番外編 こんな族長様はいやだ
「いって……きます」
私は族長様に背を向けたまま、振り返る事なくその場を去っていきます。
最後に族長様の顔を見ておきたかったのですが、やめておきました。
だから、族長様の僅かな変化に気付くことができませんでした。
口の端が僅かに釣り上がり、顔には笑顔が張り付いていたことを。
▼▼▼▼▼▼▼▼
あの子が特別なのは生まれた時から気付いていた。
小さい太陽かと見紛うほどの圧倒的な魔力量。すぐに確信した。この子を放置していれば、いずれこの里に災いが起きると。
すぐ始末する事を考えたが、問題があった。
このルシエの里にはまともな魔導師がいない。
いくら私がその危険性を説いたところで、本当の意味で理解してくれる者はいないだろう。
最悪、老人の妄言かと思われたりしたら、ワシの立場が危うくなってしまう。それだけは避けねばならなかった。
独断で始末に踏み切ったりしたら皆の信用を失うことになり、これも選べなかった。
結局、世話係の他に自分の息のかかった者を数名、本当の目的は告げず、巫女の護衛として監視役に当てることにした。
そして1年後、驚くべき報告があった。なんと未熟ながらも、デバイス無しで魔法を使ったらしい。
予定では愛情を注ぎ込んで育て、間違っても復讐などされないようにルシエへの従属意識を植え付けてから、6歳あたりで放り出すつもりだったが、予定を変更しなければならないかもしれない。
さらに3年後、4歳になったあの子は恐るべきレベルで魔法を使いこなしている。監視役の者は関心していたが、ワシはいつその牙がこちらへ向けられるのかと気が気でなかった。
ダメだ、もう待つことはできない。今すぐあの子を追放すべきだ。
あの子の才能を皆に広めるように指示して根回しを進める。これで竜召喚の儀式が繰り上がっても、誰も疑問を抱く事は無い。
竜召喚の儀式を行ってみたのだが、あの子は失敗した。
今までの不安は杞憂だったのかと一瞬思ったが、あの子の様子を見てすぐにそれを否定した。
失敗したというのに残念そうな素振りを見せず、逆にどこか安心したような顔を浮かべていたからだ。
間違いない。この子は、こちらの意図に気付いているッ!
いいだろう。そっちがそういうつもりなら、こっちにも考えがある!
そして次の日、再びキャロを呼んで儀式をさせた。これはこの子とワシの我慢比べだ。
そっちが逃げ切れると思っているなら、まずはそのふざけた幻想をぶち壊す!!
成功するまで何日でも粘ってやるつもりだったが、3日目であの子は成功させてしまった。
なまじ頭のいい分、こっちの意図に気付いて逃げられないことを悟ったのだろう。
そして私はキャロを呼び寄せ、長年言いたくてたまらなかった台詞を目の前の子に告げる。
「すまないが、この里から出て行ってもらう」
この時のワシは、顔に出てくる嬉しさを隠すのに必死だった。
そして今、ついにこの子が里から去ろうとしている。
頭のいい子だからだろう。4年しか経っていないので不安だったが、刷り込みも上手くいったみたいだ。
この様子なら復讐など考えないだろうし、管理局に泣き付くこともしないだろう。育児放棄だの言われたら色々面倒だからの。
何度も誤算はあったが、結果だけ見れば予定よりも2年も早くこの子を追い出すことが出来た。
これでワシの地位を脅かす物は何も無い。族長としての輝かしい未来がワシを待っている。
全て……、計画通り!!
この話は本編とは一切関係ありません。
この話は本編とは一切関係ありません。
大切な事なので二度言いました。