幻想幼女リリカルキャロPhantasm   作:もにょ

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第54話 怒心地の有頂天

 ドオォォォォォォォォォン!!

 

 地雷王の振動波によって廃棄区画の地盤が崩れ去る。

 丁度フォワードメンバーのいる辺りが崩落していく様子が、サーチャーを通して作戦室にも中継されていた。

 

「敵召喚蟲により、地盤が崩壊!」

 

「皆の反応は?」

 

「今、サーチしています!」

 

 ロングアーチスタッフは、残りのサーチャーからの情報を頼りにフォワードメンバーの安否を確認しており、その情報は、未だにガジェットⅡ型と戦闘中のなのはとはやてにも入っていた。

 

「皆! ……くっ!」

 

「なのはちゃん。気持ちは分かるけど、今はこっちが優先や」

 

「はやてちゃん……」

 

「私の事、冷たい奴やと思うか?」

 

「……ううん。ごめんね、はやてちゃん」

 

 二人は今、リミッター解除無しでガジェットⅡ型と戦闘している。

 クアットロのシルバーカーテンによる幻影の混じった部隊。ガジェット如きに遅れを取る二人ではなかったが、広域攻撃が使えない現状では、どうしても撃破に時間がかかる。

 それも含めてはやての読み通りであり、フォワードメンバーのフォローにはフェイトとヴィータが向かっている。現状、なのはとはやてがするべきは、ガジェットの迎撃のみである。

 なのはもそれは理解しているが、それでも助けにいってあげたいという思いは消えず、理性と感情の間で板挟みになっていた。

 それに対し、はやては部隊長として、あえて突き放す言い方をした。

 なのはもそれに気付いたので、それ以上は何も言わずにガジェット撃破に意識を戻した。

 

「ま、心配せんでも大丈夫やろ。なのはちゃんに鍛えられた子たちがこの程度でやられる訳が無いし、キャロもいるしな」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 空中に浮かんでいるルーテシアの眼下で、地雷王によって地盤が崩壊していく。

 それをどこか他人事のように見ていた彼女であったが

 

「そういえば、レリックもあそこにあったんだっけ」

 

 キャロを排除するためとはいえ、一時的にだけど目的を忘れてしまっていた事に気付いた。

 埋まってしまったのなら自分一人で探すのは面倒だから、ドクターのおもちゃにでも探させよう。

 そう考えて、クアットロに回線を繋げようとした時であった。

 

 キイィィィィン……。

 

 ルーテシアの耳に入ってきたのは金属の摩擦音。この音は―

 

 次にルーテシアが見たのは光の帯。丁度地雷王のいた辺りから左右に二本、こちらに向かって延びて来ており、片方にはギンガ、もう片方にはティアナを背負ったスバルが、ローラーブーツを回転させてこちらに向かって来ていた。

 

 それに対し、ルーテシアは自身の周りに魔力付与をしたダガー、トーデス・デルヒを召喚して射出する。それと同時に、現状では的にしかならない地雷王を送還しようとしたのだが―

 

「バインド!?」

 

 地雷王の周りに魔法陣が発生し、そこから出てきた鎖で地雷王が拘束される。

 こうなってしまっては、バインドが解けるまで送還することができない。

 

「はあああああっ!」

 

「おおおおおおっ!」

 

 そして、ギンガとスバルはダガーを物ともせずにこちらに向かってくる。

 ルーテシアは、自分の周囲に残してあった残りのダガーを射出しながら後退していったが、そこにエリオも参戦してくる。

 ソニックムーブで先回りされ、着地と同時に槍の穂先を向けられて身動きが取れなくなる。そして―

 

「……!?」

 

「子供相手にこんな事したくねーんだが……。建造物破壊、公務執行妨害、その他諸々で、話を聞かせてもらおうか?」

 

 駄目押しとばかりに、ルーテシアはヴィータのバインドによって拘束される。

 

 なのはとはやてにガジェットを任せたヴィータとフェイトだったが、既にキャロが地下に入っている事もあって、地上での索敵に集中していた。

 幻影でガジェットの数を水増しさせている相手、要するにクアットロ、を探していた二人であったが、その最中に起きた地雷王召喚。

 直後に出てきたルーテシアを発見した二人のうち、フェイトは引き続きサーチを続行。そしてヴィータがルーテシアの対処に当たった。と言っても、フォワード陣の働きのおかげで、実質やったのはバインドのみであったが。

 

