幻想幼女リリカルキャロPhantasm   作:もにょ

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第57話 難題「魔法の国の幼女」

「はあっ、はあっ、はあっ……」

 

 私は一体、どこで間違えたんだろう?

 

「それで終わりですか? こっちはまだまだ余裕ですよ」

 

「うっ……、さい。まだまだ行けるわよ。そらっ!!」

 

「おっと、最後の悪足掻きですか。おお、恐い恐い」

 

 私は目の前の敵に対し、もう何度目になるか分からない攻撃を仕掛ける。

 右手を掲げて部屋ひとつ分を占領する程に巨大な板を召喚し、思いっきり投げつける。

 それと同時に、残りの左手で弾幕を発射。狙いなどつけず、ランダムにばら撒かれたそれが、板の隙間を縫うように進んでいく。

 弾幕を発射し終えたら、再び右手に板を召喚。さっきからずっと繰り返している事だ。だけど―

 

「……、あっ!!」

 

 投げつける際に右手が滑り、板があらぬ方へと飛んでいく。これにより、相手は完全にフリーの状態になってしまった。

 当然、そんな隙がみすみす見逃される訳が無く―

 

「今です!! 風符「天狗道の開風」!!」

 

「きゃっ!!」

 

 技後硬直で動けない私に対して、高速の風弾が撃ち込まれた。

 

 

 

 

「挑戦を始めてはや数ヶ月……、挑戦回数はこれで丁度20回……、やっと、やっとクリア出来ました!!」

 

「はあっ、はあっ、はあっ……」

 

 未だに息を切らし、四つん這いになっている私の横で、拳を握り締めて勝利の喜びに震えているのは射命丸文。

 取材の為に私の出した難題に立ち向かい、20回目の挑戦にして打ち破ってみせた。それは良い。良いんだけど―

 

「はあ……、はあ……、えーりん、水もってきて……」

 

「あやややや? 輝夜さん、まだお疲れですか?」 

 

「仕様がないでしょ……。誰のせいだって思ってるのよ……。あ、ありがと、永淋」

 

 す、と出された湯呑みを取って水を飲む。

 カラカラになっていた喉が潤されるのを感じながら、私はさっきの忌々しい記憶を思い出していた。

 

 19回の失敗によって、この天狗が辿り着いた結論は「持久戦」。

 難題として使ったスペル「金閣寺の一枚天井」は、その名の通り天井に使われるような板を撃ち出すスペルなんだけど、このスペル、天井を模した弾幕などではなく、本当に板をブン投げていたりする。

 私や永淋、ついでに妹紅のような蓬莱人は、どんな大怪我をしても決して死ぬ事は無い。

 のだけど、体力や精神力が無限にあるという訳ではないので、激しい運動をすれば当然疲れる。

 この天狗はそこを突いた。距離を取り、こちらの疲労が溜まるまで回避に専念。ひたすら天板を投げ続けていた私だったけど、一分を超えたあたりから疲れのせいでペースが落ちてきてしまった。

 普通の弾幕決闘なら、自分からスペルブレイクして次のスペルに入ったりして対処するんだけど、今回のカードはこれ一枚。ブレイクは即敗北のルールでやっていたので、途中で止める事無くさらにそこから数分間、私は天板を投げ続ける羽目になってしまった。

 このスペルを難題にしたのは間違いだったかしら……。

 

「姫様、大丈夫ですか?」

 

「大丈夫なものですか。腕がパンパンよ、もう……」

 

 もう二度と、妖怪相手に体力勝負は仕掛けないわよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、中々に興味深い話が聞けて大満足です。ありがとうございました、輝夜さん」

 

「ま、そういう約束だったしね。そろそろこの暇潰しにも飽きてきたし、丁度良かったわ」

 

「新聞の見出しはどうしましょうかね~? “実録、異世界ミッドチルダ!!”とか……、いや、ここは“外に残る幻想、次元世界見聞録”で……」

 

「聞いちゃいないわねこの天狗……」

 

 あれから少し休憩を挟み、私はこの天狗にあの旅であった事を話してあげた。

 スキマに放り出された所から始まり、闘技場生活、お尋ね者生活、そして最後にあった面白い出会い。話しているうちに色々思い出してきて、最後は結構ノリノリで話していたと自分でも思う。

 あ、食料云々の事は話してないわよ。みっともないし、それにどうせ、妹紅が愚痴混じりに漏らしてるだろうから、って、私は誰に言い訳しているのかしら……。

 

 そして全てを話し終えた今、私の目の前には新聞の構成を考える天狗。

 自分の世界に入っているみたいで、こっちの事は意識に入っていないらしい。

 ……あ、やっと戻ってきた。

 

「あやややや、私としたことが取材対象を置き去りにしてしまうとは……。では、私はこの辺で失礼させていただきますね。早くこの内容を記事にまとめたいので」

 

「完成したらこっちにも一部回して頂戴。変な事書いてたら抗議してあげる」

 

「毎度ありー。あ、そうそう。これを起に、永遠亭でも定期購読初めてみてはいかかでしょうか? 今なら安くしておきますよ?」

 

 ちゃっかりしてるわねこの天狗。……あ、そうだ。

 

「そういえば、まだどこの新聞も定期購読してなかったわね」

 

「おおう! それは好都合「でも」へ?」

 

「天狗の新聞は誇張や捏造が多いからね。しばらくは様子見させてもらうわ」

 

「ちょ、それは言いがかりですよ輝夜さん! この清く正しい射命丸、嘘なんて書いたことありません!」

 

 私の発言に誇りが刺激されたのか、即座に抗議してくる天狗。でも―

 

「河童のクーデター疑惑」

 

「あや!?」

 

