幻想幼女リリカルキャロPhantasm   作:もにょ

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第24話 さらわれて

「え?キャロが誘拐された!?」

 

 仕事が一段落し、そろそろ帰ろうかと思っていた矢先、そんな知らせが飛んできた。

 

「ああ、ギンガと二人で任務に出てもらったんだがな、その途中で犯人グループに攫われちまった」

 

 ウィンドウに写っているのはゲンヤさん、現在のキャロの保護者だ。

 初めはいつものようにキャロに騙されてるのかと思ったけど、ゲンヤさんはそういう質の悪い冗談はつかない。

 だとすると、本当に攫われたんだろう。キャロなら大抵のことは大丈夫だと思うけど……

 

「しかもその犯人は「フェニックス」と「プリンセス」だ。」

 

「なっ!」

 

 その二人の情報は私も知っている。

 幾度も破壊行為を繰り返し、その度に現場に駆けつけた局員を全滅させて逃走する、正体不明の高ランク魔導師。

 地上部隊の間では災害に近いものとして扱われ、大まかな位置は捕捉しても積極的には動かず、現地の職員はただ無事に通り過ぎるのを待つのみという恐怖の存在である。

 キャロは、そんなとんでもない奴等に捕まってしまったのだ。

 

「大まかな場所は掴めたんだが、既に俺達の管轄外でな。しかも、対抗できる戦力がいないんだ」

 

「そうですか……」

 

 ゲンヤさんは悔しそうに唇を噛んでいる。気持ちは分かる。私も同じだから。

 

「ん? ちょっと待ってくれ。ギンガ、いいぞ」

 

「フェイトさん! キャロを助けてあげてください。キャロが攫われたのは私のせいなんです! 私がもっとしっかりしてれば……」

 

 ゲンヤさんの後ろから出てきたのは、キャロのお姉ちゃん的存在のギンガ。

 足を怪我をしたのか杖をついており、顔には涙の痕があった。

 

「キャロが様子を見ようって言ったのに、私が行くって決断したから。だから……」

 

「お前は悪くねえよギンガ。お前は局員として正しい判断をしただけだ。悪いのは、二人に押し付けたこのオレだ」

 

 ゲンヤさんがフォローをしても、ギンガは納得していない。だから

 

「分かりました。私がキャロを取り返してきます」

 

「フェイトさん?」

 

「必ず取り返してくるから、ゲンヤさんとギンガさんは安心して待っていてください」

 

「すまんな。あんたも忙しいだろうに」

 

「好きでやることだから気にしないでください。それでは」

 

 通信を切った後、急いでオフィスから出て、私の相棒に声をかける、

 

「バルディッシュ」

 

≪飛行許可の取得及び、対象のサーチ結果の問い合わせ、すでに完了しています。≫

 

「そっか、ありがとう」

 

≪それが私の役目ですから≫

 

 頼りになる相棒に感謝しつつ、一気に飛翔して目的地へと向かう。

 サーチ結果は予測に基づくものなので、時間が経てば経つほどその信頼性は薄くなる。無駄な時間をかけてはいられない。

 

「待っててね、絶対助けるから」

 

 

 

 

 決意を胸に少女は夜空を駆け抜けていった。

 

 

 

 

 しかし、彼女は気付いていなかった。

 

 

 

 

 自分のポジションが、いつぞやの火災の時と同じになっていることに。

 

 

 

 

「ん……あれ?」

 

 目が覚めると、そこは暗い洞窟の中でした。あれ?何で私こんな所にいるんだろう?

 

「お、やっと目が覚めたか」

 

 頭の上から声が聞こえたのでそちらに顔を向けると、そこにいたのは白髪の少女―妹紅さんでした。そこで初めて、私の頭が妹紅さんの太股の上に乗っていて、所謂膝枕の状態になっているのに気付ききました。

 

「へ? へ?」

 

 いきなりの事に頭が上手く回りません。落ち着くんだ、キャロ・シエル。とにかくこうなった経緯を思い出そう。えーっと、ギンガさんと任務に出て、そこで戦って……あ!

 

「って、何人のことを浚ってくれやがったんですか!」

 

 ようやく現状を思い出した私は、とりあえず起き上がってから文句を言うことにしました。

 

「それは悪かったと思ってるよ。ただ、どうしても聞きたい事があってな。……お前、幻想郷って言葉に聞き覚えは?」

 

「!?」

 

「……やっぱりな。ほら、正直に話せ。隠すとためににならないぞ」

 

 そうでした。私が浚われたきっかけって、二人の前でうっかり漏らしたせいだった。ここはどう誤魔化すか―

 

「喋る気が無いのなら、それなりの対応をさせてもらうが―」

 

「MATTE!! 喋ります、喋りますから!」

 

 だから、お札をしまってくださいー!

 

 

 

 

「要するに、ここは幻想郷のある世界とは全く違う所で、お前が色々知っているのは、たまたま日本に旅行した時に知っただけだってか?」

 

「そうなのですよ。次元世界って言って、世界はいくつかあるんです。そちら風に言うと、天界とか魔界みたいな感じですね。それはそうと、どうして貴方達がこんな所に?」

 

 それを聞くと、妹紅さんは急に渋い顔になりました。アレ、地雷踏んだ?

