やっぱ⑤から始まるの、おかしいですかね?
冬の寒さも本番に入り冷え込んできた。最近の冬は特に寒いと感じる12月上旬。
立木 浩太は三門市の六穎館高校の2年生である。今はホームルームの時間。浩太は惰眠を貪っている真っ最中だった。
「立木ー!起きろー!」
教壇に立つ担任から声が聞こえる。
「…うっす。」
「試験勉強で疲れているのはわかるが、今日の授業はこれで最後なんだ。頑張ってくれ。」
「うっす。」
聞き流すが勝ち、である。
そんな彼が暮らしている三門市は、今日も
授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響き、彼はすぐさま帰る準備を始める。
彼の家はボーダーの玉狛支部である。昔とある事件で親を亡くし、それ以来林藤に引き取られ、そこで育った。
浩太が所属しているのはC組。
同じクラスの二宮隊の攻撃手、辻 新之助は今日は防衛任務なのだろう、午前で早退していった。
すぐに準備を済ますと下駄箱の方へ向かった。そこでとある人物から声をかけられる。
「立木。」
「あ、荒船さん。どうかしました?」
「今日、暇か?」
「ええ。」
「お前に狙撃手を教えてやろうと思ってな。渡したあのプリントは読んだか?」
「もちろん。面白かったですよ。」
「よし、行こうぜ。」
渡されたプリントとは、狙撃手の理論をまとめられたものである。目の前の人物、荒船 哲次は木崎 レイジに次ぐ完璧万能手を目指しているらしい。
武闘派狙撃手のくせに理論派、それが荒船である。筋肉の洗礼は受けたものの、脳筋ではない。すごい人。
浩太はその荒船に自分に狙撃手の稽古をつけてくれ、と頼みに行ったのである。木崎でない理由は簡単。迅が自分にやめとけと言ったからである。何か視えているのだろう。
「荒船さん。」
「なんだ?」
「攻撃手の理論も読ませてくださいよ。」
「ああ、構わないぜ。でもお前十分強いだろ。」
そんな話をしながら、ボーダー本部へつながる秘密経路を目指す。
その時だった。
『緊急警報、緊急警報。
警報が聞こえると同時に荒船が叫んだ。
「なんで
「とりあえず撃退しましょう。」
浩太がそう言ったあと、二人はトリガーに触れ、呟く。
「「トリガー
これが開始の合図だった。浩太と荒船の体がトリオン体に換装される。敵のトリオン兵はバムスターが3匹にモールモッドが2匹。
「先にモールモッド落としましょう。」
「よし、立木は右のやつでいけ。」
「了解。」
そういうと浩太は右手に拳銃を、左手にスコーピオンを生成する。すこし離れた位置から
浩太の読み通り、それはモールモッドの両方の鎌に命中。重石がそこに生成される。動きが一瞬鈍ったのを浩太は見逃さない。
マガジンを入れ替える。
そして次の一瞬で彼は鎌を切り飛ばし、モールモッドに肉薄する。
「まずは一匹。」
構えた拳銃の引き金を引くこと3回。モールモッドは沈黙した。
要した時間は数十秒。浩太は標的をバムスターに移す。
トリオン兵は道路にそって縦1列に並んでいた。すぐに接近を開始する。
一匹目を踏みこえ、二匹目に拳銃を撃ち込み倒す。飛び越えた一匹目は、浩太の方をふり向こうとした瞬間、弱点の目を貫かれた。荒船である。
『いい釣りだ。』
「先輩の理論のお陰です、よっ!」
荒船からの通信にそう返しながら、最後の一匹をすれ違いざまに斬り裂く。そのバムスターは上から下に、一直線に斬られていた。
「荒船さん、本部に連絡は?」
『しておいた。回収班も呼んである。』
「さすが、仕事が早いっすね。」
そう言いつつ浩太は荒船のいるところへ向かう。
「回収班が来るまで待機しておけ、とのことだ。」
「なんで街中に
「全く見当もつかないな。」
浩太らがイレギュラーゲートに対処している時と同じ時間。別の場所でバムスターがバラバラにされていたことを、彼が知る由もなかった。
〇━〇━〇━〇
荒船の講義はとても興味深いものだった。こんな分かりやすい理論の攻撃手版を、村上 鋼は教わったのだ。強くなれないわけがない。
完璧万能手量産計画もこれなら着々と進みそうだ。そんなことを考えながら、浩太は自らの家、玉狛支部を目指す。
「ただいまー。」
浩太がリビングに入るとキッチンの方から声が飛んだ。
「あ、浩太くん!おかえり。」
「おう、宇佐美。晩飯は?」
「もうちょい〜。」
玉狛支部では隊員ごとに曜日で料理の当番が決まっている。
宇佐美は天ぷら・唐揚げが、迅は鍋、烏丸はイタリアン、林藤はハンバーグが得意。
小南はカレーしか作れず、木崎はなんでも作れる。強い筋肉。
浩太も基本的になんでも作れるが、得意料理は焼肉。肉を焼かせたらボーダーの中で右に出る者はいない。
浩太は台所で手を洗いながら、小南に声をかける。
「なあ桐絵、迅は?」
「まーたこそこそやってるんじゃなーい。」
