バシュッ! バシュッ! ……ザンッ!!
「あー、もう! こいつらどれだけいやがるんですか!」
切っても切っても沸いてくるガジェットを相手にしながら、私は地下道を進んでいきます。
背後にはガジェットの残骸がゴロゴロ転がっています。20機を越えたくらいから数えるのを止めたので、細かい数は覚えていません。
『マスター、ティアナさんからペスカトーガに連絡がありました。先に目標に向かうので、そちらで合流を、との事です。』
「あー、間に合わなかったかー。……断命剣「冥想斬」!!」
藍との会話中にもガジェットが襲ってきたので、レーザーを避けながら接近。
楼観剣に霊力を込め、袈裟懸けに切り裂きました。
「今の奴で最後みたいだね。それじゃ、急いでティアナさん達の所に行くよ」
『……マスター、新たに6機、こちらに接近中です』
「マジですか……。面倒です」
コレどう考えても足止め目的です。
早く行かないといけないってのに……。
キャロがガジェットと戦闘を繰り広げている時、フォワードメンバー達もまた、戦闘を開始していた。
「ブリッツキャリバー!!」
≪Load cartridge.≫
「……!!」
ウィングロードを使い、ギンガがガリューに突進する。
カートリッジロードされたリボルバーナックルが回転を始め、ギンガはそれを、ガリュー目がけて突き出した。
「おおおおおおおおっ!!」
「……!!」
ギイィィィィィィィィンッ!!
それに対し、ガリューも右腕のドリルを高速回転させてギンガへと突き出す。
拳に纏わせている障壁同士が干渉し合って、押し合い、破り合いの膠着状態になる。そこに
『スバル、今!!』
『オーケー、ギン姉。』「うおおおおおおおっ!!!!!!」
「……!?」
スバルが時間差で突撃。ガリューの側面に回りこんで攻撃を仕掛けようとしたのだが
「!? スバル、危ない!!」
「!?」
≪Protection.≫
ガキイィィィィィッ!!
「くっ……」
ギンガの警告とほぼ同時に、スバルの体に衝撃が走る。マッハキャリバーが咄嗟に展開したオートガードのおかげで大した怪我はしなかったものの、攻撃は失敗に終わってしまった。
ガリューの方はというと、スバルの突撃を利用して膠着状態を脱し、ギンガとスバルへと視線を向けている。その背中には、先程スバルを攻撃した尻尾がゆらゆらと揺れていた。
「今のは……」
「尻尾も武器みたい。どうやら、簡単に行かせてはくれそうにないわね」
スバルとギンガはガリューの相手を。一方
「……邪魔」
(誘導弾、直射弾、属性弾、打ち落とす必要のあるものとそうでないもの。一瞬で判断して……迎撃!)
「シューーート!!」
パンッ! パンッ!
ティアナはルーテシアが撃ってくるシューターを迎撃する。
その背後には、先程の襲撃から未だに目を覚まさないエリオと、エリオに対して呼びかけを続けているアギトがいた。
『アギト、エリオの状態は?』
『特に怪我も無いし、気を失ってるだけみてーだ』
『OK。アギトはそのままエリオに呼びかけ続けて。それまでは、私が何とか抑えるから』
『了解。……ほら、さっさと起きろ!』
現状では戦況は膠着しているが、エリオが復帰すればその天秤はこっちに傾く。
もしエリオが起きなかったとしても、フェイト隊長とヴィータ副隊長がこちらに向かっている。
時間が経てば経つほど有利になるのを理解しているティアナは、現状維持を選択した。
「さあ、来なさいチビっ子。センター“ガード”の意地にかけて、アンタの攻撃は絶対に通さない!」
廃棄都市のとある一角、廃ビルの屋上に二人の人影があった。
人影はどちらも女性で、二人ともが水着のようなボディスーツに身を包んでいる。
戦闘機人NO.4、クアットロと、NO.10、ディエチだ。
クアットロの眼前には複数のウィンドウが展開されており、それぞれに六課メンバーの戦闘の様子が映し出されていた。
「あらあらあ、これはちょーっとばかし不味いですわねえ」
「どうしたの、クアットロ?」
独り言とも取れるクアットロの呟きに、自身の固有武装「イノーメスカノン」のチェックをしていたディエチが律儀に反応する。
「ルーテシアお嬢様の所が押されてるみたい。隊長クラスも向かってるみたいだし、このままだと不味いわねえ」
不味い、と言いながらも、少しも困った風には見えないクアットロ。ディエチの目には、むしろ楽しんでいる風にも見えた。
クアットロは数秒考え込む仕草を見せた後、おもむろに手元のパネルを操作した。新しいウィンドウが開き、そこには彼女達と同じようなボディスーツを着た少女が映っている。戦闘機人NO.6、セインである。
≪ん? クア姉、どうしたの?≫
「セインちゃーん。ちょっとお願いがあるんだけど、頼まれてくれるかしら?」
「……行って」
「くっ……、シュート!!」
パンッ! パンッ!
