りに遭った際に一晩を過ごした思い出の場所です。

 

「よいしょっと。フリードも出ておいでー」

 

「キュクルー!!!!!!!!!」

 

 久しぶりに外に出られるのが嬉しいのか、フリード大はしゃぎです。

 最近は真の姿の時の体も大きくなり、たまにスキマを覗くと元気に飛んでいるのが目につきます。それでも外はまた別物なのか、興奮しっ放しです。

 

「このままだと話が進みませんね。結界「夢と現の呪」!」

 

 ピチューン!!

 

「じゃあこれから暫く会えなくなるけど、その間フリードをよろしくね」

 

「分かりました。マスターもどうかご無事で」

 

「あとコレも渡しておくね。野生動物狩るのもいいけど、目立つ様ならアウトフレーム使ってコレで普通に買い物してね。私の分を考えなくていいから1、2年は保つはずだよ」

 

 藍に持ち金の殆どを渡し、夢幻珠をフリードの首に掛けます。

 落ちないか心配だったけど、自然にぴったりのサイズになってくれたので良かったです。

 続いて藍がスキマを開いてくれて、帰り道への扉が出来ました。

 オリジナルの藍が主人の能力の一部を行使できる様に、こっちの藍も「境」形態の力を借りてスキマを開くことができます。

 とはいってもユニゾン時にはユニゾンの制御で手一杯なので、こんな時にしか使いどころがありませんが。

 

「じゃあ、行ってきます」

 

「はい、どうぞご無事で」

 

「嬉しい事言ってくれますねえ」

 

 藍の言葉を受けながら、私はスキマを抜けました。

 そしてひとり拠点へと戻ってきた私は、早速次の行動に移ります。

 

「えーっと確かこの辺に……あった!」

 

 もう大分前にもらったギンガさんのアドレスを引っ張り出してきます。

 通信デバイスを持っていないので使う機会は無いと思っていたんですが、世の中どこで役に立つか分からないものです。

 保護を受けるといっても、私はフェイトさんの連絡先なんて知らないですからね。管理局に関係ありそうな知り合いなんてギンガさん以外いないのです。

 さっきも言った通り通信デバイスを持っていないので、街中に行って、公衆電話? みたいな機器に、僅かに残していた小銭を入れて連絡します。

 いつの時代になっても、どんな世界でも、こういうものは無くならないんですねえ。

 

「あ、ギンガさん? 私です。キャロです。実はですね……」

 

 

 

 

 ―おまけ 数日後―

 

「はやて、久しぶり」

 

「久しぶりやねフェイトちゃん。最近そっちの調子はどうや?」

 

「執務官として勉強する事は多いけど、何とかやっていけてるよ」

(キャロには逃げられてばっかりなんだけどね。……自信無くすなあ)

 

「そかそか。んで、今日はどうしたん?フェイトちゃんの方から呼んでくるなんて」

 

「えっとね、前にはやてが話してくれた子の事なんだけど」

(最近あの子と会わないんだけど、はやての所には情報あるかな?)

 

「ん? ああ、キャロちゃんのことか? 元気にやってるみたいやで」

 

「へ? それって?」

(いや、その表現何かおかしくない!?)

 

「ん、フェイトちゃんは知らへんかったんか? あの子何日か前にゲンヤさんに保護されてな。今は裁判の手続きやら保護観察やらでゲンヤさんの所や」

 

 

 

 

 へ?

 

 

 

 

「え、ちょ、ええええぇぇぇぇ!!」

 

「ふぇ、フェイトちゃんどないした!?」

 

(いやいや、何がどうなってるの!? ついこの間まで「保護はお断り」とか言ってたのに! それがいつの間にかゲンヤさんの所でお世話になっているって!? もう訳が分からないよ!!)

 

「は、ははははははhahahahahaha……、化かされた……。」

 

「ちょっ!?フェイトちゃんが真っ白に燃え尽きとる!?お願いやから戻ってきてー!!」




燃え尽きたのはフェイトさんでした。
フェイトのとっつぁんの動かし易さは異常。
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