 拘束されたルーテシアの周りに集まってくるフォワード陣とヴィータ。

 バインドに何か特殊な仕掛けでもあるのか、召喚が使えない。

 ブレイクしようにも、この状態だと向こうの方が対応が早い。

 ルーテシアの状況は、完全に詰みであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あらあらあ、お嬢様、捕まっちゃいましたねえ~」

 

 相変わらず、全く危機感を感じていない声でクアットロが笑っている。彼女の目には拘束されたルーテシアの周りに集まる六課メンバーと、空中でこちらを探しているフェイトが映っていた。

 

「どうする、クアットロ?」

 

 その傍でイノーメスカノンの整備をしていたディエチが問いかけてくる。既にメンテナンスは済んでおり、いつでも発射可能な状態であった。

 

「そうねえ……、セインちゃーん」

 

『はいよー。何、クア姉?』

 

「今からお嬢様に隙を作って貰うから、私が合図したらお嬢様とレリック、お願いできる」

 

『了解、お安い御用だよ~』

 

「セインちゃんが回収終了した後、ディエチちゃんの砲撃。これであいつらは一網打尽」

 

「うん、分かった」

 

 クアットロの作戦に従って、ディエチは発射準備を始める。

 彼女達の元々の役目は遠距離砲撃によるヴィヴィオの確保とレリックの確保、邪魔者の排除であったが、一つ目は既に転送魔法でも使われたのか、付近に反応が無い。

 となると、残りはレリックの確保と六課メンバーの撃破。

 ディエチの砲撃による一掃を狙ったクアットロは態とルーテシアを支援せず、六課メンバーを集める囮として利用した。

 後はルーテシアを通してヴィータのトラウマでも刺激すれば隙ができる。それを実行に移そうとした時であった。

 

「……あれ?」

 

「どうしたの、ディエチちゃん?」

 

「向こう、一人足りない」

 

 ディエチの指摘を聞いて、クアットロもルーテシアの周囲の状況を確認する。

 そこにいたのは、ルーテシア、スバル、ティアナ、エリオ、アギト、ヴィータ、ギンガの7人で―

 

「あの子がいない!? 一体どこに?」

 

「……あそこ!!」

 

 要注意人物の不在に慌てるクアットロの横で、ディエチが肉眼で目標を見つけた。

 遠距離射撃タイプとして調整された彼女の視力は並の人間を遥かに凌ぐ。

 その強化された視覚が捕らえたのは、黒翼を生やして上空に浮かび、翼以上に黒い笑みを浮かべている幼女であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふふふふふふふふふふ……」

 

 ティアナさん達と合流した直後、私達を襲ったのは天井の落盤。

 それに対してスバルさんとギンガさんがウィングロードで道を作り、落盤が始まる前に天井を粉砕。空いた穴から皆で脱出していきました。

 

 レリックのケースを持ち出そうとしていた私を放置して……。

 

 いや、信頼してくれてるっていうのは分かりますけど、酷くありません?

 結局、脱出が遅れた私は崩落に巻き込まれる事に。崩落してくる一瞬、メイン「鴉天狗」サブ「博麗」で振ってくる瓦礫を高速移動しながらグレイズして脱出しました。生き埋めとかシャレにならないです。

 

 そして今、私の眼下にいるのは、その元凶ともいえる存在。アルケミックチェーンで拘束され、足をカサカサ動かそうとしている巨大甲虫。……どう考えてもGです。

 地雷王の……、いや、

 

「G雷王の分際で! 藍、モード「天」、サブは「境」!」

 

「は、はい!」

 

 今や私の怒りは有頂天。ユ二ゾンを一旦解除して変更。「大地を操る程度の能力」を持つ天人の形態を選択し、私の足元にスキマを開く。数秒後、私は地雷王よりも一回り大きな岩の上に立っていた。

 

「押し潰せ!!」

 

 

 

 

 ―要石「天地開闢プレス」―

 

 

 

 

 召喚が終了した要石は、私を上に乗せたまま重力に従って落下していきます。

 バインドで動けないG雷王に、これを避ける術は無く―

 

「か! な! め! い! し! だああああああああ!!!!!!!!」

 

 要石は、そのままG雷王の背中に落下する。

 G雷王は圧倒的質量に押し潰されて、自身が陥没させた地下へと落ちていきます。そして

 

「地雷王ーーー!!!!!!!!!」

 

 ルーテシアちゃんの絶叫が、周囲に木霊していました。

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