幻想幼女リリカルキャロPhantasm   作:もにょ

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第5⑨話 ストライカーズ

「が……、はっ!!」

 

 これでもう、何度目になっただろう?

 私の体は呆気なく吹き飛ばされ、地面へと投げ出されていく。

 不幸中の幸いか、地面はあまり固くないので、打撲等といったダメージは無い。

 自分の体の状態のチェックを終えた私はその場に立ち上がり、仲間達に声をかけた。

 

「スバル、エリオ、アギト、ギンガさん、まだ大丈夫?」

 

「僕はまだやれます」

 

『私も平気だ』

 

「私も平気。でも、スバルが……」

 

「……大、丈夫。まだまだ、やれるって……」

 

 そう言いながら、ボロボロになったスバルが立ち上がる。

 その状態は端から見ても決して大丈夫と言える物ではなく、満身創痍と言って差し支え無かった。無理も無い。スバルのポジションはその役割上、最も向こうの攻撃に晒されるのだから。

 

 

 

 

「ほらほら、ここで終わりですか?」

 

「おい、いつまでも休んでるんじゃねーぞ」

 

 そんな時だった。向こう側から二人の少女が歩いてきた。

 背筋を張り、自信に溢れたその姿はボロボロになっている私達とはどこまでも対称的で、自分達が勝者でお前達が敗者なんだと言われているような気がしてくる。

 

「このままだと完全敗北ですよ~。それで良いんですか?」

 

 少女の一人、キャロがこちらを挑発するような事を言ってくる。

 これが私達にやる気を出させる為の演技だという事は分かっている。けどそれを抜きにしても、この二人に一矢報いたいという気持ちは、私達共通だった。

 

「良い訳無いでしょ。絶対一泡吹かせてやります。みんな、準備は良い?」

 

「はい!」

 

『おう!』

 

「OK!」

 

「スバル、きつくなったら私が交代するからいつでも言って」

 

「ありがとギン姉。でも、もう少しだけ頑張ってみる!」

 

 仲間達からの力強い返事を聞いて、私は気合を入れなおす。

 まだ私達は負けていない。なら、出来る事をするだけだ!

 

「それじゃ、今度はそっちからですね」

 

 私達が位置に付いたのを見て、キャロは自分の足元にあった物をこちらに向けて蹴り飛ばす。ぽん、と蹴られたそれは綺麗な放物線を描き、私の足元に落ちてきた。

 

 それは、白と黒の球体であり、私達をボロボロにしたもの。

 だけど今この場においては、キャロやヴィータ副隊長を倒すため、私達にもたらされた剣である。

 

「行くわよ、みんな」

 

「「「「はい(おう)!」」」」

 

 ピッ、という音と主に、私はその球体を蹴る。

 それと同時に、このフィールドのオペレートをしているシャーリからアナウンスが聞こえた。

 

 

 

 

「さあ、チームフォワードメンバーのボールでキックオフです!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―1時間前―

 

「あれ、ヴィータ副隊長? なのはさんはどうしたんですか?」

 

 私達、フォワード4名にギンガさんを加えた5人がいつものように訓練場に向かうと、そこにいたのはヴィータさん一人であった。

 今までのパターンで言うと、私達よりも先に来て待っているのはなのはさんとヴィータ副隊長の二人、もしくはなのはさん一人だけ、の二通りが主なパターンで、そのどちらの場合にもなのはさんがいた(キャロは大抵ちょっと遅れて来る)。つまり、ヴィータ副隊長一人だけというのは初めてのパターンだったりする。

 

「ああ、なのはやフェイト、それにはやては聖王教会の方に用事があってな。今日は私と―」

 

「私が教官役です」

 

「あ、キャロ、おはよ」

 

「はあ……、最初の頃が懐かしいです」

 

「そりゃ、あれだけされればねえ」

 

 いきなり後ろからかけられた声に対し、私達はいつものように挨拶をする。

 キャロはよくこうやって、前触れも無しに現れては皆を脅かしたりする。

 とはいえ最近はみんな慣れてしまったので、いきなり声をかけられても普通に応対している。分かっていればどうという事はない。

 最初の頃は転移魔法の形跡も無いのにどうやったのかが気になって、四六時中気を張ってみたり、直接本人に聞いてみようともした。

 だけど、前者は何度かやられているうちに気配くらいは分かるようにはなったけど、肝心のカラクリまでは分からなかったし、後者は聞こうとしてもはぐらかされたり、いつの間にか違う話題になったりで上手く聞き出せなかった。

