幻想幼女リリカルキャロPhantasm   作:もにょ

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第33話 リトルデューパー

「へ? キャ、キャロ!?何で!?????」

 

 いきなりの出来事に理解が追いつかず、私は思わず声を上げてしまった。

 私が所属している陸戦魔導師の訓練校にはたまに本職の教官が来て指導してくれる日があり、今日はその日だったんだけど……。

 雑誌でも取り上げられている有名人、ヴォルケンリッターのひとり、ヴィータ教官が来てくれると知って期待していたのに、なぜかその隣に私の妹分がいた。

 

『ちょっとスバル、静かにしなさい』

 

『へ? あ! ごめん、ティア』

 

 ティアの注意でようやく現実に戻ってこれたけど時すでに遅し。

 同級生の注目を集めてしまっていた。ヴィータ教官はこっち睨んでるし、キャロはいつもの笑顔を浮かべていた。

 アレは内心呆れてるか大爆笑のどっちかなんだろうなあ……。

 

「……、ゴホン! それではヴィータ教官、今日はこいつらをお願いします。それと、キャロ君だったね。君は生徒達に混じって訓練を受けてください」

 

 担当教官が場を仕切ってくれたおかげで、やっと視線から開放された。

 うぅ、恥ずかしかった。

 

 

 

 

「で、何でキャロがここに?」

 

「いや、実力付けたいってお願いしたら、いつの間にかこうなってました」

 

「何というか……、変わってないみたいで安心したよ」

 

「それって、どういう意味ですか?」

 

 担当教官の話が終わると、キャロがこっちにトコトコと歩いてやってきた。

 話によると、悪戯目的で来たわけではなさそうだけど……。

 

「スバル、この子が前に話していた、あなたの妹分?」

 

「あ、ごめんティア。うん、そうだよ」

 

「ふーん……。初めまして、私はティアナ・ランスターよ」

 

「ティアナさんですね、初めまして。いつもスバルさんから話は伺ってます。そりゃあもう色々と」

 

「ちょ、キャロ!?」

 

「スバル、アンタ余計な事言ってないでしょうねえ?」

 

「そーそんな事してないってば!!」

 

 キャロの方を見てみると、そこには真っ黒な笑みを浮かべた私の妹分。

 今日も絶好調みたいでなによりだ。はあ……。

 

「それじゃ、私は行くから」

 

「アレ? ティアナさんは一緒にやらないんですか?」

 

「近接型と後衛型でカリキュラムが違うのよ。一緒にする訓練もあるけど、今からするのは別々なの」

 

「そうなんですか」

 

「で、アンタはどっちなの?」

 

「うーん……、じゃあ、今日は近接で」

(もともと近接戦を鍛えたいから志願したんですし)

 

「「今日は」って……」

(まだ自分のタイプも決まってない? ……まあこの年じゃ仕方ないか)

 

 キャロの一見適当にも聞こえる発言に、ティアは顔をしかめてしまった。

 ……違うんだよティア。その子本当に万能型なんだよ。

 キャロも気付いてるのに訂正する気無いし。誤解されてるのを逆利用して遊ぶからなあ。

 

「……、まあいいわ。スバル、私は行くから、アンタが責任もってこの子の面倒見てあげなさい」

 

 そう言って、ティアは私にキャロを任せて後衛チームの方に行ってしまった。

 私達二人も、前衛チームに合流して準備に入る。

 

「へえ、スバルの妹さんなんだ」

 

「義理ですけどね。それで、これから何をするんですか?」

 

「ミット打ちだよ。片方が攻撃役、片方がマットを構えて防御役。防御役は吹き飛ばされないように踏ん張るんだ」

 

「へえ、面白そうですね」

 

 キャロはというと、早速同級生達と打ち解けているみたいだ。

 本性知らないと、ただの可愛い子供だしなあ。

 

「スバルお姉ちゃん、一緒にやりませんか?」

 

