贅沢は言わない せめて普通の生活を    作:暁魔

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2弾

外からの傍観を許さない煙のカーテンのなか三人で袋叩きにされることを覚悟し、目をつぶるがその時は一向に訪れず。ゆっくりと目を開けると「歯を食いしばれ」といわれ火野かが右、佐々木は左の頬に紅葉を咲かせただけでそれ以上はなかった。

 

「お前の心臓が止まった時どれだけの人が心配したのかわかってるのか!」

 

能力で人の尊厳を踏みにじった俺への怨念返しだとばかり思っていた俺は呆気にとられポケーとしていたところをライカが胸ぐらを掴みそう怒鳴った。

完璧だと思えた作戦の最大の欠点を数日前まで赤の他人だった俺のために。

 

「私たちは武偵の仲間です。だから次からはあんな無茶をしないで下さいね」

 

「……おう」

自分が受けた屈辱は後回しで人のために怒れる。こんな良い仲間に囲まれたあかりは本当に恵まれている。

ただ裏の世界をほんの少しだけ垣間見た俺からすると危うさがある。

 

「装備科の望月 雄斗だ。は雄斗って呼んでくれ。俺の製品で良ければ安くする」

だからけじめとしてこいつらが道を踏み外さないためにも精一杯のサポートを約束する。

 

「強襲科の火野 ライカだ」

 

「探偵科所属、佐々木 志乃です」

 

「諜報科の風魔 陽菜でござる」

改めての自己紹介に気恥ずかしさを覚え顔を伏せる。

決して元犯罪者の俺を受け入れてくれたことが嬉しく目頭が熱くなったせいではないと断言しておく。

 

 

「それにしても派手に散らかしたな…」

 

「そうですね…」

 

「あー片付けやりたくねー」

 

何だかんだで忘れていた戦後処理。ライカのアサルトライフルからバラ蒔かれた薬莢は至るところに散らばり片付けは骨が折れそうだが他にも使った武器の手入れ、傷の応急手当てなどが残っていると投げ出したくなる。

文句を言いながらも最初に清掃を始めたライカの文字が這っている左腕をみて解毒剤を体内で探るが一向に見つかる気配がなくストックが尽きたという結論に至る。

 

「ライカ、ちょっとこっち来てくれ」

 

「なんだよ」

文字での中和も巫女やシスターの解呪もできない今、下剤の効果を抑える方法は一つ。身体の一部を使う抑制だ。

護身用のナイフで親指の腹に一筋の線を引き。数秒後遅れて感じた痛みと共にジワジワと溢れ始めた血液が床に垂れ、思考が停止したまま固まったライカの唇に親指を当てる。

 

「よし、これで安心っ…トホォオ」

 

リンゴのように顔を真っ赤にしたライカの悲鳴付きの平手打ちは頬に見事にクリーンヒットし、物理法則を無視して浮き上がった身体は壁に突き刺さり意識が遠退く。

……なんでさ…

さらに目が覚めた先で麒麟から小言を言われたり、あかりに優しく介抱され志乃の恨みを買ってしまうのはまた別のお話。

 

◼◼◼

 

実技演習改め新たに悩みの種を増やしてしまった仲直り後に誘われた2試合目を「用事がある」とやんわりと断り。

ストックの尽きた薬品を補充するために保険準備室の使用許可を貰いに教務科に足を運ぶも、いざ教務科に辿り着き入室を試みるも隙間から漏れ出す異様なプレッシャーに気圧され足踏みしてるのが現状なのは仕方がないことだ。

 

「おや?こんな所でどうされましたか?」

 

扉に手をかけるよりも先に教務科から出てきたのは細身で長髪の20代位の美青年で、弾丸や硝煙が飛び交う武偵校にはかけ離れたイメージだ。

 

「保険準備室の申請許可を取りに来て…それで…」

 

「なら、その担当は私ですね。申請許可は出しておきますので使用後は使った薬品の品名、分量、用途を記載したレポートを提出してくださいね」

 

「ありがとうございます。小夜鳴先生」

懐から出てきた大小様々な鍵の束を受け取り、首から提げられたネームプレートを確認しながら頭を下げ準備室に向かう。小夜鳴のスーツから漂う香水に混じって鼻を刺激する懐かしい獣臭から逃げるように。

 

 

 

「あいつは間違いなく黒だ」

 

「えぇ、存在そのものが胡散臭いもの」

 

「うお!夾竹……桃子」

『イ・ウー』追放後からは夾竹桃改め本名の鈴木 桃子を名乗るようになり呼び方も桃子と呼ばせるように徹底され、間違えて夾竹桃などと読んでしまえば足の指先が桃子の踵の餌食になる。

 

「でも、以外だな小夜鳴みたいな奴はモテると…「あんなのに惚れるのは子供だけよ。大人の女は騙されたりしないわ」

 

その子供みたいな容姿で自分は大人と主張されても違和感しか残らないが、その事を口にしたら痛恨の一撃が俺を襲うのは必須であろう。

 

「何か失礼なことを考えてたわね」

 

「き、気のせいだ!そういえばこれから保険準備室で薬品の補充するから手伝ってくれよ!」

 

「仕方無いわね…今回は誤魔化されといてあげる」

鍵束はいつの間にか妙に機嫌のいい桃子の手元にあり、その本人も気づけば俺より先に保険準備室に続く廊下を歩きだしていた。

その姿が何だかイベントを待ちきれない子供を連想させ自分は大人だと言い張った数秒前の会話を思いだし、ほんの一瞬苦笑いを浮かべ小走りで桃子を追いかける。

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