再び見つめ直す話   作:ベルトのつち

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第4話 「立木 浩太 ⑥」

 

 

 

迅と修が会議に出ているころ、浩太は防衛任務を終え三輪隊の作戦室を訪れていた。

がしかし出てきたのは秀次ではなく、陽介だった。

 

「あれ、俺は秀次に会いに来たんだけど?」

「あれ?てっきり俺とランク戦しに来たのかと思ったぜ。」

「で、秀次は?」

 

そう言う浩太に構うことなく、陽介はランク戦のブースへ引っ張っていく。

 

「行くぞー!多分今はあってくれねーよ!」

「あーわかったから!引っ張るなよ!!」

 

ランク戦のブースはいつも通りというべきか、人がなかなか多かった。

 

「あ、双葉じゃん。」

「浩太先輩、なんで引っ張られてるんですか?」

「いやまあ色々あって。」

「おらー!つべこべ言ってねーでとっとと始めるぞー!」

 

少し呆気にとられる双葉を横目にずるずる引きずられていく。なかなか陽介もフラストレーションが溜まっていた。別れた時はそうでもなかったのにこの戦闘狂の身に何があったのだろう。

ブースにぶち込まれたあと、浩太はトリガー構成を入れ替える。準備が整った旨を陽介に伝えると秒で転送された。

 

 

マップは市街地Aに固定、そして勝負は10本勝負。いつも通りのルールである。

 

合図とともに浩太は走り出す。

対人戦の時は突撃銃をスコーピオンに入れ替えている。最近はもっぱらスコーピオンのポイント稼ぎにはまっているのだ。両手スコーピオンもなかなか楽しい。風間さんと斬り結んだときは体の高ぶりを感じた。そろそろ浩太も毒されているかもしれない。

 

「ハウンド。」

 

陽介の姿を確認し、屋根の上からハウンドを打ち込む。陽介はシールドでガードしながらも足を止めない。足を止めると浩太の鉛弾の餌食になる。秀次のチームメイトなのだ。よく分かっていた。

 

「よく研究してるな、陽介。」

「何年秀次とチームメイトだと思ってんだよっ!」

 

そう呟くと、陽介は『旋空』を槍で繰り出す。それを左手のシールドで流しつつ、接近を開始する。右手にあるのは黒光りする拳銃。

 

「さて、どっちだ。」

「マガジン入れ替えてねーだろ!」

「どうかなっ!」

 

ドンドンドンと三回引き金を引くが、全てシールドで受け止められた。ハンドガンをしまい、スコーピオンを取り出す。

 

「当たりィ!!」

 

そう言うと次は『幻踊』を繰り出してきた。

 

『幻踊』も『旋空』と同じく孤月のオプションである。これは陽介の使う槍の穂先の形を変形させられるというものだ。この変幻自在の攻撃で相手を削っていくというのが陽介の戦闘スタイルである。

 

自由に曲がる穂先を、シールドで止めながら左手のスコーピオンを伸ばす。それを陽介は左に飛んでかわし、さらに突きを繰り出してくる。

右手もスコーピオンに変えて、それを受け流す。攻撃と攻撃の合間をぬって、浩太は左手のスコーピオンを陽介に投げつけた。

少し伏せてそれをかわすが、陽介の視界から外れた時点でそれは消え去った。

 

「『幻踊』孤月!!」

「っ…!」

 

浩太はそれをしゃがみながら、右手のスコーピオンで受け流す。浩太の左手には拳銃が見える。後ろに下がられて、拳銃を撃たせてしまうと圧倒的に不利になる。更に近づこうとするが、動けない。足からトリオンが漏れ出ていた。カチャッ…という音が浩太からするが、陽介の耳には届かない。

 

「もぐら爪か…!?」

「さて、今度はどっちだ!」

 

そう言って拳銃を構え、引き金を引く。陽介がシールドを張るが、撃ちだされたのは鉛弾だった。

 

「なっ…!」

 

陽介は体を動かせなかった。地面のもぐら爪によって足が固定されているからである。左手のスコーピオンのもぐら爪ではなかったということだ。結局全弾命中。立っているのがやっとだった。