 スバルやギンガさん辺りは「キャロだから」で納得してるみたいだけど……。

 

「……ア、ティア!!」

 

「……スバル?」

 

「どうしたのティア? さっきからぼーっとして?」

 

 いけないいけない。つい考え事に没頭していたみたいだ。折角マルチタスクなんて技術があるのに、これじゃ宝の持ち腐れだ。

 

「ごめん、ちょっと話聞いてなかった。で、今どこまで話が進んでるの?」

 

「えっと、キャロがね。「今日は息抜きも兼ねて、ちょっと趣向を変えた訓練をする」んだって?」

 

「息抜き?」

 

「うん。最近ずっと訓練漬けだったでしょ? だから休暇とまではいかないけど、今日は軽めに動かすだけにするんだって」

 

「……、まあ、その方がいいかもね。どっちみちなのはさんが居ないのならいつもの訓練は難しいし、それなら体調を整えて明日以降に備える、って所かしら」

 

「うん。ヴィータ副隊長もそう言ってたよ」

 

 こう思えるようになったのは、なのはさんから「無茶をすると危ない」っていう事に気付かせてもらったからだと思う。

 きっと以前の私なら、ムキになって個人訓練を始めてた筈。だけど今は、息抜きならしっかり息抜きしようって考えられるようになった。

 これは、余裕が出てきたって事かしら。

 

「大体分かったわ、ありがと、スバル。で、息抜きって何をするの?」

 

「えっと、アレ」

 

 そう言ってスバルが指差した先にいるのは、端末の前に立って操作しているシャーリーと、それを横から覗き込んでいる二人だった。

 

「シャーリーさん、お願いしていたブツは完成してますか?」

 

「大丈夫だよ、各種パラメータを変更するだけだし、システム弄る必要無いから楽だったよ~。では、とくとご覧あれ!!」

 

 ピッ、とシャーリーが端末のボタンを押すと、浮き島にある訓練システムが作動し出した。

 仮想的にとはいえ、市街地や森林といった様々なフィールドを生成し、ガジェットなどの仮想敵までも生み出す、六課の誇る最新システム。

 けど、今日それが生み出すのは―

 

「うわあ……」

 

 と思わずため息が出てしまった。

 それは、市街地フィールドのような瓦礫やビルは存在せず、どこまでも広大な平原だった。そして森林フィールドのように植物が生えているものの、それらは全て同じ高さに切りそろえられており、そのフィールドを区切るように白いラインが引かれ、東西の端にそれぞれ一つずつ、金属製のパイプで作られた箱が存在していた。

 いや、もう態々回りくどく言うのは止めよう。これは―

 

「サッカーフィールド?」

 

「うん。今日はフォワード対ヴィータ副隊長&キャロでサッカーをするんだって。……どうしたの?」

 

 どうしたもこうしたも無いわよ……。何でアンタは疑問に思わないのよ。

 流石にこれは予想外すぎる。「訓練スペース使ってまでする事か!」とか「5人対2人とかサッカーじゃ無いでしょ!」とかいろんなツッコミが出てくる。

 でも、皆がやる気になってる以上、反対するのも空気読めないって思われるだろうし……。

 ……まあ、適当に頑張ろう。

 

「……で、足りない人数はガジェットで補うんだって。ティア、聞いてる?」

 

「うん、聞いてる聞いてる。大丈夫大丈夫」

 

「あと、「魔法及びデバイスの使用アリ」だって。何だか面白そうだよね」

 

「あー、うん。そうね」

 

「あ、そうそう、私からの忠告ですけど、キーパーは防御得意な人にしてもらった方がいいですよ~」

 

「だってさ。じゃあ私がキーパーするよ。ティアもそれで良い?」

 

「あー、うん。それでいいわ」

 

 既にやる気は最底辺。私はスバルの話を適当に聞き流しながら、フィールドへと歩いていった。

 

 

 

 

 今思えば、この時点で気付くべきだったのだ。

 

 

 

 

 あのキャロがまともな遊びを提案する訳が無い事を。

 

 

 

 

 そして、「魔法及びデバイスの使用アリ」というルールが何をもたらすのかという事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「恋符「マスタースパーク」!!」

 

「へ? うわああああああああ!!」

 

 

 

 

 スバルくん ふっとんだ!