 

「正直思い出したくないんだけど……」

 

 そう前置きして妹紅さんは話してくれました。

 

 話によると、二人の殺し合いによる迷いの竹林の自然破壊が深刻な問題となり、てゐさんを初めとする妖怪兎達が永琳さんに直訴したそうです。

 どうしたものかと頭を悩ませる永琳さんでしたが、丁度そこにスキマ妖怪が訪問して

 

「なら、二人っきりで旅行でもさせれば、少しは仲良くなるんじゃない?」

 

 当初はその言葉に裏があるんじゃないかと疑っていた永琳さんも、最終的には姫の良い暇潰しになるだろうと思ってこれを承諾。めでたく二人揃ってスキマ送りにされましたとさ。

 何で妹紅さんが裏事情まで知っているかというと、スキマ妖怪直々に説明してもらったからだそうです。「そんな訳だから、仲良くなるまで帰さないわよ」という捨て台詞とともに。

 そして飛ばされた先は、外は外でもミッドチルダ。あとは知っての通り、金稼ぎのために闘技場に出場、それが原因で指名手配、喧嘩の度に来る局員を蹴散らしながら、旅を続けてるらしいです。

 

「なんというか、苦労してるんですねえ」

 

「言うな。かえって落ち込む」

 

 どこかの誰かさんの台詞じゃないですけど、本当に世界はこんな筈じゃなかった事ばっかりですね。

 ん?待てよ?

 

「てことは、二人がちゃんと仲良くしてれば帰れるんじゃ?」

 

「誰がアイツなんかと! ……とにかく、そういう訳で私達は旅をしながら帰る手段を探してるんだよ。お前何か知らないか?」

 

「うーん……」

 

 有力な情報はあると言えばあるんですが、どうしましょうか?

 タダで教えるっていうのも何か損した気分だし……よし!

 

「できれば教えてあげたいんですけど、問題が……」

 

「何だ?」

 

「スキマ妖怪さんは、「仲良くなるまで帰さない」って言ったんですよね?なら、ひょっとすると今も監視されてるんじゃないですか?」

 

「ん? 今まで気にしてなかったけど、言われてみればそうかもな。」

 

「だったら、私が余計な事を教えてしまうと、どんな目に遭うか分かったもんじゃないですよね?」

 

「……あー、言われてみれば、そうかも……」

 

 私の指摘に、妹紅さんは頭を抱えています。

 誘拐されてしまいましたけど、私の事を心配してくれてる辺り、基本的には良い人なんでしょうね。そこにつけこむのは悪い気もしますけど

 

「あ、誤解しないでくださいね、別に話さないって訳じゃないんですよ。ただ、危険を冒す以上、何か見返りが無いと割りに合わないなあって」

 

「……金なら持ってないぞ。あるなら食料買ってる」

 

 そんな悲しいこと暴露しないでください妹紅さん。

 あと、どっかの巫女さんが大きく頷いたのが見えた気がするけど、気のせいだよね、うん。

 

「いえいえ、別に大したことじゃありませんから。……私を、鍛えてくれませんか?」

 

 今までは生き残ることを最優先にして、格上の敵には即逃走してました。それでもJS事件はどうにかなるかなって思ってたけど、今日の出会いでそれが甘い考えだと気付かされました。

 夢幻珠ナシの今の私の実力は精々A~AAランク。チートっぽいデバイスを持っているだけでは、圧倒的な地力の差は埋められません。だから

 

「二人を見て、自分の修行不足を実感しました。ちょっとだけで良いんで、見てもらえませんか? その見返りとしてこっちは、「外」の博麗神社のある所まで案内できます」

 

「な? 本当か!?」

 

「嘘は言いませんよ。どうします?」

 

「ちょっと待て、輝夜にも聞いてみる」

 

 あ、そう言えば見当たりませんね。どうしたんでしょうか?

 

「アイツなら外にいる。どれ、様子でも見に行くか」

 

 私と妹紅さんは二人で洞窟から出て行きます。

 辺りはもうすっかり夜。その月明かりに照らされながら、輝夜さんが立っていました。

 

「あら、起きたの」

 

「ああ。で、相談したいことがあるんだが」

 

 少女相談中……

 

「私は別にいいわよ。良い暇潰しになりそうだし。その子脅すっていうのもアリだとは思うけど、そんなのつまらないしね」

 

「って事らしい。その代わり」

 

「はい。約束は守ります」

 

 やった。これで師匠ゲットです!

 輝夜さんがサラっと物騒な事言ってるけど聞こえない聞こえない。

 

「じゃあ、今日はもう遅いからそろそろ寝ましょうか」

 

「私、さっきまで気絶してたんですけど」

 

「子供なんだから大丈夫だろ。ほら、行くぞ」

 

 三人で再び洞窟の中に入っていきます。さっきの空間まで辿り着き、そこで寝る事になりました。野宿なんて久しぶりです。

 

「ううっ、布団で寝たいです……」

 

 岩がゴツゴツしていて頭が痛いです。昔はフリードを枕にしてたんですけど―

 

「しょうがないな。ほら、こっちに来い」

 

 胡坐をかいた妹紅さんが、自分の膝を叩きながら手招きしてきます。

 私はそれに感謝しながら、妹紅さんの太股の温かさを感じつつ、眠りの世界に入っていきました。

 

 

 

 

 ▼▼▼▼▼▼▼▼

 

「やっと寝たか。……何だよ?」

 

「いえいえ、何でも。ただ、随分可愛がってるなあって。竹林に引き篭もってた貴方がそんなに他人と関わるなんて、どういった風の吹き回しかしら?」

 

「引き篭もりはお前も同じだろうに。……別に、ただの気まぐれだ。」

 

「気まぐれ、ねえ。まあ、そういう事にしておいてあげる。じゃ、私も寝るから」

 

 そう言って輝夜も寝転ぶ。蓬莱人といっても眠い時は眠いのだ。

 それに倣って、妹紅も目を閉じ、眠りの世界へと入っていった。

 

(ま、面白い奴だっていうのは否定しないけど。まさかまだ外の世界にこんなのが居るなんて、長生きはしてみるもんだ)




 一部変更。あからさま過ぎた伏線をぼかしました。
 移転前を知ってる人は、答え分かってても言わないでくださいね。
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