贅沢は言わない せめて普通の生活を    作:暁魔

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4弾

[武偵男子寮にある喫茶店]この噂の発端になった原因はあかり達の証言をから雄斗だとし確信を抱き、さっそく噂の男子寮を下の階から順番に探索を始めた。

捜索中に時々吹く風には火薬の臭いに混じり珈琲の香りがほのかに漂い噂は現実味を帯び、珈琲の匂いは次第にはっきりと香るようになり、着実に雄斗を追い詰めていると思っていたが

 

パァン

 

複数のスプレー缶が同時に破裂する音から一変した。

破裂音から数秒も立たないうちに誰かが争うような物音がすぐ上の階から響いたからだ。

夾竹桃は一緒に捜索していたあかり達を置き去りに音のした部屋へと走りだす。

 

「一足遅かったわね」

目的の場所に辿り着く鍵が壊された扉が半開きで放置され、室内にはまだ温もりが残っている焙煎機とコーヒーセットと至るものが不気味な文字でコーティングされ。雄斗がついさっきまで滞在していたところを誰かに襲われたのが推測される。

 

 

「ちょっと!誰かそこにいるの!」

声のしたベランダを覗いてみると転落防止用の柵にアリアが刺青を入れたかのような両足をだらんと力が抜けた状態で干されていた。

 

「無様ねアリア。格下の相手に逃げられるなんて」

 

「あ、あれはまぐれよ!次あったらちゃんと捕まえて見せるんだから」

 

「まぐれなんかじゃないわ。この結果は貴方の慢心のせいよ」

 

「うるさい!うるさい!!うるさぁぁぁい!!風穴開けるわよ」

アリアはかろうじて動く上半身を大きく派手に動かし幼児が駄々をこねるように抗議し、太股のホルダーからガバメントを抜き、引き金を引くが不発に終わる。

 

「すぐ武力に頼るのは子供のすることよ。負け犬」

 

超人的な平衡感覚のお陰で保たれていたバランスも暴れた反動で重心が後ろにずれ、ズンと音を立て背中から落ちたアリアはそのまま悔しそうに見上げてくる。

 

「取引をしましょ」

 

「誰があんたなんかと…「今からあかりがこの部屋に来るわ」…なにが条件よ」

 

「この一件を私に全て譲りなさい」

 

「な…!?…なに言ってるのよ!」

予想だにしていなかった要求にアリアは口をポカンと開けるがすぐに調子を取り戻し犬歯を剥く。

その姿はまるで近づいただけで噛みつく猛獣のようだ。

 

『あかり殿こちらでござる!』

 

『ありがとう陽菜ちゃん!』

 

「このまま戦妹に無様な姿をみられたい?」

 

「うぅぅぅぅ!…本当あなた、いい性格してるわね!!」

 

「誉め言葉として受け取っておくわ」

皮肉が込められた言葉をさらっと流し、ポケットから見慣れた文字が描かれた羊皮紙を無造作に投げ渡す。

 

「解毒剤よ」

そう短く告げ、ベランダの遮光カーテンを閉める。

ここであかりに見つかってしまえばなし崩しにアリアは捜索に加わる。

それだけはこれからの司法取引を有利に進めるため、絶対に避けたい。

 

「今アリア先輩の声が聞こえた!!」

 

「空耳じゃないかしら?」

 

「あれ?可笑しいな…」

 

「そんなところでサボってないで部屋をくまなく調べて頂戴」

無駄に察しの良いあかりがカーテンに近づこうとするのを諌め、後から室内に入ってきた佐々木と風魔にも部屋をくまなく探すように促す。

その後も調査で出てきたのは文字が刻まれたコピー紙、ガラクタ(武器の失敗作)や細工されて開かない日誌と雄斗に関する情報は充分に収集できた。

 

◼◼◼

時間は流れアシアード当日の夕暮れ時の校舎裏。

昼はスタッフの仮設休憩所に訪れる生徒の行き来が激しかったかが全てのプログラムが終了した今現在、使用していた機材やテントなどは撤収され。いつも通りの閑散とした場所に戻った。

つまり、誰いないこのスペースは取引にはもってこいだ。

「急に呼び出してごめんなさい。その…どうしても我慢できなくて」

 

「問題ないわ」

 

紙袋にはぎっしりと報告書の束が詰め込まれ。

学校を通さない学生同士の非正規依頼で、証拠物品は分解するだけでも数日はかかりそうな途方もない量があったにも関わらず、適当に数束を抜き取り流し読みしてみても抜け落ちなどは一切なく。それどころか雄斗の目的、滞在期間などが分かりやすく簡潔に纏められており、非の打ち所のない完璧な仕事だった。

 

「不備はありませんでしたか?…それで…その…」

 

「わかってるわ、報…「これがクリスチーネ桃子先生の原本!」…ちょ…「ありがとうございました!」

(同人誌)を前にした百合はさっきまでの草食動物のようなたどたどしい態度は一変し獲物を見つけた肉食獣のように餌を奪うと走り去っていった。

 

 

 

 

 

 

「こんな感じのプロローグでも入れれば満足かしら?理子」

 

「あれ自信あったんだけどな?」

 

「そんな粗末な変装で白々しいわね」

そう言う割には変えているのは声と顔だけでそれぞれ個人の特徴が出やすい身長や報告書の筆跡は一切変えていない。

これぐらいの変装で身内に会えば本人と自分から暴露しているのも同然だ。

「ぶー!!夾ちゃんのいけず~」

 

「匿って欲しいとかなら無理よ。他をあたって頂戴」

 

「チッチッチッ!読みが甘いよ夾ちゃん!理子もう司法取引を済ませて逃亡生活と無縁なのだ!」

相変わらず世渡りが上手いというか負けてもすぐに自分が有利になるよう立ち回り、いつも通り振る舞う姿はルパンの血筋を感じる。

 

「それで用件はなにかしら?」

 

「あ、そうそう忘れてた忘れてた~!ウォホン!では発表します!

 

 

 

 

ユー君に生きて会いたいなら今夜が最後だよ」

精神だけ身体切り離されたように今まで感じていた世界は限りなく遠く色褪せ、奥底から溢れた冷たいナニカが全身を支配する。ただその感覚は初めてではない。

 

「何の冗談?」

 

「冗談じゃないよ。 だってブラドの情報を外部に流しちゃったんだもん。そりゃ消されるでしょ。しかも自分の自由を手に入れるためにブラドを倒すんだって」

『イ・ウー』の情報を掴もうとしただけでも不幸(意図的な事故)が降りかる情報を漏洩。ましてやNo.2の情報なんて社会に与える被害が甚大なため揉み消されるのは目に見えている。しかもそれだけにとどまらずブラドを捕まえようなんて正気の沙汰ではない。

 

「でも、今それを知ってるのは理子だけ。今なら拡散する前に捕まえれる。だから滞在期間最終日の今日が最初で最後のチャンス」

 

「……なんで…」

この情報は何の利益でもないし、それどころかバレた瞬間ブラドにも狙われかねないことを口外するなんて普段から要領よく立ち回っていた理子にはあり得ないことだ。

 

「そんなの決まってるじゃん!気まぐれだよ!」

 

「……そういうことにしとくわ……ありがとう…」

 

「夾ちゃんがデレた!?これは貴重だよ!」

回りをぴょんぴょん跳ねながら隙あらばくっつこうとする理子を片手で押さえながら携帯のダイヤルを回す。

 

「あかり、今すぐ準備しなさい。雄斗を捕まえにいくわよ」

 

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