みなさんこんにちは。相変わらず修行中のキャロ・シエルです。
修行開始してから今日で一ヶ月。いつものように飛行訓練、霊、魔、妖力の制御訓練をこなしてから、妹紅師匠との実戦訓練に入りました。
「行くぞ、キャロ。いつも通り、私に一発当てるか気絶するまで続けるからな」
「はい。今日こそ一発当ててやります」
「やれるもんなら……やってみな! 蓬莱「凱風快晴 ―フジヤマヴォルケイノ―」!」
スペル宣言と同時にこちらに向かって妖力弾が発射されたので、急いで回避して距離を取ります。
その直後、私のいた地点で妖力弾が爆発。回避できたことに安心する暇も無く、速度の速い通常弾幕と妖力爆弾が次々に撃ち込まれてきます。
私は大きく移動してそれらを回避。回避ルート上にも低速弾が撒かれているので、うっかり当たらないように注意して回避に専念します。
「相変わらず避けるのだけは上手いな。けど、それだけじゃいつまで経っても終わらないぞ」
さらに数と速度を増やした弾幕が、私の方に向かってきます。
(回避ルートは……不味い!!)
移動先が弾幕で埋まっていて移動できません。これが通り過ぎるのを待っていたらやられる!
「クッ……霊撃!!」
一瞬の判断の後、懐から霊撃札を取り出して発動。衝撃波で移動先の弾幕を吹き飛ばし、急いでそのスペースに潜り込みます。
直後、さっきまで居た地点で大爆発。その威力は、まさに噴火の名を冠するに相応しいもので―
「へえ、今のも避けたか」
「って、ちょっと妹紅さん! 今の思いっきり殺傷設定じゃないですか! 私は蓬莱人じゃないんですよ!」
今までちゃんと非殺傷だったのに! うっかりで殺そうとしないでください!
「ああ、スマンスマン。でも、キャロなら大丈夫だろ? 殺しても大丈夫そうだし」
「何が大丈夫なもんですか! 前に私が輝夜さんにピチュらされた事忘れたんですか!?」
「ほら、いつまでも無駄話してないで次行くぞ」
「え? ちょ」
まだ軽いパニック状態の私の前に、さっきとほぼ同じ規模の弾幕が飛来してきます。相変わらず殺傷設定なそれを回避しながら考えることは一つ。
(何とか一撃当てて終了させないと、人生が終了してしまう!)
そう悟った私は、早速生き残るための行動を開始します。
妖力爆弾を後ろに下がって回避。爆発の瞬間、爆風に紛れさせて妖力弾幕を妹紅師匠のところに発射します。
不意打ち気味に放たれたそれに妹紅師匠は一瞬驚いた顔をしますが、横方向に移動してそれを回避しました。でも―
「そこ!」
「!!」
妖力弾を発射した直後、霊力弾幕と魔力弾幕を時間差で発射。
爆風を迂回して進んだそれが、左右から襲い掛かります。逃げ場は……ありません!
「チッ……、霊撃!」
でも、妹紅師匠の出した霊撃札の効果で弾幕は相殺。攻撃は不発に終わりました。
「今のは中々良かったけど、……ッ!」
気配を感知した妹紅師匠が、背後に回りこんでいた私の方へ振り向きます。
そう、妖力弾幕はフェイク。霊力弾幕と魔力弾幕は霊撃を使わせる囮。本命は……接近戦!
いつもなら霊撃一発で仕切り直されて終了ですけど、今は弾幕相殺に使用した直後。これで決める!
「華符「破山砲」!!」
ピチューン!!
「あーうー……、あんなの反則ですよおー」
「反則なんかじゃない。立派な戦術だ」
「あんなのが出来るのなんて師匠達だけですよ……」
零距離で妖力爆弾炸裂させての自爆テロなんて出来るのは蓬莱人だけです。
全身黒焦げ状態なのに一瞬でリザレクションとか理不尽すぎます。
私なんて、ピチュってから復活する頃には夜中になってたっていうのに!
それに加えて、目を覚ました瞬間「じゃあ今日も食料お願いね」と輝夜さん。
確かに食事担当は私ですけど、非道すぎませんか?
「でも、正直言って、あそこまで出来るとは思ってなかったよ。これならもういいかもな。輝夜、どう思う?」
「ふぁふぁひはひひほほほふはよ(私は良いと思うわよ)」
「口に物入れて話さないでくださいお姫様。で、何がいいんですか?」
「お前の修行についてだよ。そろそろ実力も付いてきたみたいだしな」
おお、何かあるんですか? ……まさか、奥義伝承イベントですか?
知らないうちに、もうそこまで行っちゃってたんですか!?
「今日で終わりだ」
へ?
