新生活を始めたばかりなせいか馴れないベットは異様に寝苦しく快眠とはならなかったらしく瞼は重く閉じそうになるが何気なくみた腕時計の短針は11時を回り、鉛のように重かった瞼は嘘みたいに軽くなった。
「始業しキグア!?」
覚醒仕切った体を跳ね起こそうとするが完全に起ききる前に額にピンセットの先端が深々と刺さりガーゼに貯まっていたアルコールが傷口に染み渡る。
「いきなり暴れないで下さいまし!!」
周りを見渡すとそこには無数の穴が開いた車にその間を慌ただしく動きまわる警察関係者。
そして目の前には何故か傷だらけの俺を応急処置をする可愛らしい年下ぽい少女。
「……まだ夜か…」
「現実逃避して寝ないで下さいまし!」
目が覚めた瞬間に自分の知らないところにいればこうなるだろうし、こんなのに巻き込まれるのは自分みたいな凡人ではなく一部の秀才のためのイベントだ。
「間宮様あとは任せましたわ」
「ええ!?ちょっと麒麟ちゃん!?」
麒麟と呼ばれる少女は応急を急いで片付けると逃げるように間宮と呼ばれる少女に全てを託し去っていった。
「えっと、初めまして?かな?」
「あぁ、そうだな俺は…「望月 雄斗くんであってるよね、あたし間宮あかり。あかりって呼んで」
「なら俺も雄斗でいい」
名前が知られていたのには一瞬驚いたが事件関係者としての名簿からの情報だろうし、あかりと呼ぶならこっちも雄斗読んでくれた方が気兼ねなく話せる。
「悪い、ここがどこで何があったか教えてくれ」
「ここはレインボーブリッジだよ。でもここでの出来事は教えれない…ゴメン雄斗」
場所だけを教えそれ以上のことは教えてくれない。
「突然だけど夾竹桃って知ってる?」
「夾竹桃ってあの有害な植物のか?」
どこで学んだかははっきりと覚えてはいないが毒薬になる植物とだけは覚えていたがそれだけでなく何か引っ掛かるものがある。
「本当に消えてるのかな…」
あかりが考え込むようにボソッと呟いたのが聞こえ、望んでいた解答では無かったことだけがわかった。
「違ってたか?」
「あ、あってるよ!…たぶん」
これ以上聞いても濁されるだけだと思い、深くこのことを聞くのはやめた。
アオーン
「こんな所で遠吠えか、近くにでも野良犬がい…大丈夫かあかり」
話しかけようとあかりの方を向くと段々顔が青くなり小刻みに震えていた。
『脱走だ!!』
その叫び声とともに辺りが物々しい雰囲気につつまれる。
「なんだよ次から次へと!」
「…手遅れだったようね」
声のした方向に顔を向けると
「お、お前は…」
車の影から黒い長い髪の少女が現れた
下着に手提げ鞄という異色な姿で。
「俗に言う露出キョフグ…」
下着姿で歩く少女はその回答が不満だったらしく無言で足の小指を踏んできた。
「女性をいきなり変態扱いすることに恥を知りなさい」
「お前はまずその格好を恥じろ!」
なんて言葉は少女の圧によって心の中に封じ込められた。
「ここからは重要な話よ、一回しか言わないからよく聞きなさい」
いきなりのことで何をどう反応していいか分からないまま呆然としているなか青ざめていたあかりが我に返り銃を下着の少女へと向けた。
「なんでここにいるの!」
「人の話は最後まで聞きなさい。今からここに『奴』が来るわ。『奴』は今ここにいる戦力だけでは絶対に勝てない、だから今すぐここを離れなさい」
「そんなのやって見なきゃ…「無茶とと無謀は違うわよ。勿論ただで引けとは言わないわ、これで手を引きなさい」
そう言って手提げから取り出した羊皮紙の本の一ページに何かを記すとそのページを破り捨てると少女は風景に溶けるように消え、破り取られた羊皮紙は風に運ばれあかりの掌にたどり着く。
「…いくよ雄斗」
苦虫を噛み潰したように顔を悔しそうに歪めあかりは遠吠えが聞こえた逆の方に走り出し、後ろ姿を追うように追走が距離は縮まるどころか次第に離れていきある程度離れた所で立ち止まったあかりに問いただす。
「あいつ何者だ」
怪しく、危ない、香りを放つ。
記憶か抜け落ちた
