にじファンに投稿していた時、6⑨話は現状整理と伏線回収&説明のための回でした。
当時は週1程度の更新だったため、この整理回を入れました。
が、今は転載作業中なので、せっかく伏線に関わるヒントを出しても推理する間もなく、数日中に投稿される話の中で明かされてしまいます。
こうなっては態々説明回を入れる意味が無いので、この話は欠番扱いにさせていただきました。
―ゆりかご周辺部―
「何か向こうは大変な事になってるみてえだな」
ウィンドウに映る映像を見ながらヴァイスが呟く。
主戦場から少しだけ離れたポイントで、彼の操縦するヘリが空を飛んでいた。
六課襲撃の際、幸運にも難を逃れたヘリは六課の機能移転の際にアースラへと積み込まれ、今こうして出撃の機会を得ていた。
ヘリの内部にはカートリッジと救急セットが積み込まれており、空中戦における補給ポイントの機能を担っていた。
「ヴァイス陸曹、機首を右方向に。独り言言ってないで仕事してください!!」
「はいはい。可愛げがねえなあ、っと!!」
ヴァイスの呟きに口を挟んだのはティアナである。
今回の決戦にあたり、飛行手段を持たない彼女は、当初は地上に残る事になっていた。
しかし、いくら時間が経っても地上にガジェットが出現する兆候が現れないことから作戦は変更。
補給の要であるヘリの護衛として、こうして乗り込むこととなった。
「ランスター、二時の方向から一機、それと四時の方向から二機接近中だ」
「分かってます!! クロスファイヤー・シュート!!」
ヘリの右側のハッチが開かれ、ガジェットが三機、ティアナの視界に入ってくる。
それらが射程内に入ると同時に誘導弾を発射。誘導弾は一つとして外れる事なくガジェットに吸い込まれていき、ヘリに接近してきたガジェットは撃ち落とされた
「おいおい、少し張り切りすぎじゃねえか? そんなんじゃ保たねえぞ」
「そんな事、ありません」
「……おい、ランスター」
「何ですか?」
「クロスミラージュ、左右逆に持ってるぞ」
「ッ、嘘!?」
「嘘だよ。大体、逆も何も無いだろう、それ」
「……」
キャロがスカリエッティ側に付いたという情報は、映像付きでティアナの所にも伝えられていた。
そんなの関係無いと一蹴したティアナであったが、どうにも気になっているらしく精神的な余裕が失われてきている。
そうでもなければ、ヴァイスからの引っ掛けに掛かったりなどしない。
「気になるのは分かるけどよ。向こうは向こうに任せて、今はこっちに集中してくれや」
「気になんてしてません」
「そうか? すまねえ、余計なお世話だったみてえだな」
「……」
「次、八時と十時から二機ずつ。ハッチ空けるぞ」
ヘリのレーダーが感知した情報を元に、ヴァイスはヘリを操作して左側のハッチを開放する。
先程と同様にヘリに接近してきていたガジェットは、さっきと同じようにティアナの射撃で打ち抜かれ、墜落していった。
「お見事。上手くなってるじゃねえか」
「……ヴァイス陸曹」
「ん、何だ?」
「心配じゃ、ないんですか?」
「……」
「……あ、すいません、変な事言っちゃって。気にしないで―」
「そりゃあ、心配さ」
「え?」
「どうしてそんな事になっているのか、何が起きているのか、心配したらキリがねえわな。特に今回の場合、味方だと思ってた奴が敵に回ってるんだからな。操られてるのか、最初から向こう側だったのか。どんな理由にしろ、仲間同士で戦ってるんだ。心配にならねえ訳が無え」
「……」
「ランスターの考えてる事当ててやろうか? 『出来るなら今すぐ駆けつけたい。飛行魔法が使えればあっちに参加できたのに』……違うか?」
「そんな事、思ってないです」
「そうか? また余計なお世話だったみてえだな。……次、三時と九時から一機ずつ。……いちいち開閉するのは面倒だな。ランスター! これからずっと開けっ放しにするけど落ちるんじゃねえぞ!!」
「……。はい!!」
左右のハッチが開かれて風通しの良くなった機内から、ティアナは三度弾丸を放つ。
左右に二発、計四発の弾丸がガジェットのボディを貫通し、その機能を停止させた。
「……無責任な言い方に聞こえるかもしれねえけどよ、あっちはあっちで何とかしてもらうしか無えんだ。ここで俺たちが悩んだ所で何にもならねえ」
「本当に無責任に聞こえますね」
「ちょっと無責任な位で良いんだよ。人間、一人で出来る事なんてたかが知れてるんだ。余計な荷物まで背負って元から背負っていた物ごと潰れたら、笑い話にもなんねえしな」
「分かりました分かりました。要するに、今出来ることに集中しろってことでしょう」
「分かってるじゃねえか。出来ない事は仲間に任せれば良い。どうしても自分でやらないといけないのなら、手伝ってもらってやれば良い。その代わり、やれる事は確実にこなす。助けを求められたのならできる範囲内で助ける。お前みたいなタイプは、その位の心構えで丁度良いんだよ」
「はいはい。っと、ヴァリアブル・シュート!!」
ヴァイスの言ってる事はティアナにも理解できた。
要するに、変な事に悩んでいるせいで俺様のヘリを落としたら承知しないと言ってるのだ、この男は。
新たに来たガジェットに対して、再び射撃を浴びせかける。
軽口を叩きながら射撃したせいか、さっきまであった動きの硬さは取れていた。
―ゆりかご内部通路―
「アイゼン!!」
「レイジングハート!!」
≪Schwalbefliegen.≫
≪Accel shooter.≫
ドン! ドン! ドン!
