再び見つめ直す話   作:ベルトのつち

2 / 5


やっぱ⑤から始まるの、おかしいですかね?


第1話 「立木 浩太 ⑤」

 

 

冬の寒さも本番に入り冷え込んできた。最近の冬は特に寒いと感じる12月上旬。

立木 浩太は三門市の六穎館高校の2年生である。今はホームルームの時間。浩太は惰眠を貪っている真っ最中だった。

 

「立木ー!起きろー!」

 

教壇に立つ担任から声が聞こえる。

 

「…うっす。」

「試験勉強で疲れているのはわかるが、今日の授業はこれで最後なんだ。頑張ってくれ。」

「うっす。」

 

聞き流すが勝ち、である。

 

そんな彼が暮らしている三門市は、今日も近界民(ネイバー)の被害に晒されている。それでも授業中に居眠りはできる程度には、平和な町になった。よくここまで持ち直したものである。

 

授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響き、彼はすぐさま帰る準備を始める。

彼の家はボーダーの玉狛支部である。昔とある事件で親を亡くし、それ以来林藤に引き取られ、そこで育った。

 

浩太が所属しているのはC組。

同じクラスの二宮隊の攻撃手、辻 新之助は今日は防衛任務なのだろう、午前で早退していった。

 

すぐに準備を済ますと下駄箱の方へ向かった。そこでとある人物から声をかけられる。

 

「立木。」

「あ、荒船さん。どうかしました?」

「今日、暇か?」

「ええ。」

「お前に狙撃手を教えてやろうと思ってな。渡したあのプリントは読んだか?」

「もちろん。面白かったですよ。」

「よし、行こうぜ。」

 

渡されたプリントとは、狙撃手の理論をまとめられたものである。目の前の人物、荒船 哲次は木崎 レイジに次ぐ完璧万能手を目指しているらしい。

武闘派狙撃手のくせに理論派、それが荒船である。筋肉の洗礼は受けたものの、脳筋ではない。すごい人。

 

浩太はその荒船に自分に狙撃手の稽古をつけてくれ、と頼みに行ったのである。木崎でない理由は簡単。迅が自分にやめとけと言ったからである。何か視えているのだろう。

 

「荒船さん。」

「なんだ?」

「攻撃手の理論も読ませてくださいよ。」

「ああ、構わないぜ。でもお前十分強いだろ。」

 

そんな話をしながら、ボーダー本部へつながる秘密経路を目指す。

その時だった。

 

『緊急警報、緊急警報。(ゲート)が市街地に発生します。市民の皆様は───』

 

警報が聞こえると同時に荒船が叫んだ。

 

「なんで(ゲート)が市街地に!?」

「とりあえず撃退しましょう。」

 

浩太がそう言ったあと、二人はトリガーに触れ、呟く。

 

「「トリガー起動(オン)!」」

 

これが開始の合図だった。浩太と荒船の体がトリオン体に換装される。敵のトリオン兵はバムスターが3匹にモールモッドが2匹。

 

「先にモールモッド落としましょう。」

「よし、立木は右のやつでいけ。」

「了解。」

 

そういうと浩太は右手に拳銃を、左手にスコーピオンを生成する。すこし離れた位置から鉛弾(レッドバレット)を撃ち、接近を開始する。

浩太の読み通り、それはモールモッドの両方の鎌に命中。重石がそこに生成される。動きが一瞬鈍ったのを浩太は見逃さない。

マガジンを入れ替える。

そして次の一瞬で彼は鎌を切り飛ばし、モールモッドに肉薄する。

 

「まずは一匹。」

 

構えた拳銃の引き金を引くこと3回。モールモッドは沈黙した。

要した時間は数十秒。浩太は標的をバムスターに移す。

トリオン兵は道路にそって縦1列に並んでいた。すぐに接近を開始する。

一匹目を踏みこえ、二匹目に拳銃を撃ち込み倒す。飛び越えた一匹目は、浩太の方をふり向こうとした瞬間、弱点の目を貫かれた。荒船である。

 