「え、ちょ、え、うえぇぇぇぇ!?」
「食事中にうるさいぞ」
「ふぁふぁーふぁふぁっふぇいふぁひはへ(マナーがなっていないわね)」
「あなたに言われたくないです輝夜さん! って、どうして終了なんですか? まだ基礎しか教えてもらってませんよ」
「だからだよ。基本的な事はもう出来るようになったし、鍛錬の方法も教えたからな。あと足りないのは経験くらいだ」
「そこから先は自分でやっていくしか無いのよ。だから、私達が教える事はもう無いの」
「そう、ですか……。じゃあ、もうお別れなんですね」
「そういう約束だったからな」
修行開始してからの一ヶ月、苦しいことも多かったけど、終わってみると何だか悲しいものです。せっかく仲良くなれたのに、残念です。
今日はもう遅いので、出発は明日の朝ということになりました。
後は寝るだけになり、ここでの暮らしも最後なんだな、と考えながら、いつも寝ている所ではなく、妹紅師匠の所へと移動します。
「ん、どうした? キャロ」
「一緒に寝ていいですか?」
最後の日くらい甘えさせてください。
「ガキかお前は! って、ガキだったな。……今日だけだぞ」
文句を言いながらもスペースを空けてくれた妹紅師匠の隣に潜り込み、私は温かい体温を感じながら眠りにつきました。
もこたんの隣、あったかいナリィ……。
「何だよ輝夜。ニヤニヤして気持ち悪い」
「失礼ね。にしても、随分懐かれちゃってるわねえ。あなただけでもこっちに残った方が良いんじゃない?」
「できる訳ないだろ。私が帰らないと、心配するやつがいるからな」
「あのハクタクね。なら、この子を幻想郷に持って帰るっていうのは?」
「それはキャロが決めることだ。私達が勝手に決める事じゃない。あの子を浚った私達が言う事じゃないけどな」
「……ま、それでもいいか。なかなか良い暇潰しにはなったし」
「それに、二度と会えなくなるってわけじゃないからな」
「そうね。私達は永遠の民。この子もあと数百年経ったら「コッチ側」に来るかもね」
「かもな。じゃあ、私はもう寝るぞ」
「私も寝るわ。お休みなさい」
一晩経って朝になり、いよいよ別れの時になりました。
「妹紅さん、輝夜さん、今までありがとうございました」
「いいよ別に、大した事はしてないから」
「それじゃ、いきますね。藍、モード「因幡」」
「はい。モード「因幡」セットアップ」
輝夜さんに返してもらった夢幻珠を発動。「人を幸運にする程度の能力」を二人にかけます。
「次、モード「境」お願いね」
続いて「境界を操る程度の能力」でスキマを開きます。
……おお、一瞬で開いた! 修行の成果が出てますねー。
「外の博麗神社の付近にスキマを繋げたので、そこから徒歩で向かって下さい。飛行したら駄目ですよ。あと、これは地図です。二人を幸運にしておいたので迷う事は無いと思いますけど、念のためです」
ペスカトーガの格納領域から地図を出して二人に渡します。
出来れば現地で案内したいんですけど、私が幻想入りするのは困りますからね。運が上がっていればトラブル自体来ないでしょうし、これで大丈夫な筈です。
「キャロ、私がいないからって鍛錬サボるんじゃないぞ」
「なかなか楽しかったわよ。それじゃあね」
二人はそれぞれ一言だけ発するとスキマ内に入っていきました。
やけにアッサリした別れだなってと考えましたけど、あの二人は蓬莱人だって考えると、それも当たり前な気がしてきます。
きっと出会いも別れも沢山経験してるんでしょうね。
「行ってしまいましたね」
「そうだね。じゃあ、私達も帰ろうか」
にしても、帰るの久し振りですねー。
「ですね。少し心配ですけど、まあ大丈夫でしょう」
……へ?
「藍、心配って?」
「元々マスターは誘拐されたのですよ。それがいつの間にか勝手に旅行してその辺ぶらついてると知ってナカジマ家の皆さんがどう思うか、ちょっと考えれば分かるでしょう?」
えーっと……
ギンガさん→多分すんごい心配してる。帰ったらきっと大泣きされる。
スバルさん→知っていれば心配するだろうけど、今は訓練校。口止めされて知らない可能性が高い。
ゲンヤさん→絶対怒ってる。帰ったら100%折檻される。
「ねえ、藍」
「何ですか?」
「もうちょっとだけ、旅行続けてもいいかなあ?」
「……それは逃げです」
「分かってます! でも……でも!」
痛いのは嫌なんです!
「あとちょっとの間だけだから。覚悟完了したら帰るから」
だから、あと少しだけ時間プリーズですー!!