「あのー、ちょっといいですか?」
「「「「「!?」」」」」
いきなりの後ろから声をかけられて驚いたのか、六課メンバー全員がこっちに振り向きました。
なのはさん、フェイトさん、はやてさん、リインちゃん、シャーリーさん、ルキノさん、みんな大小なりとも混乱しているみたいです。
「キャ、キャロ!? 何でここに?」
「フェイトさん、肩揺らさないでください。一応、民間協力者ですからね」
「……そういえば、そうだったね」
「ひょっとして、忘れてました?」
「……ごめん」
今まで殆ど六課に寄り付かなかったせいか、私が民間協力者だって知ってる人が結構少ないんですよね。フェイトさんもその中に入る筈なのに、こうやって忘れられていました。
フェイトさんは外回りがメインなので更に接点が無かった、っていうのもあるんですけど。ティアナイベントが終わるまではあまり関わらない方針だったので仕方ないんですが、これは地味に効きます。ううっ……。
「えーっと、キャロちゃん、でいいのかな?」
「あ、はい。民間協力者として六課に出向しているキャロです。初めまして」
フェイトさんから開放された所でなのはさんが訪ねてきたので挨拶しました。⑨異変の時を除けば、何気になのはさんとは初対面だったりします。
「陸士108部隊から貸し出しって事で来てもらっとるんよ。で、キャロちゃん、どうしたん?」
「えっとですね、今回の出動ですけど、私もメンバーに入れてもらえませんか? 私、まだガジェットとの戦闘経験が無いので、そろそろ戦っておきたいんです」
「こっちとしては、あんまし手札見せたくはないんやけど……」
「そこを何とか。いざという時に役立たない切り札なんて、意味ないでしょ? それに私なら、リミッター外す必要も無いですし」
「……分かった。キャロちゃん、お願い出来るか?」
「了解です」
―機動六課 ヘリポートにて―
真夜中のヘリポートの下、スターズ分隊とライトニング分隊が集合している。その中には、今日の昼間、なのはとの模擬戦で撃墜されたらしいティアナの姿もあった。ヘリは既にエンジンがかかっており、いつでも出発できるようになっていた。
「今回は空戦だから、出撃はフェイト隊長とヴィータ副隊長の二人ね」
「そっちの指揮はなのはとシグナムだ。留守を頼むぞ」
「「「はい!」」」「はい……」
ヴィータの言葉に、新人達が返事をする。ティアナはまだ元気が無いみたいだけど……。
「それからね、フォワードの皆に、私から話があるの。待機の間、時間いいかな?」
「「「「はい……?」」」」
話があると言ったなのはに戸惑い混じりで返答する新人達。昼の件が関係しているのには、薄々気付いてるみたいだ。
「ヴァイス、もう出られるな?」
「乗り込んで戴けりゃ、すぐにでも!」
シグナムとヴァイスに促されて、私とヴィータはヘリに乗り込むことにした。まず最初にヴィータが乗り込み、次に私だ。
「それじゃ、行ってくるから、留守はお願いね」
『頑張ってね、なのは』
「行ってらっしゃい、フェイト隊長」
『ありがとう、フェイトちゃん』
こっそり念話でなのはを応援して、私はヘリの中へと入っていった。
「それじゃ、行きますぜ!」
ヴァイスの声とともにプロペラが回りだし、ヘリは空中へと飛んでいく。なのは達の姿がどんどん小さくなっていき、やがて夜の闇に隠れて見えなくなった。
「……もう良いですか?」
「へ……、って、キャロ!?」
「お前、そんな所に隠れてたのか」
「仕方ないじゃないですか、ここ位しか無かったんですから」
そう言ってヘリの隅っこにある収納スペースから出てきたのはキャロだ。服に埃が付いたのを気にしてるらしく、体に付いた埃を見ては手で払っている。
「にしても、時間かかりましたねえ。ひょっとして、ティアナさんが暴走して、シグナムさんに殴られたとかありました?」
「別にそんな事起こってねえよ。打ち合わせどおりにしたさ」
「なら良いんですけどね」
そう言って、キャロは埃を払うのを止めてヴィータの隣に座った。私の隣に座って欲しかった、というのは秘密だ。