 

「くっそー、右手の枝分かれかよ!」

「そうそう。お疲れ様だな。」

 

そう言った後、足先に見えていた程度のスコーピオンが急速に伸び上がる。それは陽介のトリオン供給器官を目指すが、シールドで防がれる。

スコーピオンには伸びれば伸びるほど耐久力が脆くなるという点がある。伸び上がったブレードを防ぐのは簡単だった。しかし浩太の狙いはそれである。陽介の頭は、浩太の拳銃によって撃ち抜かれ、緊急脱出していった。

 

 

数秒後2本目が開始される。

転送されると同時に10メートルほど先の陽介にハウンドを放つ。

それはただのハウンドでない。鉛弾とハウンドの合成されていたものだった。射程も弾速も圧倒的に遅くなってしまうが、特徴があった。

 

「ウゼぇ!!」

「だろだろ〜!」

 

浩太が嬉しそうに返す。彼も大概戦闘狂に仕上がっていた。

陽介は素早く民家の屋根を飛び越え、向こう側の路地に降り立つ。

鉛弾ハウンドは振り切ったが、次は上から普通のハウンドが降り注いだ。シールドで受けつつ、後ろに下がる。前に浩太の姿が見えていたからである。

仮に鉛弾なら避けることのできる距離、アステロイドでもシールドで受けれる。そんな距離だった。

 

「こいよ!」

「…ッ!やるな!!」

 

浩太は上にハウンドを撃ちつつ、右手に拳銃を持って接近する。対する陽介は、

 

「『旋空』孤月!」

 

槍の長いリーチを、さらに長くして対抗してくる。左手のスコーピオンで対応しながら、低めに鉛弾を放つ。

全てかわされるが問題はなかった。先ほどの鉛弾は視線誘導である。浩太はマガジンを入れ替え、次の瞬間上からハウンドが降り注いできた。

 

「ぐっ…!」

 

陽介はたまらず前に出る。

そして右手の拳銃からアステロイドが打ち出された。左手には、トリオンキューブ。

アステロイドを弾き、横からのハウンドをシールドで防ぐ。

 

「うおおっ!!」

「せっ!」

 

ハウンドを防ぎきったのは良かったものの、顔に浩太の拳銃がぶつかった。しかし陽介は怯まない。前にもこの手を食ったことがあったのた。そのまま『幻踊』孤月で右肩を切り飛ばした。左手からのスコーピオンをシールドで受け止め、浩太のトリオン供給器官を貫く。

 

「くっそ…!」

 

そう言い残して浩太は緊急脱出していった。

 

3本目、4本目と浩太が取り、5本目は陽介がとった。この時点で3-2である。

 

そして6本目が開始された。

転送位置が離れている。陽介は20メートルほど先に見えていた。

マガジンを入れ替えながら、接近を開始する。ハウンドを近づいてくる陽介の後ろ足を狙って撃つ。

 

「『旋空』孤月。」

 

陽介はそれが十分に接近する前に、叩き落とした。そのガラ空きの胴体めがけて鉛弾を撃った。

 

「せっ…!!」

 

その瞬間槍を棒高跳びのように使って、屋根の上に飛び乗る。

 

「やるな!陽介!!」

 

その時、浩太からカチャッという音がする。今度は聞き逃さなかった。シールドを張りながら、屋根から飛び降り突撃する。浩太が右手の拳銃の引き金を引いた。

撃ち出されたのはアステロイドではなく、鉛弾である。

 

「あ…!?ズルっ…!!」

 

そのまま陽介は地面に叩きつけられ、背中にまた数発撃ち込まれる。針山さながらだった。

 

「おい浩太!それはズルいぞ!!」

「ふははは、秀次はこんなことしないもんな。」

 

6本目は浩太がとった。

7本目、8本目を陽介が取り返し、9本目を浩太がとる。この時点で5-4。

 

 