「教えれない…」
「なら俺が教えてやるよ」
地の底から響くような悪寒を感じる不気味な声が後ろから車をかき分ける音は段々と大きくなっていき。
絶対捕まってはならないと本能が鳴らす警鐘のリズムも早くなる。
「オイオイ、人の親切は無碍にするなよっと」
必死で逃げていることをあざ笑うかのように大きく跳躍して前に回り込んできた狼のような化け物が頭から血を流して気を失っている少女を鷲掴みにしたまま道を塞いだ。
「突然変異と血統持ち。今回は豊作だなァ」
「先に行ってろ…待ってるやつがいるんだろ」
「でも…「早く行け!」
身代わりなんてらしくないことをしているが後悔はない。
「お前1人で俺を止めれると思うのか」
「あぁ、思ってるよ」
「なら、やってみろよ」
化け物はゲラゲラ笑いながら、じりじり距離を詰めてきた。
「それ以上動くな!さもなくば…
俺の命がどうなっても知らないぞ!」
そう全力で叫びながらクラウチングスタートの体制をとる。
「は?」
「今動いたな!本当に俺の命は保証しないぞ!」
「お、おい!ちょっ…「うぉぉぉぉお」
化け物が呆然としているうちに全速力で走り柵を乗り越え橋から身を投げ出した。
『チッ、種馬如きが手間かけさせやがって』
地鳴りを響かせながらあとを追いかけ化け物も橋から身を投げ出すが下を見下ろしあることに気が付く。
「どこにいったぁぁぁぁあ!」
そこには先に飛び降りたはずの獲物はいなかった。
「…ここだよ」
段々小さくなっていく化け物を壊れた柵に制服が引っかかり無様にぶら下がった状態で見下ろしながらそうつぶやく。
防弾制服の強度は折り紙つきで成人が一人ぐらいの体重は支えられるはずだが、いつまでもぶら下がってるのは精神衛生上良くないため制服の袖口を引っかけ紐代わりにして橋に戻り。
そして足りなくなった
『これを見ている頃私は雄斗、あなたと話せる状態じゃないと思うわ。だからここに記した注意書きを守りなさい。
1.ここで見たもの聞いたことは全て忘れなさい
2.頭痛がしたらすぐに考えることをやめなさい
3.上記を全て読み終わったらこの本を燃やしなさい』
裏表紙には命令形で関わるなの一点張りの書き置きが残してあり、それ以降はページ同士が糊付けされ無理に剥がせば破れて読めなくなるように細工されていたが諦めきれず爪で隙間を探す。
しばらく本と格闘していると指先が黒ずんでにるのに気づくがインクが滲んだものだと放置しているとやがて黒ずみは文字へと形を変え身体を生き物のように腕を這いずりだした。
「離れろ!」
文字は腕を縦横無尽に這い回るだけで危害が加わることはないらしいが、得体の知れない物が腕に引っ付いているのは気持ちが悪く振りほどこうと手を振り回すがとれる気配がなく。代わりにいつの間にか指に収まっていた銀の指輪とれ放物線を描き瓦礫のなかに消えていた。
「見つけたぞ夾竹桃の犬。にしても最後まで主人の近くにいるとは見上げた忠誠心だなァ!ゲハッ、ゲババババッ!」
「もう一度言ってくれ」
一瞬ではあったが化け物が発したいずれかの単語に反応し頭が締め付けられるように痛くなり、もう少しで何かを掴めそうだ。
「あぁ?気でも狂ったかァ?」
「何でもいい!」
「《夾竹桃》の犬風情が指図するな」
《夾竹桃》に関することを思い出そうとすればするほど頭痛は更に酷くなるのと同時に抜け落ちていた記憶のピースがゆっくりと繋がって行く。
ただ所々抜け落ちている部分があり鮮明に思い出すにはまだ《鍵》が足りない。
それも学園生活に復帰してしまえば一生お目にかかることのない機密染みたものだと戻ってきた記憶から推測する。
「…………」
「抵抗しないのは利口だなァ」
なんとでも言えばいい、いずれ捕まえてやる。今回はあくまでも内部からの偵さ…
「変な気は起こすなよ。もしも逆らったら…こうだ」
近くにあった軽自動車を持ち上げるとものの数秒で近代科学の結晶はスクラップへと変貌した。
どうやら俺はとんでもない選択をしてしまったらしい。