「へ? ……いや、遠慮しておくよ。折角だから、今日始めて会った人と一緒にした方がいいんじゃない?」

 

「それもそうですね。……チッ」

 

 危ない危ない、もう少しでフラグが立つ所だった。コレだから油断できないんだよね。

 

 

 

 

 訓練に使うマットを用意して、私達は外に出る。

 訓練を開始すると、私のペアをしてくれてる同級生が話しかけてきた。

 

「なあナカジマ、さっきのはちょっと冷たかったんじゃないか?」

 

「何の事?」

 

「妹さんの事だよ。あの子、お前とやりたがってたんじゃないか?」

 

 そう言いながら指差した先にいるのは私の妹分。どうやら攻撃役みたいだ。

 

「そうは言ってもねえ……、これから起きる事を見たら、そんな気起きなくなるよ」

 

「は? お前なに言って―」

 

 

 

 

 ドゴオォォォォォォォン!!

 

 

 

 

 轟音により、台詞が不自然な所で途切れてしまった。

 音のする方向にいたのは案の定、マットの下敷きになって目を回しているクラスメイトと、それを見下ろしているキャロだった。

 周りのチームメイトはまさか子供がそんな事をしたとは思えず「あれ? コイツ転んだのか?」「相手が子供だから踏ん張る力加減間違えたんじゃないか?」とか言っている。

 近くで様子を見ていたヴィータ教官は気付いたみたいだけど、それでも認められないのか首をブンブン振っている。

 

「……今のって?」

 

「さっき言い忘れてたけど、あの子、私の師匠的存在なんだよ」

 

「はあ? それ冗談―」

 

 

 

 

 ドゴオォォォォォォォン!!

 あ、二人目吹っ飛ばされた。

 

「本当の話なんだって。魔力量はCランクなんだけど、格闘戦能力に限定すればギン姉以上。もう一人の、私の超えたい目標なんだ」

 

「……マジか?」

 

「うん。マジで」

 

 

 

 

「本気でいきますね(『藍、モード「龍」)。撃符「大鵬拳」!!」

 

 ドゴオォォォォォォォン!!

 

 

 

 

 あ、ヴィータ教官が吹っ飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

 ▼▼▼▼▼▼▼▼

 

「それでは、今から合同訓練に入る。今日の内容はCだ」

 

「「「「「えええええええ!?」」」」」

 

 正午の休憩を挟んで午後の訓練が始まろうとしてたんだけど、担当教官の発言により、クラスメイトの半数近くから非難の声が上がった。

 

「スバルお姉ちゃん、Cって何ですか?」

 

「Cっていうのは、たまにしかやらない特別訓練だよ。おおかたヴィータ教官が来たから張り切ってるんだろうね」

 

 通称「合法リンチ」。射撃班と近接班に分かれて、射撃班はひたすら射撃、近接班はひたすら防御か回避を繰り返す訓練。

 射撃班にとっては動く的を狙うだけの訓練だけど、近接班にとっては魔力切れになるまで凌ぎ続けるというハードな訓練だ。

 

「へえ、そうなんですか」

 

「うん。それで、キャロはどうするの?」

 

 しかも、今日はキャロがいる。

 もしキャロが射撃班に回ったとしたら……、考えたくない。

 

「……そうですね。今日は近接系の訓練がしたいので、近接班に入ります」

 

 ほっ……。

 

 

 

 そして訓練が開始される。

 射撃班から打ち込まれる魔力弾を、私はローラーブーツとウィングロードを利用して大きく回避、避けきれないのはシールドで防いでいく。

 たまに「ローラーってズルくね?」って言ってくる人がいるけど、これが私のスタイルだ。

 さて、キャロはどうしてるかな?

 

 キャロの方を見てみると案の常、最小限の動きで回避し続ける妹分の姿があった。

 当たったかと思うけど当たっておらず。精々バリアジャケットにかすってチッ、チッ、という音が鳴っているくらいだ。

 「グレイズ」っていう技術らしいけど、そんなのどこで覚えたんだろう?