ヴィータから四発、なのはから六発。計十発の魔力弾が前方のガジェット向けて襲い掛かり、その機体を破壊する。
機能停止になったガジェットの上を、二人は飛行しながら通過していった。
≪新たにガジェットの反応あり。通路の先におそらく十機、待ち伏せが予想されます≫
「うん。……シュート!!」
向こうに先んずる形で、まずはなのはが先制する。
先程よりも多い計十二発分の誘導弾を、待ち伏せが予想されるポイントに撃ち込む。
誘導弾は通路を曲がった先にいるガジェットに襲い掛かり、なのは達の耳に爆音が聞こえてきた。
≪全ターゲットのうち半数を撃破。残りは推定六機です≫
「ヴィータちゃん、残りお願い!!」
「任せろ!!」
ガショッ! という音と共に、アイゼンにカートリッジがロードされ、ラケーテンフォルムに変化する。後々の事を考えてか、ロードは一回のみである。
「ラケーテン・ハンマー!!」
曲がり角に差し掛かった辺りで急加速。そのままガジェットに突っ込んでいき、残りの機体を鉄屑に変えた。
「お疲れ様、ヴィータちゃん」
「ふう……ったく、こんなにうじゃうじゃいたんじゃ鬱陶しくて仕方がねえ」
周辺にガジェットがいないのを確認してから、ヴィータはふぅ、とため息をついた。
体力、魔力ともにまだまだ余裕があるが、今までの状況を考えるとため息の一つもつきたくなるものだ。
「予想以上に数が多いね。予定では、この辺りで別行動なんだけど……。レイジングハート?」
≪その通りです。サーチの結果、動力炉と中枢部の位置は正反対と判明しました、ここからは完全に別行動になります≫
「とは言っても、こうも敵が多いとなあ。何とかならねーのか?」
≪固まって行動した場合、おそらく間に合いません≫
「だよなあ……」
ヴィータが心配しているのは、単独行動の危険性である。
当初の予定では、各々別行動で目的を果たすつもりだった。
しかし予想に反してガジェットの出現数が多く、二人で戦っていた時でさえ、その物量には閉口していた。
とは言うものの、なのは達に選択肢は無い。今更なのだ。
だからと言って確実に無茶をするであろうなのはを心配しないほど、ヴィータは薄情ではなかった。
「……なのは、言っても無駄だろうから無茶するなとは言わねーけど、ぜってー帰ってこいよ」
「うん、約束。ヴィータちゃんもね」
「おう。じゃあ、行ってくる」
「うん」
なのはに背を向けたヴィータは、そのまま通路の奥に向けて飛んでいく。
曲がり角に入りその姿が見えなくなるまで見送ってから、なのはは180度逆の方向を見据えて表情を引き締めた。
「それじゃ、私達も行こうか」
≪All right.≫
「と、その前に……。レイジングハート」
≪W.A.S≫
「これで良し。……待っててね、ヴィヴィオ」
なのはと別れたヴィータは現在、動力炉に向けて移動していた。
動力炉に向けての道中何十体ものガジェットに襲われたが、それらを悉く返り討ちにした。
ある時は誘導弾、またある時はアイゼンでガジェットを潰していく。
「これで!!」
そしてまた一機、新たにスクラップの仲間入りが増えた。
周囲にいたガジェットを片付け終わり、荒れた息を整える。
「あと、もうちょっとだ」
サーチ結果によると、動力炉までは残り数百メートル。
妨害が無ければ、一息で辿り着ける計算になる。
「カートリッジも、まだある」
この先に待っている動力炉の破壊に備え、カートリッジの残りをチェックする。
手元にあるのは残り三発。自分自身の残り魔力は五割~六割程度。
動力炉がどの程度の耐久度なのかは分からないが、これだけ残っていれば何とかなる。
状態確認は済ませた、このままさっさと動力炉に行ってしまおう。
そう考えた時であった。
「……チッ!?」
前方で何か光ったと思った直後、ヴィータの方に何かが飛来してくる。
ヴィータはすぐに気持ちを切り替え、再び意識を戦闘モードに戻す。