リビングから間延びした返事が返ってきた。
「よしっ!できたよ!」
「なんか手伝おうか?」
「お皿運んでー!」
調理を終え、唐揚げが盛り付けられた皿を机の上へ運ぶ。小南はすでにダイニングテーブルに着いていた。
「桐絵…。ちょっと手伝ったら?」
そう浩太が呼びかけるも、ニヤリとした笑みを浮かべるばかりである。それならばこちらに策がある。
「じゃあお前だけ饅頭無しな。」
「手伝うわ!!」
「買ってないけど。」
「…!?」
小南がとても怪訝そうな顔をする。それを横目に見ながら最後の一押し。
「嘘だけど。」
「え?どっち!?ねえ、どっちなの!?」
玉狛支部は平和そのものだった。テレビを見ていた陽太郎を呼び、がやがやとしながらも夕食を食べ始める。
烏丸はバイト、木崎は防衛任務、林藤と迅は何をしているのかよくわからないため、夕食は四人で食べている。
夕食の後はデザート。饅頭をみんなに分けて少しした後、実家暮らしの小南と宇佐美は帰って行った。
紅茶を飲むためにやかんを火にかける。時刻は午後9時前。
「陽太郎、寝に行くぞ。」
「まだねむくないぞ!」
「どうせ布団に入ったら眠くなる。ほれ、行くぞ。」
無理やり陽太郎を布団に押し込み、浩太は紅茶を飲み一息つく。テレビはいつも同じニュースを垂れ流すだけ。
うとうとしだしたころ玄関の扉が開く。
「おかえり〜、迅。なんか食べる?」
「何があんの?」
「宇佐美の唐揚げ。」
「食べるわ。」
一連のやりとりの後、浩太は唐揚げを少し盛り付けてレンジにかける。それを出した時、迅は浩太にこう言った。
「なんで起きてたんだ?」
「なんかあったろ。」
浩太は口の端に笑みを浮かべて言う。対する迅もすこし笑っていた。
「どうしてそう思う?」
「街中に門が開いただろ。誘導装置が効かないなんてことはなかなか珍しいからな。」
ボーダーには鬼怒田開発室長が開発した門誘導装置がある。それを使って、普段は門の発生するところを基地の周辺に集めている。
「明日、多分街中にでかめのやつが出るんだ。それを止めて欲ひい。」
唐揚げを頬張りながら、迅は浩太に言う。
「さすが宇佐美の唐揚げだな。うまい。」
「時間は?」
「わからないんだよな、それが。まあ明日防衛任務だろ?」
「おう、そいつは任せてくれていいぜ。どうせお前はすることがあるんだろ?」
「よくわかってんな。」
「もちろん。」
コン、と拳と拳を合わせる。二人とも笑っていた。
「じゃあ俺寝るよ。おやすみ。」
「おやすみ。」
浩太が去ったあとのダイニングで、迅は宇佐美の唐揚げを食べ続ける。
これから忙しくなりそうだ。
迅は心の中でそう呟く。すこしばかりの平和を満喫するように、迅は食事を続けた。
〇━〇━〇━〇
翌日、浩太は鈴鳴第一とともに、午後の防衛任務に当たっていた。鈴鳴第一、通称来馬隊は攻撃手、銃手、狙撃手が1人ずつのバランスのとれた部隊である。
『
「鋼と立木くんはモールモッドをお願いしていい?」
「もちろん。」
「行きましょう。」
来馬の指示を聞き、鋼と浩太は頷く。
「鋼さんは左のやつでいいですか?」
「ああ、問題ないよ。」
。
。
。
特に手こずることもなく、倒し終える。その時、隣の区域で防衛任務を行っていた嵐山隊から連絡が入った。
『中学校にイレギュラー
来馬がこちらを向いて、浩太に話しかける。
「立木くん、太一を連れて、あっちに行ってくれないかな。」
「了解です。」
そう言うやいなや、浩太は嵐山隊の方へ向かって走り出した。
「嵐山さん、佐鳥置いてってください。」
『分かった、すまんが任せるぞ!』
「了解です。」
結果から言ってしまおう。嵐山隊のあとを任されたのはいいものの、
そして嵐山隊が向かった中学校だが、C級隊員が現れたモールモッド二体を倒したらしい。
『今から戻る!突然すまなかったな。』
「いえいえ、全然問題ないですよ。」
それから3時間ほど防衛任務を行い、諏訪隊とバトンタッチ。
今日の成果はモールモッド二体にバムスター三体、バンダー一匹である。
防衛任務のあと、浩太はその足で街中へ向かう。先ほどからサイドエフェクトを使って周りを見ているが、何やらトリオンが一部に集まっているらしい。
そこにイレギュラー
『緊急警報、緊急警報。
上空に現れた
「あいつはっ…!!前に見た自爆するやつか!」
そのトリオン兵はすぐに自爆することはなく、爆弾を市街地に落とし始めた。
『繰り返します。市民の皆様は直ちに避難してください。』
浩太はすぐにトリガーを起動、そのトリオン兵に向けて走り出した。
同時刻。
川の対岸でもイルガーへ向けて走り出す人が2人。
嵐山隊の木虎 藍。
そしてモールモッドを倒したC級隊員、三雲 修だった。
二つの物語は、急速に近づき始める。
原作と合流したほうが、書くの難しい…?