ラスト10本目が始まる。

最後は陽介から動き始めた。『旋空』孤月で浩太を牽制する。たまらず別の路地に曲がっていった。上からハウンドが降ってくる。それを避けるため、陽介も路地に入っていった。

 

「うおっと!」

「…ッチ。」

 

ガン待ちしていた浩太の鉛弾をかわし、『旋空』を繰り出した。狙いは首。

シールドで受け止められ、もう一度繰り出そうとしたが、少し後ろに飛ぶ。今まで陽介がいたところをもぐら爪が襲った。

 

「なんでわかった!?」

「勘!!」

「動物かよ…」

 

後ろに下がった陽介に向けて鉛弾を撃ち込む。さすがに遠すぎたのか、全てかわされる。そして陽介は再接近を始めた。

穂先をかわし、浩太も接近する。そのとき浩太の体が弾き飛ばされた。そのまま塀に押し付けられる。柄の部分で殴ったのだろうか。左手の平には曲がった穂先が刺さり、右手は陽介に掴まれている。

 

「…で、ここからどーすんの?」

「いやわかんねえ。どーしよっか。」

 

浩太は右手も左手もフリーになっていた。胸の部分からブレードを発生させる。それを避けるために飛びのこうとするが、またもやもぐら爪で足が固定されている。

 

「てめぇ…!」

「どうした?陽介。早くどいてくれないか?」

 

浩太が煽る。再び胸からブレードを出した。陽介がシールドで受け止めた瞬間、掴んでいた右手を二の腕あたりから出したブレードで切り飛ばす。

拘束から逃れた浩太の左手が、陽介の頭に向けて飛んでくる。手にはスコーピオン。もぐら爪も健在。

陽介はそれをしゃがんでかわし、右手に刺していた穂先を抜く。

浩太が左腕から下に伸ばしたブレードが肩に少し刺さる。それを無視して陽介は槍を短く持ち、左手で振るった。それを浩太はシールドで受け止め、右手の裏手打ちで陽介を弾き飛ばす。

 

「っ…!」

 

そこからは早かった。浩太の右手には拳銃が握られている。撃ち出された弾は、アステロイド。

文字通り陽介の身体に蜂の巣ができる。

そして陽介は、笑みを浮かべながら緊急脱出していった。

 

 

〇━〇━〇━〇

 

 

浩太たちがランク戦を始めた頃、ボーダー本部。会議室にて。

迅と修は上層部に事の顛末を報告書しに来ていた。

 

「…なるほど、報告ご苦労。」

「いちいち面倒を持ってくるやつだ…」

「しかし黒トリガーとは…。なぜ今までそんな重要なことを隠していたのかね。」

 

鬼怒田と根付がそう修を攻めるが、忍田はそれをフォローする。

 

「それは彼なりの考えがあってのことだろう。現に三雲くんは黒トリガーを抑えている。」

「そうだとしても我々に報告する義務があるであろう!」

「そのとおり、なにせ相手は黒トリガーですからねぇ。」

 

議論は白熱するが、報告を遅らせて正解であっただろう。盛り上がる鬼怒田と根付を抑えるように迅が発言する。

 

「まあまあ、その黒トリガーが味方になるとしたらどうです?争わずして大きな戦力を手に入れられますよ。」

 

これには鬼怒田と根付も唸るしかなかった。そこに城戸が提案する。

 

「…確かに戦力にはなる。ならばその近界民を始末して黒トリガーを回収しろ。」

 

絶句する修を置いて根付と鬼怒田はそれに同調する。

 

「ふむ、それなら問題はありませんねぇ。」

「今はすこし間が悪いが、残った正隊員を使えばやらんことはなかろう。」

「いや、部隊を動かす必要はない。黒トリガーには黒トリガーをぶつければいいだろう。」

 

城戸はそのまま続ける。

 

「迅、お前に黒トリガーの捕獲を命じる。」

「それはできないです。」

 

迅の返答に周りは呆気にとられた。迅の言い分はこうだった。

 

「おれは玉狛支部の人間です。おれを使いたいなら林藤支部長を通してください。」

 

