第73話 終焉「Phantasm to Phantasm」
『……藍』
『困った事になりましたね。これからどうするつもりですか?』
『とりあえず、私は向こうの言う通り動く事にするよ。それで、藍とフリードにやって欲しい事があるんだけど……』
『何でしょうか?』
『ゼストさんのサポート、お願いして良いかな? レジアスさんを囮にして、ドゥーエを誘い出して欲しいんだ』
『成る程、そういう事ですか。分かりました、こっちは私とフリードで何とかしてみます』
『お願いね』
(うん。これで、良いんだ)
『? 何か言いましたか?』
『ううん、何も』
(そういう事、だったんだ)
自分の事をキャロの使い魔だと言った藍さんの話は、シグナム隊長を通して私達にも伝わっていた。
まさか、そんな事になってたなんて……。
「キャ『スバル、ストップ!!』ッ!!」
思わずキャロに呼びかけようとした矢先、はやてさんから飛んできた念話で遮られる。
『気持ちは分かるけど、それはアカン。藍って人の話が本当なら、会話も聞かれてるかもしれへんしな』
『あ……』
確かにその通りだ。
人質なんて方法でキャロを操っている連中だし、裏切り防止のために何らかの方法で監視する位はやっていると思う。
『キャロの事考えるなら、私らは何も知らん振りして通すしか無い。あの人かてそう言ってたやろ?』
そうだった。思わず台無しにしてしまう所だった。
藍さんは私達に今までの経緯を話してくれた。
その最後、キャロについての事も頼まれたんだった。
「助ける、と言っても、何も特別な事をしてもらう訳じゃ無い。方法は単純明快、全力全開であの子を落としてくれれば、それで良い」
かなり乱暴な言い方だと思うけど、これにだってちゃんとした理由があるらしい。
ル・ルシエの人達を人質に取られている現状では、キャロがスカリエッティを裏切る事は出来ない。かと言って、このまま放置してテロリストの片棒を担ぐなんていうのはもってのほかだ。
だったら、強制的に行動不能に追い込む。
私達がキャロを撃墜すれば、スカリエッティに協力出来ないのは不可抗力になる訳で、裏切りにはならない。
そもそも、ル・ルシエを楯にして脅迫しているのは戦力として協力させる為。
戦力にならない状態にしてしまえば、脅迫する意味自体無くなってしまう。
それが、結果的にキャロの為になる。
そうと決まれば、迷う事は無い。
私達に出来る全力でキャロを倒してこっちに戻って来させる。
戻って来たのなら、まずは思いっきり叱る。
何で私たちを頼ってくれないのか、何でも一人でやろうとするのか、言いたい事は山程あるんだから。
そのためにも、今は私に出来る精一杯をするだけだ。
『で、や。無力化するっていっても、具体的にどうしたら良えと思う?』
『そうねえ……』
はやてさんとシャマルさん、それに私は、キャロが放つ弾幕を凌ぎながら念話を交わす。
当然の事だけど、こっちが何もしなくてもキャロの方は攻撃してくる。
藍さんの話を聞いてる間もずっと、キャロやその後ろで監視しているだろう人物に気付かれないように戦闘を継続していた。
『藍って人の情報によると、今のキャロは高速機動に瞬間移動、魔力変換、その他諸々が使えへんらしい』
『でも驚異的な回避能力と接近戦能力は健在』
『広範囲魔法で落とすにしても、そうそうチャージさせてはくれへんやろうし……』
こうやって考えてみると、いかにキャロを落とすのが困難なのか良く分かる。
つい攻撃力に目が行きがちになるけど、シャマルさんの言う通り、キャロの実力を支えているのはその2つ。
この2つが揃っているせいで、遠近ともに守備に穴が無い。
『いっそ、消耗戦に持ち込むのはどうかしら?』
『確かに、それも良い案なんや。あの薬かてもう二本飲んでる。けど、後の事を考えたら、ここで時間かけるのは得策とは言えへん。』
『そうなのよね……。』
キャロが飲んでたあの薬、はやてさんが言うには、どうやら制限があるらしい。
飲んですぐに体力と魔力が回復するなんていうとんでもないシロモノだけど、服用量には上限がある。
キャロが持っている瓶に換算すると3本分、それが限界。
もちろん改良されている可能性もあるだろうけど、そうそう数が増える物でもない……筈。
だけど、それが尽きるのを待ってはいられない。
私達の目的は、あくまでゆりかご周辺の制空権の確保で、キャロを落としてそこで終わり、という訳にはいかない。
『勝つためには、何とかしてあの防御を攻略しないといけないのよね』
『そうなんや。何とか隙だけでも作れたら、私の広域魔法で何とか出来ると思うんやけど……』
はやてさんとシャマルさんも私と同じく、答えが出せずに悩んでいる。
隙、かあ……。
―スバル、……―
ッ! そうだ、アレなら!