『いい釣りだ。』

「先輩の理論のお陰です、よっ!」

 

荒船からの通信にそう返しながら、最後の一匹をすれ違いざまに斬り裂く。そのバムスターは上から下に、一直線に斬られていた。

 

「荒船さん、本部に連絡は?」

『しておいた。回収班も呼んである。』

「さすが、仕事が早いっすね。」

 

そう言いつつ浩太は荒船のいるところへ向かう。

 

「回収班が来るまで待機しておけ、とのことだ。」

「なんで街中に(ゲート)が発生したんすかね。」

「全く見当もつかないな。」

 

浩太らがイレギュラーゲートに対処している時と同じ時間。別の場所でバムスターがバラバラにされていたことを、彼が知る由もなかった。

 

 

〇━〇━〇━〇

 

 

荒船の講義はとても興味深いものだった。こんな分かりやすい理論の攻撃手版を、村上 鋼は教わったのだ。強くなれないわけがない。

完璧万能手量産計画もこれなら着々と進みそうだ。そんなことを考えながら、浩太は自らの家、玉狛支部を目指す。

 

「ただいまー。」

 

浩太がリビングに入るとキッチンの方から声が飛んだ。

 

「あ、浩太くん!おかえり。」

「おう、宇佐美。晩飯は?」

「もうちょい〜。」

 

玉狛支部では隊員ごとに曜日で料理の当番が決まっている。

宇佐美は天ぷら・唐揚げが、迅は鍋、烏丸はイタリアン、林藤はハンバーグが得意。

小南はカレーしか作れず、木崎はなんでも作れる。強い筋肉。

浩太も基本的になんでも作れるが、得意料理は焼肉。肉を焼かせたらボーダーの中で右に出る者はいない。

浩太は台所で手を洗いながら、小南に声をかける。

 

「なあ桐絵、迅は?」

「まーたこそこそやってるんじゃなーい。」

 

リビングから間延びした返事が返ってきた。

 

「よしっ!できたよ!」

「なんか手伝おうか?」

「お皿運んでー!」

 

調理を終え、唐揚げが盛り付けられた皿を机の上へ運ぶ。小南はすでにダイニングテーブルに着いていた。

 

「桐絵…。ちょっと手伝ったら?」

 

そう浩太が呼びかけるも、ニヤリとした笑みを浮かべるばかりである。それならばこちらに策がある。

 

「じゃあお前だけ饅頭無しな。」

「手伝うわ!!」

「買ってないけど。」

「…!?」

 

小南がとても怪訝そうな顔をする。それを横目に見ながら最後の一押し。

 

「嘘だけど。」

「え?どっち!?ねえ、どっちなの!?」

 

玉狛支部は平和そのものだった。テレビを見ていた陽太郎を呼び、がやがやとしながらも夕食を食べ始める。

烏丸はバイト、木崎は防衛任務、林藤と迅は何をしているのかよくわからないため、夕食は四人で食べている。

 

夕食の後はデザート。饅頭をみんなに分けて少しした後、実家暮らしの小南と宇佐美は帰って行った。

 

紅茶を飲むためにやかんを火にかける。時刻は午後9時前。

 

「陽太郎、寝に行くぞ。」

「まだねむくないぞ!」

「どうせ布団に入ったら眠くなる。ほれ、行くぞ。」

 

無理やり陽太郎を布団に押し込み、浩太は紅茶を飲み一息つく。テレビはいつも同じニュースを垂れ流すだけ。

うとうとしだしたころ玄関の扉が開く。

 

「おかえり〜、迅。なんか食べる?」

「何があんの?」

「宇佐美の唐揚げ。」

「食べるわ。」

 

一連のやりとりの後、浩太は唐揚げを少し盛り付けてレンジにかける。それを出した時、迅は浩太にこう言った。

 

「なんで起きてたんだ?」

「なんかあったろ。」

 

浩太は口の端に笑みを浮かべて言う。対する迅もすこし笑っていた。

 

「どうしてそう思う?」

「街中に門が開いただろ。誘導装置が効かないなんてことはなかなか珍しいからな。」

 