 

 

 

 

「「「「……は?」」」」

 

 えーっと、今何があった?

 

 確か、キャロのボールで試合が始まって、そのままペナルティエリアまで切り込まれて……。

そうだ、確かシュートの寸前でボールをバウンドさせて、自分の胸辺りまで浮かせたんだ。そして、箱型のデバイスを取り出して―

 

「って今の思いっきり砲撃魔法じゃない!! 何でアレが反則にならないのよ!? というかアレだけの砲撃を受けてボールとネットが無傷とが、絶対おかしいでしょ!?」

 

「おおう、怒涛のツッコミありがとうございますティアナさん。まあ、そんな風に言われても、「ルールだから」としか言えないんですけど」

 

「は? あんな砲撃がOKになるルールがどこに……」

 

 そこまで言いかけて、私はスバルとの会話を思い出した。

 

 ―あと、「魔法及びデバイスの使用アリ」だって。何だか面白そうだよね―

 

 ―あと、「魔法及びデバイスの使用アリ」だって―

 

 ―魔法及びデバイスの使用アリ―

 

 

 

 

「そういう意味かあああああああ!!」

 

「やっと気付いたみたいですね。じゃ、そろそろ始めますよ。今度はそっちボールです」

 

 ぽん、とキャロがボールを蹴ると、それが私の足元に転がってきた。

 私はそれを受け止めてから、チームメンバーへと念話を送った。 

 

『スバル、大丈夫?』

 

『う、うん。何とか大丈夫。まだまだやれるよ』

 

『みんなも良い? さっきので分かったと思うけど、これは決して息抜きなんかじゃないわ。このまま行くと、私達はキャロやヴィータ副隊長のサンドバッグ。そうならない為に、全力で戦うわよ!!』

 

『はい(おう)!!』

 

「あ、ちなみにボールやゴールが壊れないのは、ガジェットと同じで仮想上の物体だからだよ。Sランク砲撃でも壊れない設定にしてあるから、斬るなり突くなりしても大丈夫だよ~」

 

 ああ、だから態々訓練スペース使ってるのね。何という技術の無駄遣い……。

 

 

 

 

 ―以下ダイジェストでお送りします―

 

「エリオ、お願い!」

 

「はい! ストラーダ!」

 

≪Sonic move.≫

 

「甘い!! あなたがどんなドリブルをしても関係の無いタックルです!! 奇術「ミスディレクション」!!」

 

「うわああ!!」

 

 エリオくん ふっとんだ!

 

「エリオ!」

 

「余裕ですね。そっちを気にしてる余裕がありますか?」

 

「ッ!!」『ギンガさん、ガジェットを二体付けます。何とかキャロを止めて下さい!!』

 

『了解』「うおおおおおっつ!! リボルバー・キャノン!!」

 

「弾幕!? なら、風符「天狗報即日限」!?」

 

「ッ、速い!?」

 

「ゴメン抜かれた。スバル、あとお願い!」

 

「任せて! マッハキャリバー!」

 

≪Protection.≫

 

「無駄無駄無駄アッー!! 「ロビングシュート」!!」

 

「ボールが……分身!? 本物は!?」

 

「スバル、下!!」

 

「かかったなアホが!! シュートは力の強いものだけとは限らないんですよ」

 

『キャロくんのロビングシュート、フォワードチームのゴールに突き刺さったー!』

 

「ご、ごめんティアー」

 

「まだ大丈夫よ。それに今のは1対1にさせた私達も悪かったんだし。さあ、取り返すわよ!!」

 

『ティアナくんのキックオフで試合再開です』

 

「ギンガさん、お願いします」『エリオはそのまま前線に』

 

「了解。……行くよ、ブリッツキャリバー。ウィングロード!!」

 

『おおっと、ギンガくん、ウィングロードでガジェットの群れをすり抜けていく!!』

 

