幻想幼女リリカルキャロPhantasm   作:もにょ

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第41話 ホテル・アグスタ(後編)

「何だコイツら? 急に動きが良くなった!?」

 

 ホテル・アグスタ周辺の森で、ヴィータとシグナムはガジェットの迎撃に当たっていた。

 シグナムが大型を担当し、ヴィータが小型を潰す。順調に撃墜数を稼いでいた二人であったが、そこに変化が生じた。

 これまで唯の動く的程度でしか無かったガジェットの動きが急に良くなり、シグナムは剣をアームで受けられ、ヴィータはシュワルベフリーゲンを回避されてしまった。異変を感じた二人は一旦上空で合流し、対応を考えることにした。

 

「自動機械の動きじゃないな」

 

『有人操作に切り替わった?』

 

『それがさっきの召喚師の魔法?』

 

 そこにシャマルとシャーリーからの予測がもたらされる。先ほどの魔力反応を見る限り、そうとしか思えない。

 

「これは不味いな……、キャロ、いるか? ……キャロ?」

 

 このままだと召喚によって新人達の方に回り込まれるかもしれない。そう考えたシグナムは、新人達のフォローを任せるべく、キャロに念話を送る。しかし―

 

「キャロ? ……、シャマル」

 

『何、シグナム?』

 

「キャロが念話に応答しない。お前の方から繋げてくれるか?」

 

『分かったわ』

 

 そう言って、キャロをサーチするシャマルであったが

 

『……、あれ!?』

 

「どうした、シャマル」

 

『ホテル周囲をサーチしたんだけど、反応が見つからなくて。さっきまでは確かにいたのに……』

 

「はあ? どうなってんだよ!?」

 

 シャマルからの報告に、ヴィータが思わず声を上げた。その時

 

『ホテル周辺に魔力反応! 転送、来ます。』

 

 シャーリーの報告の直後、フォワードメンバーの近くに召喚魔法陣が発生し、全部で11機のガジェットが転送されてきた。

 

「ヴィータ、ここは私が叩くから、お前は新人達の方に向かってくれ。」

 

 キャロが応答しない以上、自分達のうちの一人が新人のフォローに回った方が良い。どちらかが残るのならリミッターの無い自分の方が良い。そう考えた末の判断である。

 

「分かった。ここは任せたからな」

 

 シグナムの意図を理解したヴィータは二つ返事でそれを了承し、すぐさま新人達の方へと飛んでいく。話し合う時間すら惜しいのは、ヴィータにも良く分かっているからだ。

 

(にしても、あの馬鹿一体どこほっつき歩いてるんだよ……)

 

 

 

 

 ヴィータが新人達のフォローに向かう同時刻、リインは魔力反応のあった所へと飛んでいた。

 

「強力な召喚師、私一人じゃ叩けないまでも、せめて姿だけでも……」

 

 ユニゾンデバイスであるリイン単独の実力はA+であるが、相手は召喚師。数の暴力で来られた場合、ユニゾン無しだと対処は難しい。ならば偵察の役目くらいは果たそうと、反応があった場所へ向かっていた。

 その時、前方にいくつかの小さな影が見えた。そのままこっちに向かってきて―

 

「ッ! ……キャッ!」

 

 リインへと襲い掛かる。すんでの所で身を捩って回避したが、1つだけ回避しきれず、脇腹のバリアジャケットが切り裂かれ、切り傷を負ってしまった。

 影はそのまま反転し、再びリインを襲おうと飛行してくる。リインはそれに背を向けて逃走。振り向いてその姿を確認した。

 

「銀色の……虫?」

 

『リイン曹長、召喚師の方向に、その虫が多数出てきています』

 

『一人で行くのは無理よ。退避して新人達と合流して』

 

「はいです……」

 

 たった数体でこれなら、もしこのまま群れに突っ込んだらどうなるか? それが分かってしまったリインは素直に命令を聞こうとした。しかし、そこで彼女は一人の少女を思い出した。

 

「あの、キャロちゃんはどうしてますか? 可能なら合流した後、再突入したいのですが」

 

 キャロなら召喚虫ごとき容易いだろうし、うまく行けば召喚師の確保も出来る。そう考えての提案であった。しかし

 

『それが、キャロちゃんとは連絡取れなくて、今どこで何してるか分からなくて……』

 

「そうですか……」

 

 キャロ不在により、その提案は水泡に帰することになった。

 こうなった以上自分に出来ることは、一刻も早くこの虫を振り切り、新人達と合流することだ。

 

(それにしても、キャロちゃん、どこで何してるんでしょうね?)