ボーダーの指揮系統は命令の重複を避けるため、直属の上官のみが部下に命令できるようになっているのだ。それを迅は盾にとった形である。

 

「…林藤支部長、命令したまえ。」

「やれやれ…。支部長命令だ、迅。黒トリガーを捕まえてこい。ただし、やり方はお前に任せる。」

「了解、支部長。」

 

周りがどよめく。迅はこれが狙いだったのだ。これで始末する必要もなくなる。

 

「さて、行くか。メガネくん。」

「…はい!」

 

そう言って会議室から出ようとした二人に唐沢が声をかける。

 

「三雲くん、その近界民がこっちにきた目的は聞いてないか?」

「目的…そういえば『ボーダーにいる父親の知り合いに会いに来た』って…」

 

そう言った三雲に忍田がこう問いかけた。

 

「それは誰のことだ?」

「いえ、そこまでは…」

「ふむ、その父親の名前は?もしくはきみの友人の名前でもいい。」

「父親の名前は聞いていませんが…本人の名前は『空閑 遊真』です。」

 

一番はじめに反応を示したのは林藤だった。口にくわえていたタバコを落とすほど驚いていた。それに忍田、城戸も続く。

 

「空閑…有吾か?」

「…有吾さんの息子ならもうこれ以上部隊を繰り出す必要はないだろう。」

「まだ空閑の息子かわからないだろう。」

「それはあとで調べればわかることだ。」

 

忍田が城戸にそう言った後、修と迅の方を向いてこう告げた。

 

「つなぎをよろしく頼むぞ。」

「…はい!」

「そのつもりですよ、忍田さん。」

「では解散する。進展があれば報告するように。」

 

城戸の口から解散が告げられ、修と迅、それに林藤と忍田も退室していった。

 

 

〇━〇━〇━〇

 

 

「くっそー!負けた負けた!!」

「でも6-4だしな。ギリギリだった。」

 

ペラペラと話しながらブースから出る。

 

「やっぱオレもスコーピオンつけとくべきだったかな〜。」

「そうだな、スコーピオンがあったら最後俺負けてたぜ。」

 

プチ反省会を開きながら、浩太と陽介はソファに座り込む。いいライバルだった。

 

「秀次、キレてたか?」

「黙々と報告書書いてたけど、今は会ってもあしらわれると思うぜ。」

「だよな…」

 

そうこう話をしていると、ランク戦を終えた双葉がブースから出てきた。それを見かけた浩太が声をかける。

 

「やっぱ強えな、双葉。」

「い、いえ。そんなことないですよ。」

 

そんな浩太と双葉をみて、陽介がこう提案した。

 

「おまえら、ランク戦やってこいよ。」

「それいいな。行こうぜ双葉。」

「え、あ、はい!よろしくお願いします!」

 

心なしか双葉は嬉しそうだった。

 

 

〇━〇━〇━〇

 

 

双葉とのランク戦を終えた後、浩太は陽介、奈良坂とお好み焼き屋にいた。この店はB級2位の影浦隊隊長、影浦 雅人の父がやっている店である。

 

「カゲさん、豚玉1つと豚キムチ玉2つー!」

「わーったから叫ぶな!うるせえ!」

 

浩太がそう叫ぶと影浦は少し鬱陶しそうにいなした。そのとき店の扉が開く。それにいち早く気づいた陽介が声をかけた。

 

「荒船さんに、鋼さんじゃないすか。」

「おう、米屋。それに立木と、奈良坂!?」

 

荒船が奈良坂の姿を確認して大袈裟に驚いてみせる。

 

「…そんなに俺がいるのが意外ですか?荒船さん。」

 

怪訝そうな顔をしている奈良坂をよそに浩太はお好み焼きを焼き出す。

 

「てかお前ら、今日のやつは城戸司令の特命なの?」

「おう、一応そういう風にはなってるぜ。」

「…それ言っちゃダメじゃないのか?陽介」

「どーせ知ってんだからいいだろー。」

 

少し拗ね気味に陽介が答えた。浩太が続ける。

 

