1弾
「あら、随分と早いのね」
待ち合わせのカフェ『ヴィルドシュート』に予定よりも早く来たあかりを確認すると、飲んでいた珈琲を机に一旦置き今座っているテーブル席の反対側に座るよう促す。
「あなたが呼んだんでしょ夾竹桃」
「夾竹桃の名は捨てたわ。今は鈴木桃子よ」
『イ・ウー』から退学させられ、夾竹桃としての生活は既に終わっている。
「そこに隠れている忍と剣士さんも一緒にどうかしら」
「志乃ちゃん、陽菜ちゃん何でここに!?」
あかりは物陰から知り合いが出てきたことに驚く。
「あかり殿、申し訳ないが付けさせて貰ってたでござる」
「あかりさん、次からは1人で危険なことをしないで下さいね」
席についた三人に好きなものを頼んで良いと告げると、風魔が真っ先にパンケーキを2つ注文した。
「(あの子忍びよね…)」
普通の忍なら警戒してなにも食べないと思っていただけあり少し驚いた。
「それじゃあ簡単に要件を話すわ。これはあなた達にしか任せられない仕事よ」
全体が落ち着いたのを見計らい話を切り出す。
「内容は私の弟子『望月 雄斗』の捜索と逮捕よ。この依頼は『イ・ウー』を知ってるあなた達にしか頼めないの」
「雄斗殿なら拙者最近顔を合わせたでござるよ」
「私もこの前」
「わたしも」
「………………」
あまりの遭遇率に言葉を失う。
「まずは拙者から話させて貰うでござる。あれは連休の初日でござった」
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「腹が減ったでござる…」
前まで勤めていたバイトが首になり貯金も底をつきた今、近くの竹林にタケノコだけが唯一の頼みだ。
ザゴザゴザゴ
しばらく竹林を徘徊しているとスコップで土を掘る音が聞こえ音のした方に歩き出す。
「おまえは…夾竹桃の…」
「ん、どこかで会ったこ……ストップ!ストップ!まずはクナイをしまえ!」
「問答無… クゥウ …問答無用!!」
台詞を言い終わる前に女子としては聞かれたくない音を聞かれ、恥ずかしさを隠すため2度目は少し強めの口調で叫んだ。
「…このタケノコ食べながら話さないか?」
「だ、誰が敵の施… クゥウ ……………」
「…………………」
いっそ笑い飛ばしてくれれば楽だったのに夾竹桃の弟子は微笑むだけで何も言わず黙々と調理の準備をし、数十分後には感じに茹で上がったタケノコが手渡された。
「……風魔陽菜でござる」
「望月 雄斗。雄斗でいい」
「何故こんな所に」
「多分お前と同じだ。飯に困った…」
一瞬同族として親近感が沸きそうになったが首を降り情報を引き出そうとするがタケノコ1本では腹を満たすには至らず再びお腹からクゥウ…という音が鳴り2本目のタケノコが手渡される。
「俺は『イ・ウー』から逃げてるんだ」
「なら《怨霊》の正体はうぬではないござるか?」
「あぁ、たぶん『イ・ウー』にいた頃に作った武器が悪用されてるんだと思う」
「不憫でござるな…」
「しばらく一緒にタケノコ探さないか?」
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「それからしばらくは一緒にタケノコを探していたのでござるが……別れを告げるときに意識が遠のき。目が覚めると近隣の公園のベンチに寝かされていたでござる」
「(籠絡されてる)」
今の話を聞いていると忍うんぬんの前に人としての将来が心配だ。
「陽菜ちゃん。家に来たら何か食べるもの用意するからいつでも来てね」
「かたじけないでござる」
「その手がありましたか…あかりさん実は…
「(風魔×間宮、この設定もありね)」
このとき少し鼻の辺りが温かくなったのは、きっと最初に飲んでいた珈琲のカフェインのせいだ。
「えーと次は私ですね。確か雄斗さんと会ったのは連休二日目で不法投棄の現場を押さえようとしたときでした」
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「今日こそお姉様の山にゴミ捨てる無礼者を取り押さえます」
戦姉妹の師である白雪が別件でいないため直接成果を見せれるわけではないがいい結果を報告できるようにと昨日の失敗を踏まえ早朝から張り込みを開始する。