「あと亡霊姫の食人疑惑にPAD事件。古いのだと、八雲の式の隠し子疑惑なんていうのもあったわね」

 

「あやややややや!?」

 

「確かに「疑惑」な訳で事実とは一言も言ってないんだけど、ねえ?」

 

 私が挙げたこれらの事件、その全てがかつて文々。新聞に掲載されていた記事だったりする。

 ちなみに事実関係は全てシロという事がわかり、その度この天狗は弾幕やナイフの餌食になったとか。然もあらん。

 

「な、何で輝夜さんがそれ知ってるんですか!? 新聞取ってないでしょう!?」

 

「イナバって噂好きの奴が多いのよ。何もしなくても勝手に情報が手に入るから便利だわ」

 

「えっと…………。私、用事があったの思い出しました! それじゃ、また!」

 

 あ、逃げた。

 

 自らの不利を悟ったのか、あの天狗は話を途中で無理矢理切って、部屋の窓から飛んで行った。

 幻想郷最速を自称している事だけあり、その背中はもう見えなくなってしまった。

 さっきの意趣返しとはいえ、少し意地悪し過ぎたかしら……?

 

「はあ、せめて玄関から出て行って欲しかったわ。……で、どうしたの、永琳?」

 

「姫様、良かったんですか?」 

 

 さっきの会話の際にも、私に水を差し出した後は会話に参加しないでずっと傍に控えていた私の従者がそう問いかけてきた。

 

「あのくらいなら別に構わないわよ。私は「旅の思い出」を話しただけ。約束は破ってないわ。永琳だってそう思ったから、何も口出ししなかったんでしょう?」

 

「物は言い様。姫様もあの天狗の事言えませんね」

 

「私はいいのよ、自覚しているから。それに、分かってて止めない永琳も同じじゃない?」

 

「私は姫様の従者ですから」

 

「さすがは私の従者ね」

 

 ツーと言えばカー。永琳は私の意図を100%理解してくれているので、話が早くて良い。

 さりげなく従者の立場を強調して、何かあった時の責任をなするのは黒いけど……。

 

「ま、この話はこの辺でいいわ。永琳、何か適当に摘める物持ってきて。運動したらお腹空いてきちゃった」

 

「後でイナバに持って来させます。ですが間食は程々に」

 

 では、と言い残して、永琳が私の部屋から退出していく。

 私はそれを見送ってから、さっきの事とその話題の中心である少女の事を考えた。

 

「あの天狗は真実に辿り着けるかしら? まあヒントもあげた事だし、暇潰し程度には期待できるかもね。「実物」がいない以上、推測を重ねる事しか出来ないんだけど。……そういえば、「実物」はどうしてるのかしら? 早くこっちに来て欲しいわね。暇潰し的な意味で」

 

 

 

 

 

 

 

 

「食事なう」

 

「へ? いきなりどうしたの、キャロ?」

 

「いや、何だか言わないといけないような気がして」

 

「何よソレ?」

 

 皆さんこんにちは、キャロ・シエルです。

 ナンバーズとの戦闘から数日が経ち、今こちらでは比較的平穏な日常が続いています。

 変わった事といえば、ギンガお姉ちゃんが六課に出向してきた事、それと―

 

「はい。良く噛んで食べてね」

 

「うん!!」

 

 フェイトさんとなのはさんに囲まれながら満面の笑顔でオムライスにパクついているのはヴィヴィオちゃん。治療と検査が終わった所で、六課で預かる事になりました。

 保護責任者と後見人は、予想通りなのはさんとフェイトさんで、今や六課のマスコットと化しています。

 

「スバルのちっちゃい頃も、あんなだったわよね~」

 

「へ? そ、そうかな……///」

 

「リインちゃんも」

 

「へ? リインは初めから割と大人でしたー!!」

 

「嘘をつけ」

 

「体はともかく、中身は赤ん坊だったじゃねーか」

 

「むう……。はやてちゃん、違いますよね?」

 

「ふふっ、どやろうな?」

 

 子供の頃ですか……、まあ私は現在進行形で子供な訳ですけど、昔は……。

 

 

 

 

 ―ヒャッハー、汚物は消毒「夢符「封魔陣」!!」あべしっ!!―

 

 ―ば、馬鹿な!? 私の、拳法殺しの肉の壁があっ!? 「撃符「大鵬拳」!!」ひでぶっ!!―

 

 ―見てろよ管理局!! 子鬼のセンセーが来たからには、手前らなんざ一捻りだぜ!! ヒャッハー!!―

 

 ナニコレェ……。

 4、5歳の時からこんなのとか、今思い返すとカオスすぎる。

 というか、何で裏社会が世紀末風味だったのか、未だに訳が分からないです。 

 っと、そんな事を考えてても仕方ないですね。ご飯、ご飯、と。

 

「あ、ヴィヴィオ、駄目だよ。ピーマン残しちゃ」

 

「う~、苦いの嫌ーい」

 

「え~? 美味しいよ?」

 

「しっかり食べないとおっきくなれないんだから」

 

「う~……」

 

「そやねえ。好き嫌いして食べないと、ママ達みたいな美人になれないよ」

 

「そうそう。大体、食べる物があるってだけで贅沢なんですから、ワガママ言うのは駄目ですよ」

 

「キャロ、良い事言ってるように聞こえるんだけど、それ僕のオカズ……」

 

「アーアーキコエナイキコエナイー。そういえば、最近狩りやってないなあ~。今度兎でもハントしよ」

 

『……ねえ、ギン姉』

 

『……スルーで』

 

「ヴィヴィオ、あのお姉ちゃんの真似はせんでええからな」

 

「あい」

 

「にゃはははは……」

 

「……。(何故俺には台詞が無いんだ!!)」

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