 開始から数分経っても一度も被弾しておらず、最初は遠慮していた射撃班の面々もキャロに向ける魔力弾の数を増やしていった。

 そしてこれは、訓練が始まって半分の時間が経過した頃だった。

 

 

 

 

「この程度ですか? こんな子供に良いようにされて、恥ずかしくないんですか?」

(もう少し難易度上げてみますか。今のままならなら師匠単体の方がよっぽど脅威ですし)

 

 

 

 

 この発言にプライドを刺激された射撃班は何としても一発当てるため、他の人を狙っていたチームメイトを巻き込んで一致団結し、キャロに向けて射撃を始めた。

 多数の魔力弾が殺到していく様は、まさに弾幕というに相応しい。でも―

 

 

 

 

 ―30分後―

 

 

 

 

「な、何で一発も当たらないのよ」

 

「まさか俺たちの方が先に息切れするなんて」

 

 私達の目の前にいるのは、魔力切れでへたり込んだ、ティアを初めとする射撃班。

 この訓練は近接班の全員リタイアで終了するのが普通であり、射撃班が根を上げるのは前代未問である。

 そのキャロはというと―

 

「良くやった、嬢ちゃん!」

 

「わわわわわ! 下ろしてくださいー!」

 

 近接チームに胴上げされていた。

 途中からキャロに向かって攻撃が集中したため、こっちは殆ど疲労していない。

 いつも的にされるだけだった私達にとって、今日のキャロは救世主的存在だ。

 さっき吹っ飛ばされた人達には悪いけど、本当に助かったよ……。

 

 こうして今日の訓練は終了した。

 この事が刺激になったのか、それから近接班、射撃班ともに、より訓練に励むようになった。

 その原因となったキャロは、被害にあった人達をメインに「見た目詐欺」「ランク詐欺」「リトルデューパー(小さな詐欺師)」という呼称が広まり、一種の伝説になってしまった。

 

 ただ、これが原因でティアナを筆頭とした射撃班は進化といってもいい位に成長をしてしまった。

 今までは唯の誘導弾だったのが、チーム単位で計画的に弾幕を張ってくるようになり、回避がほぼ不可能になってしまった。

 私達近接班は回避も出来ず、シールドを切らした瞬間に気絶の運命が待ち構えている。

 キャロの置き土産がこんな事になるなんて、はあ……。

 

 

 

 

 ―おまけ 八神家―

 

「ただいま、はやて」

 

「お帰りヴィータ。で、キャロはどうやった? 戦力として使えそうやった?」

 

「……ああ、それだけどよ」

 

「へ?」

 

「何なんだよアイツ? 接近戦ではパンチ一発で私を吹っ飛ばすし、数十人相手の射撃魔法を30分回避し続けたぞ。少なくとも、あれでCランクは絶対嘘だ」

 

「ちょ、ちょっとヴィータ落ち着いて……。とにかく、戦力としては期待できるんやな?」

(ヴィータにここまで言わせるとは……いったい何があったんやろ?)

 

「ああ。それは間違い無いと思う」

 

「そっか。じゃあ、これからも頼むな」

 

「……へ?」

 

「へ? ってヴィータ、前に説明したやろ? あの子「しばらく」ヴィータに任せるって」

 

「……なあ、はやて。シャマルはもう帰ってる?」

 

「今日はまだみたいやけど……、何か用でもあるんか?」

 

「胃薬処方してほしい」

 

「……」

 

「……」

 

「……、がんばれ、ヴィータ」

 

「うわあああああああああん!!」




 台詞回しを微妙に修正。
 ちょっと皆さん反応が大げさ過ぎて情緒不安定な感じになってたので、少し落ち着かせました。

 9/19 追記
 修正前に比べると、ネタ台詞減らしたせいでキャロの口調がキツくなってるかも。
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