贅沢は言わない せめて普通の生活を    作:暁魔

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9弾

『毒』はそんな短い言葉で表すには勿体ない位に奥が深い

 

厳しい自然界の食物連鎖を生き抜くため

 

その時々の時代の需要に合わせるため

 

用法、容量を間違えたがため

 

『毒』は環境、時間、状況に合わせ常に進化し形を変え日常に潜んでいると思うと興味が湧き、それは次第に生き甲斐になった。

勿論『理解者』などいなかった。

 

それどころか『異端者』を見るようにあからさまに距離をとられる。

 

そんなときに『異端者』の集まりだと名乗る『イ・ウー』から勧誘があり『理解者』がいると信じ藁にもすがる思いで参加を表明したが、どんなに仲が良くなろうとも『毒』を怖れて一定の隙間が空く。

 

なら『毒』を扱う一族なら話が通じるかもしれないと思いその一族の『毒』を奪う振りをして『毒』を使うが恐れられるだけでなにも変わらなかった。

 

そして今回は『毒』とその継承者ごと奪う計画をたてるがその計画は大きなずれが生じた。

 

雄斗の存在だ

 

最初は理子から押し付けられる形で処理を任されるがある出来事のせいで私は『毒』によって初めて生死をさまよいなんとか一命をとりとめたが新人の武偵にも簡単に捕まえられる位に無防備な状態になった。

 

にもかかわらず雄斗は捕まえる所か何事もなかったかのようにそこにいた。

こうして私は久しぶりに人の温もりを手に入れた

 

 

 

 

 

 

と思っていた。

一通の手紙が届くまでは。

 

 

『弟子は二人も要らないだろ。古い方を寄越せ』

 

流暢なルーマニア語で書かれた文字は死刑宣告にも思えた。

 

 

「来たわね…」

β1に仕込んでいた発信器に反応した携帯の振動で頭は仕事用に切り替わり、閃光弾を打ち上げ車道の真ん中へとおどりでる。

先頭を走っていたトラックは無理に姿勢を横向きに変え止まろうとしたせいでタイヤからは喧ましい摩擦音が鳴り、数秒後には車体の半分が地面から離れ横転し、荷物を撒き散らしながら道を塞ぐ形で動きを止めた。

 

『おい!大丈夫か?』

 

「大丈夫だ!それよりも毒ガスが漏れ始めてる逃げろ!」

理子から教わった変声術で男の声でそう叫ぶのと同時に色付きのスモークグレネードのピンを抜き紫色の煙が広がっていき野次馬の声はどんどん遠ざかっていき、煙が風に飛ばされた頃にはレインボーブリッジには人影がいっさい見当たらなくなり長い髪を潮風が静かに揺らす。

 

「お疲れ様」

フロントガラスは横転した反動でひび割れたり、雄斗の額からながれる血で所々汚れてはいるが中が見えないわけではなく、ワイヤーを両脇に潜らせ即席の滑車を使い引っ張り出しそのまま膝の上にのせ額の血を拭う。

 

「…おい…俺は夢でも見てるのか?」

 

 

 

「えぇ、そうよ。これまでのことは全部夢よ」

気恥ずかしさからか膝枕から逃れようとする雄斗をもう一度膝に戻し、都会の星空を見上げながらポケットに入れておいた褐色の小瓶を取り出し液漏れ防止のための特殊な蓋を開け中身を口に含む。

 

「これまでってどう…「始まりも終わりもキスってロマンチックでしょ」…………今何飲ましたんだよ」

キスもとい口移しと同時にあらかじめ握っておいた対能力者用の金属を加工した指輪を『明るく照らされた道歩ける』ようにと願いをこめ右手の中指へと差し込む。

ただ顔を反らされたので頬を両手で抑え逃げ道をなくしたあと抵抗された腹いせに予定よりも唇が触れ合う時間を伸ばした。

 

「私の最高傑作の[漂白剤]よ」

漂白剤ができたのはつい最近で遠山の家系に伝わる『猾経』を元に作られ、考え方としては直前に話したことに関する情報に錠をかけそのまま記憶の奥底へと沈めていきゆっくり消されていく。

 

「そりゃどうも、大切に保管しとく…嘘だろ…」

 

「忘れるでしょうけどこれだけは伝えておくわ。この一週間それなりに楽しめたわ」

文字化の効力が無くなり額から流れる血に驚きを隠せない様子の雄斗に構うことなく言いたいことだけ言い終えると睡眠薬が塗ってある爪で首筋に赤い線を刻み、呼吸が一定になったことを確認したあと膝からそっと下ろす。

 

「感傷に浸ってる暇は無さそうね…」

散らばった荷物の中から目的のトランクを探しだし持ち手が上になるよう置き直し、その上に腰掛け煙管に灯をともし肺に煙を充満させるがいつもとは違いほんの少し苦く感じた。

今まで過ごしていた街の夜景を眺めていると音をできるだけたてないように近づいてくる人物とその音を書き消すかのようなわざと大きな音が出るようにした計二人分の足音が耳に入る。

 

「……夾竹桃!」

陽動はメインターゲットである間宮あかりの方でもう一人は足元にある階段の前で止まり溢れだす殺気から臨戦態勢なのがわかる。

 

「お礼を頂戴。下僕にわざわざこんな所に、決戦の舞台を作らせたんだから」

煙管からでる煙は薄くなりこれ以上くわえていてもしかたがなく、煙草盆の灰吹きのふちを軽く叩き灰を落としたあと専用のケースに戻す。

 

「ふざけないで!ここはあたしの思い出の場所なの。犯罪者にいてほしくない!」

 

「あなたごときに私は消毒できないわよ?」

あかりの怒りを微笑と手の爪に塗ってある毒を見せつけるようにたて軽く威圧で返し、それを見たあかりは半歩後ろに摺り足で下がる。

 

「でも、そこに伸びてる元下僕ぐらいなら仲間に頼めば消毒できるんじゃないかしら」

 

「仲間じゃ…無かったの…」

仲間を易々と売る行為が気に入らないらしく睨むがどうみても子猫が必死に自分を大きく見せようとしてるようにしか見えない。

 

「えぇ、なかなか優秀な下僕だったわ…でも飽きたのよ」

 

「飽きた…そんな理由で仲間を!」

 

「神崎・H・アリア聞いてるんでしょ。もしも下僕から『イ・ウー』に関する情報を聞き出そうとしても無駄よ。『イ・ウー』に関する記憶は全て消したわ」

ここまで言えばアリアは雄斗をあまり強く尋問することはできないだろうが

 

「それ以前にこの下僕は誘拐したごく普通の一般人よ」

念をいれ雄斗を『イ・ウー』の被害者にしたてアリアに保護を促せる。

 

「あなたは絶対あたしが倒す!」

 

「その意気よあかり。はやくあなたの毒を見せて頂戴」

座っていたトランクの留め金を外すとトランクは勢い良く二つに割れ、中からは二つに折り畳まれた鉄の塊が姿を表し、数秒のうちに鉄塊は徹底的に改造されたミニガンへと変貌し。複数の銃口があかりを捉えた。

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