 

 

 

 

「ドクターの探し物、見つけた」

 

 リインが撤退するのと時を同じくして、偵察に出しておいた小型の虫、インゼクトから、ルーテシアに目標発見の情報が届けられる。

 

「ガリュー、ちょっとお願いしていい? 邪魔な子は、インゼクト達が引き付けてくれてる。荷物を確保して。……うん。気をつけて行ってらっしゃい」

 

 ルーテシアが言い終わるのと同時に、彼女のデバイス「アスクレピオス」から、黒味がかった紫色の光が放出された。光は真っ直ぐにホテルの方へと向かっていき、目標地点で召喚魔法陣を形成。中から召喚虫、ガリューがその姿を現した。

 後はガリューに任せるだけで、目標の物は確保出来る。そう考えた矢先の事だった。

 

「……見つかった」

 

「管理局か?」

 

「違うみたい。でも、魔導師」

 

 ガリューからの情報によると、目標地点に人影が一人いるらしい。一瞬どうしようか迷ったルーテシアであったが

 

「ガリュー、それ、やっつけて」

 

 見られた所で目的は変わらない、ならば障害は排除するだけ。

 そう結論付けて、ルーテシアがガリューに攻撃指示を出す。少しイレギュラーが発生したけど、これでお仕事はおしまい。そんな風に考えていた時だった。

 

「……、ッ! ガリュー!! ガリュー!!」

 

「どうした、ルーテシア!?」

 

「ガリューが……あああああ!!」

 

 日頃の様子からは考えられない程の動揺を見せるルーテシア。それに気付いたゼストが問いかけるも、要領の得ない答えしか帰ってこなかった。

 

 

 

 

 それもその筈である。

 

 

 

 

 ルーテシアがガリューから送られてくる情報によると

 

 

 

 

 現在進行形で八つ裂きにされている最中なのだから。

 

 

 

 

 ―少し遡り、ホテル・アグスタ地下にて―

 

「よいしょっと。まだガリューは来てないみたいですね」

 

『そうですね。』

 

 結局私が選んだ選択肢は4番の「ガリューを待ち伏せしてボコる」でした。

 フォワードメンバーの所に行ったり援護したりした場合、みんなの経験を奪う事になるからNG。

 このケースだとティアナさんのミスショットが怖いので、万が一を考えて、アギトに気を付けるように念話を送っておきました。多分ヴィータさんが防ぐだろうけど、念のための保険です。

 フォワード陣の対応をアギトに任せた私は、スキマ移動で現場に先回り。移動手段が見つかるのは駄目なので、サーチから隠れて念話の回線も切りました。

 

『マスター、前方20メートルに魔力反応です。恐らくは召喚魔法陣かと』

 

「みたいですね。行くよ、藍。モード「橙」、サブは「龍」で」

 

 室内戦+格闘戦になる事を想定して、スピード重視の格闘形態を選択しました。その直後、召喚魔法陣から、ガリューと思われる虫が召喚されて……って

 

「「きもっ!!」」

 

 そのあまりの容姿に、思わず私と藍がシンクロしました。

 黒い外見、虫特有の外骨格、ぎょろっとこちらを見てくる複眼……それらを総合した結果、私の目の前にいるのは―

 

「人型Gじゃないですかコイツ!!」

 

 アニメで見ていた時は「少しカッコイイかも」なんて思ってましたけど、リアルガリューがここまで虫っぽいとは……うねうね動く尻尾も気持ち悪いです。ワンポイントの赤いマフラーが逆にムカつきます。

 

「ねえ、藍」

 

『何でしょうか?』

 

「最初は少し痛めつけて帰すだけのつもりだったんだけど、アレ消しても良い?」

 

『私も同意見です。Gは駆除すべきです』

 

「決まりだね。虫は決して猫に勝てないって教えてあげないと……、っ!!」

 

「……!!」

 

 ガリューの方を見てみると、こちらを排除対象と認識したのか、一直線で向かってきました。

 虫特有のしなやかな筋肉によって爆発的な速度で向かってきたそれに対し、私が選んだのはカウンター。突き出される拳を紙一重で回避し、がら空きの胴体にお返しを―

 

『マスター!!』

 

「っ!!」

 

 藍からの叫びに近い念話に、半ば無意識にその場から退避します。直後

 

 ドンッ!!

 

 私のいた辺りで何かが叩きつけられた音がしました。その正体は―

 

『尻尾に気をつけてください。慣れてないと苦労しますよ』

 

「回避して正解だね。アレ貰ったら冗談抜きで危なかったかも。」

 

 私の素の防御力はそんなに高くありません。不意打ちされて障壁が張れなかった場合、一撃でやられる事だって有り得ます。

 今はサブを「龍」にしている恩恵で、いつもよりも身体強化系の効果が高いのですけど、それでも避けるに越したことは有りません。

 

『あの尻尾は厄介ですね。どうしますか?』

 

「そんなの、決まってますよ」

 

 待ち伏せが無理なら、こっちから攻めるまでです。

 

 

 

 

「鬼神「飛翔毘沙門天」!!」

 

 スペル宣言と同時に、弾幕を展開しながらガリューの方に突進していきます。さっきとは逆の構図になり、ガリューは迎撃しようとしますけど

 