ルーテシアが放った弾幕を、ティアナが必死にさばき続ける。
ガリューは二人と戦闘中。インゼクトを出してもシューターで落とされる。室内空間では地雷王や白天王は使えない。接近戦の技能を持たないルーテシアに可能なのは、射撃とバインドによる攻撃だけであった。
一方のティアナは背後にいるエリオを気にして動くことが出来ず、また時間稼ぎに徹すれば良い状況なので自ら討って出ようともせず、戦況は完全に膠着していた。
ルーテシアへと通信が届いたのは、そんな時だった。
『聞こえますか、お嬢様?』
『……クアットロ?』
『はい~。お嬢様がお困りのようなので~、助けてあげようと思いましてえ~』
『……分かった。私はどうすれば良い?』
『話が早くて助かります~。ではですねえ、……』
クアットロの指示は簡単なものであった。
合図に従って、ガリューに指示するだけ。ただそれだけである。
ルーテシアは相変わらずのポーカーフェイスのまま、ティアナへと攻撃を続ける。
5秒、10秒と経過し、やがて、その時が来た。
『今ですわ~』
「……ガリュー、“撃って”」
「……!!」
ギュイーーーーーーン!!
ルーテシアの指示に従い、ガリューの右腕のドリルが高速回転を始める。そして
バシュゥゥゥッ!!
「「「「!?」」」」
ガリューの右手の肘から先、ドリルアームになっている部分が切り離されて射出された。
遠距離攻撃手段を持たないガリューの弱点を解消するために付けられた、アームの隠し機能である。
ドリルは高速回転しながら目標―ティアナの方へと向かっていく。
「チッ!!」
一瞬のフリーズの後すぐに復帰したティアナは、迫り来るドリルに対して回避行動を取り始める。
簡単に人を殺せる螺旋の暴力に対し、強固な障壁を持たないティアナに出来るのは回避行動のみであった。
(意表は突かれたけど、これ位なら回避でき……!?????)
迫り来るドリルを避けようとしたティアナであったが、何故か右足がつんのめって動かない。
残った左足で踏ん張ることで、ティアナは何とか転倒はしないで持ちこたえた。
一体何があったのかと思いティアナは右足を見ると、そこにあったのは……、手であった。
人の手が一本、地面から生えており、それがティアナの足首を掴んでいた。そしてそれが、ティアナの命運を分けることになる。
(床から手!? ……不味い!!)
ギュイーーーーーーーン!!!!!!
ティアナの眼前にあるのは、高速回転を続け、自らの存在を主張しながら迫るドリルアーム。
回避が無理と判断したティアナは防御魔法に切り替えようとするが、今のタイミングだとまず間に合わない。
そして、スバルとギンガはガリューと交戦中。
エリオは未だ目を覚まさず、アギトの位置はティアナの背後で、そこからだとティアナの背が邪魔して援護することが出来ない。
今この場においてティアナを助けられる人物は……、誰もいなかった。
「くっ!!」
「ティアアアアアアアアアアア!!」
スバルの叫びをBGMに、ドリルはティアナに吸い込まれるかのように向かっていく。
その場にいた誰もがティアナの“死”を確信したその時
ドオオオオオオオオオオン!!
桜色の極光が、迫り来る死を薙ぎ払った。
『藍~。まだ終わらないんですか?』
『……マスター、新たに五体、右側の通路から来ます』
何で私の方にばっかり来やがりますか!? もうお代わりは沢山ですよ!
藍の言葉を裏付けるように出てきたガジェットを両断しながら、私は目的地へと急ぎます。
私の背後には、上下真っ二つに泣き別れたガジェットを筆頭に、レンズを撃ち抜かれて機能停止したもの、アームを微塵切りにされたもの、爆散してスクラップになったものが死屍累々と転がっており、おそらくその数は100を超えます。
「人符「現世斬」!!」
すれ違い様に楼観剣を一閃。新たに3機、スクラップが増えました。さっきからずっとこんな感じです。
強さ自体は大したことないけど、こうやって足止めされているせいでなかなか目的地に着けません。
……仕方ないですね。
『藍、モード「霧雨」、サブは「白狼」。壁抜き砲撃で一掃するよ』
『了解です』
私は藍にモード変更を指示。一旦融合解除の手順を踏んだ後、形態が変更されます。
即座に「千里先を見通す程度の能力」でエリアサーチを実行。目標地点の戦況と、残りのガジェットの位置を確認します。
……丁度射線上ですね。ラッキーです。
「それじゃ……、一発派手にいきますか!」
私はミニ八卦炉(偽)を取り出し、そこに霊、魔、妖力を込めていきます。
チャージされた力は八卦炉の持つ増幅作用によって荒れ狂い、気を抜くとすぐにでも開放されそうです。
『藍、照準サポートお願い。ちょっと制御で手一杯みたい』
『了解です』
細かい制御を藍に任せ、私はさらに力を込めていく。
数秒後、私の手元には臨界に達し、開放の時を今かと待っている八卦炉がありました。
キイイイイイイイイイイインッ!!
『マスター、今です!』
行きます! これが私の全力全壊!!
「魔砲「ファイナルスパーク」!!」
ドオオオオオオオオオオン!!
スペル宣言とともに放たれたのは、私の魔力光と同じ桜色の極光。
魔砲は眼前の壁を容易く貫通し、その先に位置していたガジェットを根こそぎ飲み込み、目標地点までの壁を悉く貫通し、ついでにガリューから撃たれた黒っぽい何か(小型Gとかでしょうか?)を吹き飛ばしていきました。