『はやてさん!!』
「どうしました? もう攻めて来ないんですか?」
弾幕の向こうからキャロの声が聞こえてくる。
「この程度で終わりですか? 大した事無いですねえ。EASYモードが許されるのは小学生までですよー?」
攻めてこない事が疑問なのか、こっちを馬鹿にするような挑発も言ってくる。
さっきまでの私は、それを聞いて戸惑い半分、悲しみ半分くらいの気持ちになっていた。
けど、藍さんの話を聞いて、今のキャロが演技だっていうのが分かった今、戸惑いの代わりに別の気持ちが沸いてきた。
怒り、なんだと思う。
たぶんだけど、私は怒ってる。
一つはキャロに対して。
私やギン姉の事をお姉ちゃんって呼ぶんだったら、こういう時くらい力になりたかった。
私達じゃ頼りないのなら、父さんに相談するのでも良い。とにかく頼りにして欲しかった。
キャロに事情があるのも、言えない理由があったのも分かってる。
そして、もう一つは私達自身。
キャロはあんな性格をしてるから、悩みなんていう物とは無縁だと思ってた。
トラブルに見舞われるよりも率先して首を突っ込む方だし、むしろトラブルを作る側だったから。
だから、気付く事が出来なかった。
いつもあんな調子だからつい忘れそうになるけど、キャロはまだ、たった9歳の子供なんだ。
子供が困った時、それを助けるのは大人の役目。
私はまだまだ半人前だし、大人なんて口が裂けても言えないけど、姉貴分としては真っ先に気付いてあげるべきだったんだ。
気付くのが遅すぎたのかもしれない。もう手遅れなのかもしれない。
けど、だけど、それでも……。
「マッハキャリバー!!」
≪All right.≫
弾幕が止むのを見計らい、私ははやてさん達と離れてキャロの後ろに回り込む。
でも、当然というか何というか、キャロはしっかりそれに気付いて後ろに振り向いてきた。
「全く、しつこいですねえ。なら、次のスペルは……。どういうつもりですか?」
「勝負だよ、キャロ」
私が取った行動が意外なのか、キャロは弾幕を止めてこっちを見てくる。
それを見ながら、私は自分の持ってる最高の切り札を切る。
「行くよ、マッハキャリバー!!」
≪A.C.S. stand by.≫
電子音声と一緒に、ローラーブーツの両端から魔力放出用のフィンが出現する。
莫大な突進力を生むために左右の足それぞれに生えたそれは、まるで一対の翼に見える。
それを見たキャロの表情は、相変わらす笑みを浮かべたままだった。
「ACS、アサルトチャージャーシステムですか」
「ギア・エクセリオン。私の切り札だよ」
「その技のタネは知ってます。もし突っ込んできても返り討ちに遭うだけですよ?」
「かもね。でも、そうならないかもしれないよ?」
「これで一人目の撃墜者はスバルさんに決定ですね。まあ、心配しないでください。残り二人もすぐに送ってあげますから」
キャロがしてくる挑発。その裏に込められた意味について深く考えないようにしながら、上体を屈めて左手を前に、右手を後ろに持っていき、スタートの姿勢を取る。
やるって決めた。なら、後はそれだけを考える。
「心配いらないよ。勝つのは私達だから」
「良く言いますよ。今まで一度だって勝てた試しが無いじゃないですか」
対するキャロは右手を下に、左手を上にした構えを取る。
アレが何を意味するか、何度もやられた経験のある私には良く分かる。
だけど、今日は、今日こそは破ってみせる!!