ボーダーには鬼怒田開発室長が開発した門誘導装置がある。それを使って、普段は門の発生するところを基地の周辺に集めている。

 

「明日、多分街中にでかめのやつが出るんだ。それを止めて欲ひい。」

 

唐揚げを頬張りながら、迅は浩太に言う。

 

「さすが宇佐美の唐揚げだな。うまい。」

「時間は?」

「わからないんだよな、それが。まあ明日防衛任務だろ?」

「おう、そいつは任せてくれていいぜ。どうせお前はすることがあるんだろ?」

「よくわかってんな。」

「もちろん。」

 

コン、と拳と拳を合わせる。二人とも笑っていた。

 

「じゃあ俺寝るよ。おやすみ。」

「おやすみ。」

 

浩太が去ったあとのダイニングで、迅は宇佐美の唐揚げを食べ続ける。

 

これから忙しくなりそうだ。

 

迅は心の中でそう呟く。すこしばかりの平和を満喫するように、迅は食事を続けた。

 

 

〇━〇━〇━〇

 

 

翌日、浩太は鈴鳴第一とともに、午後の防衛任務に当たっていた。鈴鳴第一、通称来馬隊は攻撃手、銃手、狙撃手が1人ずつのバランスのとれた部隊である。

 

(ゲート)発生、(ゲート)発生。座標誘導誤差7.06。近隣の皆様はご注意ください。』

 

(ゲート)から現れたのは、バムスターが4匹、モールモッドが2匹。昨日街中に現れたものと編成が似ている。

 

「鋼と立木くんはモールモッドをお願いしていい?」

「もちろん。」

「行きましょう。」

 

来馬の指示を聞き、鋼と浩太は頷く。

 

「鋼さんは左のやつでいいですか?」

「ああ、問題ないよ。」

 

 

特に手こずることもなく、倒し終える。その時、隣の区域で防衛任務を行っていた嵐山隊から連絡が入った。

 

『中学校にイレギュラー(ゲート)が開きました!こっちの担当もすこしお願いできますか!?』

 

来馬がこちらを向いて、浩太に話しかける。

 

「立木くん、太一を連れて、あっちに行ってくれないかな。」

「了解です。」

 

そう言うやいなや、浩太は嵐山隊の方へ向かって走り出した。

 

「嵐山さん、佐鳥置いてってください。」

『分かった、すまんが任せるぞ!』

「了解です。」

 

 

結果から言ってしまおう。嵐山隊のあとを任されたのはいいものの、(ゲート)が発生することはなかった。

 

そして嵐山隊が向かった中学校だが、C級隊員が現れたモールモッド二体を倒したらしい。

 

『今から戻る!突然すまなかったな。』

「いえいえ、全然問題ないですよ。」

 

それから3時間ほど防衛任務を行い、諏訪隊とバトンタッチ。

今日の成果はモールモッド二体にバムスター三体、バンダー一匹である。

 

防衛任務のあと、浩太はその足で街中へ向かう。先ほどからサイドエフェクトを使って周りを見ているが、何やらトリオンが一部に集まっているらしい。

そこにイレギュラー(ゲート)の原因があるとみて間違いないだろう。その時だった。

 

『緊急警報、緊急警報。(ゲート)が市街地に発生します。市民の皆様は直ちに避難してください。』

 

上空に現れた(ゲート)からは爆撃型トリオン兵、イルガーが二匹。

 

「あいつはっ…!!前に見た自爆するやつか!」

 

そのトリオン兵はすぐに自爆することはなく、爆弾を市街地に落とし始めた。

 

『繰り返します。市民の皆様は直ちに避難してください。』

 

浩太はすぐにトリガーを起動、そのトリオン兵に向けて走り出した。

 

同時刻。

川の対岸でもイルガーへ向けて走り出す人が2人。

嵐山隊の木虎 藍。

そしてモールモッドを倒したC級隊員、三雲 修だった。

 

二つの物語は、急速に近づき始める。

 

 

 

 





原作と合流したほうが、書くの難しい…?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。