「ゲンヤ隊長、ただいま戻りましたー」
「おう。どうだった?」
「テロリストさん達は全員捕獲、後の手続きはギンガさんに任せました」
「ご苦労だったな」
「いえいえ、好きでやっている事ですから」
皆さん、お久しぶりです。キャロ・シエル、ついこの間8歳になりました。
あの交渉の後、私の提案通りアギトをフォワードの一人に任命、決定時期がエリオよりも早かったので、ライトニング3になりました。
それに伴い、彼女とのユニゾン相性が高いシグナムをリミット無しで保有するようになったと、はやてさんが嬉しそうに話してくれました。
はやてさんとはあれ以来、ちょくちょく会って話す仲です。
内容は主になのはさん達に言えないようなブラックな話。
あの人、私を何だと思ってるんでしょうね?
私の周りはというと、反省開始から一月後、やっとゲンヤさんから許しが貰えてギンガさんと一緒に出撃できるようになりました。
マフィアへの捜査とか、テロリストへの実力行使等で実戦経験を積む毎日です。
なんですけど……。
「ゲンヤさん」
「何だ?」
「前衛に回してくれませんか?」
私に割り当てられたポジションはフルバックス。
ぶっちゃけ、ブーストかけてから敵弾を回避、隙を見て射撃くらいしかする事が無いので、接近戦とかの経験値が積めません。ギンガさんや他の隊員とチームでやっている以上、それが効果的なのは確かなんですけど、前衛の修行が仮想トレーニングだけというのは不味いです。
「後衛ばっかりだと経験が偏るんです。何とかなりませんか?」
「そうは言っても、ウチにお前の代わりが出来る奴がいねえからなあ。うーん……」
無茶振りなのは分かってますけど、こっちも切実なんです。
「……やっぱり駄目だ。お前一人の我侭で、部隊に迷惑をかける訳にはいかん」
「そうです「だが」へ?」
「要は強くなれればいいんだろ?ちょっと待ってろ」
そう言うと、ゲンヤさんは通信用デバイスを取り出して、どこかに連絡を始めました。ウィンドウが開いた先にいたのは、いつも一緒に悪巧みをしている友人の姿でした。
『ゲンヤさんやないですか、ご無沙汰してますー』
「おう。いつもうちのガキが世話になってるな。ちょっと頼みてえ事があるんだが、いいか?」
「へ? 何ですか?」
「ちょっとコイツ貸すから鍛えてくれ。いずれそっちと一緒に戦うかもしれないからな」
そう言って、ゲンヤさんは私の肩を叩きました。
あの会談の後、私はゲンヤさんに、はやてさん達がレリック事件を追っている事、自分もいずれ捜査協力という名目で参加したいという事を伝えました。その際、
「……ま、お前が色々隠してるのは、今に始まった事じゃないからな」
なんて言われちゃいました。ひょっとすると色々バレてるのかもしれないけど、ゲンヤさんならうっかり漏らす事も無いだろうし、追求されるまではスルーしておきます。
本当はゼスト隊の真実も教えてあげたいんですけどね。ままならないです。
「そうですね……、分かりました。私もキャロちゃんがどれだけ出来るか知っておきたいし、任せといてください」
それから二人で、私の処遇についての相談が始まりました。
「……なら、私の騎士に教官資格持ってる子が一人いるんで、その子に任せてみます。今は色んな所回って教官してるんで、そこに混ぜてもらえるようにしときます」
「おう、それで頼む。じゃあな」
「いえいえ、お互い様です~」
話が終わったみたいです。明日から訓練生に混じって訓練ですか……。
しかし、ヴォルケンズに教官資格持ってる子なんていましたっけ?