「……」
「……」
「……」
「……」
「「……!!」」
「おおおおおおおおおお!!」
「魔王「天地魔闘」!!」
―地は防御―
「封魔陣!!」
ギギギギギギギギギギ……!!
キャロが目の前に展開した障壁に、思いっきり左の拳を叩き込む。
拳に込められた魔力と障壁が干渉しながらも、少しずつ拳が進んでいく。
けど、これだけじゃ足りない。
障壁張って終わり、なんていう程度で済む程、キャロは甘く無い。
だから、私も切り札を切る。
「一撃……必倒……。」
―天は攻撃―
「ディバイン・バスタアアアアアアア!!」
「破山砲!!」
零距離からのカートリッジ3発分の砲撃魔法。
キャロはそれに合わせるように、真正面から拳を叩き込んでくる。
アサルトチャージャーシステム、略してA.C.S
初撃で相手の障壁に穴を開けて、零距離から砲撃を叩き込む二段構えの必殺技。
事実上、これが今の私に出せる最大出力!!
零距離で拳と砲撃が衝突した瞬間、私達を中心に小さな爆発と閃光が起きる。
そのせいで、私は一瞬とはいえキャロの姿を見失う。
対応されたとはいえ、あの威力を零距離から叩き込んだ。
アレなら、いくらキャロでも……。
「恋符……。」
―そして魔は魔力の使用―
でも、キャロは倒れていなかった。
さすがに零距離での砲撃は堪えたらしく、右手はだらしなく垂れ下がっている。
だけど左手は、魔力を集中させながら掌をこっちに向けられている。
「正直危なかったです。けど、ここで終わりです。」
魔力のチャージは既に完了してるらしく、このままだと後コンマ数秒もしない内に、私は砲撃に飲み込まれる。
最初から分かってた。
私のギア・エクセリオンは二段攻撃、対するキャロは三段攻撃。
ディバインバスターが相殺された以上、私だけでこの状況を打開する事は出来ない。
私とマッハキャリバーは、ここが限界なんだ。
だから、力を貸して。
ギン姉。
―スバル、これ……。―
―へ? ……いいの!?―
―本当なら、私もスバル達と一緒に戦いたかった。だから、せめてこの子だけは一緒に連れていってあげて欲しいんだ。―
―ギン姉……。―
―あ、勘違いしないでね、あくまで貸すだけだから。無事この戦いが終わったら、ちゃんと返しに来る事。約束だよ。―
そう言って、ギン姉は約束と一緒にこの子を託してくれた。
言ってみれば、この子はギン姉の代わり。
もしギン姉がここにいたら、何があってもキャロを助けると思う。
『マスター……』
タイムリミットは近い。このままだと、私達は何も出来ないで落とされる。
けど、そんなの受け入れられる訳が無い。
絶対にキャロを助ける。そうでもしないと、私はギン姉に顔向け出来ない。
だから……応えて!!
「ブリッツキャリバー!!」
≪All right.≫
私の左手にもう一つのリボルバーナックルが装着され、それと同時にカートリッジが一発分だけロードされる。
キャロは私の手の内を全て知ってる。だから、今の今までブリッツキャリバーの事は隠し通した。
これが本当に最後のチャンス。……これで決める!!