「させませんよ、ギンガさん。気符「地龍天龍脚」!!」

 

「……かかったね?」

 

「え!?」

 

「エリオ、パス!!」

 

「何ですって!?」

 

「私の役目はアシスト。本命は……エリオ!!」

 

「アギト!!」

 

『おう!! 烈火……一閃!!』

 

「これで、まず一点!!」

 

「くっ、私としたことが……」

 

 

 

 

「なんて、言うと思いました?」

 

「へ?」

 

「ヴィータさん!!」

 

「ッ!? エリオ、早く撃って!?」

 

「遅い!! アイゼン!!」

 

≪Explosion.≫

 

「ラケーテン・ハンマー!!」

 

「うわあああああああ!!」

 

 エリオくん ふっとんだ!!

 

「これで再びこっちボールです!! ガジェット2番、こっちに回して!!」

 

「不味い、カウンターになってるわよ!!」

 

「キャロ、私に回せ」

 

「ヴィータさん?」

 

「良いのを思いついた。ぜってー決めてきてやる」

 

「はい。……「マジックミサイル」!!」

 

「パス!? ギンガさん。カットお願い!!」

 

「OK。ウィングロード!!」

 

「よし。これでルートは塞いだ―」

 

 くにゃっ。

 

「な!? 曲がった!?」

 

「あ、良く見たら、ボールの表面が魔力で覆われてる!?」

 

『誘導弾の応用ね。なんという魔法の無駄遣い』

 

「シャーリーさんも人の事言えませんよ。……って、そうじゃなくて!!」

 

「よっしゃ、ここで決めてやる。てめーら覚悟しろ。……アイゼン」

 

≪Explosion.≫

 

 ガショッ、ガショッ、ガショッ!!

 

「まとめて……、ぶち抜けー!!」

 

≪Komet fliegen.≫

 

「くっ!! ブリッツキャリバー!!」

 

≪Protection.≫

 

「キャアアアアアッ!!」

 

 ギンガくん ふっとんだ!!

 

「私だって、威力を削ぐくらいなら……」

 

 ティアナくん ふっとんだ!!

 

「駄目でしたー!!」

 

「ティアアアアアアアア!! ッ、こうなったら!! マッハキャリバー!!」

 

≪Load cartridge.≫

 

「ディバイン・バスタアアアアアアア!!」

 

 

 

 

 スバルくん ふっとんだ!!

 

「カートリッジ3発分とか防げる訳ないってばあー!!」

 

 

 

 

 とまあこんな感じで、私達はあの二人にフルボッコにされた。

 途中からはキャロがGKに入ったため攻守ともに穴がなくなってしまい、攻守に渡ってヴィータ副隊長が大暴れする事になってしまった。

 というかヴィータ副隊長、ハンマー振り回してタックルしてくるの止めてください。

 今やこちらは全員が満身創痍。正直言って立って走るのだって辛い。けど、ここまで好き勝手されたままで終わるのは、私の意地が許さない。他の皆もそれは同じだ。

 だから、何としてでも一点入れる!!

 

「さあ、どっからでも来なさい!!」

 

「6番、8番、ティアナさんにタックル」

 

 キャロの命令を受けたガジェットが二機、私からボールを奪わんとタックルを仕掛けてくる。けど

 

「クロスミラージュ!!」

 

≪All right. Fake Silhouette.≫

 

「お、幻術?」

 

 フェイクシルエットにより、私の周囲に5体の幻影が出てくる。ガジェットのタックルで2体が消滅したけど、私を含めてまだ4体が生き残っている。

 

「4番、5番」

 

 続いて二体切り込んでくるもそれも空振り。よし、抜けた!

 

「エリオ、ギンガさん!」

 

「はい!」

 

「おおおおっ!!」

 

 

 そこで当初の作戦通り、両サイドから上がってきた二人が上空へと飛び上がる。

 空中でなら、ガジェットの妨害は無い!

