寝起き。
それは人の本性をさらす時間を差す言葉だ。
どんなに感情を隠すのが上手くとも数秒は自分の素が出てしまう。それは家族や友人は勿論のこと、敵味方、異性がいるとしてもだ。
その一瞬の出来事故に遭遇するためには数々の条件に恵まれなければならない。
際る例が眠りの深さとタイミングだ。
眠りが浅ければ浅いほど警戒され、寝起きの姿が見れる確率は下がり。同じ部屋にいてもタイミングが合わなければ見過ごすことになる。
もしそのイベントでありのままの姿を見れたなら、きっとその人との関係は進展することに違いない。
ただ、注意すべきこともある。個人差はあるが寝起きは情緒不安定な時間でもあり、気性が荒く、攻撃的になりやすい。
つまり
「起きt…うぉ!いきなり何するんだよ!」
「淑女の寝顔を見た代金としてその目を寄越しなさい」
このように思いがけない一撃(目潰し)が来るときもある。
「高いわ!!だいたいお前の寝顔は気品よりも微笑ましの方が当てはまるだろ!!」
「死になさい…」
うっすらと頬を染めながらもクールなキャラを演じようとしてる姿には何か心に…お、落ち着け。俺はロリコンじゃない……よな…
「…仕方ないわね…」
夾竹桃が深いため息のあと目潰しのために手に込めていた力を完全に抜きさり、腕を重力に従わせるよう垂らした。
「半殺しで許してあげる」
人はそれを許したとは言わない。
それに指先から光を僅かに反射させる極細のワイヤー。絶対凶器だよな!というかさっきより悪化してないか!?
「逃がさないわよ…」
慌てて逃げようと反対方向に走り出すが、ワイヤーで逃げ道は塞がれており。残された選択は
「かかってこいやぁぁあ」
開き直ることのみだ。
~30秒後~
「これで許してあげるわ」
夾竹桃に一瞬のうちに手足を伸ばされ十字架のようなオブジェにされた俺は、無残にも天井に吊されていた。
それも最近はあまり見かけないが雨の日になると軒下に首を支点に一人虚しく吊される『てるてる坊主』のように。
「安心しなさい。すぐには死なないよう加減はしてるわ」
「覚えてろよ……」
確かに完全に血流や気道は塞がれている訳ではなく。苦しくてもまだ声は出せるし、意識もはっきりとしているが、苦しみも鮮明に伝わる分たちが悪い。
「……ごめんなさい」
「いまごろ反省でもしたか?」
「反省なんてしてないわ。ただ腕が動かないのよ…」
頭部はしっかりと固定されてるため目だけを動かし、夾竹桃の腕を視界に捕らえると。さっきとみたものと同じ不気味な文字がワイヤーを操る指先から侵食を始めていた。
「つまり…」
「お互いに死にかけてるってことよ」
「「…………」」
辛い現実、刻々と迫る死へのタイムリミット、間抜けなこの姿。何でこうなるんだ…
「助けてください!!!」
「諦めなさい。防音よ……短い生涯だったわ…」
「悟るな!」
このあとも必死に助けを呼ぶが、一向に助けがくる気配なく。瞼がだんだん重くなっていくことに耐えきれず、ゆっくりと目を閉じた。
■■■
「あら、思ってたより目覚めが早いわね」
不本意ではあるがここ最近の出来事のせいなのか、気絶から復帰までの時間が短くなり。その点だけ成長したと実感できるのは悲しい進化の結末だ。
「私の友達が着てくれなかったら死んでたわよ。次会ったらお礼ぐらい言いなさい」
夾竹桃の友達と聞いて思い浮かぶのは『武偵殺し』ぐらいで、もしも予想通りなら殴らずにいられるかが心配だ。
「もう一度だけチャンスをあげるわ。だから私に飼われなさい」
「断る!それに俺にこだわる必要はないだろ」
「あなたは希少な能力者。理由はこれでどうかしら?」
「俺が超能力者なんて聞いたこともないぞ」
武偵校には超能力を専門に扱う
「当たり前よ。超能力が開花したのは昨日のことだもの」
「は?」
「生物はストレスを感じれば感じるほど進化していくのよ。心当たりあるでしょ」
謎のセグウェイ事件、冤罪、綴の拷問、投獄、脱獄、暴行、誘拐、軟禁、薬品などなど…
一般人が経験するには濃厚過ぎるほどストレスフルな生活だ。
「それに、『イ・ウー』に関わった時点であなたに選択はあって無いようなものよ」
「服従か自首か死の3択か?」
「いえ、服従か公安0課に消されるか死ぬかの3卓よ」
「………」
関わっただけで公安0に消される組織がまともな訳がないし、ましてや自主しても消されるのは見えており。どう転んでもバッドエンドにしかならない。
「飼い犬は人に世話されるから安全に暮らせるのよ」
「……よろしくお願いします」
どうやら俺の日常はどこか遠くへ消えてしまったらしい。