幻想幼女リリカルキャロPhantasm   作:もにょ

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第44話 とあるマッドと召喚幼女

 ―スカリエッティの研究施設にて―

 

 人口の光が照らす、どこか薄暗く陰気な名感じのする地下施設。その一角に、一人の少女が立っていた。

 視線の先には医療用のポットが二つ。一つには妙齢の女性が、もう一つには人間そっくりな姿をした虫が入っており、いくつものコードによって別の機械に繋がれていた。

 女性の名はメガーヌ・アルピーノ、虫の名はガリュー。ポットを見ている少女、ルーテシアの母と召喚蟲にあたる存在である。

 

「お母さん……、ガリュー……」

 

 ルーテシアはずっと無表情のままであったが、その声は若干沈んでいるように聞こえる。特に、視線がガリューの右腕が「あった」場所に向いた時、それはより顕著になった。

 

「……それじゃ、また来るからね」

 

 しばらくの間ポットを眺めていたルーテシアだったが、そう言い残して部屋を去って行った。そのまま歩いていった先は、二人の治療を担当しているドクターがいる部屋だった。ルーテシアが入室すると、そこには大きなスクリーンに何かを映しながら、手元のパネルで何かを操作している白衣の青年がいた。「無限の欲望」ジェイル・スカリエッティである。

 

「おや、帰って来ていたのかい、ルーテシア」

 

「お母さんとガリューの容態は?」

 

 振り向く事無く、パネルを操作しながら問いかけるスカリエッティに対し、ルーテシアは気にする様子もなく、こちらも前振り無しで本題に入った。どちらも社交辞令や礼儀とは無縁な人種故、逆にこういったやりとりの方が楽なのだ。

 

「母親の方はいつも通りだよ。良く言えば安定してる、悪く言うなら、目覚める様子は見られない」

 

「そう。……ガリューは?」

 

「あちらに関しては問題無いよ。傷の治療ももうすぐ終わるだろうから、あと数日もすれば目覚めるだろう」 

 

「そう」

 

「ただ、切り落とされた右腕に関しては、そうはいかないね。再生させるにしても、義手を付けるにしても、どちらも時間が必要だ」

 

 ガリューの無事を聞いて安心したルーテシアであったが、腕の話を聞いた所で再び沈んでしまった。

 それと同時に思い出したのは、ガリューから送られてきた情報。

 自身が切り刻まれるという情報に混じって送られてきた敵対者、「桃色の髪をした少女」についての情報を思い出し、ルーテシアは自分の体が熱くなるのを感じた。

 

(私には心は無いけど、これを言葉で表すなら、怒り、が一番近いのかな?)

 

 そんな風にとりとめのないことを考えながら、ルーテシアはスカリエッティの方へと目を向ける。視線の先には、相変わらず忙しそうにパネルを操作しながら、次々と切り替わる画面をにらめっこをしているスカリエッティがいた。

 

「ドクターは何をやってるの?」

 

「気になるかい? 私のオモチャの動作テストだよ。破壊されるまでのデータが欲しくてねえ」

 

「壊されちゃうの?」

 

「私はあの鉄屑に、直接戦力は期待していないんだよ。私の作品達がより輝くために、デコイとして使うガラクタさ」

 

「そう……、レリックは関係無いんだ」

 

「レリックなら真っ先に君に教えているよ。で、どうする? 見ていくかい?」

 

「……そうする。今日はここに泊まる予定だったから」

 

「そうか。では、後でウーノにでも案内させよう」

 

 そう言い残し、スカリエッティは動作テストの方に集中し出した。ルーテシアは近くにあった椅子に座り、寝るまでの間のちょっとした暇潰し、そんな軽い気持ちでぼうっとスクリーンを眺めていた。

 

 

 

 

 それと同じ頃、機動六課にもガジェット出現の報は届いていた。部隊長であるはやてが作戦室に到着した時には、既にロングアーチ隊員は配置に付き、ガジェットの情報を集めている最中であった。

 

「航空Ⅱ型、四機編隊が三隊、十二機編隊が一隊」

 

「発見時から変わらず、それぞれ別の底円機動で旋回飛行中です」

 

「場所は何にも無い海上……。レリックの反応も無ければ、付近には海上施設も船も無い」

 

「まるで、打ち落としに来いと誘っているような」

 

「そうやね」

 

 シャーリーとルキノの報告を聞いたはやては即座に状況判断を始める。補佐に付いているグリフィスが自身の感想を述べると、はやてもそれに同意した。それから考えを纏めるにあたって、はやては別角度からの意見を聞くことにした。

 

「テスタロッサ・ハラオウン執務官、どう見る?」

 

「犯人がスカリエッティなら、こちらの動きとか、航空戦力を探りたいんだと思う」

 

「この状況なら、こっちは超長距離砲撃を撃ちこめば済むわけやし」

 

「一撃でクリアーですよー!」

 

 フェイトがスカリエッティサイドの意図を考察し、はやてもそれについて考える。

 リインが調子こいているが、ここはスルーしてあげるのが優しさだろう。

 

「うん。でも、だからこそ、奥の手は見せない方がいいかなって」

 

「まあ実際、この程度の事で、隊長達のリミッター解除って訳にもいかへんしな。高町教導官はどうやろ?」

 

 フェイトはリインの提案をやんわりと否定。はやてもそれに同意する。はやての言う通り、この程度の事態でリミッター解除なんかしていられない。一旦解除したら、再び許可を取るのに複雑な手続きやら何やらで時間がかかるからだ。 

 

「こっちの戦力調査が目的なら、なるべく新しい情報を出さずに、今までと同じやり方で片付けちゃう、かな?」

 

「うん、それで行こうか」

 

 二人の提案になのはも同意。作戦の目処が立った所で、全員が動きだそうとしている、そんな時であった。

 

「あのー、ちょっといいですか?」

 

「「「「「!?」」」」」

 

 作戦室の後方に立っていたなのはとフェイト、その更に後方から、不意に声が掛けられた。

 いきなりの事に驚いた六課メンバーが振り向いた先にいたのは、桃色の髪の毛の、10歳前後の幼女であった。

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