飛来して来ているのはおそらく刃物で数は1、長さはアイゼンより少し短い程度。
それが高速回転しながら、ヴィータ目がけて飛んでくる。
何となく嫌な感じがしたヴィータは、とりあえず回避せずに障壁を張って様子を見る。
障壁に当たった刃はギギギギギ、と音を立てながら回転を続けるが、突如その軌道を変えて来た方向へと戻っていく。
とりあえず奇襲は防げた事に安心するヴィータであったが、その瞳はまっすぐ前を見据えてきた。
「防がれましたか。やはり、簡単には行かないようですね」
「誰だ、てめえ……」
通路の向こうから、コツ、コツと足音が聞こえ、声の主が姿を現す。
その腕の部分には先程飛んできた刃が取り付けられていた。
「ナンバーⅦ、セッテ。ここを防衛するように命令されています。それと……」
その言葉に続くように、新たに別の足音が聞こえてくる。
こちらはセッテに比べると幾分か機械じみており、しかも複数聞こえてくる。
「ガジェットⅣ型も相手です」
人型を思わせるほっそりとしたボディに鋭い刃が取り付けられた形状のガジェット四型。
それらが十数機、セッテと共に歩いてきていた。
しかし、ヴィータにとってはそれ所ではなかった。
「アイツは……」
ヴィータはガジェットⅣ型の容姿に見覚えがあった。
忘れもしない、8年前になのはが生死を彷徨ったあの事件。
その時に戦った戦闘機械と全く変らない機体が、今目の前に存在していた。
「そうか、そういう事か……」
ヴィータの中で点と点が繋がって線になる。こんなの推理するまでも無い問題だ。
あの時になのはを襲ったのはこいつら。それだけ分かれば、後はなんだって良い。
「アイゼン!! カートリッジロード!!」
≪Jagwohl.≫
カートリッジを一発ロードし、ヴィータは突進していく。
ここに、ヴィータ対セッテ&ガジェットⅣ型十数機という戦いが幕を開けた。
「アクセル・シュート!!」
ヴィータと別れた後、なのはの側にもガジェットの群れが立ちはだかった。
主にⅠ型で構成されたそれらを蹴散らしながら、なのはは先に進んでいく。
強さ自体は大した事が無いものの、とにかく数が多い。
撃墜数が50を超えた辺りから、なのはは数えるのを止めていた。
「いちいち相手してられない! レイジングハート!!」
≪マスター、今ので200機です。消耗が心配されてきていますので、ACSは控えてください≫
「うっ……、分かったよ。ありがと」
≪Don't worry.≫
レイジングハートからの突っ込みに、なのはは血が昇りかけていた頭を冷やす。
レイジングハートの言う通り、誘導弾で対処できる相手に大技を使う必要は無い。
今まで自覚していなかっただけで、なのはは相当焦っていたようだ。
≪マスター、この先に大きな空間があります。恐らく敵の待ち伏せが予想されます≫
「分かった」
レイジングハートと会話しながら、マルチタスクを駆使して誘導弾をガジェットに当てていく。
進路上にいたガジェットを悉く撃破したなのはは、勢いのままその先にある部屋に入っていった。
「ここは?」
なのはが入った空間は、レイジングハートからの情報通りであった。
広さは縦横高さ30メートルといった所だろうか?
決して狭くはないが空戦をやるには窮屈に感じる、そんな広さであった。
そして、その部屋の中央にいた人影が、なのはに向けて声を掛けてきた。
「誰が来るのかと思えば……、お前か、エース・オブ・エース。」
「貴方は?」
「ナンバーⅢ、トーレ。ドクターの悲願のため、お前はここで死んでもらう」
「そんな事させない。私は絶対、ヴィヴィオを助け出してみせるんだから!!」
≪その通りです≫
なのははレイジングハートを握り直し、自分の周りに複数のシューターを待機させる。
トーレは腕の部分から魔力刃を出し、IS発動のタイミングを伺う。
エース・オブ・エースと最強の戦闘機人との戦いが、今ここに始まった。