「これは! ギン姉の分だあああああ!!」
「スパーク!!」
さっきとは真逆の光景。
砲撃魔法を撃ってくるキャロに対し、私はそれに目がけて拳を叩き込む。
拳と砲撃がぶつかり合い、一瞬拮抗する。直後―
均衡は破られて、砲撃の余波が私を襲った。
うん、分かってた。
ギア・エクセリオンに本来あり得ない抜き打ちの3段目。
ブリッツキャリバーのおかげで無理矢理実現させたものの、その威力はカートリッジ一発分。キャロの砲撃を受けるには、もう1~2発分足りない。
砲撃を喰らって堕ちていく私とそれを見下ろすキャロ。
それが、どうやっても揺るぎようの無い事実なんだ。
はあ……勝ちたかったなあ。
でも、良いか。
私は、私に出来る全力を出す事が出来た。私の手でキャロを助ける事は出来なかったけど、それでも役割だけはちゃんと果たす事が出来た。
だから、後の事は任せます。
シャマルさん、はやてさん。
「ッ!! バインド!?」
「捕まえ……た!!」
キャロちゃんとスバルちゃんのぶつかり合い。その直後、キャロが見せた一瞬の隙に長距離バインドをかける。
一見無敵に見えるキャロちゃんだけど、あの子だって人間。必ずどこかに欠点はある。
まず一つ目。キャロちゃんの使うあのカウンター技。
一瞬で三連撃を叩き込むという性質上、技後硬直が必ず発生する。それが欠点。
だけど、それを誘うには誰かがカウンターに突っ込む必要があった。
その役目はスバルちゃんがしてくれた。そして、私の役目はその一瞬でキャロちゃんにバインドをかける事。
「くっ!!」
キャロちゃんはバインドブレイクを試みているけど、私が全力で施している多重バインドから逃げられない。
これが二つ目。実はバインドに弱い。
以前、ギンガちゃんとキャロちゃんの間にこんな話があったらしい。
「そういえばさ、キャロ」
「何ですか?」
「バインドブレイク、あれから少しは上達した?」
「あー……」
「その反応、ひょっとして……」
「べ、別に良いじゃないですか!! 相手が居なかったんです!! 練習出来なかったんですよ!!」
「いや、そんな開き直られても」
「ふん、別に良いんですよーだ。バインドなんて避ければ良いんです。当たらなければどうという事は無いんです。偉い人にはそれが分からんのですよ」
結局キャロが拗ねてしまったため、この話題はここで終わり。
実際、キャロちゃんは脅威的な回避力でバインドや魔力弾を回避する事が出来る。
そのため、今までこれが問題になる事は無かった。
でも、だからこそ今の状況がある。弱点を放置してきた結果がこれ。
多重バインドにより、キャロちゃんの位置は完全に固定されている。
さあ、最後の仕上げをお願い。
はやてちゃん!!
「ありがとな、スバル、シャマル。……!!」
シュベルトクロイツを頭上に掲げて、詠唱を開始する。
ここまでお膳立てしてもろたんや。このチャンス、絶対にモノにする。
「来よ、白銀の風、天よりそそぐ矢羽となれ―」
数ある魔法の中、私が選んだのは砲撃魔法。
一撃でキャロを落とせる火力を持ち、それでいて出力、範囲共にある程度融通が利く使い易さ。
その二つを兼ね備える魔法の中では、コレが一番慣れている。
精密性に若干の難アリやけど、この距離なら問題無い。それに―
「はやてちゃん!!」
シャマルの声がすると同時、キャロのいる方向から魔力弾が飛んで来る。
キャロの様子を見てみると、バインドに拘束された状態でありながら右手をこっちに向けて来ている。
どうやら、右手部分だけバインドブレイク出来たみたいや。
迫って来る魔力弾に対し、私は防御も回避もせえへん。いや、できへん。
今は魔法の詠唱中。元々超遠距離での使用を想定しているそれは、詠唱ないし使用中は移動できず、完全に無防備になる。
キャロもそれが分かってるから、発射を潰すためにシューターを撃ってきた。
シューターと私の距離は瞬く間に縮まっていく。
このまま行くと、私はこのシューターで堕とされる事になる。
けどな、そんな事には絶対ならへん
せやろ? ……ザフィーラ!!
「おおおおおおおおお!!」
シューターが私に当たる寸前、そこに割り込んできたのは青い影。
シューターが次々と着弾して爆発が起きる。でも―
「主、大丈夫ですか!?」
爆発が収まった時、そこにいるのは青色の狼。
盾の守護獣ザフィーラの張った障壁は、一発たりともキャロの攻撃を通さなかった。
「私は大丈夫や。と言うか、怪我人のザフィーラがそれを言う? たしか私、おとなしく病院で休んどきって言ったやんな?」
「うっ、それは……」
「まあええわ。助けられたのは事実やからな。……ありがとうな、ザフィーラ」
「いえ……」
こんな会話をしながらも、ザフィーラはキャロの放つシューターを全て防ぐ。
盾の守護獣に守られて、私の所には一発も通される事は無かった。
そして、その時がやってきた。
「詠唱完了。……行くで!!」
スバルが、シャマルが、そしてザフィーラが繋いでくれた。
六課の隊長として、八神はやてとして、何としてもそれに報いる。
そして、何よりもキャロのために。
この子の悪夢、ここで全部終わらせる!!