打ち合わせっていうのは、キャロの出撃が許可された後、キャロが
「私の代わりに、なのはさんに待機してもらうようにはできませんか?」
と発言したのがきっかけで起こった物だ。最初はその意図が分からなかったけど、聞いてみると成程と思った。
「その時間を使って、ティアナさんとじっくり話をして欲しいんです。余計なお節介だっていうのは分かっていますけど、このままだといけないと思うんです」
っ! と息を飲んだ声がなのはの方から聞こえた気がした。
今は出動によって棚上げされている問題だったけど、いずれ解決すべきであるのは明らかだ。
「はやてさん、どうですか?」
「そうやなあ……、なら、それで行こか。戦力的には三人いれば十分やし。なのはちゃんもええか?」
「……うん。そうだね、ちゃんと話してみるよ。ありがとうね、キャロ」
「……唯のお節介焼きですよ。余計なお世話だったかもって、今でも思ってますから」
なのはに感謝されたのが以外だったか、キャロはそっぽを向きながら返事した。今まで見た事が無いキャロの反応に、わたしは少しだけ得した気分になった。
その後、キャロから追加で提案があった。まとめると
・ティアナに出動待機から外れて貰うことは知らせない。今の精神状態だと、切り捨てられたように受け取られるから。どのみち話をするのでどっちだろうと関係無い。
・話はフォワードメンバー全員と一緒にすること。これは全員に知ってほしいっていうのと、ティアナに疎外感を感じさせないため。
・キャロの存在は今は秘密。理由はティアナのコンプレックスを刺激する原因になるから。
の三つだ。
自分は経験が積める、自分の参戦によって出来た余裕で、今まで棚上げにしていた問題を片付けられる。
それに加え、「お話」を利用して、ティアナが出動待機から外れた事を知らせずに、それと同じ状態に出来る。一石三鳥だと締めくくって、キャロの提案は終了した。
特に問題も見当たらなかったので、これらはそのまま採用される事になった。その後、キャロはフォワードの皆に気付かれないために、先回りしてヘリの中に隠れていた、というわけだ。
……正直言って、私よりも六課の事を見ているんじゃないかと思った。
ちょっと気になったのでキャロに聞いてみた所、今まであまり六課に関わらずに影みたいに動いていたのは、ティアナのコンプレックスを気にしていたのも原因らしい。つまり、六課の発足当時から、それに気付いてたって事になる。
私、忙しいのを理由に、ちゃんと皆の事見れてなかったのかな……。
「はあ……」
「どうしたんですか、フェイトさん?」
「へ? 私、何か声に出してた?」
「思いっきりため息ついてたぞ。そろそろ出撃だけど、大丈夫か?」
「うん、大丈夫」
「そろそろ目標地点です。ハッチを空けますんで、出撃準備お願いしやす」
「了解」
キャロとヴィータ、それにヴァイスから声を掛けられ、私は思考をシフトさせる。敵情報、バルディッシュと作戦室間の情報リンク等、必要な事を確認していると、キャロの方から話しかけてきた。
「フェイトさん」
「どうしたの、キャロ? 何か問題でもあった?」
「いえ、そうじゃ無くて。こうしてフェイトさんと一緒に戦う事になるのって、何だか不思議な気がして」
「……そう、だね」
そう言われて思い出すのはかつての記憶。
かつて追う者と追われる者という立場だった時、何度も出会って、そして―
「あれ? フェイトさん?」
「何でも無いよ。大丈夫、大丈夫だから」
何度も逃げられて、その度にからかわれた記憶も再生される。
どうしよう、今から出撃だっていうのに、ちょっと鬱になってきた。
「フェイト、キャロ、そろそろ行くぞ」
「あ、はい」
「うん、分かった」
沈みかけた気持ちを奮い立たせて、ヘリのハッチの開いた部分から外を見る。
周囲はすっかり暗闇だけど、ガジェットであろう影が飛び回っているのが見えた。
「それじゃあお三方、気を付けて」
「おう、……アイゼン!」
「うん。……バルディッシュ!」
「はい。……ペスカトーガ!」『藍、モード「七曜」サブは「白狼」で』
『了解です』
さあ、戦闘開始だ。