「来ました……」
予想通り業者の軽トラックは張り込みを初めて30分位時が流れた頃、荷台に山ができるほどのものを積み整備されてない悪路にガタガタ揺られながらやって来た。
『そこのトラック!今すぐ止まれ!』
『チッ、武偵様が俺たちに何の用だよ』
数十m前の茂みが揺れそこから武偵校の制服を着た男がトラックを止め、渋々運転していた柄の悪そうな男がトラックから降りてきた。
「(誰は知りませんが私の苦労を横から…許しません…)」
自然と刀に手が延び峰打ちでの居合い切りの体制に入る。
『不法投棄は悪いことなのは知ってるよな』
『なら、俺を取り締まるか』
「(好都合です。二人まとめて片付けます)」
佐々木家は代々居合い切りを得意としており、距離は少し離れているが別のことに気をとられている二人の意識を刈り取ることなど朝飯前だ。
『今積んでる荷物は俺が引き取る!』
『「…………は?」』
謎の武偵にの発言に場の空気が氷る。
「俺を取り締まるんじゃないのか」
「取り締まり?ないない。だいたい不法投棄なんてバレなきゃ犯罪…「お、お前。うしろ」…あ…」
「不届きものには天誅!!」
最初に打ち込もうとした居合い切りよりも力が入ったのは仕方のないことだ。
「普通無警戒の味方を切るか!?」
「犯罪を見逃す武偵を味方とは呼びません。学校に報告をしなかっただけでも感謝しなさい」
デモンストレーションがあったせいか不法投棄の業者は素直に捨てたものの適切な処理をする誓約書に署名をし、無事に仕事を終えることができたが新たな苦労が増えたことに頭痛を覚える。
「それで、粗大ゴミなんて貰って何するんですか」
「粗大ゴミ言うな!あれは歴史ある喫茶店の焙煎機……ってその目は絶対にバカにしてるだろ!!」
どうやら一向に冷たくなる目線に気がついたらしい。
「絶対にバカにしたことを後悔させて……」
「本来ここは星伽の山です。あまり踏み入れないで下さい」
横から聞こえる声を流しながら簡素に警告を促す。
「はいはい、そう言えば自己紹介してないな望月 雄斗だ」
「佐々木 志乃です」
礼儀として名乗り返すが名前を聞いた瞬間、望月が何か考え事を始めた。
「実は間宮のことで話したい事がある、耳を貸してくれ」
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「丁度その辺りで気を失ってしまったみたいで、気がついた時には星伽の神社に運び込まれていました」
「しかしでござる、今の話を聞いた限りでは下の名前で呼び会うほどの仲ではないようにお見受けいたすが」
「確かに珍しいよね志乃ちゃんが名前で男の人の名前呼ぶの」
風魔やあかりが言う通り佐々木は進んで人と仲を深めていくタイプではなくどちらかと言うと、友達の友達を時間をかけて仲を深めていくタイプと記憶している。
「これには続きがあるんです」
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「お嬢様、望月 雄斗と言う人物が知り合いと名乗って面会を希望されていますが」
「帰って下さるように伝えて下さい……どうかしましたか」
「いえ、何でもありま……「遊びに着たぞ」
メイドが目を反らすように部屋をあとにしようとし扉に手をかけようとするが扉はひとりでに開き話の当事者が荷物を抱え現れた。
「申し訳ありません。しっかりと柱に縄でしっかりと固定しておいたはずなのです……「あとは私が処理しておきます」
「そんな所で刀なんて抜こうとしないでこっち来て座れよ」
「なんであなたが堂々とくつろいでるんですか!」
不法侵入でもここまで図々しいと怒る気力さえ無くなってくる。
「豆を惹いて…ドリップペーパーの上に均等にして、後は折り紙でポットを作って」
「言いたいことは沢山ありますけど、一つだけ言わせて下さい。あなたは何をする気ですか」
「見てわかるだろ」
「………」
最初の方は本格的でいかにも喫茶店らしかったが、手のひらサイズ折り紙製のポットを取り出してからはどうみても子供のごっこ遊びにしか見えない。