 

「ヴァリアブル・シュート!!」

 

 私はボールを手元まで浮かせてから、クロスミラージュでそれを打ち抜く。

 魔弾と化したボールはそのまま、パスを待っているエリオの方へと伸びていき―

 

「ヴィータさん!!」

 

「おう!! ラケーテン・ハンマー!!」

 

 エリオの方へと一直線に、鉄の弾丸が飛んでいく。このスピードだと、エリオのシュートよりも早く打ち落とされるのは明らかで―

 

「残念だったな。落ちろ!!」

 

「残念なのは、そっちです!! 「曲がれ」!!」

 

「何!?」

 

 ヴィータ副隊長に叩き落とされる寸前、ボールは突如としてその機動を曲げ、明後日の方へと飛んでいく。

 これはさっきキャロがやっていた事。

 ヴァリアブルシュートは本来誘導性能なんて無いけど、それは戦闘用の破壊力を維持したままでの話。パスに破壊力は必要無いので、その分のリソースを誘導性能の追加に費やした。構築は洗練されてないから荒いけど、既存のプログラムの組み合わせで実現可能だったのはラッキーだ。

 そして、飛んでいったボールの行き先は―

 

「ギンガさん!?」

 

「これで決める。ブリッツキャリバー!!」

 

≪Load cartridge.≫

 

 ゴール前、完全フリーな状態でギンガさんがパスを受ける。

 おそらくこれが唯一にして最大のチャンス。

 

「面白い……勝負です、ギンガお姉ちゃん!!」

 

 そう言って、キャロは右手を前に、左手を腰のあたりに構えた。

 あの構えが何を意味するか、それはギンガさんを含めた全員が理解している。

 だけど、ギンガさんは止まらない。一矢報いる。その一念で―

 

「決める!! 「リボルバー・キャノン」!!」

 

「と め る !! 「天地魔闘」!!」

 

 

 

 

 ドオォォォォォォォン!!

 

 瞬間、ゴールを中心に爆煙が上がった。そして―

 

「キャッ!!」

 

 ギンガくん ふっとんだ!!

 

「ギンガさん!!」

 

 中心から吹き飛ばされたギンガさんを見て、急いで駆け寄った。

 見たところ、怪我はしていないみたいだけど。

 

「大丈夫ですか?」 

 

「うん。何とか、ね」

 

「良かった……。それで、ゴールは?」

 

 と聞いてはみたものの、こうして吹き飛ばされている以上、結果は分かっている。

 私達の努力は―。

 

「ティアナ、顔に出てるよ」

 

「あ、ゴメンなさ「それに」い?」

 

「駄目だったとは、一言も言ってないよ?」

 

 へ? とギンガさんに問いかけるより早く、煙がすうっと晴れていく。ゴールには相変わらず無傷で、涼しい顔をして立っているキャロ。そして

 

「いやー、押し込まれちゃいました。失敗失敗」

 

 その「後ろ」に転がっているのは白黒のボール。

 そう、私達は一矢報いる事に成功したのだった。

 

『はーい、ここでタイムアップ。5-1で幼女チームの勝利です』

 

 そして審判兼実況兼解説兼オペレーターであるシャーリーのアナウンスとともに、この試合は終わりを告げたのであった。

 

 

 

 

 ―後日―

 

「へえ、私達がいない間にそんな事があったんだ」

 

「大変な目に遭いました。下手するといつもの訓練よりもハードでしたし」

 

「……使えるかも。ティアナ」

 

「はい?」

 

「その訓練、取り入れてみようと思うの」

 

「へ? ちょ、何言ってるんですかなのはさん!! あんなのやってたら体が保ちませんよ!!」

 

「形こそスポーツだけど、11対11というチーム戦である以上、指揮能力が必要になる訳で、ティアナの指揮能力を考えると、伸ばさない手は無いと思うの」

 

「いや、確かにそうですけど、それなら普通に多人数の戦闘訓練で良いじゃないですか!?」

 

「じゃあ、試しでいいからあと何回かやってから判断しようか? これはあくまで皆の教官としての意見であって、私自身が一回やってみたいとか、そんな事は無いの」

 

「話聞いてない? というか、そっちが本音ですか、なのはさあああああああん!!」

 

 

 

 

『……マスター』

 

「……何かな、藍?」

 

『どうして態々こんな事を?』

 

「説明した通り、皆の息抜きとチーム戦の訓練ですよ」

 

『本音は?』

 

「東方サッカーがやってみたかった。後悔はしていない」

 

『だと思いましたよ』

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