―次の日―
「うーん、誰だったっけ……」
迎えに来てくれるという話なので、私は今、陸士108部隊のオフィスでお茶を飲みながらのんびり待っています。あ、このお茶渋くて美味しいです。さすがははやてさん、日本人の心が分かってますねー。
「ゲンヤ隊長、八神ヴィータ三等空尉が到着しました」
「おう。こっちに通してくれ」
あ、そうそうヴィータさんだ。
そういえば教官だったっけか。すっかり忘れてました。
しばらくしてオフィスに入ってきたのは、私と同じくらいの背の赤髪の少女。
そのまま真っ直ぐゲンヤさんの所へと歩いてきます。
背筋を張って堂々としている様は、さすがに騎士といった所ですね。
「本局航空隊1321部隊所属の八神ヴィータ三等空尉です。マスターはやてがいつもお世話になっています」
「よく来てくれたな。ま、楽にしてくれや」
「はい。それで、鍛えて欲しい人材がいる、という話でしたが……」
「ああ……、キャロ!」
お、呼ばれましたね。
「はい。何ですか?」
「今日からお前が世話になるヴィータ三等空尉だ。挨拶しておけ」
「はい。初めましてヴィータさん。キャロ・シエルです。ここ陸士108部隊で、民間協力者としてお手伝いさせてもらってます」
そう、ヴィータさんとは何気に初対面なんですよね。
はやてさんとは何度か会う機会はあるのに、ヴォルケンズの皆さんとは、今まで縁が無かったりします。
「じゃ、後は任せたからな」
「はい。ほら、行くぞ」
ヴィータさんに連れられて、私達はオフィスを後にしました。
しばらく歩いていると、ヴィータさんの方から声を掛けてきました。
「キャロ、だったな」
「は、はい。ヴィータ教官」
「はやてからお前の実力を見て欲しいって頼まれたんだけど……、ランクは?」
ランクですか? えーっと……。
「魔導師ランクは認定試験を受けてないので詳しくは分からないですけど、魔力量はC程度です」
「Cか……、うーん……」
まあ、半分嘘なんですけどね。
師匠二人による修行により運用効率が大いに上がった結果、最近ようやく「境界を操る程度の能力」でスキマ以外の使い方が出来るようになってきました。
それを使って魔力と霊力の境界を操作し、魔力を霊力に変換して溜め込んでいます。
リミッターだとバレるけど、これなら簡単に魔力量誤魔化せますからね。
ただ、今の所効果が及ぶのは自分のみ。他人に使えれば一気に魔力切れにできるんですけど、そう上手くはいかないです。
実際の魔力量はA+。霊力や妖力も足すとSランク手前のAAA+。
やっとここまで来れたかと思うと同時に、魔力のみでS超えしている三人娘の恐ろしさを再確認しました。
能力使えば互角程度に戦えるとは思うんですけど、地力の差は重要です。
「仕様がない。はやてからの頼みだし、それなりに出来るくらいには鍛えてやる」
(Cか……。はやてが戦力として期待してるらしいけど、大丈夫なのか? フェイトから何度も逃げ切ったっていう話も怪しく思えてきたぞ)
「ありがとうございます。それで、今日はどちらへ?」
「今日はいつもとは少し違ってな。陸士の訓練校で一日だけ教える事になってるんだ」
そーなのかー。ん、訓練校? まさか―
―数時間後―
「本日お前らを教えることになった戦技教官のヴィータだ。ビシビシ指導していくから覚悟しろ」
「「「「「はい!」」」」」
「それと、コイツもお前らと一緒に訓練受けるから、面倒見てやってくれ」
「はい。陸士部隊で民間協力者をしているキャロ・シエルです。今日は宜しくお願いします」
そう言って頭を下げます。
目の前にいるのは、今年卒業予定の訓練生達。それに混じって青髪ショートの私の家族―スバルお姉ちゃんが、驚いた顔でこっちを見てきます。隣のツインテはティアナさんですかね?
「へ? キャ、キャロ!? 何で!?????」
スバルお姉ちゃん、気持ちは分かるけど静かにしてください。
Q.キャロ以外に後衛いないって言ってるのに、そんな人材を訓練に回していいの?
A.そういう事です。フツーに考えて、後衛ナシの部隊なんか存在しませんw
ゲンヤさんマジ善人。