「言っとくが遊んでるんじゃ無いぞ!見せるための芸だからな」
種も仕掛けも無いと言わんばかりに折り紙のポットを手渡され、一通り見たことを確認するとポットを回収しドリップペーパーの上で傾け。
最初はどや顔でお湯を注いでいたが時間がたつにつれ顔色は悪くなり注ぎ終えるやいなや
「熱ゥゥゥゥィイ!」
そんな雄叫びをあげながらポットを投げ渡してきた。
「…………熱くない……何で……」
「お湯は超能力でだしてたからな……それは飾りだ……ほらできたぞ」
「じゃあ…頂きます」
目の前でお湯で火傷した指を必死に冷まそうとしている姿を見てしまうと飲まないわけにはいかなかった。
「おいしい。これなら喫茶店で出されても文句はないです。ただ不法侵入と変な芸はやめておいた方がいいですよ」
「善処します」
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「このあとしばらくお互いの事を話してましたが日常会話ていどなので割愛させてもらいます」
「それにしても雄斗殿は器用でござるな」
「……さらっと流してるけど武偵として犯罪者の名前を忘れるのはどうかと思うわよ」
「…………反省してます」
元犯罪者の言葉出はないため余り大きな声で言わなかったが
しっかりと聞こえたらしく佐々木は肩を落とす。
「じゃあ、わたしが最後だね」
3人目撃者のうち2人の話が終わったが得られた情報はろくな食事をとっていないことと、珈琲に熱を入れていることぐらいの直接関係はない情報で最後の頼みのあかりが語り始めた。
「今朝のことなんだけどみんなと違って直接話してないんだけど女子寮でみた……鈴木さん落ち着いて!」
「……私は至って冷静よ」
陶器が小刻みにカチカチと音をたてること以外変わらない店内で珈琲を一口すする。
「……私達よく勝てましたわね……」
「…そうでござるな…」
「…わたし本当に勝てたんだよね…」
「…………続きは」
「ひゃい、雄斗を見かけたのは今日の朝練の帰りでした」
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「アリア先輩のメニューもだいぶ慣れてきたかな」
アリア先輩の戦姉妹になってから毎朝。最初は寝ぼけ眼を擦り、終盤には息を切らしていた長距離も初めてから三週間が過ぎ、体はだいぶ慣れ初めてきた。
『…から、機密……ら言…ない』
『な…、時間を開け……こ……ださい』
「この声って雄斗と寮長?」
ふと耳に止まったのは雄斗と武偵女子寮の寮長の争う声で、どうしても気になってしまい鍛練を中断して話し声がはっきりと聞こえる位置の物陰に身を隠す。
「……平賀 文先輩に用がある」
「確認しますのでしばらくお待ちください」
「……すいません」
寮長が確認のため職務室に歩き出した瞬間。雄斗はいつの間にか取り出した紐のようなもので首を意識を奪う程度で締め付け、文字が生き物のように紐を伝い首筋まで這っていくのが見えた。
「!?……追わなきゃ」
明らかにただ事ではない事態にあわてて女子寮に入って行った雄斗を追いかけ。起動しているエレベーターが5階に止まるのを確認して階段を音をたてないように慎重に歩く。
「(あれ、こんなにも階段って…辛かった………け…)」
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「結局そのまま階段で寝ちゃいまし…ヒィ」
この時少し目に力が籠ってしまったのは大人げなかったと反省している。
「今朝、女子寮を訪れたならまだ近くにいるはずでござるな」
「そうね」
「じゃあ早速捜査開始ですね」
近くにいるとは言っても所詮は大雑把の位置でしかなく、見つけれる確率は極端に低いが0ではない。
『ねぇねぇ、こんな噂知ってる?』
『どうせまたデマなんでしょ、涙子』
『今度のは信憑背が高い情報なの。題して[武偵男子寮にある喫茶店]』
『…………』
『しかもこの今年のゴールデンウィーク中にいきな…その目は絶対信じてない目だ!』
「潜伏する気あるのかしら…」
一度弟子には潜伏という単語を勉強させた方が良いらしい。