「フレース……ヴェルグ!!」
私がキャロに向けて杖を向けると同時、頭上に展開している魔法陣から砲撃が放たれる。
砲撃は射線上にある魔力弾を飲み込みながら、真っ直ぐにキャロの方へと進んでいく。そして―
キャロの体を、純白の魔力光が包み込んだ。
「ん……あれ?」
現状が分かってないのか、どこか寝ぼけた声でキャロが呟く。
「私らの勝ちやね」
その様子を見下ろしながら、私は私の腕に抱かれているキャロに声をかける。
スバルのことをシャマルに任せ、私は砲撃によって墜落したキャロの方に向かい、落ちる途中の所をキャッチした。
今はティアナ達がいるヘリに向かっている途中で、キャロを所謂お姫様抱っこで運んでいる所や。
「ああ、そう、ですね」
キャロに抵抗するような素振りは無い。でも何を考えてるのかがイマイチ良く分からへん。
やっぱり、監視が気になってるんやろか? ……そうや!!
『なあ、キャロちゃん。念話やったら大丈夫かな?』
『ッ!? え、と……。はい』
『その様子やと大丈夫みたいやな。藍って人から聞いたで。何もかも』
『そうですか。はあ、お喋りなんだから……』
念話でため息をつくなんていう器用な事をするキャロを見ていると、やっとこちら側に戻せたという実感が沸いて来る。
何はともあれ、キャロを助ける事は出来た。
後はこの空域を基点に、ゆりかご周辺の制空権を確保できれば―
―そっか、そういう事かあ。……まあ、良いか。―
へ?
『キャロ、今何か言った?』
『いいえ、何にも』
そう答えるキャロの様子は、さっきまでと殆ど変わらない。
でも、何でやろ?
どうしようもなく嫌な予感がして来るのは。
『ねえ、はやてさん』
『何や?』
『藍とフリードの事、お願いできますか? あの子達は私の命令に従っただけ。罪を被せるのなら、私に全部被せてください』
『へ? 何を……ッ!?』
変化が起きたのはその時。
ううん、変化と言っても目に見える物やない。
けど、私の腕に抱かれているキャロを見ていると、どうしようも無く嫌な予感がする。
それと、キャロの体から何か大事な物が抜けていく感覚が、本能的に理解できた。
「何が起きて……!?」
「Phantasm to Phantasm.」
「!?」
「塵は塵に、灰は灰に、そして、幻想は幻想に。元々、妖怪は人間に退治される者。居ちゃいけない者。だから、これで良いんです」
「何言ってるん? キャロちゃんの言ってる事、何も分からへん!!」
いつの間にか念話じゃなくなっている事にも構わず、私はキャロに呼びかけ続ける。
何でかは良く分からないけど、今とても不味い事が起きようとしているのだけは分かる。
「最後に、一つだけ」
だというのに、キャロの表情は安心しきったまま。
今から起きる事を理解しているのか、慌てたりといった素振りは無い。
だけど、それを見ても安心なんて出来ず、逆に不安が増えていくだけ。
そして―
私の事は忘れてください。
「……!?」
「む、どうした、藍?」
「まさか……、ッ!!」
「お、おい!?」
「どうしたですか!?」
「あの子が…………ッ、桜ぁ!!」
元々居ちゃいけない存在だったんです。イレギュラーだったんです。
「……!? キュルー!!」
「うわ!? こいつ急に動き出して!?」
「撃ち落せ!!」
「駄目です、逃げられます!!」
「キュクルーーーー!!」
だから、私はここで終わりです。
「今まで、ごめんなさい」
その言葉を最後に、キャロの全身から力が抜けてその目が閉じられた。
「嘘や……」
私の頭によぎるのは最悪の結末。
けど、それに至る経緯が分からない。
魔力弾、砲撃共に非殺傷設定。威力だってしっかり手加減した。
だから、こんな事ある訳が無いのに。
「嘘や、嘘や、嘘や、嘘や……」
否定したくてたまらないのに、私の腕にかかる重みがその事実を押し付けてくる。
誰か、嘘って言ってえな。
キャロが……死んでしまったなんて。
「嘘やああああああああああああ!!」