「で、これからどうすんの?」

「なんともえ…」

「陽介。」

「おっと、じゃあこれ以上は言えねーな。」

「くっそ、惜しかったのに。」

 

そう軽口を叩きながら、お好み焼きを口にする。多分奈良坂が来たのは口止めの意味もあるだろう。さすが奈良坂といったところか…

 

「やっぱうまいな…」

 

奈良坂がボソッと呟く。もしかしたらお好み焼きの気分だったのかもしれない…

その後大した情報も聞き出せず、浩太が玉狛支部に帰ったのは夜19時ごろだった。

 

 

〇━〇━〇━〇

 

 

「ただいまー。」

「おかえり。ちょっと来てくれ、浩太。」

 

玉狛に帰った浩太を迎えたのは迅だった。こっちに来いと言うようにちょいちょいと手招きしている。

 

「支部長室の片付けを手伝って欲しいんだよ。」

「いいけど、なんで?」

「前言ってた新人がくるからな。」

 

迅の言う新人というのは修たち三人のことだろう。しかし片付けに駆り出されるとは…

 

「林藤さんこれはちらけすぎでしょう?」

「わかったからちょ、雰囲気とか大事だからさ?手伝ってくれ。」

 

そう言った林藤は机の引き出しを何やら探っている。浩太はとりあえず散らばる書類をまとめ出した。

 

「こーゆーのは宇佐美に頼むんじゃないの?」

「いまあいつも忙しいんだよ。」

「あったー!あったぞ、転属書類!」

 

林藤が喜んでいるが、迅はもっと綺麗なのにしましょうよ、などと言っている。

すこし肩を落としながら、林藤は書類をコピーするために部屋を出ていった。手を休めずに浩太は迅に問いかける。

 

「遊真が来るから、お前は『風刃』を渡すってか?」

「ああ、そういうこと。遊真のを渡すくらいなら俺が渡した方がいいからな。ただ…」

「ただ?」

「多分遠征に出てる3部隊と三輪隊が奪いにくるのが濃厚なんだよな…」

 

合計4部隊合同。城戸は随分力を入れているように見える。林藤が部屋に帰ってきたが、あまり気にとめることなく続ける。

 

「え?お前一人で止めんの?」

「いや、それは無理だ。だから気が向いたらでいい。お前にも手伝って欲しいと思ってな。」

「遊真一人のために?」

「ああ、あいつはなかなかきつい経験をしてからここにきてる。だから、少しでも楽しませてやりたいんだ。」

 

迅や浩太もそれなりに厳しい過去を持っている。迅だって副作用が発現したとき、とても悩んだはずなのだ。それは浩太が一番分かっていた。その迅に空閑 遊真という少年は、ここまで言わせるのである。

 

「…ああ、考えておくよ。」

「そう言ってくれると思ったよ。」

 

浩太の顔はあまり浮かなかった。

浩太には城戸に預けてある黒トリガーがあるのである。もしそれを持って本部所属のS級になれば、ボーダー内のバランスは保たれることになる。

 

「あ、そうだ。別におまえがあのトリガーに触る必要はないし、玉狛を抜けなくてもいいよ。」

「そういう未来が見えたってか?」

「ああ。おれはもうおまえに辛い思いをさせたくない。」

 

すこし俯き加減で迅は浩太に言った。

ならば迅は辛い思いをしていいということなのか。あの『風刃』は迅の師匠、最上 宗一の形見なのである。きっと迅に聞いたら別に辛くない、もう決めたことなんだ、などと答えるのだろう。いつもの真っ直ぐな目で。

 

「よし!大体片付いたな。」

「じゃあ、俺部屋に戻ります。」

「おう、手伝ってくれてありがとう。」

 

そう言って浩太は支部長室をでて、自室へ向かう。ベットに倒れこむが、睡魔が襲ってくる様子はない。今頃あの三人は入隊書類を書き込んでいるだろう。

 

夜はまだまだ長くなりそうだった。

 

 

 

 




飽きっぽい私に小説を投稿するのは無理だったということです。
そのうちオリジナルでも書きますのでまたその時に。
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