「……!?」

 

 私は直前で方向転換、左の壁に着地し、そこを足場に天井、右側の壁、ガリューの背後……、上下左右360度あらゆる壁を足場にした高速移動をしました。

 これは妖獣特有のしなやかな身体能力があってこその技。あらゆる方向からガリューに向けて弾幕を打ち込み

 

「……!!!!!!!?」

 

「まずは……一本!!」

 

 その隙を突いて腕を一本、強化した爪で切り裂きました。それに満足せず、高速移動を継続しながら、隙を見つけてはガリューの体を切り裂いていきます。

 

「……!!!!!!!!!!!」

 

 腕一本になってしまったガリューは、それでも必死に身を守ろうとしますが、どうしても片腕ではカバーし切ることは出来ず、全身に10、20、……と、切り傷が増えていきます。

 

「粘りますね……、けど、「霊撃」!!」

 

 懐に潜り込んでから零距離での霊撃。ガリューは衝撃波によって壁に叩きつけられ、一瞬の、それでいて致命的な隙が生まれる。

 

「これで、……終わり!!」

 

 そこに私は一切の躊躇無く、心臓目がけて爪を突き刺した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガキイィィィィィィィ!!

 

「あれ? って痛ああああああああ!!」

 

 筈だったのですが、聞こえてきたのは爪が胸を貫く音ではなく、甲高い金属音。目の前にはガリューの姿は無く、代わりに壁に突き刺さった私の腕がありました。これって―

 

『マスター、直前で召喚魔法陣の反応を確認しました。恐らくは送り還されたものかと』

 

「あああああいーたーいーよおおおお……」

 

『それ所じゃないみたいですね』

 

 やっぱりそうでしたか。出来ればここで完全に駆除しておきたかったです。

 ……あー、痛かった。

 

『仕留め切れなかったのは残念ですが、あの様子だと当分は戦闘不能でしょうね。』

 

「うーん、ならいいか。それよりも」

 

 終わった事を気にしても仕方無いので、気持ちを切り替える。切り替えた先は

 

「あの人達の探してたロストロギアって何だったんだろう?」

 

 原作だと、レリックじゃ無い、スカさんの個人的な要望ってくらいしか情報がないんですよね。

 

「折角守り通したんだから、ちょっと見るくらい大丈夫だよね。」

 

 そう自分に言い訳しつつ、私は目標の物が置いてあるトラックの荷台に侵入し、中の木箱を漁っていきます。何だかル・ルシエの里で倉の捜索をしたのを思い出します。

 

 

 

 

 幼女物色中……

 

 

 

 

「色々珍しい者は有りますけど、どれが目標だったんですかね?あ、これキープキープ」

 

『ちょ、マスター!?』

 

「冗談ですよ。さすがにそんな事はしません。さてと、次で最後ですね。……ちょ、これって!!」

 

『!?』

 

 最後の一箱に入ってた物を見て、わたしは思わず声を上げました。藍も息を飲んでいます。

 

「藍、前言撤回。コレ貰っていくよ」

 

『その方がいいでしょうね』

 

 藍も同意してくれたので、私は「それ」を手に取ってスキマ内に放り込みます。ひょっとすると盗難防止のセンサーとかが付いてるかもしれないけど、スキマ内なら問題無しです。

 

「でもそうすると、「これ」が無くなったって騒ぎになりそうだし……、そうだ!」

 

 どうやって誤魔化そうかと考えていた所に良い案が浮かんだので、それを実行すべく、今まで切っていた念話の回線を繋ぎ、シャマルさんを呼び出しました。

 

『シャマルさん、聞こえますか? キャロです』

 

『キャロちゃん!? 今までどこ行ってたの?』

 

 驚き半分、心配半分といった様子でシャマルさんが聞いてきます。そこで、

 

『ホテル地下に魔力反応が有ったので急行した所、召喚魔法陣と黒い人型の影を見つけました。恐らくは向こうの召喚師のものだと思います。今周辺を探していたんですけど、オークション品を積んだトラックが荒らされています』

 

 召喚陣は過去形、トラックは現在形なのがポイントです。嘘はついてませんよ。

 

『そんな!? こっちのセンサーには反応無かったわ!』

 

『ガジェットや小型の召喚虫に注意が引かれてましたから、そのせいかもしれませんね。とにかく、調査の為に、こっちにも人手を回してくれませんか?』

 

『分かったわ。キャロちゃんはそこで待機していて頂戴。後で説明をお願いすることになると思うから』

 

『了解です』

 

 

 

 

 シャマルさんとの念話を切ってから数分後、現場検証のために数名の局員が訪れました。私は軽く状況を説明した後解放されて、ここでようやく、私のお仕事が終わりました。

 

 

 

 

「それにしても、何でこんな物があるんだろうね?」

 

「ひょっとすると、結界が弱まっているのかもしれませんね。」

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